ダンスのみならず、音楽、演劇など、さまざまなジャンルから、ボーダーレスに先鋭的なアーティストがラフォーレ原宿に集い、パフォーマンスを繰り広げる『HARAJUKU PERFORMANCE+』。昨年より、「DOMMUNE」と共に『HARAJUKU PERFORMANCE + DOMMUNE』として、ソーシャルメディアをも巻き込んで話題となったこのイベント。そのキュレーションを手がける日本パフォーマンス/アート研究所のプロデューサー・小沢康夫氏は、いったい、どのような視線から同イベント、そしてパフォーマンスシーンを見つめているのだろうか? 同じく、ジャンルレス、ボーダーレスなパフォーマンスイベントの先駆けといえる『吾妻橋ダンスクロッシング』のキュレーションを行なうダンス批評家・桜井圭介を迎え、それぞれが思うパフォーマンスの「現在」、そしてそのモチベーションを語ってもらった。
『吾妻橋ダンスクロッシング』と『HARAJUKU PERFORMANCE + DOMMUNE』は腹違いの兄弟
―先鋭的なパフォーマンスイベントとして注目されている『吾妻橋ダンスクロッシング』と『HARAJUKU PERFORMANCE+』ですが、元々はそれぞれどのように始まったのですか?
桜井:『吾妻橋ダンスクロッシング』は、2004年7月に、身体表現の「今旬」を網羅的に紹介する、という趣旨で開催しました。サブタイトルは「ザッツ・コンポラ・ダンス・ショー」。出演はAPE、KATHY、風間るり子、身体表現サークル、たかぎまゆ、ボクデス、康本雅子、矢内原美邦でした。
飴屋法水『吾妻橋ダンスクロッシング2010』
―一方、『HARAJUKU PERFORMANCE+』の初開催は、2007年ですね。
小沢:この年は、それまで年2回開催されていた『吾妻橋ダンスクロッシング』が1回しか開催されなかったことから、桜井さんに「『吾妻橋』の原宿版」ということで、キュレーションをお願いしました。東京で初めてcontact Gonzoを紹介したし、Chim↑Pomは『ブラック・オブ・デス』というカラスをモチーフにした作品で、会場内インスタレーションと原宿駅前でのカラスを呼び寄せるパフォーマンスをやったりしましたね。
桜井:タイトルも『ダンスクロッシング(X)』に対して『パフォーマンス+』でいいじゃん! ってことで決まったんですよね。
小沢:だから僕は、『吾妻橋ダンスクロッシング』と『HARAJUKU PERFORMANCE+』は、腹違いの兄弟のように感じていました(笑)。
『HARAJUKU PERFORMANCE + 2008』
―2008年以降『HARAJUKU PERFORMANCE+』は、小沢さん自身がキュレーションを行なっていますね。
小沢:2008年に日本パフォーマンス/アート研究所を立ち上げ、音楽やメディアアートなども積極的にディレクションするようになっていきました。『吾妻橋ダンスクロッシング』は、00年代を代表するパフォーマンスのプラットフォームであり、3年後に始まった『HARAJUKU PERFORMANCE+』からも多くのアーティストが輩出し、海外を含め広く認知されることになったと思います。
―お二人とも、パフォーマンスというジャンルで、先鋭的なアーティストをキュレーションしながら活動を行なっています。それぞれキュレーションを行う上での基準はあるのでしょうか?
