「清竜人がアイドルプロジェクトを始動!」――先日飛び交ったこのニュースに大きな驚きを隠せなかった人も多いだろう。2009年に弱冠19歳でデビューした当初、洋楽然としたサウンドと内省的な詞世界で将来を嘱望されてきた彼だが、2012年に発表した『MUSIC』で音楽性も見た目も一変。声優や女優も参加したミュージカルのような音楽で圧倒的な才能を見せつけ、以降は作品ごとに大胆な変貌を繰り返してきた。そしてこの度、トイズファクトリーへのレーベル移籍とともに発表されたのが、冒頭で触れたアイドルプロジェクト「清 竜人25(きよしりゅうじんトゥエンティーファイブ)」始動と、そのメンバー募集のオーディション開催だ。
アイドル戦国時代と呼ばれているここ数年は、楽曲提供やプロデュースなど様々な形で、有能な作家やミュージシャンが続々とアイドルシーンに参戦。アイドルは音楽性に欠けるという意見を呈する人もいる一方で、舞台裏ではアイドルを媒介としてミュージシャンたちの威信をかけた代理戦争が繰り広げられていると言ってもいい状況だ。清竜人も近年は堀江由衣やでんぱ組.incに楽曲提供を行い、その楽曲は高い評価を受けていたところだが、今回の「清 竜人25」が他のアイドルと決定的に違うのは、清竜人自身がアイドルとともにステージに立ち、歌って踊るパフォーマンスをするということ。
前述した『MUSIC』リリース時のライブでは、歌って踊る清竜人を中心としたミュージカルのような世界観が展開されていたため、可能性としては考えうるものであったが、率直な感想を言えば「その発想はなかった!」である。「アイドルプロジェクトを始動」とだけ聞くと単純にブームに乗ったように見えるかもしれないが、これまで彼が発表してきた作品を見る限り、これはアイドルという形を借りた清竜人なりの新しいパフォーマンスの創造なのではないだろうか。作品を発表するたびに予想の斜め上をいく清竜人は、今回のプロジェクトについて何を考えているのか。7月15日に迫ったメンバー募集の応募締め切りを前に、次々と沸いてくる疑問をぶつけてきた。
うちのスタッフが男ばかりで現場に華がないので、女の子に囲まれて仕事したいなと思って始めたわけですが……今までにないものが生み出せたらなとはマジメに考えてます。
―早速核心から聞きたいんですけど、なぜアイドルメンバーを募集しようと思ったんですか?
清:長い間ソロでやっていたので、そろそろバンドだったり、ユニットだったり、何かグループでやりたいなと1~2年前から考えていたんです。でも、ただやるだけでは面白みがないので、いろいろ考えたんですけど……最近うちのスタッフが男ばかりで現場に華がないので、女の子に囲まれて仕事したいなと思って。
―それ、どこまでマジメに受け取っていいんですか?(笑)
清:すべて本気です。それがきっかけで動き始めたんですけど、どうしたらこのプロジェクトが面白くなるかはマジメに考えていて、それでこういう形でメンバー募集のオーディションをすることにしたんです。
―たしかに過去のインタビューを読むと、打ち込みやアイドルポップスに興味があるという発言をされていましたよね。
清:そうですね。4枚目に出した『MUSIC』(2012年)というアルバムでも、自分なりにアイドルを解釈して作品を作ったんですけど、まだ消化しきれてない部分があって。それも踏まえて、今までにないものが生み出せたらなと思って。
『MUSIC』では、声優&女優のゲストを迎えミュージカルのような世界感をもったアルバムを制作し、自らのエンターテイナーとしての才能を印象づけた。
―消化しきれなかったというのは、どういう部分で?
清:『MUSIC』のときは、ライブを1回しかしてないんです。あのときは1回だけだったのが良かったとは思うんですけど、それとは違った形でまた自分が身体を使ってパフォーマンスできたらなとはずっと思っていて。男性だけのダンスグループでもいいかな? と思っていたんですけど、いろいろ考えたうえで、こういう形になりました。
十人十色なメンバーのほうがいいかなと思ってますね。たとえば国籍が違うとか……個が目立つようなグループになれば素敵ですね。
―ここ数年は堀江由衣さんやでんぱ組.incにも曲を提供されてましたけど、それによって「もっとアイドルソングを作りたい」という欲が出てきた部分もあるんですか?
