とにかく目指すのは世界中のコアなリスナーを巻き込むロック。2010年に結成されたインストゥルメンタルロックバンド・LAGITAGIDAは、そんな途方もなく巨大でド直球な野心を胸に秘めて、ついにファーストフルアルバム『TUTELA!!』を完成させた。ここまでにリリースしてきた2枚のミニアルバムをさらに凌駕する、このすさまじい音圧と劇的な展開を目の前にすると、なんだか理屈っぽいことを語るのがとてもばかばかしくなってくる。とにかくこの過剰なまでにエナジェティックなサウンドは、四の五の言わずに脳みそすっからかんにして体感するのが礼儀というものだろう。
一方で、彼らがそうした直情的でマキシマムなサウンドメイキングに臨んでいる背景には、どうやら現状へのいら立ちや怒りがたっぷりと備わっているようだ。本人たちいわく、自分たちがこれをやらなきゃ誰がやるんだ、と。この『TUTELA!!』を携えて、LAGITAGIDAは昨今の音楽シーンにカウンターとなる一撃を仕掛けようとしている。そこで今回はそんな彼らの血気盛んでとことんストレートな言葉をお届けしたい。
マヒルノの解散も急に決まったものだったので、その後にどうするかなんて、考える暇もなかったんです。(コーノ)
―LAGITAGIDAって、前身のマヒルノが解散してすぐに始まった記憶があるんですけど、準備期間ってどのくらいあったんですか?
オータケ(Gt):僕とコウちゃん(コーノ)がそのマヒルノっていうバンドをやってたんですけど、そのバンドが2010年4月1日に解散したんです。それからすぐ、周りの人からも「新しいバンドをやりなよ」とは言われてたんです。「コウちゃんと一緒になんかやったらいいじゃん」って。
―最初は周りから焚きつけられたんですね。
オータケ:うん、個人的にはこの先どうしようかと考えてたんですけど、じゃあ、せっかくだしやってみようかって。
―もともとオータケさんはマヒルノを終えた時点で、音楽活動に一区切り入れるつもりだったんですか?
オータケ:そうですね。ソロでやろうかなとは思ってたんですけど、こういうバンドをやろうと思っていたわけではなかったんです。
コーノ(Ba):マヒルノの解散も急に決まったものだったので、その後にどうするかなんて、考える暇もなかったんです。もちろん彼と一緒にまた何かできたら面白いなっていう気持ちはあったんですけど。
―マヒルノは4人組のバンドでしたが、周囲の人たちは、どうしてオータケさんとコーノさんが一緒にやることを勧めていたんですか? 音楽的な相性の良さがあったんでしょうか?
オータケ:これは自分で言うのもおかしいけど、演奏者としてのレベルを見た上でそう言ってもらえたんじゃないかな。で、マヒルノはその日をもって解散したんですけど、そのすぐ後の4月20日に、実はCINRAさんのイベントにマヒルノで出演することが決まってたんですよ(笑)。そこで急遽、その日を新しいバンドの1発目のライブにしようと。
A(Dr):僕はマヒルノが解散してすぐ、「一緒にやろう」と声をかけられたんですけど、準備期間が2週間くらいしかなかったんで、かなり焦りました(笑)。
オータケ:身近で腕の立つかっこいいドラマーっていうと、Aちゃんしか思い浮かばなかったんです。で、このメンバーでやると決めた時点で、何となく音楽の方向性も見えたんですよね。Aちゃんはとにかくロックなドラマーなので、とことんそこを追求したものを作ろうって。そう思えたら曲も作りやすくなって、なんだかんだ2週間で間に合っちゃって。
―その初ライブの手ごたえはどうだったんですか。
オータケ:かなり良かったんです(笑)。もちろん、いま思うと足りてないところはたくさんありましたけど、短期間であそこまで勢いのあるロックがやれたのって、結構すごいんじゃないかと思って。これをもっと突き詰めていったら絶対にいけるっていう確信は掴めました。
A:初期衝動感がすごかったよね。
―ちなみにその初ライブで披露した曲って、いまでもレパートリーに残っているんですか?
オータケ:残ってますよ。たとえば最初に出したミニアルバム(『CaterpiRhythm』)の1曲目の“Sensya”とか。今回のアルバムにもその曲は入ってます。
コーノ:あと、それこそ2枚目の『CartaMarina』に入ってる“Yellow Shark”なんて、三人で初めてセッションしたときの演奏が基になってますからね。いま思えばその段階である程度は方向性が見えてたんだと思う。ただ、その初ライブが終わった後は、もうわけわかんなくなってましたけど(笑)。とりあえずやらなきゃっていう気持ちでがむしゃらにやってたし、インストのバンドをやるのが僕は初めてだったので。というか、みんなそうかな?