桜井:一貫して言っているのは、「グルーヴィーな身体」ということです。生き生きとしたリアルなパフォーマンスが見たい。つまり、「グルーヴィー」という言葉は「ダンシー」という言葉に置き換えてもいい。「ダンスクロッシング」といいつつ、ダンスだけじゃなくて、演劇、美術、音楽など、ジャンルにこだわらず、身体を使ったあらゆる表現を同一平面に並べているわけですが、僕にとって「ダンス」というのは、ジャンルのことではなく、パフォーマンスの「質」のことなんですよね。
悪魔のしるし『吾妻橋ダンスクロッシング2011』
小沢:『HARAJUKU PERFORMANCE+』に関しては、まず、新しいアーティストを紹介するという使命があります。contact Gonzoや、Open Reel Ensembleの和田永君などは、このイベントからデビューして海外へと活躍の幅を広げています。また、日本では積極的に紹介されていない海外在住の日本人アーティストの紹介もしています。2010年に出演した黒川良一さんは、オーストリアの『アルスエレクトロニカ』というメディアアートの祭典で賞を獲っていたり、ニューヨークを拠点に活動しているダンサーの山崎広太さんなど、このイベントではそういった人を積極的に紹介すべきなのではないかと考えています。また、若いアーティストだけでなく、ベテランのアーティストも盛り込んで年齢層を広げていきたい。もちろん『吾妻橋ダンスクロッシング』と同じように音楽、ダンス、メディアアートなど、なるべく1つのジャンルに偏らずにアーティストを選んでいます。
『HARAJUKU PERFORMANCE + 2009』
―小沢さんは、今年は六本木 Super Deluxeで行なわれたパフォーマンスイベント『CE QUI ARRIVE 2012−これから起きるかもしれないこと−』でもキュレーションを行なっていますね。
小沢:美術界の大物キュレーターでハラルド・ゼーマンという人がいたんですけど、その人は展覧会そのものをキュレーターの作品として作り上げるようなキュレーションをしたんですよ。『CE QUI ARRIVE』は、まずコンセプトを考え、それに沿うアーティストを選ぶというかたち。だから今では当たり前になってしまったかもしれませんが、ゼーマンタイプのキュレーションなんです。一方、『HARAJUKU PERFORMANCE+』は、人が沢山集まる商業施設である、ラフォーレ原宿の最上階で行われるイベントです。斬新なパフォーマンスでありながらしっかりとエンターテイメントになっているということを大切にしています。
いま日本で、パフォーマンスをキュレーションする意味
―キュレーションという作業の中には、それぞれのアーティストや作品を社会やアートシーンの中で位置づけ、整理することで「文脈を作る」というような意味もあると思います。
小沢:しかし、日本の舞台芸術の世界において、本来的な意味で「文脈を作る」ということがなかなか難しかったのではないか、と思うのです。たとえば、先日『フェスティバル/トーキョー12(以下『F/T』)』で再演された、ポツドールの『夢の城』は、ごみが散乱する部屋の中で、若者が、食べたり、セックスしたり、ゲームしたりする姿だけを表現した無言劇で、2006年に小劇場で初演された時には「これが演劇なのか!?」と賛否両論分かれた作品でした。脚本・演出をされている三浦大輔さんが、才能のある人だというのは十分に感じていたのですが、昔初めて見た時にはそれが演劇の才能なのか何なのかよくわからない感じもしていたのです。しかし、ヨーロッパ公演で大きな評価を得た後の、今回の『F/T』公演パンフレットに掲載されたインタビューで三浦さんは、海外のジャーナリスト達から「能の影響があるのか」と質問されたり「ダンスとして受け入れられた」とかおっしゃっていて、「資本主義を極みまで先鋭化させたなれの果ての人々」という劇評もあったそうです。インタビュアーの岩城京子さんは、「西欧の観客の多くはポツドールの芝居は性のモラルの劣悪さにではなく、それを含めたヒューマニズムの劣化に過激さを感じているのだ」と書いています。つまるところ、西洋の思想や哲学からの視点を参照し、引用しなければ、日本の作品は相変わらず評価が確立されることはないのだろうか、と思ったりもしたのです。
小沢康夫
―西洋からの視点がないと評価が定まらないという風土は、明治以降からずっと続く、日本のアートシーン全体における問題点ですね。