清:それもあると思いますね。堀江さんもでんぱ組.incも、ゆくゆくのことも考えて、自分にとっていい勉強になればいいなと思ってやらせてもらっていた部分もあったので、それが実を結んだ形とも言えると思います。
―今回のプロジェクトについては、いつ頃から構想していたんですか?
清:確か5枚目の『KIYOSHI RYUJIN』(2012年)の頃から話していたかな。具体的な話は6枚目の『WORK』(2013年)を作り終わってからですけど。
―今回は清さんにとってもレーベル移籍第一弾ですよね。いきなりこんな斬新なプロジェクトで、揉めたりしませんでしたか?
清:レコード会社の方も面白がってくれたし、マネージャーとは構想の段階から密にディスカッションして、ゆっくり進めてきたプロジェクトなので、スムーズにたどりつけたかなという感じです。
―長いこと温めていたプロジェクトだったんですね。では、プロジェクトについて詳しく聞いていきたいんですけど、まず「清 竜人25」という名称はもしかして……。
清:25歳だからです。ゆくゆくは25人まで増やせたらなと思っているんですけど、最初から大人数でもうまくまわらないと思うので、まずは6人から始めようかなと。
―今回、募集する6人のメンバーはグループの中でどういう役回りになるんですか? バックダンサー的なイメージ?
清:僕の一歩後ろの立ち位置というわけではなくて、横並びの立ち位置でパフォーマンスするグループにはしたいなと思っています。ただし、センターは僕なんですけど。
「清 竜人25」始動。女性アイドルメンバーのオーディション開催中。
―そこは固定なんですね(笑)。アイドルグループの中に男性が1人いて、しかもセンターっていう時点ですごく独自性があるとは思うんですけど、他のアイドルとの差別化や、「清 竜人25」にしかない魅力は、どういう部分を考えていますか?
清:一番わかりやすくパフォーマンスに現れるのはライブかなと思います。僕がセンターにいて、メンバーがいて、そこで視覚的な部分の差別化は図れるんじゃないかなと。もちろん音楽としても、男と女が両方歌うことが前提の曲作りになるので、他のアイドルグループとは変わってくるかなと思います。
―今回のプロジェクトは、継続的にやっていくものなんですか?
清:先のことはわからないですけど、今の気持ちとしては、半永久的に続けたいなと思ってますね。今年に限ってとか、今回1枚だけとか、そういうふうには考えてないです。できるだけいい形で続けていきたいです。
―清さんの脳内のイメージを実現するために、どんなメンバーを求めてますか?
清:十人十色なメンバーのほうがいいかなと思ってますね。たとえば国籍が違うとか……それくらい各々の個性が違ってもいいと思ってます。年齢制限も16~25歳になってますけど、一応どこかで制限をかけたほうがいいかなと思って決めただけで、幅広い年齢のメンバーが集まると嬉しいです。
―やっぱり、かわいい子がいい?
清:もちろんリスナーさんが見てかわいいなと思える子がいいなと思いますけど、アイドルはみんなかわいいと思うので、個性のある子に出会いたいですね。むしろ思ってもみないような子が来てくれて、個が目立つようなグループになれば素敵ですね。
―このプロジェクトは何をもって成功と考えていますか?
清:メンバーが思い描くものはそれぞれ違うでしょうけど、僕としては、ちゃんと一般のリスナーから支持されたりとか、名前を知られたりとか、そこでの達成感や満足感はメンバーに感じさせてあげたいなと思いますね。あとは、参加してくれるメンバーにも、それぞれの意志があると思うので、そこは尊重して面白い繋がりができていけばと。例えば、個々で頭ひとつ飛び出して、ソロでの活動が増えるとか。そういうふうに好き勝手に入り乱れて、素敵な未来につながればいいなと思います。
僕はどちらかというと、情報過多で有機的にサウンドが作られている音楽が好きなので、今回もそういう楽曲を作るつもりです。
―ここからは少し掘り下げていきたいと思います。そもそも清さんはアイドルのどういう部分に魅力を感じているのでしょう?
清:どちらかというと、僕はグループものが好きだと思うんですよね。かわいい女の子たちが、大勢でわいわいやっているところが好きというか。そこの輪に加わりたいっていう。
―やっぱり加わりたいっていう気持ちが大きいんですね(笑)。普段から他のアイドルはチェックしているんですか?
