台湾に生きる気鋭写真家 第4回:Kris Kang

2000年代後半から火がついた台湾の若手写真家のアートシーン。この連載では、各回一人ずつ、今台湾で注目の写真家を紹介。写真作品はもちろん、今回の企画のために各々がスマートフォンで撮影してくれた一枚も掲載しているので、ともに楽しんでいただきたい。

※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。

第4回:Kris Kang

KRIS KANGは社会との関わりを絶ち、密かに活動しているカメラマンだ。商業カメラマンとして働く一方で、プライベートな時間を作品写真に捧げている。海に潜んだ鯨が久々に表面まで上昇して水を吹き出した時に虹が出るかのように、ビジネスとして撮られた写真の中にも、彼の感性が垣間見える。商業写真でありながら、自分らしさが表現しているのだ。まるでこの世に存在しないかのような独特な存在感が、彼の写真にはある。

彼にとって写真との出合いは偶然だった。フィルムで撮った写真が映画のように現像されることに驚き、アナログのカメラで日常を記録しようと思い立った。シャッターを押す回数が増えれば増えるほど、作品をつくるという意識が強まっていったという。

「BONSAI」シリーズは、「盆栽」の形をモノに例え、隠喩を用いて植物や人の姿の本質に迫っている。盆栽を見る角度によって人と物は連動する関係となり、お互いに依存しつつ、重なりあったり、離れたりする。

「写真を撮るとき、頭の中に常に好きなカンタービレが鳴り響いている」とKRIS。エレガントかつ敏感で、潔癖な作品をつくりたいという気持ちが強いのだろう。彼の作品の細部にまで凝らされた重厚な雰囲気は、すぐに崩壊してしまうような儚い印象があり、息を止めないと鑑賞できないくらいでもある。線香花火のように小さな美が揺れ、画面に向かって何か言おうとすると、暴力的な言葉が飛び出してしまう。そんな点に強く心が惹かれる。

Q1.携帯で撮った写真について教えてください。

Kris Kang:標本を作るのが趣味だという友達は、ある日、路上で拾った五色鳥の死体を標本にしました。失われた命と死の間にあるビジュアル的な巨大な力は、僕が普遍的に好きなテーマでもあります。友達に五色鳥の標本を手に持ってもらい、暫く立て続けに写真を撮りました。今後シリーズになるかもしれない写真です。

Q2.写真とは何か、を一言で言うと?

Kris Kang:写真は、成長過程の片付けです。

Q3.台北でおすすめのスポットはどこですか?

Kris Kang:台北駅近くのインドネシア、フィリピン、タイなどの東南アジア系のショップ。文化の隙間に新たな可能性を感じる。

プロフィール
Kris Kang
Kris Kang

仕事を続けながら、プライベートではカメラマン同士の交友があり、刺激を受けながら、自分でも写真を撮るようになった。2012年、カメラマンの小五郎とコラボし、『hide and seek』を出版し、台中勤美誠品書店にて写真を展示。2015年、「写真とは何か」と模索しながら撮り下ろしたという新作写真集『BONSAI』を発表。



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