シンガポールを訪れた人から、よく質問を受けます。「お土産は何を買えばいいの?」。マーライオンの形のお菓子や、観光名所がプリントされた小物。それらはもちろん「ずばり、シンガポール!」を表しているのだけれど、なんだかそれだとちょっと物足りない。そんな方々へ、HereNowのキュレーターであり、『Bloesem(ブローセム)』のクリエイティブ担当であるZara Salahuddin(ザラ・サラフディン)さんに、ツウなお土産選びのポイントや、「いま、わたしがお土産にするならコレ!」を紹介いただきました。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
Zara(以下、ザラ)さんにセレクトしてもらったお土産リストには、これってどのあたりがシンガポールなの? と、疑問が湧くものも。それには、ちゃんと理由があります。
ザラ:「わたしがお土産として選ぶのは、いわゆる「語れるもの」とか「普通じゃないもの」。というのも、「これ、シンガポールのモノだよ!」って贈る相手に声高に伝える必要はないと思うんです。家に持ち帰って引き出しに入れたらすぐに忘れられてしまう、あるいは人によって好みが割れるような装飾的なモノではなく、彼らが日常生活で使ってくれるアイテムがいいですよね」
そこで彼女が今回のセレクトのキーワードとしたのが「ちょっぴり変わってるシンガポリアン」。ともすると奇妙とも紙一重な、シンガポール人の習慣が垣間見られる、ローカルデザイナーによるお土産たちなのです。
ザラ:「観光で来た人は、シンガポールのいろんな側面を見ると思います。なかには自国では親しみのない習慣もあるはず。だってほら、ポケットティッシュで屋台の席取りをするなんて、どこの国に行っても見ない光景じゃない?(笑)。そういった旅の話を家族や友達とシェアするのって、とっても楽しいですよね」
そう言って彼女がまず選んだのが、この2つ。
1.席取りにはもう困らない!? 「Chope Magnetic Keychain(チョープ・マグネティック・キーチェーン)」
シンガポールのお昼時。混雑するホーカー(屋台や店舗を集った屋外の複合施設)やフードコートに行くと、テーブルの上にポケットティッシュや首から下げるネームタグが置いてある、不思議な光景を目にします。これは、ランチを買いに並んでいる間に席が取られないようにするためのもの。
でも、ティッシュではアピール不足で席が取られてしまっていることもあるし、ネームタグを残すのは万が一、盗られて悪用されやしないか心もとない。そこで便利なのが、このキーチェーン。
「Chope」とは「Chop(刻む)」と「Seal(判)」から生まれた現地の造語で、意訳するなれば「席、確保」。文字が書かれたパーツとキーチェーンがマグネットでつながっており、文字パーツをテーブルに残しておく=席を予約した状態で列に並べるという画期的なアイテム。
ザラ:「ルックスがかわいいだけじゃなく、シンガポールの面白い文化が表されたキーチェーンなので、絶対に話のネタになりますよ!」
2.あったら便利! 「Kopi Bag Mug(コピ バッグ マグ)」
シンガポールでは、コーヒーのことを「コピ」、紅茶のことを「テ」と呼んでいます。ホーカーなどでコピやテを頼み、持ち帰りで、と伝えると、金魚すくいで使う袋のような、口がキュッと締まるビニール袋に入れられ、ストローつきで手渡されます(それがたとえ、ホットでも)。紐を手首にかければ、持ち運びに便利なのですが、困るのは、飲み物をどこかに置いておきたい時。袋なので、立てて置くことができません。
ザラ:「そんなときコピの袋ごと、このマグにいれてしまえばいいんです。簡単でしょう?(笑)。」
マグとしては珍しい、スリムな形状。一般的にマグから液体を直接飲む場合、飲み口が広すぎるとこぼれてしまいますが、Kopi Bag Mugは袋を入れてストローから飲むことが前提になっているためスリムでも大丈夫。陶器なので安定感も抜群です。
3. シンガポールの歴史の一部を身につける!? 「Georgette Chen Kids T-shirt(ジョージェット・チェン キッズ Tシャツ)」
外国人ではなかなか見つけることのできない粋なセレクションを提案してくれたザラさん。こういった面白いお土産探しにオススメのスポットを伺うと……。
ザラ:「1番のお薦めは『National Gallery Singapore(ナショナル ギャラリー シンガポール)』の中にある『GALLERY & Co.(ギャラリー アンド コー)』かな。ギフトに最適な小物が並ぶ素晴らしいショップですよ」
そのなかでも今、ザラさんがもっとも心をときめかせているのが、ここのキッズTシャツ。ジョージェット・チェンとは、リュウ・カンと並ぶシンガポールのアートシーンの開拓者。後期印象派の影響を受けた彼女の作品の美しさもさることながら、南洋美術専科学校(Nanyang Academy of Fine Art)で教鞭をとり、多くのローカルアーティストを育てたことで、国民から敬愛されている人物です。
