シンガポールは緑に溢れる都市。これは1960年代に始まった緑化政策の賜物の一つで、国土が小さく資源の少ないシンガポールが国の成長のために求めたのが、観光資源でした。シンガポールは多くの観光客を招くため、安心・清潔のイメージを築こうと「ガーデン・シティ(庭園都市)」を目指します。それがいまやなんと、国民1人あたりの公園面積は、東京の2倍以上。そんな心地よい緑のオアシスの中から、写真映えするシンガポールの代表的な植物園と庭園を紹介します。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
光る大木に、空中の道。未来都市のような植物園『Gardens by the Bay(ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ)』
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©Gardens by the Bay
「ガーデン・シティ」を目標に掲げてきたシンガポールは、さらなる進化を果たすべく、2000年代に入ってから「シティ・イン・ザ・ガーデン(庭の中の都市)」を提唱するようになりました。その象徴ともいえるのが2012年にオープンした植物園『Gardens by the Bay(ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ)』です。埋め立て地に広がるこの植物園は、発想の大胆さとダイナミックな規模が特徴で、未来都市の庭のような雰囲気が広がります。
101ヘクタールを誇る園内は3エリアで構成されていて、「イースト・ベイ」や「ベイ・セントラル」と呼ばれるエリアにはキッズ向けの水遊び場や、のんびり散歩を楽しむ緑道が。
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©Gardens by the Bay
なかでももっとも広く、写真の撮りどころが多いのが「ベイ・サウス」。同エリアには3つのフォトジェニック・スポットがスタンバイしています。
その筆頭が「スーパーツリー」。熱帯雨林に出現した樹木にインスピレーションを得た人口大木で、高さは25~50メートル。12本の大木が密集する様子を下から見上げるのは圧巻で、夜になると、音楽に合わせてスーパーツリーが光るライトショーの上演が。ツリー周辺の芝生に座ったり、寝そべったりしながら音楽と光に身を委ねるのはなかなかの心地よさです。
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©Gardens by the Bay
ちなみにスーパーツリーはエレベーターで上がることもでき、2本のツリーをつなげた全長128メートルのスカイウェイからの景色が最高。ただし地上22メートルと結構な高さなので、高いところが大丈夫な方のみオススメします。
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©Gardens by the Bay
続いて「ベイ・サウス」エリアにある、フォトジェニックなスポットが「フラワー・ドーム」。ここは地中海や南アフリカ、カリフォルニアなどの冷涼かつ乾燥した地域の春を再現したスペース。広大なドームの内部には、多肉植物の庭やオリーブの森などが広がります。
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©Gardens by the Bay
同じ場所にはないはずの、異なる国・種類の植物が並んでいるのを見ると、時空を超えたような感覚になって不思議。たとえばバオバブの森では、アフリカのバオバブの隣にアルゼンチンのボトルツリーが植えられていて、同じところには生えるはずのない2種が並びます。
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©Gardens by the Bay
最後に紹介するフォトジェニックなスポットが「クラウド・フォレスト」。ドームの中に高さ35mの人口の山がそびえ立つまさに異空間です。
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©Gardens by the Bay
頂上部分は標高2000メートルという設定で、人口の滝が流れ落ち、ミストによる雲らしきものまで。エレベーターで頂上に登ったら、寒冷な場所で育つ高山植物や鐘乳石を展示したクリスタル・マウンテンなどを観察しながら下山します。このドーム内、かなり涼しいので羽織るものがあるとよいでしょう。
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©Gardens by the Bay
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Gardens by the Bay(ガーデンズ・バイ・ザ・ベイ)
住所:18 Marina Gardens Drive Singapore 018953
アクセス:MRT「Bayfront」駅よりB出口を出て徒歩10分
開園時間:ドーム・OCBCスカイウェイ9:00~21:00 / アウトドアガーデンズ5:00~翌2:00 / ファーイーストオーガニゼーション・チルドレンズガーデン10:00~19:00、土日祝9:00~21:00
休園日:ファーイーストオーガニゼーション・チルドレンズガーデンのみ月休
入園料:ドーム一般S$12 / OCBCスカイウェイ一般S$8 / アウトドアガーデンズ・ファーイーストオーガニゼーション・チルドレンズガーデン無料
URL:http://www.gardensbythebay.com.sg/en.html
これぞ都会のオアシス。シンガポール初の世界遺産である植物園『Singapore Botanic Gardens(シンガポール植物園)』
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©National Parks Board
『Singapore Botanic Gardens(通称:ボタニック・ガーデン)』は、2015年にシンガポールで初めてユネスコの世界遺産に登録された植物園。深緑と花々に包まれたリラックス度満点の写真が撮り放題の同園の歴史は古く、1800年代まで遡り、現在のように国の管轄になったのは、1874年から。独立後の緑化政策に伴い、整備はいっそう進んでいきました。
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広さが東京ドーム約13個分もある同園。植物の進化を表現した「エボリューション・ガーデン」や「クールハウス」など、すべて周るには3時間以上かかるほど。よって、見どころを絞って効率よく、小一時間程度で歩ききることのできるルートを紹介します。
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入り口は7か所。まずは南のタングリン・ゲートへ。北のブキティマ・ゲートを目指し、園内西サイドを北上していきます。
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©National Parks Board