小沢:かつて王子小劇場あたりで見たポツドールの作品は、舞台作品というよりも、何か若者の生活を覗き見している感覚の方が勝っていて、演劇を見ているという感じではなかった。ところが今回の『夢の城』の再演は、明らかに演劇になっていたような気がします。誤解を恐れずに言えば、セックスやドラッグ、入れ墨、茶髪、裸、そしてごみ屋敷のようなセットなど、そういったいわゆる舞台美術や意匠を全部削ぎ取ってしまい、役者の身体に白塗りでもしたのなら、これはある種の「舞踏」だと言い切ってしまってもいいのではないか? と見ている間、ずっと考えていました。たとえば金粉ショーなど、当初マージナルな場所でしか踊ることが出来なかった舞踏の身体が海を渡ることで洗練され、微細な細部が削ぎ落とされ評価を確立していった過程と、今、若手の日本の舞台作品が海外で公演を繰り返すことによって、より抽象的で様式的な表現になっていく過程とはパラレルではないかと思ったのです。
―なるほど。
小沢:日本のコンテンポラリーな芸術が積極的に海外で紹介されるのはいいことだと思うし、『HARAJUKU PERFORMANCE+』もそういった海外からの眼差しに耐えられるようなディレクションをしたいと考えていました。ただ、自戒をこめて言うのですが、歴史意識をもたないと、もしかしたらこれはどこかで通った道なのではないか? という既視感にとらわれてしまうのです。ポツドールや舞踏といった、日本の前衛的な表現に対して、西欧からの眼差しがほとんど変わっていないように感じますし、そういった西欧の知性を内面化した日本のディレクターや批評家達がそれをもう一度トレースし直して日本に紹介し始めているようにも感じます。現代美術の文脈は自分たち日本人の文化や言語から派生しているものではなく、西欧のコンテクストにはまらないと受け入れられないわけです。だから村上隆さんは自ら文脈を作り、それを作品作りと同時にプレゼンテーションしていくという方法をとらざるを得なかったと思うのですが、舞台芸術の場合、私自身を含め、未だに自分たちの言葉では語られていないし、届いていないのではないかと思うのです。
桜井圭介
―一方、同じ『F/T』でも、そういったヨーロッパ中心の価値観とは異なる「アジア」としての価値観を提示していこうという動きが見られます。
桜井:うーん、どうだろう。「アジア」なんて括りは可能なんでしょうかね? とも思うわけです。今年の「F/Tアワード」を受賞した、シアタースタジオ・インドネシアの作品は、ロシアアヴァンギャルドのモダニズム、フューチャリズムとインドネシアの宗教儀礼のような土着性ががっぷり四つに組んだ、壮大で、いわば「宇宙的」な作品でした。言い換えれば、場所や時代といった「今ここ性」に依拠することで成立するようなタイプの表現ではない、ということです。「アジア的」とかそういうレベルを越えて「宇宙的」(笑)。「ヨーロッパのスタンダードに合わせる」ことだけが、必ずしも作品を世界に開くことではない。という意味で、この作品の受賞には非常に納得できるし、その選択に込められた『F/T』の意思にも賛成します。とはいえ、僕自身はずっと「今この場所という特殊性」にこだわってきたわけですけどね(笑)。やっぱりガラパゴスは面白いわけですよ!
小沢:以前、韓国で「ナム・ジュン・パイク・アートセンター」の仕事に携わってきたんですが、アジアというのは一筋縄ではいかないな、というのも感じています。過去にも、演劇人やダンサーなどさまざまな人が交流をし、アジアのカンパニーの公演や活動などが日本でも紹介されてきました。しかし、どうしてもシーンとしてなかなか盛り上がることなく、定着せずに終わってしまうことばかりでした。でも時代や状況が少しずつ変わっていることは確かです。アジアとしての文脈を形成するためには、『F/T』の新しい試みやそれぞれ個別の活動が、網の目のようにつながっていかなければならないと思います。そのためにも、神戸のNPO法人DANCE BOXや、批評家の武藤大祐さんや乗越たかおさんたちが、アジア各国のフェスティバルや催し物に関わっているのはとても重要なことだと思います。
『HARAJUKU PERFORMANCE + DOMMNE 2011』
―それぞれ、日本のパフォーマンスシーンの最先端を見せるような、キュレーションがされたイベントだと思いますが、たとえば海外に向けてこのような日本のシーンを見せていきたいというのも意識されているんですか?