清:最近いっぱい出てきている若手アイドルに関しては、そこまで詳しいわけではないんですけど、もともとモーニング娘。とか、その前後の世代に活躍していたアイドルはけっこう聴いていました。特に後藤真希さんがいた時代のモーニング娘。のメロディーラインは面白いなと思ってます。つんく♂さんって関西の人ですよね。僕も関西なんですけど、なんとなくAKB48は東京、モーニング娘。は大阪っていうイメージがあって。そういうサウンドのテイストみたいなものに惹かれている部分があるのかもしれないですね。
―つんく♂さんも清さんもファンク好きですし、気質的にも共通点があるのかもしれないですね。
清:僕はどちらかというと、情報過多で、有機的にサウンドが作られている音楽が好きなんです。もちろんシンプルなものも好きなんですけど、音数が多くて、複雑なほうが好みなので、今回もそういう楽曲を作るつもりです。
―メンバーが複数いることで、いろんな声が使えるとか、そういうことですか?
清:それもそうですけど、アレンジメントが緊密に作られているというか。ただ単にサビをループさせるわけじゃなくて、意味があってループしてたり、他のポップスとの差別化を意識的に図っている。そういうポップスとして綿密に作られていることが匂ってくる曲が好きですね。
単純にアイドルシーンに入っていくだけでは良くないと思っていて、いわゆる自分がもともとやってきたこととクロスオーバーする部分がないと、面白みがないと思うんです。
―「清 竜人25」の曲はもちろん清さんが作るわけですよね。『MUSIC』の延長上のような作品になるんでしょうか?
清:近しいものももちろんあるとは思うんですけど、『MUSIC』は全曲、色の違うものを作りたいなという目的があったんです。今回はそれがまったくなくて、現段階では統一感と、とっつきやすさみたいなものを感じさせたいなと思ってます。あとは、音楽的なチャレンジは『MUSIC』でできたので、今回はパフォーマンスとして、今までできなかったことをやりたいという気持ちが強いですね。
―パフォーマンス的なチャレンジというのは、清さんも踊ったりするということですか?
清:そうです。このプロジェクトは僕が踊りたくて始めたようなものなので。『MUSIC』のときにも踊ったんですけど、こっちをメインにしてもいいかなと思うくらい楽しかったんですよ……。最近、楽器を弾いてても面白くないので。
―そうなんですね(笑)。ということは、清さんもアイドル的なパフォーマンスをするんですか?
清:それは舞台に上がってみないとわからないですね。メンバーはともかく、僕自身が大々的にアイドルと名乗るつもりはないですけど。
―じゃあ……Twitterで自撮りを公開するとかは?
清:やりたいですね。
―それはやりたいんですね! 握手会とかも?
清:やってみたいです。
―いわゆるアイドルがやる定番のものはやってみたい?
清:まぁ、ホントのことをいうと、そういうのは基本的にはメンバーにやってもらいたいかな(笑)。でも、僕と握手して喜んでもらえたら、それは素敵なことだと思います。
―アイドルイベントにも出演していくんですか?
清:ソロでやっているときは、ライブの本数も比較的少なかったですし、制作している時間が長かったので、このプロジェクトを立ち上げたからには、イベントに出演する本数を増やしていけたらなと思ってますね。いい意味でこだわりなく、いろいろ出られたら。ただ、単純にアイドルシーンに入っていくだけでは良くないと思っていて、いわゆる自分がもともとやってきたこととクロスオーバーする部分がないと、面白みがないと思うんです。アイドルシーンとも仲良くやりたいですけど、うちはうちで自分たちにしかできないことをやっていきたいですね。そうじゃないと意味がないと思います。
何かを表現する手段として僕は音楽が一番得意なので、音楽を使って生きている感じですかね。これからもそこは変わらないと思います。
―清さんのように、作品ごとに音楽性や立ち位置がここまで変化するアーティストは、本当に珍しいと思うんです。ただ、よくよく考えると、リスナーはいろんな音楽を聴くことが当たり前なのに、プレイヤーがひとつのジャンルに固執しなきゃいけない理由はないじゃないですか。そういう部分で清さんなりのポリシーはありますか?
清:大それたポリシーみたいなものはないですけど、単純に好きな音楽はコロコロ変わるし、特にソロでやっていると、音楽を作ることに対しても飽きが来る頻度が早いんですね。だから、うまく自分をごまかして、楽しませてやらないと続けられないんです。そういう意味で僕はちょっと作風が変化しやすいのかなと思うんですけど。
―その変化が他の人より極端というか。まわりの反応はどう受け止めていますか?
