岡山県津山市をご存知でしょうか?
県の北部に位置し、江戸時代には津山城の城下町として栄え、現在もその街並が大切に残されており、最近では若者たちによって新たなカルチャーも育まれています。
今回、台湾で活躍するモデル・王真琳(ワン・ヂェンリン ※通称「シンシン」)と一緒に津山を訪問。古くからあるもの、新しくできたもの、新旧双方の津山カルチャーをシンシンが体験していきます。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
PORT ART&DESIGN TSUYAMA
まず初めには向かったのは、市内東部の旧出雲街道に面する『PORT ART&DESIGN TSUYAMA(ポート アート&デザイン津山)』。ここは1920年(大正9年)に建てられた銀行をリノベーションして生まれたアートギャラリーです。
レンガ造りの門壁が囲む、神社仏閣風の木造建築の中へ進むと現れる、欅の一枚板の長いカウンターテーブル。見上げると杉や檜をつかった贅沢な装飾が施された天井。更に奥へ進むと中庭が広がり、そこを囲むように、レンガ造りの棟と石積で覆われた大きな金庫が現れます。
シンシン:98年の歴史がある銀行がそのまま残っているなんてビックリ。金庫の扉を開けてもらったときは、とても重たくて、ここにお金が保管されていたんだって知ったら、歴史を感じますね。
『旧妹尾銀行林田支店』。それがこの銀行のかつての名称。幾度か名前を変更しながら、銀行としての役割を終えたこの建物は、1978年からは津山洋学資料館として活用されていました。津山市指定重要文化財に指定された1992年以降は、それまで以上に大切に保存がなされたといいます。そして資料館の移転に伴い、2009年以降しばらくお休みしていたこの場所ですが、2018年10月に、岡山県北部でものづくりを続ける工芸作家の作品やデザインプロダクトの展示・販売、そしてアーティストの個展やワークショップなどイベントの開催ができるアートギャラリーとして新しくオープン。
『PORT ART&DESIGN TSUYAMA』の館長・飯綱洋平さんは、高校卒業後にイギリスへ留学、そしてフランスで数年間暮らしてきた人物。「パリにいた5年間のアート体験は色濃く自分に残っていて、いつか地元でもアートギャラリーを開きたいという気持ちになって。長い時間がかかりましたが、ここにオープンすることができました」と話します。
取材をさせていただいたのは10月6日のオープンより前のこと。スタッフ用のショップコートも届いたばかり。飯綱さんは「今回、岡山県南の児島でジーンズを主体にカジュアルウエアをつくるブランド『ジョンブル』さんにお願いしたんです。試しに着られてみますか?」と、せっかくの機会にと、シンシンも試着させてもらうことに。
施設の外にはコーヒースタンドが併設。マドレーヌやビスコッティといった、コーヒーのお供に軽食も用意しているとのこと。そんな飯綱さんらに見送られて、『PORT ART&DESIGN TSUYAMA』を後にしました。
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PORT ART&DESIGN TSUYAMA(ポート アート&デザイン津山)
住所: 〒708-0841 岡山県津山市川崎823
電話番号: 0868-20-1682
開館時間: 10:00~18:00
休館日: 毎週火曜日・祝祭日の次の平日・年末年始
メール: info@port-tsuyama.com
Webサイト: https://www.port-tsuyama.com/
Facebook: https://www.facebook.com/port.tsuyama/
Instagram: https://www.instagram.com/port.tsuyama/
コーヒースタンド福寿湯
『PORT ART&DESIGN TSUYAMA』の前を通る旧出雲街道沿いを西方面へ。しばらく歩くと見えてくる古い街並みが、「城東重要伝統的建造物群保存地区」です。このエリアには、なまこ壁や袖壁(そでかべ)、虫籠窓(むしこまど)など、江戸時代から昭和初期の商家の面影をそのまま残した建物が連なります。
シンシン:旧出雲街道――。こんなに長くて、整っている道は初めて目にします。台湾では長い道であれば人が沢山往来しているので、町並みの良さにまで眼がいかないけど、ここは街並みそのものが美しいですね。
そして、次の目的地である『コーヒースタンド福寿湯』に到着。暖簾をくぐって中に入ると、番台のようなカウンター、体重計、鏡、タイル貼りの壁面……。
「ここは元々銭湯だったんです。2015年5月に銭湯の屋号をそのまま残して、コーヒースタンドとしてオープンしました。内装はほぼ自分で手入れをしたのですが、銭湯だった部分は大事にしたいなと思って」と語る、店主の廣戸達哉さん。
