2019年1月11〜13日にチャオプラヤ川沿いのSermsuk Warehouseで開催されたフリーマーケット『Made By Legacy』。バンコクで開催されるさまざまなマーケットのなかでも、ずば抜けてハイセンスなファッションアイテムや、家具、雑貨が集まる人気イベントです。 2012年にスタートして以降、会場を変えながら年に1〜2度の開催を続け、10回目となった今回は厳選された200の店舗と30の飲食店が集結。3日間で約1万人の来場者が訪れました。その当日の様子をレポートします。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
バンコク中のファッショニスタが集まる、ファッションブース
出展するブースの過半数を締めているのが『Made By Legacy』の核となるファッション関連のショップ。
古着に手書きのイラストを描いた「Wijirt」、手刺繍を施したミリタリーファッションの「Revive」など、一点物を販売するブランド。20年以上続く老舗『Hippie 80s』や、チェンマイで人気の古着屋『KABER Vintage』など、個性派アパレルショップのブースが立ち並びます。
価格帯は、他の屋外マーケットよりもお高め。それでもここでしか出会えないハイセンスなアイテムを目当てに、開催期間中はバンコク中のファッショニスタが集まります。
毎回、出展希望者が殺到する、この絶妙なFashionブースのキュレーションを行っているのが、タイのストリートファッション雑誌『Cheeze』などでスタイリストも勤める、帽子・ファッションブランド「Palini」のオーナーBenzさん。
「セレクトの基準は、まず値段に関係なく高品質であること。そして、ここの来場者は同時に歴史やストーリーも強く求めています。ヴィンテージだけでなく、マルチカルチャーを意識して選定していますね」と、Benzさんは言います。
近年、バンコクでも実店舗を持たないブランドが増加するなか、直接商品を手に取り、デザイナーとの会話を楽しみながら買い物ができるのも『Made By Legacy』の魅力の一つ。今回、会場で出会ったブランドをいくつかご紹介しましょう。
バンコクのブランド「SUPERSWEET x moumi」のブースで出会ったのが、同ブランドのデザイナーCholtidaさん。
「以前は実店舗を持っていましたが、あまり売ることに興味がなく、いまはオンライン販売と『Made By Legacy』に出展するくらい。毎回新しいライフスタイルやカルチャーを提案するような出展者が集まっているところが、このイベントの 好きなところですね」とCholtidaさん。
飼い猫をモチーフにしたり、異素材をミックスさせた遊び心満載の「SUPERSWEET x moumi」のアイテムは、音楽フェスやクラブで映えると好評です。
次に訪れたのが、白いヴィンテージドレスで埋め尽くされたお店。そこは「3Dフラワーの水着」で知られる「Chuan Pisamai(チュアンピサマイ)」でした。
「普段はお客さんの7割が日本人と、まだタイ人の間では知名度が低いので、このファッションのショーケースのようなイベントに出展しました」と話すのは、オーナー兼デザイナーのBeeBeeさん。
そしてニューヨークでタイ人が立ち上げた、いま勢いのあるメンズブランド「SSAP」のブースで出会ったのが、創立者でデザインを手がけるMelさん。
「男兄弟に囲まれて育ち、私自身もメンズの服をアレンジして着ることが多かったので、メンズのブランドをはじめました。それに、男性がレディースのデザインをすることは多いけれど、その逆は少ないでしょ? だから面白いかなと思って」とMelさん。
2012年にニューヨークでブランドを立ち上げ、タイに帰国後、サコンナコン県の藍染の美しさや質に惹かれ、それらを取り入れたデニムなどのコレクションを発表。以降、「タイ産デニム」はタイ国内のファッション業界でトレンドになりました。
「タイ産デニムは、いろんなブランドが同じことをはじめたので、いまはイカット(織物)を使ったり、他の地方の生地の発掘をはじめたりしています」とのこと。
彼女の先見の明は現地のファッション好きな若者に支持され、昨年末にはVOGUEの若手デザイナーを発掘するプロジェクトで受賞するなど、ますます注目されています。
会場には、2つの音楽ステージ。アナログレコード限定のDJも