ゲートから5分ほど歩くと見えてくるのは「スワン・レイク」。静かな池に白鳥が優雅に泳ぐ姿を見ることができます(残念ながら、撮影日には1羽もおらず……)。白鳥そのものが見られなかった場合は、白鳥がつらなる見事な彫像をお楽しみください。
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北上を続けると、中南米や東南アジアなど熱帯地方に分布する1000種以上のショウガ目の植物が集められた「ジンジャー・ガーデン」が。ショウガのほんのりスパイシーな香りと、熱帯雨林らしさを感じる色鮮やかな花が魅力です。
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そして「ジンジャー・ガーデン」の隣にあるのが、シンガポールの国花である蘭(ラン)を展示する「ナショナル・オーキッド・ガーデン」。
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蘭の展示場としては世界最大規模と称される国立蘭園で、ここだけで3ヘクタールもあるため、ぐるりと1周めぐるのに所要時間30~40分ほど。1928年からランの交配と繁殖を行っており、1000を超える原種、2000種以上の交配種など、さまざまな蘭が咲き乱れています。
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各国の皇族や元首の名前を冠したランの華やかさたるや。各所に写真ブースが設けられ、ランに囲まれたフォトジェニックな写真撮影が可能。
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さらに北上して「ナショナル・オーキッド・ガーデン」から約10分歩くと、素敵な邸宅が。こちらはかつて植物学者・EJHコーナーが暮らした邸宅を使ったレストラン「Corner House(コーナーハウス)」。
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このレストランは、ミシュランの星ほか多くの賞を獲得しているシェフ、ジェイソン・タンが、EJHコーナーへのオマージュの気持ちもこめた植物(野菜)を主役にした創作料理を提供しています。建物も料理もフォトジェニックで、静かな空間でゆったりといただくここでのランチは格別です。
ここから10分ほど北上すると、MRTの駅に隣接する終着点、ブキティマ・ゲートに到着。
シンガポールでは日中に虫の声を聞くことがほとんどありませんが、『ボタニック・ガーデン』には、心地よい虫の音が響きます。都会のオアシスで心ゆくまで癒されに足を運んでみてください。
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『Singapore Botanic Gardens(シンガポール植物園)』
住所:1 Cluny Road Singapore 259569アクセス:タングリン・ゲートへはバス「Singapore Botanic Gardens」停留所から徒歩1分
開園時間:5:00~24:00(ナショナル・オーキッド・ガーデン8:30~19:00、ジェイコブ・バラス・チルドレンズガーデン8:00~19:00、ヒーリングガーデン5:00~19:30)
入園料:ナショナル・オーキッド・ガーデンのみ一般S$5
まるで宋朝時代にトリップ!? 湖の上に浮かぶ『Chinese Garden(チャイニーズ・ガーデン)』
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『Chinese Garden(チャイニーズ・ガーデン)』は、シンガポール西部のジュロン・レイク・ガーデンに造られた中華式庭園。台湾の建築家、ユエン・チェン・ユーが設計し、1975年に開園しました。園内には、華北王朝様式の中でも宋朝時代(960~1279年)の景観にイマジネーションを得た建物が並んでいます。
都心から外れているためか、平日は、近隣在住者と思しき、おばちゃんやおじいちゃんが散歩や体操をしながらのんびり過ごしている、穴場的なスポット。MRTチャイニーズ・ガーデン駅から、庭園までは一本道。門をくぐると、園の手前から頭の部分が見えていた七重の塔「パゴダ」が現れます。中は螺旋式階段になっていて、最上階まで上ることが可能です。
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パゴダの周りには明代の武将・鄭和や、清代の官僚・林則徐など、中国の英雄の像がずらり。
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彼らを左に見ながら歩道を進むと、ジュロン・レイクの上に浮かぶ2棟の三重の塔「ツイン・パゴダ」が現れます。中国のクラシカルな建物の背景にシンガポールのHDB(集合住宅)群が見える様子は、湖によって過去の世界と未来の世界が隔てられているかのようで、なんとも言えない不思議な心持ちにさせてくれるでしょう。
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盆栽庭園も同園の見どころの1つ。中国や台湾、日本、マレーシアなどから輸入した100鉢を超える盆栽が、蘇州スタイルの庭園に展示されています。スタッフが1つ1つ丁寧に管理していて、場合によってはおじいちゃん庭師がお気に入り盆栽の説明してくれることも。
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そのほか、魚群を模した彫像や、十二支の彫像とその年生まれの人の性格特徴を記したスペースなど、飽きることなく楽しむことができます。
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さらに『Chinese Garden』には、侘び寂びを感じさせるジャパニーズ・ガーデンが隣接。『Chinese Garden』から橋を渡った先に広がる、高温多湿な気候のもとで見る日本庭園も、また一興です。
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なお、庭園内には大きなトカゲが多数生息。うっかりよそ見をしているとすぐ足元にトカゲが、ということもままありますので、足元には十分気をつけてください。
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ちなみに園内には数カ所、USBポートがあるので、バッテリー残量の心配は不要です。
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Chinese Garden(チャイニーズ・ガーデン)
住所:1 Chinese Garden Road, Jurong Lake Gardens, Singapore 619795
アクセス:MRT「Chinese Garden」駅より徒歩3分開園時間:チャイニーズ・ガーデン5:30~23:00、ジャパニーズ・ガーデン5:30~19:00
入園料:無料
URL:https://www.nparks.gov.sg/gardens-parks-and-nature/parks-and-nature-reserves/jurong-lake-gardens
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