桜井:そもそも、海外云々以前の問題として、いまだに日本の観客、受け手が、ジャンルで分断されているように感じます。演劇を見る人、美術を見る人、ダンスを見る人……、そうではなく、ジャンルの垣根を取り払いながら「面白いものは面白いんだから見たほうがいいよね」ということを伝えていきたいですね。逆に言えば、『吾妻橋ダンスクロッシング』をダンスのお客さんのために行うという発想は当初から全くなかったし。
小沢:『吾妻橋ダンスクロッシング』以降、そういったジャンルの垣根を取り払った新しい観客は増えているんじゃないですか? 演劇だけじゃない、ダンスだけじゃない、というパッケージの仕方も含めて随分変わったと思いますよ。
桜井:多少はね。けれども『吾妻橋ダンスクロッシング』や『HARAJUKU PERFORMANCE+』には行くけど、そこから個別のアーティストの公演に行くかというとそうではないんじゃないかな。そこで止まっちゃっているように感じます。全部一緒に見れるからお得だしね(笑)。
小沢:それは、初心者の入門編として仕方がないんじゃないかな。
―でも本心としては、単独公演にも足を運んでほしい。
桜井:そういうことです。
遠藤一郎『吾妻橋ダンスクロッシング2011』
―キュレーションをする上で、難しさというのはありますか?
小沢:ネットで検索してレシピを知るだけで、料理が上手くなるかどうかっていうことだと思うんですよ。芸術表現ってコンテクストだけでなく感覚的なものも必要だったりするでしょ? 料理を食べて旨いとか不味いって最後は理屈じゃないと思うんですよ。だからキュレーションというのは、中華、フレンチ、イタリアン、懐石料理など、様々な料理をひとつのお皿の上に載せて食べてもらうということに似ているのかなと。でも、様々な料理がひとつのプレートに乗っかっているから食い合わせが悪いと感じてしまうこともある。ウッと、むせたりね。だから、料理人のようにイベントに対して桜井風、小沢風というような味付けを施しているのではないかと思います。
桜井:……オレは何も考えてないな〜。
小沢:そんなことはないでしょう!(笑) やっぱり、桜井さんの料理になっていますよ。
桜井:そう? ならいいんですけどね。これも食べたいあれも食べたいってどんどんオーダーして、お招きしておいて、いざ全員揃ってみると、「これは、大変なことになってしまったぞ……」って、いつも頭を抱えています(笑)。
―(笑)。ラインナップを見ると、いい意味でのカオス感がありますよね。
桜井:去年の『吾妻橋ダンスクロッシング』では、出演者の吉田アミさんから「このラインナップは気が狂ってる」と言われていました(笑)。だから、やっぱり出演順には一番気を使いますね。
吉田アミ×大谷能生『吾妻橋ダンスクロッシング2011』
―仕事の中でキュレーターとしての喜び、楽しさを感じるのは、どのような部分でしょうか?
桜井:僕は自分中心なので、自分が「わーい」となれると良かったと思いますね(笑)。もちろんパフォーマンスを取り巻く状況の中で続けていくにはお金の問題もありますが、何か遊んでいられることがないと生きていけない性分なので、ついつい遊び場を作ろうとしてしまうんですね。今年で3年目になる清澄白河のスペース「SNAC」を始めたのもそう。「ヒミツ基地だ〜! 365日悪だくみできる〜!」とか、ついつい思っちゃう。絶対後で大変になるんだから、やめとけばいいのに(笑)。
インターネットやソーシャルメディアが、パフォーマンスにもたらす可能性
―『HARAJUKU PERFORMANCE+』は、昨年から『HARAJUKU PERFORMANCE + DOMMUNE』として、DOMMUNEとコラボレーションしています。これによって、小沢さんとしても新たな手応えを感じているのではないでしょうか?