『Made By Legacy』の会場内には2つのステージが設置され、常にDJがプレイし、時にライブバンドが演奏し、音楽が途切れることなく会場を盛り上げます。
多国籍なラインナップによるDJがスピンする音楽は、Hip Hop、New Wave、Indie Rockとバラエティー豊かで、共通しているのはアナログレコードを使っていること。
今回会場で耳にした音楽はDisco〜New Waveといった1970年代後半〜1980年代を感じさせるものが多かった印象。初日にCity Popを中心にプレイしていたマレーシア・クアラルンプールを拠点に活動するDJ Yugoさんに話を伺ってみました。
「私はクアラルンプールではまだ数少ない、アナログレコードを使ってプレイするDJチームPublic School.の一員です。アジアの都市は行き来が簡単で、『Made By Legacy』にも以前遊びに来たことがあります。今回、ステージをオーガナイズしているバンコクのチームOlympic Diggerと交流があり、初めての出演となりました」とDJ Yugoさん。
また、会場内にはレコードやカセットテープを販売するブースが集まる一角も。そこで特に存在感があったのが、日本のグループ、はっぴいえんどやYMOのレコードをディスプレイしていたショップ『Ran Bongo』。
「ぼくらは日本のアニメや映画を観て育った世代なので、日本のCity Popにとても馴染みがあります。タイの20代の子たちは、ファッションとしてCity Popを聴いている人も多いけど、実際にその人気は根強く、City Popファンのコミュニティーができていますよ」と、店主のPuiさん。
また、その友人であるグラフィックデザイナーSomboonさんが自主制作した山下達郎Tシャツの販売も。
「山下達郎はぼくにとってのレジェンド。日本に行った際には、レコードショップで彼の作品を探しています。日本人はタイのレコードショップでタイの伝統音楽であるルクトゥーンやモーラムを探していて、タイ人は日本でCity Popを買い漁っているって、なんだか面白いですよね」と、Somboonさん。
会場内では、ビールを片手に音楽を楽しむ人もちらほら。そんな多様な楽しみ方ができるのも、この『Made By Legacy』の魅力の一つなのかもしれません。
バンコクの人気飲食店から、アンティークショップまで
『Made By Legacy』では、タイで人気の飲食店が数多く出店しているのも特徴の一つ。
川沿いにあるフードゾーンに軒を連ねるのは30店舗と、ややコンパクトにまとまっているものの、バンコクで一番の窯焼きピザを提供すると評判の『Peppina』、北タイ産の豆を自家焙煎したコーヒーを提供するサードウェーブ系カフェ『Brave Roasters』、ソイ・ナナにある香港映画に出てきそうな中華風の装飾が特徴なレストランバー『Ba Hao』、チェンマイ料理専門店『Hom Duan Chiangmai』といった、グルメ通に人気の飲食店が多様なジャンルの料理を提供し、日が暮れるころには行列があちらこちらに出現します。
「昔からの有名店を若い世代がリニューアルしたお店から、まだ実店舗も名前もない実験的なお店まで、実際にぼく自身が食べてオススメできると確信を持ったお店に出店をいただいています。ここにはお酒を飲みに来る人も多いので、タパスもたくさんありますよ」と話すのは、フードゾーンの担当者でもあるレストランバー『MAD MOA』のオーナーWhamさん。
その他にも、ロンドンの高級ホテルで修行を積んだシェフがつくるタイフュージョン料理店『Rodtiew』、ミシュランガイドにも掲載されている牛肉麺『Ten Suns(十光)』、バンコクで生まれたヒップな天ぷら専門店『Batt Tempra』など、バンコク内でも有名なお店が並んでいました。
また、アンティークショップが並ぶのも『Made By Legacy』の特徴の一つ。
イギリス製のヴィンテージ家具を集めた『Vintage Showcase』など、こだわりのアンティークショップが集まるなか、巨大な倉庫が特徴の家具屋『Papaya』を運営するエカマイの老舗バー『Tuba』が初参加。
夜風に当たりながらアンティーク家具に囲まれて、パスタやお酒に舌鼓を打つ、という『Made By Legacy』ならではの贅沢な体験を提供していました。
バンコクの“いま”の若者たちがこぞって集まる
イベントの楽しみの一つが、個性が光る人々にたくさん出会えること。会場で出会った人たちに『Made By Legacy』について聞いてみることに。
