今年で結成20周年を迎える東京スカパラダイスオーケストラが8月8日、キャリア初の主催フェスとなる『トーキョースカジャンボリー』を、山中湖の特設スカフィールドにて行なうことが決定した。彼らはもちろん、日本を代表するスキンヘッド・レゲエ・バンドTHE 69YOBSTERSや、LAの重鎮SEE SPOTら豪華なメンツが勢揃いするこのフェスは、スカ・シーンの“今”を体感出来る絶好の機会となるだろう。DUBの鬼才デニス・ボーヴェルをエンジニアに迎えて制作された、通算14枚目の最新作『PARADISE BLUE』も好評な彼ら。結成当初からのオリジナル・メンバーの1人NARGO(Tp)に、フェスに対する意気込みや、スカパラの長くて短い道のり、アルバムのことを、たっぷりと語ってもらった。
ここに来れば「スカとは何か?」が見えてくるかもしれない。
―初の主催フェスというのは意外ですね。
NARGO:昔からやりたいとは思っていたんですよね。ヨーロッパ・ツアーに出ると、向こうで行なわれているスカのフェスティバルに出演することもあって。「こういうの、いいよね」ってみんなで話していました。
―海外ではスカのフェスって盛んなんですか?
NARGO:実はスカのシーンって世界中にあって、それが繋がっているんですよ。日本ではよほどマニアックな人にしか知られていないようなバンドでも、すごく良かったりして。例えば今回『トーキョースカジャンボリー』にも出てもらうNew York Ska-Jazz Ensembleなんか、ヨーロパ各国を毎年ガンガン回っていますから。
―ヨーロッパへ行くたびに顔を合わせるバンドとかもいるわけですか?
NARGO:そうですね。「久しぶり~!」なんて声を掛け合うこともありますし、わざわざ会いにきてくれたりするバンドもいますね。
―そういうゆるやかなシーンが、日本でも根付くと楽しそうですよね。
NARGO:日本でも、ボクらがデビューしてから何度かスカブームがあって、そのたびに良いバンドが沢山デビューしてきたじゃないですか。それに、まだデビューもしていないアマチュアのバンドの中にも、新しい切り口を持った良いバンドが結構いるんですよ。そういうバンドも全部まとめて紹介しながら、日本のスカ・シーンを盛り上げていきたいなあって。
―『トーキョースカジャンボリー』に来れば、世界中のスカ・バンドが一望出来る、みたいな。
NARGO:そうなんですよ。ボクらはボクらで「トーキョースカ」と銘打って自由にやっていますけど、他のバンドもそれぞれが自分たちなりのスカを追求しているので、色んな解釈があってホント面白いですよ。ここに来れば「スカとは何か?」が見えてくるかもしれない(笑)。今回はスカ・バンドがメインですが、次回からはもっとジャンルを広げても面白いんじゃないかなって思っていたりするんですよ。とにかく、できるだけ続けていけたらいいなっていうことはメンバー同士で話していますね。
ボクらは本当に色んなジャンルをミックスしているので、ある時期は「あんなのスカじゃねえ」と言われたこともあったんです(笑)。
―確かにスカパラは、作品を出すごとに「スカ」の定義をぶち壊しつつ、さらに広げて行っていますよね。
NARGO:海外で知り合ったミュージシャンに「スカっていうのは昔の音楽だとばかり思っていたけど、スカパラを聴いたときに“これはもっと広がっていくジャンルなんだな”ということがよく分かった」って言われたんですよ。そういうふうに感じてもらえるのはとても嬉しいですよね。
―スカパラの目指している音楽が、海外でもちゃんと伝わっているということですよね。
NARGO:ボクらは本当に色んなジャンルをミックスしているので、ある時期は「あんなのスカじゃねえ」と言われたこともあったんです(笑)。そのときは「くそ!」って悔しい思いもしたんですけど、めげずにずっと信念を貫き通してきて良かったですね。
地元の中学生とか自転車で来てもらったら最高ですね。
―今回、アマチュアのスカ・バンドにも募集をかけたそうですが、反応はどんな感じですか?
NARGO:かなり来ていますよ。聴き切れないくらい、全国からデモテープを送って頂いて、選ぶのに苦労しています(笑)。
―採用する場合の基準みたいなものはあります?