小沢:昨年、DOMMUNEでパフォーマンスの同時配信を行なったところ、現場には500人しかいないのに、モニターの向こうでは5000人ものユーザーが見ているという事態になりました。これは僕にとって初めての経験で、不思議な感覚でした。今年はパルコにDOMMUNEと同じようにUstream配信を行うメディア「2.5D」が入り、タワーレコードにDOMMUNEが参加しました。もはや、商業施設にソーシャルメディアを欠くことはできない時代になっているんです。また、ソーシャルメディアがプロモーションツールになったことで宣伝の仕方、広告の概念も変わった。パフォーミングアーツの制作に関わる上で、これまでは良質のコンテンツを制作だけしていれば良かったはずなのですが、これからはインフラにも積極的に関わらなければならない時代なんだと感じています。昨年はニューヨークからこのイベントを見てくれたという声も聞きました。今年も、DOMMUNEとコラボすることによって、パフォーマンスイベントの可能性を更新できるのではないかと期待しています。
『HARAJUKU PERFORMANCE+2010』
―音楽や現代芸術などのジャンルとは異なり、パフォーマンスとソーシャルメディアが、うまく融合している事例はなかなかありませんね。
小沢:ただ、イギリスでは、オペラの公演を配信したところ、劇場の観客動員数が増えたという事例もあります。まだ過渡期であり、もしかしたらソーシャルメディアへの配信が自分たちの首を絞めることにもなるかもしれません。しかし一方で、東京以外に住んでいる人や、何らかの理由で家から出られない人、身体が不自由な方など、劇場に足を運ぶことができない人たちにも作品を届けることができます。映像の解像度も上がってきたし、劇場で芝居を見るという感覚とは別の、モニターの向こう側で見る楽しみ、その感性や感覚は徐々に育ってきているのではないでしょうか? ソーシャルメディアを使えば、そんな人々とつながりながら、パフォーミングアーツの新たな扉を開く可能性はあるのかもしれません。
―今年の『HARAJUKU PERFORMANCE + DOMMUNE』1日目は、全ての出演アーティストが公募によって選出されます。これも、今お話されたようなソーシャルメディアとの関係がありますか?
小沢:ニコニコ動画、Ustreamなど、ソーシャルメディアによって、誰もが表現者になれる時代になりました。それならば、まだ僕たちの知らない新たな表現者がどこかにいるのではないかと思い、今回は公募という形に賭けてみました。どうしても、キュレーターが観ることのできる範囲は限られていますから、最近は出演者やイベントが似てきてしまう。だったら、こちらの受け口をオープンにすることによって、新たな才能に入ってもらえたらと思うんです。
『HARAJUKU PERFORMANCE + DOMMNE 2011』トークプログラム(左から、松山晋也、冨田勲、小室哲哉)
―どのような形の「新しい才能」を期待していますか?
小沢:contact GonzoやOpen Reel Ensembleのように、今まで見たことのないような表現をするアーティストは、海外でも勝負できると思います。そんな先鋭的なアーティストを集めたイベントを制作するだけでなく、ソーシャルメディアをあわせて使うことで、同時に海外の人たちにも紹介することが出来るのは楽しみです。しかし、ソーシャルメディアを使うことで全てがバラ色になると楽観視しているわけではありません。真面目さ、正しさ、正論が要求されるネット空間には、ある種の息苦しさも同時に感じています。そういうリスクは常にありますね。
―そのようなリスクを踏まえてもソーシャルメディアの可能性に賭ける、と。
小沢:アーティストだって、ニコ動のコメントに晒されるのが普通になっている時代でしょう。僕だったら死にたくなりますよ(笑)。けれども、それを笑いながら見ていられる世代の感覚はすごいなと思います。またそのような状況でアーティストは作品を創作しているのだから、それに耐えうるようなものを持たなければならないのではないでしょうか。今回の『HARAJUKU PERFORMANCE + DOMMUNE 2012』の公募アーティストも、配信のメリットを活かした、2012年の締めくくりに相応しいものになりそうな予感があります。90年代、バンドブームの火付け役となったテレビ番組『イカすバンド天国』のパフォーマンス版というようなノリですね。
―なかなか若い人には伝わりづらいたとえですが……。
桜井:僕、『イカ天』出たことあるよ。
小沢:え、そうなんですか!?