A:完全にインストだけのバンドってなると、俺も初めてかな。
―インストバンドでの演奏スタイルを模索しながらだったんですね。
コーノ:そうですね。歌の後ろで弾くベースのスタイルしか僕にはなかったので、いきなりインストの海に投げられた感じはあったんです。
激しくて、派手で、音圧が高いインストロックをやったらすごく面白いんじゃないかなって。(オータケ)
―そもそも、なぜみなさんは歌モノではなくインストロックを選択したんですか?
オータケ:僕はバンドの音を決定づけるのって基本的にドラムだと思ってるから、Aちゃんがドラマーになったことが大きかったんだと思う。とにかくこのバンドでは激しいものをやろうと。あとその当時、インストバンドはいっぱいいたけど、みんなきれいに構築されてて、アルペジオが折り重なってて、冷静に弾いてるような、要するにポストロックがほとんどだったんです。そういう中で、激しくて、派手で、音圧が高いやつをやったらすごく面白いんじゃないかなって。
―それですぐに、キーボードを入れることになったんですね。
オータケ:そうです。この三人でバンドは始まったんですけど、音圧とか派手さを増すためにも鍵盤を入れたくて、すぐに蓮尾くん(蓮尾理之。現385のメンバー)を入れた四人編成になったんです。いまは馨ちゃん(五十嵐馨)がサポートという形で参加してくれてます。
―初ライブから1年後にはもう1枚目のミニアルバム『CaterpiRhythm』がリリースされているので、活動はすごく順調だったんですね。
オータケ:その頃にちょうど(レーベルの)ミュージックエアポートと出会って、そこから一気に活動が加速していったんです。それで、とりあえずライブの状態そのままのものを録ろうということで、『CaterpiRhythm』は基本全て一発録りです。改めて振り返ってみると、アルバムごとに少しずつ段階を踏んできている感じはありますね。
―つまり2作目は、そのファーストで生まれた課題を踏まえて臨んだ感じということですか?
オータケ:うん、ファーストでは重ね録りをしなかったので、もう少し広がりがほしくなって。ただ、セカンドを出すまでのペースが結構早かったんですよ。あんまり準備期間もなかったので、ベーシックはファースト同様に一発録りでやりつつ、そこにギターを足したりして、進化させたというか。
―初ライブに合わせて大急ぎで曲を用意した頃から、曲作りのアプローチに変化はありましたか。
オータケ:最近は僕が曲を家で作っていくようにしてます。ドラムと鍵盤も打ち込んだデモをスタジオでみんなに聴いてもらって、その場でざっくりとした説明だけをしてからすぐにみんなで演奏してみるっていう。あんまり予習しない方が、ちゃんとバンドの音に仕上がると思うんですよね。あともちろん、単純にひとつのリフから広げていくような作り方もやりますよ。
―LAGITAGIDAの音楽性からして、ドラムも鍵盤も打ち込んだデモがあるのって意外でした。結構細かいところまで、バンドの音やフレーズをコントロールしているんですか?
オータケ:難しいところですね。やっぱりここは我を通したいってところも当然出てくるし、あまりに最初のイメージから離れすぎると、「ちょっと待ってくれ」と言うときもありますけど、一方で個々のプレイヤーの持ち味はやっぱり最大限に発揮してもらいたいとも思ってて。
―では、そのコーノさんとAさんの持ち味がどういうところにあるのか、言葉にしてもらうことはできますか。
オータケ:Aちゃんに関しては、まず音がでかいってところ(笑)。そしてとにかくいっぱい叩くし、速い。なかなかこういう人っていないんですよね。彼はメタルを通ってるんですよ。いや、むしろいまでもメタルが主食か(笑)。
A:もう10年も前の話ですけど、デスメタルやスラッシュメタルをやってたんですよ。
オータケ:インストロックで、こういうツインペダルでドコドコやるようなドラマーってそうはいないと思うんです。ただその一方で、音楽自体はメタルの方向にはそこまで振り切らずに、もっと素直で気持ちいい方向に引っ張っていけたら、また新鮮なものが作れるだろうと。逆にコウちゃんは対極で、すごくスマートなプレイヤーなんですよね。なんでもできるし、技術も高い。それでいて音楽の趣味も、ね?