『コーヒースタンド福寿湯』は、カウンターで注文をするスタイル。オススメは、津山の名物である「そずり肉」を使った「そずりバーガー」。全粒粉のバンズに、肉厚のパテ。ひとかぶりしてみると、少し歯ごたえのある食感。「そずり」とは、“そぐ”の津山の方言である“そずる”から由来して、牛肉の骨の周辺の肉を削り取ったものが「そずり肉」と呼ばれています。
ドリンクメニューには、コーヒーはもちろん、昔ながらのビンのジュース、そして銭湯の定番、コーヒー牛乳も。シンシンは、その中でミルクチョコレートをオーダーしました。
シンシン:台湾でも人気の日本のアートユニット・ツペラツペラ(tupera tupera)さんの絵本で『パンダ銭湯』という作品があります。私はその物語に出てくるパンダの姿がとてもかわいらしくて大好きで。笹の葉の牛乳をお風呂上がりに飲むんですけど、なんだか今の私もそんな気分。
「実は僕、この場所が銭湯だった頃のことを知らないんです」と言う廣戸さんは、この場所を訪れるじいちゃんばあちゃんの世代が、記憶としてある銭湯のことを話せるような場所であってほしいといいます。そんな想いもあり、元の銭湯のつくりを壊さずに、今のお店を作り上げたのだとか。
シンシン:日本の銭湯は、さくらももこさんの漫画「ちびまるこちゃん」でもよく目にしていました。昔の日本の人は、銭湯に入りに行くことで、いろいろな人と会話していたんですよね? そういう場所がこうやって続いていくのは、素敵なことですね。
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コーヒースタンド福寿湯
住所: 岡山県津山市勝間田町5
電話番号: ———
営業時間: 10:00~17:00
定休日: 月曜日
URL: https://www.instagram.com/fukujuyu.53/
はなうりカフェ
『コーヒースタンド福寿湯』より北へ向かうこと、約1㎞ほど。次に向かったのは、のどかな川沿いにある『はなうりカフェ』。
「右はお花屋さんで、左側がカフェなんです。こちらへどうぞ」とシンシンを案内してくれたのが、オーナーの藤原康介さん。
「2015年から花屋である“はなうり”を始めて、この場所は元々倉庫として使っていたんです。でもこれだけ沢山の花があるので、せっかくならカフェにして、そのお花を見てもらえる方がいいかなと思ってオープンしたんですよ」と藤原さんは言います。
店内には、色鮮やかな生花から、溢れんばかりの植物、天井から吊るされたドライフラワー、そしてアクセサリーなどのアイテムがびっしり。どこを切り取ってもフォトジェニックな店内に、シンシンも大喜び。
「最近カフェでは、ドライフラワーを扱った雑貨も販売しているんですよ」と藤原さん。店内に並ぶピアスやイヤリングなどのフラワーアクセサリーやハーバリウム(植物標本)まで、全て藤原さん自身が制作しているそう。
シンシン:台湾の女の子は、ここがすごく新鮮に感じると思います。色鮮やかな生花をドライフラワーにすると、その色鮮やかさはまた違う色合いがあって、とてもきれい。“古くなる”ことが、また違う新しさになるんですね。
そんな素敵な店内もさることながら、ここはあくまでカフェ。カフェメニューのオススメは、薄切りパンに極限まで具を挟んだ「わんぱくサンド」。半分ずつ違うサンドウィッチが選べる「ハーフ&ハーフ」も用意していて、そちらも人気なのだとか。
店内の隅々まで、藤原さんのセンスが光る『はなうりカフェ』。立ち寄った際には、本家である隣の花屋『はなうり』も是非覗いてみてください。
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ドライフラワーと雑貨とはなうりカフェ
住所: 岡山県津山市山北796-1
電話番号: 0868-35-0757
営業時間: 11:00~14:00(ランチタイムのみ) ※雑貨は花屋が開いてたら購入可能
定休日: 不定休
- プロフィール
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- 王 真琳 (シンシン)
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日本のカフェ文化と古着を愛する、台湾のミレニアル世代が今一番注目する台湾人モデル、女優。25歳よりモデル活動を始め、ファッションブランドのイメージキャラクターなどのモデル活動の他に、近年ではインデペンデント映画やインディーズミュージシャンのMVに出演するなど女優としても活動中。今後の予定に、莊景燊監督作品『強大的我』の公開を控える。
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