桜井:マルコシアス・バンプに負けたけどね(笑)。
―意外な事実が発覚しました(笑)。最後に、舞台芸術、パフォーマンスというのは、たとえば美術や音楽、映画などのジャンルに比べて、開催期間が短かったり、開演時間が決まっていたりと、ハードルが高いというのはあるように感じます。そんなある意味逆境ともいえる中でも、お二人がこの世界でイベントを続けていこうとするモチベーションって、一体何なんでしょうか?
桜井:舞台表現が持っている不便さ、ハンディキャップは理解しているつもりですし、映画やレコードのような複製芸術も非常に大事だと思いますけど、その場で「出来事が起こっている」ということは、自分にとってとても刺激的なんです。使い古された表現ですが、「一回性のもの」「今この場」はやはりとても大事だと思います。やっぱり目の前で起こる生(ナマ)の表現って、わくわくするんですよ。
小沢:質問の答えと少しずれるかもしれませんが、新しい表現や革新的な作品が生まれてくるためには、それを許容してくれる「場所」が必要です。現在、その役割を公共ホールが担おうとしていますが、そういった表現の中にはダーティーであったり、くだらなさだったり、公共の場にはなじまないものもあると思います。だから、そんな表現を擁護するためにも『HARAJUKU PERFORMANCE+』や『吾妻橋ダンスクロッシング』のような、自由に表現をすることができる場所が必要だと思ってやり続けるしかないと思っています。
桜井:あ、それ大事! カニ味噌飛ばしたり、ネギ100本使ってチャンバラしたり、色々遊べているのもあの場所だからこそ、っていうのはありますよね。アサヒ・アートスクエアのおかげです!
小沢:これからもトウキョウを面白くして行きましょう!
- イベント情報
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- 『HARAJUKU PERFORMANCE + DOMMUNE 2012』
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2012年12月22日(土)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京都 原宿 ラフォーレミュージアム原宿
出演:
子供鉅人
川村美紀子
core of bells
TENGU
DJみそしるとMCごはん
柊アリス
ゲスト審査員:
湯山玲子
渋谷慶一郎
廣川玉枝
宇川直宏
料金:前売2,000円 当日2,500円2012年12月23日(日)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:東京都 原宿 ラフォーレミュージアム原宿
出演:高木正勝
トークプログラム:高木正勝、東浩紀、細田守
料金:前売3,500円 当日4,000円
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- 『吾妻橋ダンスクロッシング 2013』
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2013年3月29日(金)〜3月31日(日)
会場:東京都 吾妻橋 アサヒ・アートスクエア
※詳細はオフィシャルウェブサイトにて間もなく発表予定
- プロフィール
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- 小沢康夫
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プロデューサー、日本パフォーマンス/アート研究所代表。2003年、企画制作会社プリコグ設立。2008年に代表を退き、後進に譲る。同年、日本パフォーマンス/アート研究所を設立。コンテンポラリーダンス、現代美術、現代演劇、メディアアート、音楽など既存のジャンルにこだわることなく、独自の観点でプロデュースする。最近の主な活動として『NJP SUMMER FESTIVAL 21ROOMS』(韓国ナム・ジュン・パイク アートセンター)、『LAFORET SOUND MUSEUM 2011』(ラフォーレミュージアム原宿)、『HARAJUKU PERFORMANCE + DOMMUNE』(ラフォーレミュージアム原宿)、『CE QUI ARRIVE 2012−これから起きるかもしれないこと−』(六本木 Super Deluxe)など。
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- 桜井圭介
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『トヨタコレオグラフィーアワード』などの選考委員、音楽家として振付家とのコラボレーションなど、あの手この手で、ダンスとのオルタナティヴな関係を模索中。著書に『西麻布ダンス教室』など。
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