コーノ:まあ、ミーハーだよね(笑)。
オータケ:でも、そこが面白くて。いろんな要素を持ち込んでくれるし、何でも再現してくれるというか。あと、結構重要なのが社交性の高さ。そこもこのバンドにとって、かなりの戦力ですね(笑)。
―知り合いが多いのって、バンドにとって重要ですよね(笑)。ちなみにミーハーというのは、たとえばどういうところに興味を持つんですか?
コーノ:最近のでわかりやすいところだと、ジェイムス・ブレイクですかね。この前の来日公演が最高で、やっぱり低音が普通のベースじゃ足りないなと思って、5弦ベースを買いに行きました(笑)。すぐに感化されちゃうし、そこで自分の出す音も変わっちゃうんですよね。それに、彼が持ってくるデモによって、僕もプレイスタイルがどんどん変わってるんです。その時々の刺激がやっぱり大きくて。
―では、今度は逆にお二人に、オータケさんというソングライターをどういう目で見ているのか訊いてみたいんですが、いかがでしょう。
A:アレンジの仕方がすごくて、結果的に普通の曲にはならないからすごいなと思います。メタルとか変拍子とか、何かひとつの要素にならずに、自分流の曲に仕上げてくるのが上手い。
コーノ:プレイヤーとしての彼は、もう何も言うことないですね。僕がいままで接してきた中では断トツだと思う。で、ソングライターとしては本人が思っている以上に寛容だと思います。あんまりベースに関して細かく言われたこともなくて、ものすごく自由にやらせてもらってるし、むしろ引き出されてるような感覚もあります。
―コーノさんが言うように、ギタリストとしてのオータケさんは、ものすごいと思います。かなり弾き倒すタイプですよね。
オータケ:弾き倒しますね(笑)。でもそれって、周りにそういう人があんまりいないからっていうのもあって。「ないからやる」っていうことが、僕らにはすごく重要だと思ってるんです。いまあるものとは別の形を提示したくて弾いているところもあって。
A:ギターソロをガンガンに聴かせるような人って、本当にいないよね。ギターヒーローみたいな人がいてもいいと思うんだけど。
俺たちが見せたいものって、すごく原始的なものだから。(A)
―そしていよいよ今回フルアルバムが完成したわけですが、ここまでの段階を踏まえて、かなり作り込まれた作風ですね。
オータケ:やっぱりもっと楽曲の幅を持たせたかったので、作り込みましたね。ずっと一辺倒な感じだとつまらないし、とにかく飽きさせないアルバムにしたかったんです。まあ、人によっては僕らの曲ってどれも同じように聴こえるかもしれないけど(笑)。
―テクスチャーは凝ってるんだけど、とにかく音圧が高いから、まずそこに圧倒されちゃいますよね。
オータケ:まあ、そこはもうバンドのカラーなので(笑)。でもその上で、やっぱり1枚の作品を通してドラマや物語がないとつまらないなと思っていて。
―今回の作品に関してはどんなストーリーを描いたんでしょうか。
オータケ:いままで出してきたアルバムの流れを踏まえて、今回は「宇宙」っていうのがイメージにあったんです。1枚目は『CaterpiRhythm』、つまりキャタピラで、1曲目が“Sensya”だった。つまり陸上戦みたいな感じで、セカンドの『CartaMarina』は海図っていう意味で。だから、陸、海の次は何がくるかっていうと、やっぱり宇宙ですよね(笑)。
―ものすごく男子的な発想(笑)。
オータケ:そうですね(笑)。でも、ファーストフルアルバムで宇宙っていうのはいいですよね。宇宙ってすべての起源じゃないですか。そこに還っていったというか。
―オータケさんは宇宙のどんなところに惹かれるんですか。
オータケ:やっぱり神秘的なところですよね。ビッグバンで始まったという説がありますけど、じゃあ始まりと終わりってなんだろうとか。小さい頃にそういうことを想像して、怖くなったりしたことってあるじゃないですか? そういうところから膨らむイメージって、ミュージシャンにとってはすごく大切なものだと思う。
―全編を通してかなりアッパーな作品ですが、最後にはまた重厚な展開が控えていますね。
オータケ:たとえば“Incident On The Moon”なんかは、やっぱり1曲目に入れることを意識して作っていたし、“Spiral Nebula”にしても、やっぱりアルバムの最後を飾ることを念頭に置いてました。そういう風に、アルバムの流れを考えていくという意味でも、宇宙っていうテーマはすごく大切だったんです。オープニングで月が出てきて、その後に宇宙人が迎え入れてくれてる。で、最後には渦巻いて吸い込まれて終わるようなイメージがあって、それを細やかなリフの動きで表現したりもしてて。そういうストーリーが頭になかったら、きっとこのアルバムは作れなかったな。そう言っても過言じゃないと思う。
―最初こそ勢いで始まったバンドだけど、いまではかなりビジョンが明確になっているんですね。みなさんはこのアルバムをリリースした先にはどんな展開を見据えていますか。
オータケ:大衆的なものに流されないでやりたいですね。たとえば、こうやってインディーでバンドをやってても、いまのアイドルなんかがすごく好きだっていう人たちが結構いるんですよね。でも、僕にはそれが1ミリも理解できない。僕らは僕らの意志を持って、音楽の本質的なものを捉えたいと思っているし、古くからの流れにある音楽そのものというか、添加物を一切排除したものを追求したいです。あとは日本だけじゃなく、海外でもっとツアーをやって、世界中のコアなリスナーをどんどん巻き込んでいきたい。というか、そうしていかなきゃいけない。LAGITAGIDAではそれをやると決めてます。
―ある種の使命感がある?
