大人じゃない気持ちで楽しむ LAMAインタビュー

90年代後期を出自とする同世代バンド、スーパーカーとナンバーガール。そのメンバーだったフルカワミキとナカコー、田渕ひさ子に加え、エレクトロニック・ミュージック・シーンにおける若き才能、agraphこと牛尾憲輔が結成した新バンド、LAMA。今年4月に渋谷WWWで行った初ライブに続き、8月リリースのデビューシングル『Spell』において、彼らが放ったポップ・センスは時代や世代、ジャンルを軽やかに超える。そして、4人がこれまで重ねてきたキャリアや経験はそれぞれにありながらも、真っ新な紙に絵を描くような、そんなサウンドとリリックのフレッシュネスは聴く者をも明るく照らし出すかのようだ。その明度を増しているニューシングル『Cupid / Fantasy』を通じ、その実体が明らかになりつつあるLAMAというバンドについて、4人が和やかに語ります。

LAMAはキャリアのある人達が組んだ大人のバンドというより、とってもフレッシュな、大人じゃない気持ちでやってるバンドですね(田渕)

―8月リリースの1stシングル『Spell』リリース前の時点では、スタッフから「このバンドはホントに存在してるのか? って思われてる節があるから、ちゃんとやってくださいね」って言われたそうですね(笑)。フレッシュな顔ぶれの4人のその後はいかがだったんでしょうか?

フルカワ:仲良く元気にやってますよ。

牛尾:おちこんだりんだりもしたけれど(笑)。

―????

牛尾:「おちこんだりもしたけれど、私はげんきです。」っていうのは糸井重里さんが考えた『魔女の宅急便』のキャッチコピーですよ(笑)。

―読者には伝わりにくいんですけど(笑)、そういう冗談が出てくることからもバンド内の雰囲気は良好、と。

ナカコー:そうですね。8月、9月はそんな感じでずっとレコーディングに入ってたんですけど、会えば会うほど、メンバーの人となりが分かるから、「あ、なんとなくつかんできた」って感じというか。

フルカワ:そう。『Spell』がリリースされた段階ですでにアルバムに向けた流れの渦中にいたし、LAMAとしてのホントの実感は今後アルバムを出して、ライブで表に出ていった時により感じるんじゃないかと思うんですけどね。

LAMA
LAMA

―LAMAってバンドは、初めて一緒に音を鳴らし始めた4人が、生楽器とエレクトロニクスを交えながら、ポップにも、ロックにも、ダンスミュージックにもなり得る表現の可能性をフレッシュに響かせる、そんなグループですよね。前作シングル『Spell』はそのポップな要素が凝縮されてましたよね?

フルカワ:純粋に楽しい現場がもっと欲しいと思っていたし、気軽なスタンスで音楽……旋律だったり、素材自体なんかを楽しみたいんですよ。暗いニュースが多い今だからこそ、そういう音楽の根本的な部分を楽しめる場所を確保したくて、このLAMAを始めましたからね。

田渕:キャリアのある人達が組んだ大人のバンドというより、とってもフレッシュな、大人じゃない気持ちでやってるバンド。初めて音を出し合う人たちの集まりというか、今までのキャリアをネチネチ出すんじゃなく、一からやるつもりで取り組んでいますし。

牛尾:僕にとっては単純にやったことがないことだから、LAMAをやったら面白いだろうなって。それに尽きるんですよね。ダンスミュージックって、BPMは120から130なのに対して、『Spell』のBPMは147なんですけど、そのテンポって、ダンスミュージックにはほとんど存在しないんですよ。だから、バンドにとっては当たり前のテンポでも、僕にとっては毎回挑戦なんですね。そういうところがすごい面白くて。あと、僕はこれまでスーパーカー、ナンバーガールを聴いてこなかったし、もちろん、偉大なバンドであることは知ってるんですけど、そのことに気付かないふりをしつつ(笑)。普通に年上の先輩って感じ、部活っぽいというか、サークルっぽくもあるので、スタジオに部室っぽい感じで入っていくスタンスなんですよ。

ナカコー:そういう意味で、前作の『Spell』にはそれぞれ異なる個性を持った4人のストレートな部分を凝縮したし、明るいし、複雑なコード進行は使っていないので、誰でも口ずさめて、誰でも弾ける、慣れ親しんだコード進行、慣れ親しんだ曲だったというか。それから、LAMAの制作スタイルは、どんなものに対しても臨機応変にアクセスするやり方だからこそ、『Spell』みたいに誰もがアクセスしやすい懐の広い曲は生まれやすいと思うんですよ。