NARGO:ボクらが聴いて、「これは新しい!」とビックリさせられるようなものが良いですね。そのバンドなりのスカの解釈がちゃんと入っているバンドに出てもらいたいと思っています。
―他に『トーキョースカジャンボリー』の見どころは何かありますか?
NARGO:ボクらのマネージャーがちょうどスカパラを聴いて育った世代でして、ボクらと同じかそれ以上に今回のフェスに対して気合い入っているんですよね。「会場に東京タワーを建てるぞ!」って意気込んでいますよ(笑)。ミニチュアですけど、結構大きめだと思いますよ。
―それは是非、ナマで見てみたいですね!
NARGO:とにかく、出演者もお客さんも居心地の良いフェスにしたいと思いますね。例えばそうだな、出演者としてはまずご飯が美味いっていうのは基本ですね(笑)。あと、今回は中学生以下は入場無料にしたんですよ。地元の中学生とか自転車で来てもらったら最高ですね。
―家族でも来やすいですしね。
NARGO:そうそう。親子で楽しんでもらえたらいいなと思ったんですよ。
「グラストンベリー・フェスティバル」に出たときは大変でしたね。水もない、ご飯もない、何にもないみたいな状況で。
―今まで出演したフェスで、大変だったのはどこですか?
NARGO:イギリスの『グラストンベリー・フェスティバル』に出たときは大変でしたね。水もない、ご飯もない、何にもないみたいな状況で。ステージ・ドリンクもなくて、雨降ってグチャグチャだし死ぬかと思いましたよ。みんなで朝方、屋台のホットドッグを震えながら食べたのを憶えています(笑)。駐車場からステージまで、1時間くらい歩かされることもあるし‥‥。ほんと、海外だと何があるか予想がつかなくて、ハラハラしますね(笑)。
―スカパラは今年でデビュー20周年ですが、振り返ってみてどんな心境ですか?
NARGO: 10周年のときに何にもしなくて、気がついたら20周年経ってしまった、みたいな。そのくらいあっという間でしたね。早過ぎてヤバい(笑)。早いと言うのはそれだけ充実していて、ずっと走り続けてきた証拠なんでしょうけど、それにしても早過ぎるので、ちょっと怖いです。このままおじいちゃんになったらどうしようって(笑)。
―結成当時と今とでは、音楽に対する向き合い方って変わりました?
NARGO:うーん、ボクらはボクらのやり方でずっとやってきたし、それしか出来ないという気持ちは何も変わっていないです。最初はスカタライツのコピーから始めたんですけど、幾らやっても自分たちっぽくなっちゃうというか。その辺は器用なのか不器用なのか分からないですけど、最初から今のようなサウンドが確立していたんですよね。
―それがスカパラのオリジナリティということですよね。
NARGO:オリジナリティというよりは、クセみたいなものですかね。自分たちでは意識しないところで出ちゃう、みたいな。だから最初は周りから指摘されるまで、そのクセを自覚していなかったんですよ。それが海外に行くとハッキリ分かるんですよね。91年に初の海外公演でヨーロッパへ行ったんですけど、「やっぱりボクらって日本人だなー」ってすごく意識した。日本人がスカやっているのって、向こうじゃ凄く不思議に感じるみたいで。日本人がジャマイカの音楽やっていて、しかもそれが“まんま”じゃなくて“トーキョースカ”になっていましたからね。
―スカパラは結成当時から、“リンゴ追分”をカヴァーするなど歌謡曲を取り入れていましたしね。
NARGO:そうそう。「お茶の間にスカを」というテーマを掲げたり、自分たちを「歌謡スカ」と言ったりね。そういえば友達がイタリアでDJをしたとき、“太陽にほえろ!メインテーマ”なんかをかけると普通にレア・グルーヴとして盛り上がるらしいんですよ(笑)。スカパラって、そういうのに近いんじゃないですかね。
小学校の運動会で「大玉転がし」ってあったでしょう? ああいうでっかい玉を、みんなで転がしているような、そういうイメージ。
―これまで何度かメンバーチェンジもありましたが、それでも“核”となる部分は変わらずにきたわけですね。
NARGO:もちろん、1人メンバーが変わればバンド自体がガラッと変わるんですね。メンバー同士の関係性も変わってくるわけですから。で、そこで大きく変形して、再び転がり始めるんです。だけど核となるものというか、原動力は変わっていない。
―それは何でしょうか。
NARGO:最近すごく思うのは、小学校の運動会で「大玉転がし」ってあったでしょう? ああいうでっかい玉を、お客さんもスタッフも含めて、みんなで転がしているような、そういうイメージだと思うんですね。それがスカパラのパワーの源だと思うんですよ。つまりボクらにもどうにもならない部分が。勝手に転がって行っちゃうというか、スカパラ自体がコントロール出来ないところまで来ているような気がしますね。
―スカパラにとって、お客さんの占める割合はとても大きいと言うことですね。
NARGO:大きいですね。お客さんの顔を見て、そこでどういうサウンドが響くのかと言うのを常に考えながら作っていますから。ライヴをやり続けている中で、ボクらの音楽は生まれている。ライヴやってなかったら、絶対に続かないと思いますよ。
スカパラのメンバーって、どんなに辛い状況にあっても、それを笑い飛ばす、そういう強さがあって。
―正直、20年続くと思っていました?
