Myspaceを主な活動の場としている「さよならポニーテール」という謎の音楽グループがいる。手書きイラストによる女の子キャラ3人組という、何か裏がありそうな匂いのするグループなのだが、そんなことはどうでも良くなってしまうくらい、胸をキュンと締めつける素晴らしい音楽を聴かせてくれる。音楽以外にも、PVやイラスト、そして何よりもこのグループの世界観、全てにおいて素人とは思えないクオリティーの高さ。まだ音源もリリースしていなければ、ライブすら行っていないこの「さよポニ」って何者なのか。好奇心をかき立てられ、CINRA主催の音楽イベントにお誘いしてみたのだけれど、これもしっかりはぐらかしてくる。こうなってはもう、好奇心は収まらない! せめて「さよポニ」って何なのか教えて欲しい。その熱意が伝わったのかは今でも分からないが、何とか取材に応じてもらうことはできたのだった。
(インタビュー・テキスト:柏井万作)
「さよポニ」は音楽というより、音楽を中心とした「物語」
―とても謎な設定だし、世界観やルールも徹底してる感じがするんですが、実際にはどんなメンバー構成で、どのように曲作りなどの活動をしているんですか?
みぃな:わたしは、今は基本的には歌を歌ってるということで「さよポニ」の中心にいるイメージかもしれないけど、他のふたりも楽器も弾くし、歌も歌うし、今後はわたし以外の他のふたりのボーカルの曲もどんどん披露しようと思ってるんで、あくまでも「さよポニ」の一員っていう感じの立場ですね。それに、ゆりたんやクロネコ以外にもまだ登場していないメンバーもいるんで、そういう意味では仲間というかチームっぽいのかなって。
ゆりたん:そうだね。わたしはイラストを描いたり、ツイッターでつぶやくことで、「さよポニ」がやりたい世界観をわかりやすく伝えるっていう意味では一見フロントマンっぽいけど(笑)、でも音楽の部分では一切、関わってないっていう(笑)。だから「神さま」という名前の役職をもらってます。でも、曲が仕上がってくるのとか、ホントに楽しみだし、バンドのメンバーの一員みたいな感覚で参加できてるのは純粋に楽しい。
クロネコ:「さよポニ」の音楽や活動などをアウトプットするのには「ゆりたん」の妄想フィルターを通さないといけないっていうのが「さよポニワールド」のひとつのルールなんだけど、そういうルールとか設定だけは、最初にかなり決めてるんだニャ〜。
上段:左から、みぃな、なっちゃん、あゆみん
下段:左から、ゆりたん、クロネコ、324P
―なるほど、ゆりたんは本当に「神さま」なんですね。
みぃな:そう。だから分かりやすく言うと、今はまだ、ゆりたんの妄想の世界の越しで活動してる感じかなぁ。
クロネコ:「さよポニ」は音楽というよりは音楽を中心とした「物語」なんだニャ〜。だから「さよポニ」の音楽だけを純粋に楽しむ人もいていいと思うし、もっとその先にある設定や物語、ネタなんかを楽しめば数倍面白くなると思う。
(クロネコさんは)ドジキャラだから、ゆりたんに怒られてばっかりで、そのうち消されるかも(笑)。
―それで、クロネコさんはどういう立ち位置なんですか?
クロネコ:おいら? この喋り方からして一番メンドクさい設定キャラだよね。そもそも人間じゃねーし。プロデューサーっていうか、影の黒幕っぽい存在なんだけど、ネコだから親しみやすいみたいな感じかニャ〜。
みぃな: “思い出がカナしくなる前に”のPVを撮ってたら、クロネコさんが周りをうろうろしてて、そのまま離れなくなっちゃったの。でも、ドジキャラだから、ゆりたんに怒られてばっかりで、そのうち消されるかも(笑)。
クロネコ:そういう設定らしい(笑)。でも、おいらは今の所、唯一の「さよポニワールド」の語りべの立場だから責任は重大だニャ〜。
みぃな:そういう意味では、クロネコさんも「さよポニ」っていう物語の大切な登場人物だから、今こうして一緒に取材を受けてるんだよね。
クロネコ:そうだニャ〜。
設定がイラストなのは、その方が曲のコンセプトや世界観が伝わりやすいっていうだけ。
―音楽や「さよポニワールド」の世界観のクオリティが素人とは思えないんですね単刀直入に訊きますが、背後で著名なひとが色々と関わってるんじゃないですか?
