ここ数年、全国的な盛り上がりを見せている古着シーン。流行りのコーディネートにユーズドやヴィンテージをMIXして個性を出す、オシャレな若者が増えている。
そんななか、九州中の古着好きが集まる注目のイベントが、9月28日(土)〜29日(日)の2日間、北九州市で開催された。古着を中心とした九州最大級のファッションマーケット『洒落者市』だ。
第7回目となる今回は過去最多の出店があり、関西のファッション誌『カジカジ』が主催するマーケットイベント『カジフェス』とも初コラボ。大盛況となった2日間、出展者や来場者を取材してみると、地元の若者たちが牽引する北九州のカルチャーのいまが見えてきた。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
古着をオシャレに着こなす「洒落者」たちが集結!
『洒落者市』が始まったのは2014年。北九州市・小倉魚町にある古着店『ブルーミーデイズ』の店主、池部哉太さん・遥子さん夫妻が、地元の古着店やクリエイター仲間などに声をかけてスタート。北九州では希少なファッション関連のイベントとして若者を中心に話題となり、回を重ねるごとに出店者やファンを増やして、今回で7回目を迎えた。
開催場所となった小倉北区の複合施設『リバーウォーク北九州』には、九州や関西から集まった古着店やセレクトショップ、若手クリエイターやハンドメイド作家など60以上のブースが出店。個性的なファッションに身を包んだ来場者たちが詰めかけた。
安価なユーズドからアメリカンカジュアル、ヨーロッパのヴィンテージやリメイクなど、各店のセレクトが光る数々のブース。アイテム数も膨大で、一日中いても見飽きることがない。さらに、イベントでしか買えないスペシャルプライスもあり、来場者たちは「買う気」十分。
お目当てのブースをめぐり、お気に入りを掘りまくり、探し疲れたらドリンクやフードを楽しみつつ戦利品を見せ合うなど、長時間滞在して楽しむ人の姿も多かった。
関西発のファッション誌『カジカジ』とコラボ
なかでも注目が集まったのは、関西発のファッション誌『カジカジ』が開催するファッションマーケット『カジフェス』のエリア。
日本を代表する古着店『ピグスティ』や『ラブバズ』、原宿の『SPINNS』から誕生した古着店『森』や、セレクトショップ『JOURNAL STANDARD』、人気ブランド『makerhood』などが出店した。
『カジカジ』自身もブースを出し、大阪の名だたるショップからセレクトした古着を販売。人だかりをつくっていた。
「こんなにたくさんの人が来てくれるなんて驚きました」と語るのは、『カジカジ』のスタッフたち。「この日のためにお金を貯めて来ました、なんていう子もいて、嬉しかったですね。両手いっぱいに袋を抱えて帰るツワモノもいました」。
北九州の古着マーケットの盛り上がりや、オシャレへのモチベーションの高さを目の当たりにし、「今後も関西と北九州で交流を深めて、ファッションやカルチャーで街を盛り上げていけたらいいですね」と語ってくれた。
イベントを支えるのは、地元・北九州の出店者たち
主な出店者はやはり、地元・北九州で活動するショップやクリエイターたち。今回、2日間を通して会場のラウンジDJを担当したのは、『ブルーミーデイズ』が入居する小倉魚町のリノベーションビル『メルカート三番街』にオープンしたばかりの『CANDY』だ。
1日目の夜に行われたパーティーでもDJや裏方として活躍した彼ら。「出店者はもちろん、各店の常連さんなど街の人たちも集まって盛り上がってくれたのが嬉しかった」と手応えを語る。
DJの他にも、オリジナルやリペアの洋服を手がける『CANDY』ならではのアイテムを販売。鹿児島在住のイラストレーター上坂元均氏の描き下ろしデザインで、ジーンズブランド「Johnbull」とコラボしたTシャツや、オリジナルグッズが人気を博した。
第1回目の『洒落者市』から参加しているのは、『The Re:bar Cafe』。北九州を拠点に、ポップアップやオンラインで、セレクト古着やオリジナルのリメイク古着を販売するショップだ。