NARGO:(笑)。それはこないだメンバーとも話したんだけど、「思っていた」っていう人もいますね。ボク自身は全く思っていなかったです(笑)。やっぱり、こんなに大人数のバンドが、ここまで続くなんていうのは普通は有り得ないことだし前例もないですよね。デビュー20周年なんて、考えたこともなかった。
―20年の活動の中では辛いこともあったと思うのですが、どうやって乗り越えて来たのでしょうか。
NARGO:そうですね、色々ありました。でも、どんなときでも「ここで止まっちゃったらどうすんの?」っていう気持ちでやってきましたね。メンバーを何人か失って、でもその意志もまるごと背負ってやってきたというか。ここでボクらが止まっちゃったら、その人たちにも何て言ったら良いのかっていう気持ちもあったし。とことん行かなきゃダメだろうって。それにスカパラのメンバーって、どんなに辛い状況にあっても、それを笑い飛ばす、そういう強さがあって。それは凄いなって、いつも見ていて思うんです。普通だったら立ち直れないような状況でも、ギャグにしてしまえるというか。ポジティヴって言ってしまうと簡単なんですけど、でも常にゲラゲラ笑っていられる強さって凄いなって思いますね。
例えばスキンズが「これはヤバイ、キてる!」って思うようなサウンド。
―最新作『PARADISE BLUE』は、前作と比べてよりバンドっぽいサウンドが印象的でした。
NARGO:そうですね。前作のアルバム『Perfect Future』はかなり作り込んで、かなり深いところまでスカパラのサウンドを掘り下げてみたんですけど、今回はまた“開く”方向に持っていきました。その辺の方向性は、いつも話し合っていますね。ボクらバリエーションで言ったらもの凄いものがあるので、それをどこに絞っていくか、どのくらい絞っていくかっていうのは確認し合っています。ボクらはスカのつもりで演っていても、全然スカじゃなくなっちゃったりすることか、ホントにありますから(笑)。
―スカパラにとって、スカの条件って何ですか?
NARGO:これは言葉で言うのは難しいんですが、最終的には「ニオイ」ですね。「裏打ち」とか決まり事もあったんですけど、最後はムードなんだという域に到達しました。要するに「ルードな匂い」というか、例えばスキンズが「これはヤバイ、キてる!」って思うようなサウンド。それをボクらは目指しているんですよね。
ルードな匂いがあれば、裏打ちがなくてもOK?
