2019年には3000万人以上の訪日外客数を記録し、国内外から多くの観光客が訪れている東京。JRや私鉄、地下鉄の交通網が網のように張り巡らされているため、どこに行くにも便利な都市ですが、東京のローカルの「いま」を発見するためには、メインエリアや駅周辺から少し離れたスポットにも注目したいところ。
そこで今回は、モデルの青柳文子さんと一緒にミニバイクのレンタルサービス「HondaGO BIKE STAND」を使って東京の街を散策することに。普段とは違う東京の景色を感じながら、カルチャースポットを1日かけて巡りました。
※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。
東京のカルチャーを発信する『MUSTARD HOTEL SHIBUYA』
大規模な再開発が進む渋谷駅の新南口からほど近い、東急東横線の線路跡地に建てられた複合施設『渋谷ブリッジ』。
今回の旅の出発点はここ『渋谷ブリッジ』の1階から6階を占めるホテル『MUSTARD HOTEL SHIBUYA』です。
このホテルは宿泊だけでなく、渋谷の街を楽しむための場として利用してもらうため、さまざまなイベントを通して、アートやカルチャーを発信しています。
1階にはフロント、レストラン、コンセント付きの共用スペースがあり、2階から6階が全76室の客室フロア。
過去にはファッションブランドのPaul Stuartがワンフロアを貸し切って8人のアーティストとコラボレーション展示をしたり、1階のレストランでDJイベントを開催したりしたこともあるそう。
ホテルのロゴやグラフィックデザインを担当したのは、BEAMSやONE OK ROCKなどのグラフィックデザインを手掛けるデザイン事務所((STUDIO))。1Fフロント横には、ファッションブランド「SURROUND」とのコラボレーションTシャツなど、ホテルのオリジナルグッズも展示しています。
廊下や客室に過度な装飾はなく、アーティストが作品を描く前の白いキャンバスに見立てた真っ白な空間が。
青柳:白で統一された部屋は、明るく清潔感があって過ごしやすいです。廊下の調光も絶妙なバランスで、まるでSF映画の宇宙船内にいるかのよう。不思議な空間でした。
青柳:地方に行ったときは、その土地の自然や風土が感じられる旅館に宿泊することが多いのですが、都市に滞在するときは、こういった機能的なホテルが便利ですよね。駅から近くて、スタイリッシュで、その都市の最新のカルチャーにも触れられますから。
そんな『MUSTARD HOTEL SHIBUYA』の1階エントランスの一角に並ぶ、黃色の愛らしいミニバイク。ここが「HondaGO BIKE STAND」です。
用意されているバイクは、スクータータイプのタクト、ジャイロX、そしてクロスカブ110の計3台。ヘルメットのほか、グローブもレンタルできます。バイクを見るや、「私、バイク好きなんですよ」と青柳さん。
青柳:16歳で原付免許を取得して、高校生の頃はスーパーカブに乗っていました。当時は大分で暮らしていたのですが、坂の多い街だったので、交通手段として必要不可欠だったんです。
東京に来てモデルの仕事をはじめてからも「バイクに乗りたい!」と思い、クラシックな原付バイクを買って、毎日のように乗っていました。電車で行けるところもバイクに乗って出かけていましたね。
青柳:休日は映画館によく行くのですが、東京のミニシアターって、駅から少し離れたところにあるじゃないですか。そんなときはバイクがラク。帰り道にカフェやショップに寄り道できますし、そういう「自由」なところがバイクの魅力だと思います。
フロントでレンタルバイクの利用手続きを済ませたら準備は完了。軽量でスムーズな乗り心地が特徴のタクトをチョイスし、いざ、東京のカルチャースポットへ向かいます。
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MUSTARD HOTEL SHIBUYA
住所:東京都渋谷区東1-29-3
営業時間:24時間
定休日:なし
電話番号:03-6459-2842
最寄り駅:渋谷駅
URL:https://mustardhotel.com/shibuya/
コーヒーを飲みながらデザイン本を堪能できる書店『BOOK AND SONS』
『MUSTARD HOTEL SHIBUYA』を出発し、駒沢通りを南西へ。渋谷方面へ向かう車で渋滞する対向車線を横目に見ながら、スイスイとバイクを走らせます。
向かった先は渋谷から4駅ほど隣、学芸大学エリアにある一軒の書店。クルマではすれ違うことさえままならない細い道が入り組んだ住宅街の一角にたたずむ『BOOK AND SONS』です。
大きなガラスのドアを開くと、壁一面の本棚に書籍がぎっしりと並べられた、コンクリート打ちのモダンな空間が広がります。
