2000年代後半から火がついた台湾の若手写真家のアートシーン。この連載では、各回一人ずつ、今台湾で注目の写真家を紹介。写真作品はもちろん、今回の企画のために各々がスマートフォンで撮影してくれた一枚も掲載しているので、ともに楽しんでいただきたい。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
第3回:阮璽(ジュアンシー)
台湾の人気カメラマン阮義忠(ジュアンイーチョン)の一人息子であるジュアンシーが、どういった作品を撮るのかは興味深いものがある。小さい頃から写真が身近にあった彼は、父のモノクロ写真とは対照的に、「スマートフォン」のカメラを使って作品を撮り始めた。舞台は台湾や日本の街角。台湾では初となるスマートフォンによる写真集も出版している。正方形の比率は流行りのInstagramを連想させるし、スマートフォンで作品を撮ることにプロとしての姿勢を疑う目もあるかもしれない。しかし、技術の進歩によりスマートフォンのスペックは飛躍的に進化しており、ポケットから出してすぐ写真を撮れる利便性や、レンズの性能アップによって、写真のクオリティも格段にあがっている。いい写真に必要なのはカメラではなく、カメラマンの感性だということを彼は改めて証明しているのだ。
写真家である彼の父親は、息子の写真集に対してこうコメントしている。「阮璽は街行く人を撮影した。彼らの振り向いた様や後ろ姿は空間に独特の雰囲気をつくりだす物語性があり、まるでミュージックビデオのような映像や、小説となっている。人を笑わせる生き生きとしたパワーがあるし、心が暖かくなり、何度も繰り返し見たくなる」。
彼の写真は人や動物、風景の中から一番魅力的な瞬間を切り取っているのだ。時に豪華なパーティーのひと時を、時に通りすがりの人を、私達はよくスマートフォンで記録する。道具としてあまりに便利なこの機能は、使いすぎると生活の中で“写真を撮る意味”すら希薄にしてしまうかもしれない。阮璽はスマートフォンで見逃しそうな街の瞬間を記録し、人でも、動物でも、心温まるマジックが立ち現れたかのような、ユーモアのある現実世界を構築している。
Q1.携帯で撮った写真について教えてください。
阮璽:上海空港を出て、しばらく行った場所からこの風景を目撃しました。二人のバスの運転手さんは、バスの荷物置き場所に座って、足を組んで弁当を食べています。この心温まる日常の瞬間を撮らなくてはと思うのに、そこから遠い場所にいたので、一番ズームできる範囲で、ギリギリ撮ったのがこの一枚です。解像度が悪いけれど、雰囲気が伝わってよかったです。
Q2.写真とは何か、を一言で言うと?
阮璽:生活への深い考察やリアクション
Q3.台北でおすすめのスポットはどこですか?
阮璽:「空場」アートビレッジ。レジデンスのアーティストもいるし、ジャンルの違う作家さんもたくさん集まるので面白い。
- プロフィール
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- 阮璽 (ジュアンシー)
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1981年生まれ。写真業界の常識を覆すような発想で、2012年から携帯電話で写真作品を制作。2014年、写真展『台北市誕生130週年』や、「空場」アートビレッジ合同展示などの展示に出展。2015年、初の写真集『院喜.Happiness in a Courtyard』を出版。作品は「秋刀魚」「秘境」など、数多くの雑誌に紹介されている。
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