クロネコ:みぃなはもちろん、ゆりたんも、みんな普通の女のコだニャ〜。
みぃな:基本は、みんなで試行錯誤しながら作ってるんで著名な人はひとりもいないし、今はほんとに自主制作みたいな感じですね。曲をマイスペースにUPするまでは、こんなに沢山の人が聴いてくれるなんて全然思ってなかったし。
ゆりたん:うん、他のメンバーも含めて、みんな個々で音楽やってるけど著名な人ではないですよ。設定がイラストなのは、その方が曲のコンセプトや世界観が伝わりやすいっていうだけで。
クロネコ:あと、チームっていうかサークルみたいな感じだから、普通のアーティストとかバンドの方法論にとらわれる必要もないのかなっていうのもあって。音楽を伝える為の方法論自体が新しい、っていうのを目指してるからニャ〜。
ゆりたん:でも、これだけ謎だらけなのに、最近は大人の人がたくさん接触してきて毎日大変。
みぃな:マイスペースのメールアドレスにメジャーデビューのオファーが、沢山きてるんでしょ?
クロネコ:お〜い、その話は、あんまりしないように〜。
―そうなんですね。今後どうなるのか楽しみですね。ではもうひとつ、そもそもこの取材はぼくがさよポニにイベント出演のオファーをしたところから始まったわけですが、ライブはやらないんでしょうか?
みぃな:う〜ん、ライブはやったことないから…。
クロネコ:でも、いつかやるかもニャ〜。その時は3人じゃなくて、もっといっぱいメンバーがいるかもしれないし、でも、いわゆる普通のライブはやらないと思うニャ〜。
ゆりたん:こらっ〜、あんまりクロネコが勝手に決めるなっ。
クロネコ:はい…。
―そうなんですか。ライブも早く観てみたいですね。じゃあ、CDもまだ出さないんですか?
みぃな:この前ゆりたんがツイートしたんだけど、秋に出すはずだった自主制作盤はちょっと延期することになったんです。このチームでいい曲がどんどん出来てるので、それも追加でレコーディングしてるの。悔いのないように今あるいい曲はぜんぶ入れてしまおうと思って。
ゆりたん:だから、みんな、大急ぎでリハやってるみたい。わたしは曲が出来上がるのを待って、追加のレコーディングが終わったらちゃんとリリースのアナウンスをしようと思ってます。
ようやく頑張っていこうっていう気持ちが強くなってきたかな。
―そもそも、音楽に想いを乗せて歌うようになったきっかけは?
みぃな:きっかけというか、たまたまこうなったっていう感じですね。クロネコが言うには、だいたいの物語の主人公は、自分の意志とは別に、勝手に何かに巻き込まれていくっていうのがセオリーらしいんですが、ホントにそんな感じですね。でも、まだまだ上手く歌えないけど、ゆりたんやクロネコや仲間たちのお陰もあって沢山の人が聴いてくれてるみたいなので、ようやく頑張っていこうっていう気持ちが強くなってきたかな。
クロネコ:ゆりたんはイラストは描けるんだけど、音痴だからニャ〜(笑)。
ゆりたん:こらっ〜! 消すよっ!
みぃな:クロネコ、ホントに消されるよ(笑)。最初は歌うの恥ずかしーって思ったけど、歌うって気持ちいいなって最近思うようになってきた。普段は言えないようなことも歌にすると言えるし、想いを届けることができるし。
―どんな音楽を聴いてきたの? 普段聴いてる音楽は?
みぃな:う〜ん。あんまり詳しくないから。クロネコとか友達とかに教えてもらってかなぁ〜。
クロネコ:おいらは音楽すげー好きだニャ〜。ゆりたんは漫画とかアニメが好きだし、みぃなたち3人も割となんでも好きだよね?
