HereNow Seoulのイラストを手掛け、韓国国内はもちろん、日本でもファッション雑誌やファッションブランドとのコラボレーションだけでなく、個展が開催されるなど、絶大な人気を誇るイラストレーターのシン・モレ(ShinMorae)。 ポップなカラーリングと、日常の風景を切り取ったどこかセンチメンタルなイラストは、近年の雑誌やSNSを通じて目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。今回はソウルから少し離れたシン・モレのアトリエのある都市・仁川(インチョン)へ、作品や自身の住む都市について話を伺いました。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
小説よりも詩集、画集よりも写真集が好き
—まずは、自己紹介をお願いします。
シン・モレ: こんにちは。イラストレーターのシン・モレです。ソウルから電車で1時間くらいの場所にある仁川(インチョン)に生まれて、今も仁川で暮らしています。
—シン・モレさんの作品は、ポップな色使いの中にどこか物悲しさを感じるイラストが魅力だと思うのですが、自分のイラストの特徴って、どのような部分だと思いますか?
シン・モレ: それは、誰もが親近感が湧く感情を描く事だと思います。私は、新しくて馴染みのない事を描くよりも、誰もが共感できることを描くことが好き。だから自分だけが描くことができる表現方法で共感を求めながらも、そこにプラスのオリジナリティを探して描いているようです。
—色彩としては、ネオンや光と影を感じる作品が特徴的だと思うのですが、このような作品はどのように生まれるのでしょうか?
シン・モレ: 普段写真をたくさん撮っておくので、壁に写真が多いんですが、イラストの中に光が入ってくるのもとても重要なポイントだと思っています。私にとって光はとても好きな要素だから、イラストの中にも自然と多く登場していて、そして絵の中に登場する要素の大部分は、私の周辺の緊密な場所にあるものが多いです。
—制作する時のアイデアはどんなものから得ていますか?
シン・モレ: 普段からメモをたくさんしますね。私は、絵を描く前にまずテキストを書いておく習慣があります。テキストを書いておくと、絵を書き出すときにイメージを簡単に思い浮かべることができるんです。これが関係するのかはわかりませんが、昔から小説よりも詩集が、画集よりも写真集が好きです。
韓国に好きな部分も嫌いな部分もない
—これまでにも、著名なK-POPアイドルが所属するSMエンターテイメントとのコラボをはじめ、PUMAなどといったビッククライアントとの仕事も多いですが、今の状況は昔から想像していましたか? 何か、自身のターニングポイントなる作品があれば教えてください。
シン・モレ:もともと美大を通っていたけど、私は絵の専攻ではなかったので、今のようなアーティスト活動をする予定はなかったんです。だけど、Twitterに載せたイラストがリツイートされて、徐々に反響が大きくなっていって、自然に今のような活動に辿り着いたと思います。そんな感じでじわじわと世間に知られるようになってきた頃、2016年の『大林美術館』での展覧会でファンが沢山増えたように思います。
—シン・モレさんが、韓国で生まれ育った事が、何か自分の絵に影響があると思いますか?
シン・モレ: 韓国で生まれた事が、自分の作品に影響を与えた事はないと思います。それよりも、両親が二人とも芸術分野に明るい人だったので、子供の頃から本や映画のようなものを自由に接することができたことの方が影響を及ぼしているというか。私の両親は、どのような方法であれ自由な思考であることを好みました。
—では、ソウルと仁川の好きな点・嫌いな点はありますか?
シン・モレ: 特に、好きな部分も嫌いな部分もないです。ソウルは複雑な街なので私自身は避ける方で、仁川はただ生まれ育った場所なので、慣れているので特別な感じがしないというか。つまり、どこに住んでいるかについてはあまり考えることはないです。ただ、どのような部屋にいるかは重要です。今のアトリエも交通が不便であっても光がよく入る場所を選びました。港町でもある仁川は、海が近くて好き。南の島の海のような暖かい感じではなくて、やや殺伐としているけど、それも物寂しい感じが嫌いじゃないんです。
絵が嫌いになれば辞めるし、絵が特別なものだとも思わない
—最近、シン・モレさんの周りで起きた面白い出来事やエピソードがあれば教えてください。
シン・モレ: 私がとてもインドア派なので、特別な事件のようなものが毎日あるわけじゃないです。だけど、最近はフェミニズムに関して友人達とよく話し合ったりしています。今、韓国の社会的にも関心が高まっていて。
—今後も韓国で活動を続けていきますか? もし韓国で活動する理由や意義として考えていることがあれば教えてください。
シン・モレ: 私は韓国人である以上、韓国で活動を続けていくことから避けては通れないでしょう。ここで生まれ育ったので自然に韓国人のアーティストになったのであって、韓国で活動することがより良いか悪いかのような考えはあまりないです。周りに影響を受ける方ではないので、そこまで考えたことがないのかもしれませんが。 個人的に思っているのは、今年は海外での活動をより増やそうと思っています。グループ展やコラボレーションなどの相談は色々されているものなどはあるのですが、正確な計画はまだありません。まずは2月に個展が控えているので、終わったら少し休もうかなと。
—では最後に、今後の計画や抱負を教えてください。
シン・モレ: 今、していることをできるときまでしたいと思います。私は、とても冷めている人間でもあるので、絵が嫌いになれば辞めるし、絵について特別だとも思わないようにしています。2017年は、日常の生活が何よりも大切に感じた1年だったので、今年は、健康に安全に過ごそうと思っています。
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