扱っているのは、欧文、和文問わず、タイポグラフィを中心としたグラフィックデザインに関する書籍や写真集。オーナーがブックフェアなどで買い付けたデザイン関連の本も並びます。
青柳:20代の頃、『あお』というセルフプロデュースの雑誌をつくったことがあるんです。とにかく細かいところまでこだわってつくりたかったので、当時はデザインやフォントに関する本を集めて勉強していました。
ここのお店は書店としてはめずらしく、併設のスタンドで買ったコーヒーを飲みながら、店内を見て回ることもできます。
青柳さんが「これ、おもしろい」と手に取ったのは、くせ字収集家の元グラフィックデザイナー・井原奈津子さんが約30年にわたって集めた人それぞれの「くせ字」を解説する『美しい日本のくせ字』。
青柳:雑誌をつくっているころに、書体が違うだけで誌面の印象が変わることを実体験で学び、書体に魅力を感じるようになったんです。この本は、書体のなかでも手書きの文字について考察していて、有名無名の人たちのくせ字から、性格や感情を分析しているところがおもしろいんですよね。
イギリス人フォトグラファー、ポール・グラハムの写真集『mother』も青柳さんの目に留まったよう。
青柳:写っているのは撮影者のお母さんの寝姿のみ。静かな写真ですが、語りかけてくるものが多くて、ちょっと見入っちゃいました。こういうパーソナルな目線が如実に表れている写真って好きです。
併設のギャラリースペースでは、デザイン関連のイベントや写真展などが不定期で開催されています。本を探しに来たついでに、コーヒーを飲み、気軽にアートを楽しめる。そんな空間づくりが魅力の書店です。
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BOOK AND SONS
住所:東京都目黒区鷹番2-13-3 キャトル鷹番
営業時間:12:00~19:00
定休日:水曜
電話番号:03-6451-0845
最寄り駅:学芸大学駅
駐車スペース:目黒区立学芸大学駅西口第二駐輪場等
URL:https://bookandsons.com/
未来のお弁当屋さん?『TOKYO BENTO STAND』
ふたたび駒澤通りに出て渋谷方面へ。代官山をすぎたあたりの路地裏で、グレーとシルバーを基調としたシックな建物に出会いました。2019年8月にオープンしたお弁当屋『TOKYO BENTO STAND』です。
「代官山のはずれにこんなお店があったんですね……!」と青柳さん。
東京では、日々新しいお店が誕生していますが、電車や車では見逃してしまいがちな路地裏の小さなお店に出会えるのもバイクならでは。ヘルメットを脱いで店内に向かいます。
『TOKYO BENTO STAND』を手がけたのは、人気のドッグカフェ『Anea Café』や、サボテンブームの火付け役となった塊根植物ショップ『BOTANIZE』を展開するanea design inc.。
代表の横町さんによると「コンセプトはお弁当のセレクトショップ」。
もともとお弁当屋をやってみたかったそうですが、代官山はファッション関係者やクリエイターなど、トレンドに敏感な人たちが集まる場所。どこにでもある一般的なお弁当屋では意味がないと考えた末、着想したのがお弁当のセレクトショップだったそうです。
「お弁当屋」というと、レトロな雰囲気を想像しますが、『TOKYO BENTO STAND』にそうした雰囲気はありません。アルミやステンレス素材で統一された内外装は、従来のお弁当屋のイメージをあっけなく覆してくれます。「何のお店だろう?」と、道を歩く人が店内を覗き込むことも多いのだとか。
カウンター下にはハンガーに吊したお弁当のサンプルがディスプレイされていて、その下に置かれた値札をよく見てみると、使っているのはなんと洋服用のタグ。遊び心とセンスの良さが感じられます。
お弁当は8種類。定番の「のり弁当」や「鮭弁当」をはじめ、大きな穴子の天ぷらが特徴の「東京弁当」、月替わりでおかずが変更となる月替わりメニューなどがあります。昔ながらのメニューを現代版にアレンジしているため、定番メニューだけを用意しているといいます。
青柳さんは「鮭弁当」をオーダー。店内のカウンターでさっそくお弁当を広げます。
「温かくて美味しいお弁当を提供できるよう、おかずは『Anea Café 白金店』のキッチンで調理して、ご飯はここで炊いているんです。また、栄養バランスと見た目の彩りも意識して、どのお弁当も7種類以上のおかずが入っています」と横町さん。ランチ時には早々に売り切れてしまうこともあるそう。
青柳:妊娠・出産を経験してから、食品添加物を気にするようになりました。また、野菜を中心に身体に良い食材を心がけているので、キンピラゴボウや煮物など、おかずがたくさん入ったこのお弁当は毎日食べたいくらいです。