2/3ページ:"Cupid"は自分が忘れそうな爽やかな感覚を思い起こしながら(笑)、そういう風景が浮かべばいいなって思って書きました(フルカワ)

"Cupid"は自分が忘れそうな爽やかな感覚を思い起こしながら(笑)、そういう風景が浮かべばいいなって思って書きました(フルカワ)

―そんな1stシングル『Spell』を踏まえて、新たに完成したセカンド・シングル『Cupid / Fantasy』も4人の最大公約数を導き出したポップチューンですよね。

ナカコー:"Cupid"も"Spell"と同じく、LAMAの最初期段階に作った曲、まだバンドをスタートさせたばかりだったから、曲を作りながら、メンバー間のチューニングをしあったものなんですよ。付け加えると、シングル曲っていうのはLAMAにとって、メンバー間の最大公約数を導き出したものだし、作るに当たっては、普通にいい曲を作るつもりで自然体で臨みました。

フルカワ:あと、"Cupid"は最初のライブでも演奏したんです。トーンは明るめで、自分のなかではしばらく作っていなかったシンプルでストレートな曲なんですよね。

フルカワミキ
フルカワミキ

田渕:LAMAには色んなタイプの曲があるんですけど、私にとってこの曲は、構成の組み立て方やストレートな曲調っていう意味でブッチャーズやトドルで普段やっていることに一番近い気がしますね。

―そして、『Spell』以上にミキちゃんとナカコーのボーカルが活かされています。

田渕:2人のボーカルが交互に出てくる感じですもんね。

―そういう意味で、複数のボーカリストがいるLAMAの強みが凝縮されているというか。

ナカコー:そう。それは曲を作る時に意図したことではありますね。

牛尾:しめしめ(笑)。

―(笑)。そのポイントに「お!」と思ったら、LAMAの術中にハマっていることになると。そして、牛尾くんの組み立てたリズムは生っぽい、ライブ的な臨場感のあるものになっているところも耳新しいです。

牛尾:あざっす! 僕がagraphでトラックを作る時は顕微鏡で見ているような作業だったりするので、こういうシンプルなドラムパターンは「もっと作り込まなくていいのかな」って不安を感じたりもしたんですけど、作り込んだものが必ずしもいいものであるとは限らないし、この曲に関しては、結果的にこれで良かったんだと思ってますね。リズムはそれこそ何パターンかあって、もっと生ドラムっぽい質感のものも試してみましたし、最終的には打ち込み然としたものと生ドラムっぽいものの、ちょうど中間くらいに落ち着いたんです。

LAMA(牛尾憲輔はドイツに滞在中だったため、回線を繋いだ「リアル二次元中継」でライブに参加した)
LAMA(牛尾憲輔はドイツに滞在中だったため、回線を繋いだ「リアル二次元中継」でライブに参加した)

―そして、歌詞に関してはメンバー間でやり取りして作ってるということですけど、前作の『Spell』しかり、今回もそうですけど、LAMAの歌詞は明るさや輝きが描かれていますよね。

ナカコー
ナカコー

ナカコー:"Cupid"は前半部分を自分が書いて、後半部分をミキちゃんが書いたんですけど、バンドが始まった初々しさに触発されて前半部分を書いた後……

フルカワ:途中で私に投げられたっていう。歌詞を途中で投げられるってことはそうそうあることじゃないですから、「ええっ! ここで?」って思いつつ(笑)。


―そういうフレキシブルなやり取りがLAMAの良さでもあり、言い方を変えれば、無茶ぶりっていう(笑)。

フルカワ:ホント無茶ぶりって感じだったんですけど、自分が忘れそうな爽やかな感覚を思い起こしながら(笑)、そういう風景が浮かべばいいなって思って書きました。

ナカコー:爽やかっていうか、このフレッシュな歌詞っていうのは、ここ最近自分が書いてきたものとはまた違うんですけど、LAMAが自分にとってはフレッシュな場なので、そんななか出てきた自然な言葉なんですよね。

3/3ページ:可能性の広がりと着地点を探っていったんですけど、作っている自分たちにとってもワクワクするような作業だったんですよ(ナカコー)

可能性の広がりと着地点を探っていったんですけど、作っている自分たちにとってもワクワクするような作業だったんですよ(ナカコー)

―そして、もう1曲の"Fantasy"にフィーチャーされているストリングスやピアノは、バンドという枠組みに収まらないLAMAの可能性を象徴しています。

ナカコー:この曲は、最初に牛尾くんのピアノフレーズがあって、そこから可能性の広がりと着地点を探っていったんですけど、作っている自分たちにとってもワクワクするような作業だったんですよね。