NARGO:その辺が難しいところですよね。やっぱり「裏打ち」は重要ですし。ただ、裏打ちがあってもルードじゃなきゃダメですよね。「爽やか過ぎるだろ、これじゃ」とか、そういう試行錯誤もありますよ。
アルバム最後に収録されているトロピカルなムードの“Sugar Fountain”はNARGOさん作曲ですよね。
NARGO:そうです。最初はもっとオーセンティックなスカだったんですけど、アレンジしていくうちにどんどん変わっていきました。
スカパラって、みんなでアレンジしていくうちに最初のデモからどんどん変わっていくらしいですね。
NARGO:そうなんですよ。その曲なんて、みんながこねくりこねくりで、完全にボクの手から離れちゃった(笑)。ボクはいつも鼻うた系の作曲法だから、みんなにアレンジしてもらいながら完成させていくことが多いですね。「みんな、この曲をどういうふうに解釈してくれるかな?」っていうのが楽しみな部分もありますし。
ファースト・テイクには強烈なダイナミクスがある。それが何故だか未だに分からない。謎ですよね。
―今回、デニス・ボーヴェルがミックスで参加していますね。
NARGO:そうそう。“カルナバル -CARNAVAL-”なんか、想像していた以上の素晴らしいものになりました。実際にミックスしている作業もみていたんですが、なんていうか、オモチャを与えられた子供みたいにコンソールをいじっているんですよ。踊りながらミックスしている。あの年齢にしてあのフレッシュさは見習わなきゃダメだなって思いましたね。
―デニスのミックス・パターンは、やるたびにヴァージョンが変わるから、保存しておくのが大変だったらしいですね。
NARGO:そうそう。アシスタント・エンジニアの方が気を利かせて、「これはいい!」と思ったら勝手にRECボタンを押していてくれたんですよ。デニス本人も録っていたとは思わなくて、驚いていましたね。それから何回か試してみたんですけど、最初のヴァージョンにはかなわなかった。
―スカパラのレコーディングでも、本番1発目のいわゆる「ファースト・テイクの魔法」というのがあるとか。
NARGO:そうそう。2テイク目、3テイク目と重ねていくと、どんどんダイナミクスがなくなっていくんですよ。ファースト・テイクには強烈なダイナミクスがある。それが何故だか未だに分からない。謎ですよね。たぶんファースト・テイクを演奏している時というのは、まだヘッドフォンが耳に馴染む前で、生音の感じが残っているんですよ。だけど、ヘッドフォンをして根を詰めて演奏していくうちに、段々生音の感じを忘れていっちゃうんじゃないかなって。力が入って音の隙間が埋まってきちゃうんじゃないかなと思っているんですけどね。
―最近は本番前のリハーサルの段階でOKにしてしまう、いわゆる「ゼロテイク」っていうのもあるそうですね。
NARGO:ありますよ(笑)。だからアシスタントの人も緊張してるんですよ。「ちょっとリハやってみようかー!」なんてボクらが言ってるのを、そっと録ってる。「今の演奏は結構良かったけど、まさか録ってないよね?」「いや、録りました」みたいな(笑)。
―素晴らしい連係プレーですね。
NARGO:もう長いチームなので、そういう阿吽の呼吸でのやり取りはありますね。
―では最後に、デビュー20周年を迎えたスカパラの今後の展望をお聞かせ下さい。
NARGO:そうですね、基本的には変わらず進んで行くんですけど、これからはこういうフェスを主催しつつ、太いシーンを作っていきたいですね。スカパラはスカという大きなシーンの中の1つなんだということを、みんなに分かってもらえたらもっともっと面白くなるんじゃないかなと思っています。
- イベント情報
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- 東京スカパラダイスオーケストラ、
デビュー20周年にして初の主催フェス『トーキョースカジャンボリー』開催! -
2009年8月8日(土)OPEN 11:00 / START 13:00 / END 19:00(予定)
会場:山中湖・野外特設スカフィールド (山中湖交流プラザ きらら内)
※雨天決行・荒天中止出演:
東京スカパラダイスオーケストラ
THE 69YOBSTERS
KING NABE & THE VIKINGS
SEE SPOT
NewYork Ska-Jazz Ensemble
and more!!料金:Sゾーン6,800円 Kゾーン6,800円 Aゾーン6,800円(税込・整理番号付)
※年齢制限中学生以下無料(入場時に学生証必要、小学生以下は保護者同伴)
- 東京スカパラダイスオーケストラ、
- プロフィール
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- 東京スカパラダイスオーケストラ
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1989年、黄色いアナログ『TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA』をインディーズでリリース。翌1990年、シングル『MONSTER ROCK』、アルバム『スカパラ登場』でメジャーデビュー。以降、ルーツのスカをベースに、ジャンルにとらわれない幅広い音楽性、すなわちトーキョースカ”で世界屈指のライヴバンドとしての信頼を勝ち得ていく。 1991年には日本武道館に10,000人以上を動員。以降も大規模な会場でのライヴとオーディエンスに近いライブハウスでのパフォーマンスを途切れることなく展開。オリジナルアルバム13枚、多数の海外公演を含むライヴパフォーマンスは1,500本を超える。今年、デビュー20周年を迎え、8月8日には、初となる主催フェス『トーキョースカジャンボリー』を開催。秋には、3年ぶりとなるシングルを発売し、9月28日よりNHKホールを皮切りに全国TOURがスタート。
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