ザラ:「ジョージェット・チェンは、1950年代に活躍した南洋アーティストの一人。彼女の功績を讃えるようなゴージャスなデザインですよね。シンガポールの歴史の一部を身につけられるアイテムです」
このイラストは1946年に彼女が描いた自画像が基になっていて、『National Gallery Singapore』の常設展コーナーには原作が展示されています。なお、Tシャツの背中にはジョージェットの後ろ姿が。原作はもちろん正面だけなので、この後ろ姿は、イラストレーターの遊び心によって描かれたもの。
「リトル・アーティスト・シリーズ」として知られるこのTシャツは、残念ながらキッズサイズのみの展開。お子さんがいるご家庭へのお土産にどうぞ。
4.ローカルエリアとローカルフードの名が連なる「LOVE SG Canvas Bag」
ザラ:他には、「『TANGS at Orchard(タングス アット オーチャード)』にもよく行きます。ここにもローカルデザイナーによる商品が置いてあるんです。いつ行ってもいいものが見つかるし、観光で来た友達をアテンドすることもありますよ」
『TANGS』でもお土産を選んでもらったところ、あがってきたのはこのトートバッグ。
ザラ:「トートバッグって、誰もが、どこへでも持って行けるもの。グロサリーへ買い物に行くんだっていいし、学校へ本を持って行くんだっていいし。よくお土産にマグネットをいただくことがあるのだけれど、トートバッグの方がマグネットより使用頻度が高いですよね」
黒いキャンバス地に白抜き文字で書かれているのは、シンガポールのエリア名とローカルフード名。エリア名に名を連ねるのは、オーチャード通りのようないわゆるメジャーな観光スポットではなく、チョンバルやデンプシー、ケオンサイクなど、「このエリアにはこんなお店があってね」と街の説明をしたくなるようなラインナップ。
また、読んでいるだけでお腹が空きそうな食べ物名には、チキンライスやロティプラタなど。食べ物の流れで、ザラさんはこんなことも話してくれました。
ザラ:「シンガポールの食べ物には、見た目の派手さはありません。ですが、いろんな国籍が混じり合ったメルティングポット(るつぼ)だという、この国の特性が料理から見て取れますよ」
そう、シンガポール料理といっても、チキンライスは中国南部発祥、ナシレマはマレー発祥など、中華系、マレー系、インド系とさまざまな国籍のベースを持った国民が暮らし、国を作り上げてきたのだと感じることができるのです。 昨今ではチキンライスや肉骨茶を提供するレストランが日本にも登場していますが、できれば本場の味を自宅で再現したい! と願う人のために、ザラさんが最後に自分用土産をピックアップしてくれました。
5.本場の味を自宅でも。「Recipe Plate - Nyonya Laksa」
ツルツルの米麺をスパイシーなココナッツミルクスープと合わせていただく、ラクサ。このシンガポールの伝統料理レシピが、わかりやすく1枚のプレートにまとめられています。
材料を集めるのも、作るのも、一見難しそうですが、日本のスーパーマーケットやグロサリーで集められる具材を使って、たったの3工程でできることに驚くはず。
ザラ:「シンガポール人は、たいがいが食いしん坊(笑)。もしあなたもそうなら、シンガポール必食レシピを持って帰ってくださいね」
レシピ皿は、ほかにチキンライスやチリクラブ、ホッケンミー、ナシレマなどもあります。プラスチック製ゆえ、スーツケースの中で割れる心配はなし。また軽量なので、全種類の大人買いも可能です。
いわゆるお土産コーナーに並ぶのとは全く異なるザラさんのお土産セレクト。少し懸念されるのは、限られた旅程でお店を何箇所も周りきることができるかどうか……。
ザラ:「シンガポールは小さな島ですし、公共交通機関が充実しているから、各スポットを回るのに、さほど時間はかかりませんよ。わたしの場合、stuck SHOPやGALLERY & Co.ほか、いろいろな会社のインスタグラムアカウントをフォローしていて、インスタストーリーにポストされる最新コレクションなどをチェックし、目星をつけています」
- プロフィール
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- Zara Salahuddin
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シンガポールのデザイン・スタジオ、Bloesemのクリエイティブ担当。Bloesemのブログにて、スタイリング、写真撮影、そして文章を通して、デザインや旅行に対する情熱を表現しています。エネルギーの源は、チョコレート。インスピレーション溢れる彼女のInstagramは必見です!
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