清:あんまり毀誉褒貶に左右されないようにしてますけど、そういう部分を気に入ってくれる人もたくさんいるので、僕が好きなことしていることを、好きになってもらえたらなと思いますね。
―とは言え、作りたいものと求められているものが常に同じわけではないだろうし、その部分で悩むことはないですか?
清:いや、そこで悩むことはないですね。自分がやりたいことを、どれだけ高い品質で世の中に送り出せるかという意味では日々苦悩しますけど。
―たとえば今回のプロジェクトも、清竜人ってバレないように名前を変えてやる方法もあったと思うんですよ。その選択肢は考えましたか?
清:バレないと意味がないので、清竜人とは別にしようっていう発想はもともとなかったですね。僕がプロデュースだけでなくセンターのポジションもやるのは、やっぱり裏方よりは表が好きだからなので。自分も含めてパフォーマンスしないと面白みがないし、そこの醍醐味を感じたくてやっているんです。
―今後は「清 竜人25」のプロジェクトもありつつ、ソロも並行してやっていくんですか?
清:それはやりたいと思ってます。ただ、しばらくは「清 竜人25」で忙しくなると思うので、それが落ち着いてからソロのほうを考えることになりますね。
―6人を抱えるプロデューサーとしての責任もありますしね。
清:そうですね。未成年の子が入る可能性もあるわけですし……それなりに覚悟してやらないとなと思ってます。
―今まではインタビューとかで、「もう音楽をやめたい」といった発言もされているじゃないですか。今はそういう気持ちはない?
清:日によって違うんですけど(笑)、今日は大丈夫です。でも、変な話、正規メンバーを入れて活動するとなると、やめたくてもやめられないので。それはそれでいいかなと思ってます。
―この活動を通して、清さん自身として期待する部分はどんなところになりますか?
清:今までもアルバムごとに関わるミュージシャンが違うことで刺激を受けたので、新しいシーンだったり、行ったことのない現場だったり、そういうところに行ける機会が増えればいいなと思いますね。今回はこれまで関わる機会がなかったジャンルの人たちとも仕事ができると思うので、そこはすごく楽しみです。
―ここまでいろんなことをやってきた中で、清さんにとって音楽を生業にするということは、どんなことですか?
清:もちろん好きっていうのは大前提にありますけど、僕は音楽が一番得意なので、音楽を使って生きている感じですかね。10代の頃はショートムービーを撮ってみたり、いろいろやってみたんですけど、何かを表現したいときに音楽を通じてやったほうがうまく伝わるんじゃないかなということが多かったんです。その結果、今に至っているので、これからもそこは変わらないと思いますね。
―最後に、応募を考えている人にメッセージをください。
清:とりあえず、写真を撮って、送ってみてはいかがでしょうか?
―……そんなのでいいんですか?
清:はい(笑)。
―もうちょっと景気のいい話をいただきたいです(笑)。
清:じゃあ、楽しくはなることは間違いないので、それだけ信じて応募してくれたらいいなと思います。
- イベント情報
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- 清竜人アイドルユニット『清 竜人25』
女性アイドルメンバー オーディション -
応募期間:2014年6月13日(金)~7月15日(金)(当日消印有効)
応募方法の詳細は下記サイトからご確認ください。
- 清竜人アイドルユニット『清 竜人25』
- プロフィール
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- 清竜人(きよし りゅうじん)
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15歳からオリジナル曲を作り始め、16歳の夏に自主制作した音源が後に多くの業界関係者の耳に留まる。17歳の夏、全国高校生バンド選手権「TEENS ROCK IN HITACHINAKA 2006」グランプリを受賞、副賞として同年のROCK IN JAPAN FESへの最年少出場を果たす。2009年3月、シングル「Morning Sun」でデビュー。同月にデビューアルバム「PHILOSOPHY」を同月リリース。2012年5月にリリースした4thアルバム「MUSIC」ではアニメ/ゲーム界のクリエイターとコラボ、堀江由衣や多部未華子ら声優&女優のゲストを迎えミュージカルの様な世界感をもったアルバムを制作。最近では自身の作品のみならず、堀江由衣やでんぱ組.incへの楽曲提供などプロデューサーとしてもその活躍の幅を広げている。
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