みぃな:う〜ん。3人で真面目に音楽の話とかしたことないからな…。でも、わたし最近は、どんどん色んな音楽を吸収してる感じかな。
―好きな映画や小説や漫画は?
クロネコ:おいらや、これ以降に出てくる登場人物は、みんな凄い映画や漫画、小説が好きな人が多いよ。「さよポニ」はどっちかというと音楽だけじゃなくて、映画や小説、ラノベ、漫画、ゲームとかに距離が近いから。というか、「さよポニ」はそれらの要素が全て詰まってるんだニャ〜。
みぃな:わたしは、アニメとか漫画は普通かな、あんまり他のカルチャーとかに影響を受けたりとかは今のところないかなぁ。ようやく最近ちょっとマニアックなものとかも面白いと思えるようになってきたくらいの感じで。
ゆりたん:わたしは、普通に漫画もアニメも凄い好き。最近は、大好きな漫画『それ街』のアニメが始まってとっても嬉しいな。
ゆりたんは妄想が多いよね(笑)。リアルな恋愛をしてるの見た事ないニャ〜。
―どういうことを歌っていくアーティストでありたい?
みぃな:恋したり、笑ったり、泣いたり、正直な心を歌える人になりたいな。特に頑張ってる人には「さよポニ」がいるよって言ってあげて勇気づけてあげたい。みぃいながついてるぞって。
クロネコ:ニャ〜(泣)。
―なるほど。普段は何して遊んでいるの?
みぃな:う〜ん。普通におしゃべりしたり、買い物したり。このあいだまで恋で胸がいっぱいだったんだけど…。
クロネコ:この前、おいらのウチで徹夜で恋バナしたニャ〜。このリアルな恋愛トークのせつない感じが「さよポニ」の原動力になってるんだー、って感じたニャ〜。
―そうそう失恋の歌が多いみたいですが、終わってしまった恋のあと、新しい恋ははじまったんですか?
みぃな:わたしは失恋することも多いから…(泣)。でも、他のふたりもそうだけど常に恋をしてると思うよ。
クロネコ:ゆりたんは妄想が多いよね(笑)リアルな恋愛をしてるの見た事ないニャ〜。
ゆりたん:……。
みぃな:…確実にクロネコさん消されると思う(笑)。
クロネコ:ひぇ〜、ゆりたんが怖い目で睨んでる…。
―友人や周囲の反応は?
みぃな:う〜ん、でもまわりの友人はみぃなが「さよポニ」やってるの知らないから。でもこの間、仲のいい友達から「さよならポニーテールっていうバンドいいよ」ってメールで勧められたの(笑)。まだまだ、物語の設定上は「マイスペース編」っていう狭いコミュニティの中の出来事なのに、こんなにたくさんの人に聴いてもらえてびっくりっていうのはありますね。
ゆりたん:私が、一番ダイレクトに反応を貰ってる立場ですけど、ツイッターにも凄いいろんな人達から嬉しい言葉をももらえて幸せだなって。
クロネコ:でも、まだまだ、物語は最初の数ページだからな。そもそもレベル3じゃラスボスは倒せないニャ〜。
みぃな:うん。もっと頑張る。で、ラスボスって何?
クロネコ:最後の敵だニャ〜。
ゆりたん:そう、最後の敵を倒すその日までは、頑張ろう〜!
―では、最後に今年のクリスマスは誰と過ごす?
みぃな:秘密♡
クロネコ:どうせひとりのくせに〜。
みぃな:ひどぉい〜(怒)。ゆりたんに消されろ〜!
ゆりたん:……。
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- さよならポニーテール
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みぃな、なっちゃん、あゆみんの女の子3人組と、その仲間達が繰り広げる音楽を中心としたグループ。その実体や編成は謎に包まれていて、いくつかのパラレルワールドが同時に進行していく。あらゆるカルチャーを自在に横断する、テン年代における新しいスタイルの「音楽」の在り方(なのかも)!
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