Here Now Bangkokのキュレーターで、フォトグラファー、フリーのプロデューサーとして活躍するPahparn(写真左)。
「このイベントは、バンコク中の質の良いものが集結しているのが良いですね。今回は、いま被っている『Shabby de hat』の帽子と、1930〜40年代のタイブランドのヴィンテージハットを買いましたよ」と、Pahparnさん。
そして、そのお隣は執筆家・俳優のNophandさん。
「出展者はもちろん、来場者も面白い人が集まっているのが魅力を感じます。知人にもたくさん出会いますしね。ぼくは、本業ではなく趣味で古着屋をしているので、気軽に参加できるのが楽しいですね」と、ヨーロッパのブランドのヴィンテージアイテムを集めた古着屋『Mr.Smith』を出展していました。
会場には、『Studio Lam』や『Zudlangma Records』のオーナーでもあるDJのMaft Saiの姿も。
「長年続けていて、着実に独自のコミュニティーを築いているのが『Made By Legacy』のすごいところだよね。このイベントには友達を誘って、飲みに来るのが良いと思うよ」と、Maft Saiさん。
「商品は全体的にお高めだけど、レコードがお買い得だったので思わず買ってしまいました」と話す、広告会社勤務のBASさんや、「買い物目当てで来たわけじゃないけど、会場を歩いているとあちこちで一目惚れしちゃって。つい買いすぎてしまいますね」と、購入したばかりのバッグを見せてくれたPYEさんなど、みんな各々にイベントを楽しんでいるよう。
その他にも、毎回名前のないヴィンテージショップを出展しているイベントの有名人、Pa’ Tuk(通称Tuk父さん)など、バンコクのさまざまな面白い人たちが集まるのもこのイベントの特徴だといえるでしょう。
ますます進化していく!? 『Made By Legacy』
最後に『Made By Legacy』の主催者であるWoodyさんにお話を伺うことに。
Woodyさんは、自身がニューヨークに住んでいた頃に「蚤の市」の魅力にはまり、バンコクに戻ってから『Made by legacy』を立ち上げたといいます。
「アメリカの蚤の市では、自分にゆかりのある品を持ち寄って売っていて、店主の思い出話に30分ほど付き合ったらディスカウントしてくれたり。そんな単なるビジネスではなく、ストーリーが背景に感じられる『蚤の市』のカルチャーに魅了されました」
「ぼくはファッション業界の人に限らず、あらゆるグループや階層の人と出会うのが好きで、夜遊びをしたり、食に興味があるからシェフたちとも遊んだりもしています。そんないろんなジャンルの友達をうまくつなぎ合せたイベントが『Made By Legacy』でもあるんです」
回を重ねるごとに規模が大きくなりつつも、出展店舗のクオリティーを保ち続け、「ここに来たらなにかに出会える」と感じさせてくれるのが、このイベントのなによりもの強み。
最後にWoodyさんに、どのようにして『Made By Legacy』をこの規模まで拡大できたかを伺いました。
「ぼくやイベントを信頼してくれている友人たちが100%の自信を持ってオススメできるものだけを紹介してくれるからこそ、自分が誇りを持ったものを提供するお店を集めることができています。そうやって、このイベントもコミュニティーが広がってきた。いまは、儲けは二の次に、ただ参加することを誇りに思って楽しんでくれるような出展者が集まっていると思いますよ」
また、年に一度の『蚤の市のフェスティバル』のようなイベントにしたいとも話すWoodyさん。2019年は3日間で約1万人の集客を記録したといわれる『Made By Legacy』。来季の場所はまだ決まっていませんが、2020年も1月第2週の週末に開催するとのことなので、ぜひ気になる人は、現場に足を運んでみてはいかがでしょう。
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Made By Legacy
2012年にスタートした、バンコクでも、ずば抜けてハイセンスなファッションアイテムや、家具、雑貨が集まる人気のマーケットイベント。年に1〜2度の頻度で開催を続け、次回は2020年1月第2週の週末に開催予定。
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