牛尾:そう。僕が作ったピアノとリズムトラックを投げて、ナカコーさんとミキちゃんがそこに歌メロを乗せて返してくれたんですけど、その化学反応がポジティブな意味で面白かった。

田渕:普段の私はライブを前提に曲作りをするので、この曲のようにエレキではなく、アコギで組み立てるのは珍しいというか、そういう色んな可能性を考えながら出来るのがLAMAの良さでもあるというか。

田渕ひさ子
田渕ひさ子

ナカコー:そして、牛尾くんのアイディアからこの曲は始まっているので、曲のまとめに関しては、牛尾くんを中心に、みんなで話し合いながらやりとりして、着地点を探る旅に入っていったっていう。

牛尾:長く、険しい、ね(笑)。いや、冗談で言ってるんじゃないんですよ。実際に相当長く続きましたからね。

ナカコー:まぁ、その試行錯誤がどういうことなのかはシングル・バージョンとアルバム・バージョンを聴けば、よく分かってもらえると思いますよ。

―歌詞に関しては、"Fantasy"というタイトルでありつつ、何かを探し求めている心境が歌われていますよね。

フルカワ:タイアップのアニメ『UN-GO』が探偵を主人公に推理していくストーリーで、しかも、あからさまな探偵ものっていうよりは、謎を解いていく人たちが一癖も二癖もある感じなので、それを自分なりに変換しつつ、あとは歌いやすさとか(笑)、そういうことを含めて書いていったんです。

―そして、今回のアートワークはROVOほかを手がける山田雄介さんが可愛らしいぬいぐるみを用いたジャケットを作られていますよね。

フルカワ:スタッフとの打ち合わせで「今回、ちょっとぬいぐるみをモチーフに使ってみるのはどう?」っていう話になって、「そういえば、お友達のイラストレーター、岩本摩耶ちゃんがぬいぐるみを作ってたな」ってことを思い出して。そうしたら、デザイナーの雄介くんからも同じタイミングで摩耶ちゃんの名前が挙がったので、「なんだ、身近にいい人がいたじゃん!」ってことで彼女のぬいぐるみを使わせてもらったんです。

田渕:摩耶ちゃんは私も昔から友達だったので、「あ、こういうところで繋がるんだ」ってすごい不思議でしたね。

フルカワ:そして、デザイナーの雄介くんも普段はソリッドで尖った雰囲気を出すのが上手な人なんですけど、一目見てドーナツが食べたくなったりするような、今回のほっこりしたアートワークも素晴らしいなと思いました。

―このほっこりしたアートワークもLAMAというバンドのムードを上手く伝えている気がします。そして、いよいよ11月には今回のインタビューでも話題に上っているアルバムが登場しますよね。

フルカワ:色んなタイプの曲が入っているんですけど、4人それぞれの色や得意とするもの、持ってる幅や技がちりばめられていると同時に、「あ、これがLAMAなんだな」っていうものが感じられる、感じてもらえるアルバムだといいなって思っていますね。

LAMA

リリース情報
LAMA
『Cupid/Fantasy』期間限定盤

2011年10月26日発売
価格:1,200円(税込)
KSCL-1874

1. Fantasy
2. Cupid

LAMA
『Cupid/Fantasy』通常盤

2011年10月26日発売
価格:1,020円(税込)
KSCL-1873

1. Cupid
2. Fantasy

LAMA
『Spell』初回生産限定盤(CD+DVD)

2011年8月3日発売
価格:1,500円(税込)
KSCL-1827-1828

1. Spell
2. one day
3. Spell(2 ANIMEny DJ's Remix)
[DVD収録内容]
1. Spell
2. one day

LAMA
『Spell』通常盤

2011年8月3日発売
価格:1,020円(税込)
KSCL-1829

1. Spell
2. one day
3. Spell(2 ANIMEny DJ's Remix)

プロフィール
LAMA

ナカコー(iLL/ex.supercar)、フルカワミキ(ex.supercar)、田渕ひさ子(bloodthirsty butchers / toddle)、牛尾憲輔(agraph)による新バンド。メンバーそれぞれがソロ、他バンドで活躍する中で結成。4月27日にUstreamライブストリーミングチャンネル「DOMMUNE」で生配信された初ライブは約8万が視聴。8月3日にフジテレビ"ノイタミナ"アニメ「NO.6」オープニング・テーマに起用されたファーストシングル「Spell」をリリース。その後、フジテレビ"ノイタミナ"『UN-GO』のエンディング・テーマ『Fantasy』を、10月26日「Cupid/Fantasy」のDouble A-sideシングルとして発売。そして11月30日には待望のファーストアルバム『New!』(読み:ニュー!)のリリースが決定し、今後の活動に注目が集まっている。



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