なお『TOKYO BENTO STAND』では、弁当箱やTシャツ、キーホルダーなどのオリジナルグッズも販売。ソーシャライジング(等身大の社会貢献)をコンセプトにした渋谷のホテル『TRUNK(HOTEL)』とのコラボレーションスウェットパーカーやティーボトルも並べられていました。
青柳:このキーホルダーも可愛いけど、カツオのおつまみとセットになった折詰も可愛い! よくマンガで酔っ払ったサラリーマンが家に持って帰っていますよね。お土産に最適だなと思いました。
帰り際、「今度は東京弁当にしようかな」と、早くも次回のメニューを検討している青柳さんが印象的でした。
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TOKYO BENTO STAND
住所:東京都渋谷区猿楽町2-3 コーポ天城
営業時間:11:30~18:00
定休日:土曜、日曜
電話番号:03-6452-5796
最寄り駅:代官山駅
駐車スペース:東1-24-8屋外駐車場等
URL:https://tokyobentostand.com/
世界的なカセットテープの専門店『waltz』
代官山エリアを後にした青柳さんは、桜のお花見スポットとして有名な目黒川を超えて中目黒エリアへ向かいます。
『TOKYO BENTO STAND』からバイクを走らせること約15分。中目黒駅からも、目黒駅からも少し離れた閑静な住宅街のなかにあるのが、世界的にも有名なカセットテープのコレクションを誇る音楽セレクトショップ『waltz』です。
中古レコード、VHSテープ、ラジカセ、国内外の雑誌のバックナンバーなども扱う『waltz』の特徴は、その豊富な品揃え。
特にカセットテープは新品・中古合わせて約5,000本のラインナップ。アーティストや音楽愛好家から、学生、外国人までさまざまな客層が訪れます。
青柳:私、古いクルマに乗っていて、カーオーディオにはカセットデッキがついています。だから車用に新しいカセットテープが欲しくなったらまず『waltz』さんに来ています。車でカセットを聞くと、特別感があるんですよ。
大きなガラス扉を開けて店内に入ると、棚やテーブルに平積みされ、ところせましと並んだカセットテープが目に飛び込んできました。
青柳:カラフルなカセットテープが並ぶ光景を見るとワクワクします。『waltz』さんは、新譜やおすすめのカセットテープにPOPがついていて、丁寧な説明が書かれているんです。この説明から、音楽を想像してカセットテープを選ぶのが楽しい。
『waltz』ではヴィンテージもののラジカセも販売していますが、最近品揃えを増やしたというのがカセットテープに対応したソニー製のポータブルカセットプレイヤー「ウォークマン」。1980年代から1990年代にかけて爆発的な人気を博しました。
青柳:小学生の頃、好きなアーティストの曲をカセットテープに録音して、ウォークマンで聴いていました。親の影響でフォークソングが好きで、はっぴいえんどの『12月の雨の日』を聴いていたのを覚えています。
青柳さんが目を留めたのは、アメリカのジャズファンクグループ・Blackbyrdsが1974年にリリースしたレコード『FLYING START』。早速店員さんに声をかけて試聴してみます。
青柳:カセットテープもレコードも、アナログの音は聴いていて心地いい。次はカセットだけでなく、レコード盤も集めてみたいです。
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waltz
住所:東京都目黒区中目黒4-15-5
営業時間:13:00~20:00
定休日:月曜
電話番号:03-5734-1017
最寄り駅:中目黒駅
駐車スペース:中目黒4丁目駐車場等
URL:https://waltz-store.co.jp/
本格的なライブも楽しめる多国籍料理レストラン『LIKE』
最後は、閑静な住宅街が広がる白金台エリアへ。この周辺は東京都庭園美術館や国立科学博物館附属自然教育園など、都心部ながらも緑豊かなエリアとしても知られています。
到着したのは、2019年3月にオープンした多国籍レストラン『LIKE』。おいしい料理やコーヒーをカジュアルに楽しめる、いま押さえておきたい名店です。
プロデュースするのは、新宿にあるミシュラン二つ星フレンチレストラン『キュイジーヌ ミッシェル・トロワグロ』を経て、渋谷の『Bistro Rojiura』、代々木八幡の『PATH』を開業してきた原太一シェフ。新しい分野にチャレンジし、料理人としての幅を広げたいと多国籍レストランを開業したそう。