オータケ:ありますね。僕らみたいな音楽って、一般的にはなかなか受け入れられるのが難しいところもあるとは思うんです。でも、こういう音楽もヤバいっていうのは、もっと強く伝えたいから。
―LAGITAGIDAのみなさんは、現状のシーンに対して何かしらのカウンターを打ち出したいという意志がものすごく強いようですね。ある種の怒りがモチベーションにつながっているというか。
オータケ:もちろんそれはあります。その感覚はLAGITAGIDAにとってすごく重要。「そんな退屈なもんばっかり聴いてんじゃねえよ!」って。「俺たちが変えてやる!」っていう気持ちは、みんなが共通して持っていると思う。
A:俺もそういう気持ちはものすごく強いですね。たぶんここでそういう話をし始めたら、本気でウザがられるくらいに(笑)。
コーノ:僕もそういう怒りとか悔しさとかはすべてこのバンドに注ぎ込んでるので、LAGITAGIDAに関しては、自分の攻撃的な面がかなり出てると思います。
オータケ:あとはここからツアーが始まるので、まずはそこだよね。
A:俺たちが見せたいものって、すごく原始的なものだから。何かわからないけど、見てるだけで「よっしゃ!」となるようなやつ。俺たちのライブは「音、でけえな!」とか、「めちゃくちゃ速いな!」とか、そういう単純なところで楽しんでもらえると思う。
オータケ:うん。宇宙を見せますよ。
- イベント情報
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- 『TUTELA!!』リリース記念ライブツアー
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2013年9月5日(木)
会場:東京都 新代田 FEVER
出演:
LAGITAGIDA
skillkills
and moreKI-NO Sound × levitation presents
『あらかじめ決められた恋人たちへ & LAGITAGIDA W Release Live』
2013年9月22日(日)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:京都府 METRO
出演:
あらかじめ決められた恋人たちへ
LAGITAGIDA
料金:前売2,500円 当日3,000円(共にドリンク別)2013年9月28日(土)
会場:愛知県 新栄 Live & Lounge Vio
出演:
LAGITAGIDA
and more2013年9月29日(日)
会場:大阪府 CONPASS
出演:
LAGITAGIDA
and more
- リリース情報
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- LAGITAGIDA 『TUTELA!!』(CD)
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2013年7月3日発売
価格:2,300円(税込)
levitation / LEVT-0011. Incident On The Moon
2. TUTELA!!
3. Sufferers
4. Drastica
5. Surplus Population
6. Fooneral
7. Sensya
8. Terrible Boy
9. Copeten
10. Spiral Nebula
- プロフィール
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- LAGITAGIDA(らぎたぎだ)
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2010年4月頭に結成された、超攻撃型インストロック・バンド。2011年4月、待望の初音源となるミニ・アルバム『CaterpiRhythm』が完成。2012年1月、早くもセカンド・ミニ・アルバム『CartaMarina』をリリース。3月、アメリカ・テキサス州オースティンで行なわれている世界最大の音楽コンベンションSXSWに出演。10月、デジタル・シングル『Terrible Boy』の公開レコーディング&iPhone約100台による同時ミュージック・ヴィデオ撮影会を新代田FEVERで行う。後日、オータケコーハンが怒涛の編集を行いMVを完成させた。12月には2回目のワンマンLIVE「キャタピリズム #07 - Terrible boy / Uncrackable nuts Release One Man -」を新代田FEVERで敢行。2013年7月3日、待望の1stフル・アルバム『TUTELA!!』をリリースする。
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