ブースに集まってくるハイセンスなオシャレ女子たちのお目当ては、店主の平井さんが手がける、タイダイ染めやペイントのリメイク古着。「個性はありつつも、大人が楽しめるデザインを目指している」と語る平井さんの言葉どおり、古着の持つ味わいと、繊細なクリエイティブが融合した世界観が魅力だ。
「『洒落者市』で出会ったお客さまもたくさんいます。実店舗を持たずに活動しているので、直接声が聞ける『洒落者市』は励みになっていますね」。
小倉北区の商店街で、アメリカ直仕入れの古着店『NoT』や『Fun』など4店舗を展開する株式会社knot。そこで代表兼バイヤーを務める西村さんも、『洒落者市』に初期から参加するひとりだ。
小倉で20余年続く老舗古着店『BAYSON』で15年働き、2013年に独立。『ブルーミーデイズ』の若いふたりの良き相談相手で、『洒落者市』にも福岡市の有名店『PUSH “ME” HARDER』や『LOOP』『KORDS』などを誘い、盛り上げているキーマンだ。
「若者が少ないといわれる北九州ですが、オシャレが好きな人は多いと感じます。最近では『ブルーミーデイズ』や自分たちの店など、古着屋も増えてきて、『洒落者市』も盛り上がっている。そんないまだからこそ、古くから街で商売をしている地元の人たちも巻き込んで、北九州全体を元気にできたらいいなと思います」。
若者の夢を後押ししたい。『ブルーミーデイズ』のふたりの想い
高校時代から古着が好きで、古着を扱う地元のショップで出会ったという『ブルーミーデイズ』のふたり。
将来古着屋として独立することを目指し、大学生だった2014年からイベント出店などを開始。2016年に、夫・哉太さんの祖母が所有する門司港の自宅倉庫を改装し、ヨーロッパで買いつけた1960年代から1980年代のヴィンテージを扱う週末限定の古着店『ヨーロピアンマルシェ』を始めた。これが現店舗の前身となった。
門司港での3年半の活動中に、「古着好きの若者が集まれる場をつくりたい」と企画したのが『洒落者市』だ。観光地である門司港では、毎週末のように雑貨やアンティークのマーケットが開催されていたが、若者が中心となって企画し、参加できるイベントがなかったのも理由のひとつ。
「テーマは『若者』と『ファッション』。自分たちがやりたいことだけを詰め込んで手づくりで開催しました」。
初めは3店舗の古着店と数人の友人から始まったイベントだった。しかし北九州の若者が地元に求める潜在的なニーズと合致したことで、回を追うごとに規模は拡大し、のべ1万人以上が訪れるイベントに成長。
2017年、大学の卒業とともに門司港から移転し、小倉魚町に『ブルーミーデイズ』をオープン。以来、他の古着店とのつながりもさらに強いものに。若いふたりの周りには、同世代のショップ『CANDY』のように、ファッションで北九州を盛り上げたいと志を同じくする仲間や、何かやりたい若者が集まってくるようになった。
「『洒落者市』は古着屋の先輩や街の人々など、いろんな人が応援してくれたから続けてこられました。だからこそ自分たちも、夢を持つ若者にチャレンジの場を提供したい。やる気のある子たちは、『洒落者市』にプロと並んで出店してみて、大いに刺激を受けて勉強してほしい。将来、その子たちが独立して、北九州のファッションやカルチャーが盛り上がればいいなと思います」。
魅力あるショップが北九州を元気にする
「古着店の魅力は『人』」。取材に対して来場者が語った言葉が印象的だった。「欲しいものが見つかるお気に入りの店というのもあるけど、会いたい人がいるからつい立ち寄ってしまう」。
コンパクトな地方都市では、魅力あるストリートの個人店が街に与える影響は大きい。北九州ではいま、古着を通じて生まれたコミュニティーが、新たなムーブメントを起こしつつある。そのことを、熱気に満ちた『洒落者市』の2日間が証明していた。
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