「多国籍レストランのため、メニューも内装も、どこの国でもない雰囲気のお店にしたかった」と原シェフ。天井からは、チェコの職人がハンドメイドした直径70cmの照明ランプがつり下げられ、ガラス越しの中庭には大きなツリーハウスがディスプレイ。たしかに無国籍と言うべきユニークな内装です。
お客さんは30代から40代がメインとのことですが、散歩のついでにコーヒーを楽しみに来られる周囲の方もいるのだとか。店内はカジュアルな雰囲気なので、ひとりでも気軽に立ち寄れそうです。
青柳さんは、ピーナッツシュークリームとコーヒーをオーダー。ピーナッツクリームは、千葉のピーナッツ農家「Bocchi」さん豆を使用。自然なピーナッツの甘みが特徴です。コーヒーは、ノルウェー発祥の有名ロースター「Fuglen Tokyo」の豆を使用しています。
青柳:じつは、普通のコーヒーだとちょっと苦手でミルクやお砂糖を入れたりするのですが、丁寧に淹れられたおいしいコーヒーならそのまま飲める。スイーツもコーヒーもどんどん進んじゃいます。
『Bistro Rojiura』や『PATH』など、原さんのつくるお店のファンなのですが、スイーツのセンスも本当に大好きです。
このシュークリームも、濃厚なピーナッツクリームの甘さがほどよく、さっぱりした後味。シューの生地を割るととろとろと流れ出てくるクリームが最高。バイク移動で疲れた身体に、甘いクリームがほどよくしみます。
店内には本格的なライブステージがあり、ディナータイムには不定期でライブイベントも開催しているそう。取材で訪れた翌日は、ロンドンの新進気鋭アーティスト・Ethan P. Flynnによる弾き語りライブが予定されていました。
青柳:このお店には、2019年の秋頃に友達と来たことがあるんです。濃厚なネギソースのかかった「氷見放豚の水餃子」がとてもおいしかった。次はライブイベントのあるときに来て、心地いい音楽を聴きながら、おいしい料理を楽しみたいですね。
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LIKE
住所:東京都港区白金台4-6-44 3階
営業時間:11:30~23:00
定休日:月曜、第2・第4日曜
電話番号:03-5422-8183
最寄り駅:白金台駅
駐車スペース:渋谷区恵比寿3丁目37 ありがとう駐車場等
URL:http://likelike.jp/
「バイクは東京でもっとも効率のよい乗り物だと思います」
気がつけばあっという間に夕方。久しぶりに東京の街をバイクで巡った感想を青柳さんに伺いました。
青柳:子どもを出産してからはあまり乗れてなかったのですが、やっぱりバイクは楽しいですね。電車やバスと違って自由に街と触れ合えるのがいい。
新しいお店を発見したり、心地いい風景に出会えたり、バイクでの移動そのものが日々の息抜きになることにあらためて気がつきました。
仕事に家事に忙しい毎日ですが、ちょっとした移動時間が息抜きになれば、毎日がもっと充実しそう。そんなことも考えた1日になりました。
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HondaGO
「HondaGO」は、より多くの若者にバイクを楽しんでもらいたいという想いからはじまったプロジェクト。「移動手段」として見られているバイクを「世界観が広がる新しい体験ができる手段」として若者に気軽に楽しんでもらうため、旅先でのバイク乗車体験の機会を提供します。旅×バイクの新プロジェクト「HondaGO」https://www.honda.co.jp/HondaGO/
この記事で紹介している店舗には、バイク専用駐車スペースがない場合がございます。近隣の駐車場をご利用の際は、下記の「東京都バイク駐車場案内」をご覧くださいませ。なお駐車場の情報は、詳細や空き状況などが異なる場合がございます。事前にご確認のうえご利用ください。
日本二輪車普及安全協会 東京都のバイク駐車場案内
https://www.jmpsa.or.jp/society/parking/area13/
- プロフィール
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- 青柳文子 (あおやぎ ふみこ)
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ファッションモデル・女優。独創的な世界観とセンスで20代女性の支持を集める。雜誌の他、映画、テレビドラマ、バラエティー番組、アーティストMVと多方面で活躍中。企業商品プロデュースや執筆業などさまざまな分野で多彩な才能を発揮している。主な出演作品に『サッドティー』(2014年)、『知らない、ふたり』(2015年)など。
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