12月9日に2ndアルバム『COME TOGETHER』をリリースするQOOLAND。2011年に結成して以来、ロッキング・オン主催のコンテスト『RO69JACK 2013』でグランプリを獲得、そして昨年は5枚の作品をリリースするなど、順調に活動を続けてきているように見えていた。しかし、2ndアルバムのリリースに至るまでは紆余曲折があったという。
「本来の自分たちではない作品を出したくなかった」――四人はファンに嘘をつきたくなかったからこそ、昨年末に所属インディーレーベルを離れることを決意。そして最新作は「ファン参加型アルバム制作プロジェクト」と称し、クラウドファンディングで集めた費用でリリースをする。彼らが茨の道を乗り越え、「共に生きていこう」というどこまでもポジティブなメッセージを持った2ndアルバム『COME TOGETHER』を世に送り出すことができたのはなぜなのか? そこには結成以来変わらぬ、QOOLANDとファンの信頼があった。
ここまで自分たちは道のりを間違えてきてしまったな、という思いがあるんです。(平井)
―まず、アルバムタイトル『COME TOGETHER』に込めた想いを聞かせていただけますか?
平井(Vo,Gt):この言葉には、「どこまでも一緒に生きていこう」という意味が込められていて。ファンや周りにいるスタッフに呼びかけているようなタイトルですね。
―1曲目“Come Together”では<一緒に泣いていこうぜ><一緒に正しく生きていこう>と歌っていますが、今改めて周囲の人々に「一緒に生きていこう」と呼びかけたのはなぜでしょう?
平井:ここまで自分たちは道のりを間違えてきてしまったな、という思いがあるんです。昨年はレーベルに入って活動をして、「あれはあれでよかったよ」と言ってくれる人もいるんですけど、入って辞めてる時点で、やっぱり間違えてしまったと思っていて。レーベルを辞めたことで離れていっちゃった人もいて、だからこそ残ってくれた人たちに、「ついてこいよ!」って改めて呼びかけたかったんです。
川崎(Gt):「間違えた」というか、本来の活動の軸であるはずの大事なものが見えなくなっちゃってたんですよね。テレビとかラジオの仕事が増えて、それはそれで嬉しかったんですけど、目の前にいるお客さんを大事にできなかった。だから、ここでもう一度、自分たちのあり方を取り戻したいと思ったんです。
―レーベルにいた頃の活動に関して、具体的にどういったところが自分たちのあり方とずれていると感じていたのですか?
平井:自分たちの思想とか生き方と違う人って存在するじゃないですか。そういう人たちと上手くいかなかった。曲はお客さんの魂に刻み込むために作っているわけだけど、自分たちがバンドをやる上で一番譲れない部分をないがしろにされていたから、フラストレーションが溜まっていたんです。
川崎:バンドとしてのポリシーに反することをやらなきゃいけないこともあって、それが精神的に辛かったですね。
―立ち返ってみたときに、自分たちにとって大事なポリシーって何だったのでしょう?
平井:自分たちの周りにいるスタッフやファンが、QOOLANDがやっていることを見て思わず奮い起つようなことをやらなければならない、というのが僕のポリシーです。その人たちそれぞれの人生が豊かになるようなことや、QOOLANDというバンドの輪にいることが誇りになるような音楽を作りたい。
川崎:本当に客観的に見たら、バンドとレーベルと、どっちが正しいとか悪いとかないんですけど。ただ、QOOLANDとして満足していないものを出すのは意味がないし、お客さんに対する裏切り行為になってしまうという思いがずっとありました。
平井:レーベルを辞めた後に助けてくれたのは、その後も残ってくれたファンやスタッフのみんなだったんです。だからその人たちは本当にありがたいし、同時に申し訳ない気持ちでいっぱいで。その人たちへの思いを込めて今回のアルバムの曲を作ったんですけど、それでも辛気臭くない明るいパワーに溢れた曲ばかりができたことが、QOOLANDのいいところなんじゃないかと思っています。
必死にやると面白いし、サボってるとやっぱり人生つまらないですからね。(菅)
―アルバムを聴いていても、QOOLANDは負けることを何度も経験してきたバンドであることが伝わってきて、でもそこから立ち上がる貪欲さも持っている。辛い思いをしながらもくじけずに明るいパワーを曲で発揮できるのはなぜでしょう?
菅(Ba,Cho):一人だったら無理です、くじけてますよ。同じ意識を持ったメンバーがいて、それについてきてくれる人がいるから。
タカギ(Dr):それに、これまでもいろんな挫折をしてるからハートが鍛えられてる(笑)。
平井:今回も“叫んでよ新宿”のPVを撮った後に、素材を持ったまま監督がいきなりいなくなりましたからねぇ。
タカギ:あれはさすがにこたえたね。めちゃくちゃ楽しみにしてたのに……。
川崎:映像編集中に、突然音信不通になって。メールとか電話とかですぐに連絡が取れる時代だと思っていたけど、それがつながらなくなると、もうどうしようもなくなるんだということに気づきました。住所が分かってたら家とかまで行けばよかったんでしょうけど、住所なんて交換していなかったですし。
タカギ:生きてるかどうかも分からないよね。
川崎:まあ、でも、すぐに気持ちを切り替えました。生きていると色々ありますよね、バンドに限ったことじゃなく。
―そうやってサッパリしていて、なおかつ明るく話せるところがQOOLANDの強さであって、楽曲にポジティブなパワーを込めることができる理由なんでしょうね。
平井:人間、結局生きて死ぬわけだから、何事も必死でやらないと意味がないと思ってます。それに、やっぱり僕らはどんなことがあっても辞められないぐらい音楽が大好きなんです。
菅:何事も必死にやると面白いし、サボってるとやっぱり人生つまらないですからね。辛いことがたくさんあると、ユーモアのセンスも磨かれますよ(笑)。
ファンのみなさんの力はすさまじいなと思いましたね。(平井)
―今回のアルバムはクラウドファンディングという方法で制作資金が集められたわけですけど、実際やってみていかがでしたか?
平井:ファンのみなさんの力はすさまじいなと思いましたね。集まったお金からレコーディング代をスタジオに振り込むときは、その重みにドキドキしました。
―結果、目標金額(80万)の250%を達成されましたよね。それだけの資金を集めることができたというのは、このプロジェクトやQOOLANDの思いがファンにしっかり伝わった証だと思うのですが、趣旨説明は苦労もされたんじゃないですか?
平井:お客さんには、とにかく「こっちの方が絶対に面白いから」ということを伝えたくて。辛気臭く「アルバムを出すには、みなさんのお力が必要なんです!」ってアピールするのではなく、楽しくやろうってことを最初にバンド内でも話し合いました。
川崎:僕らも自分たちのアルバムが店頭に並ぶ日は、すごく楽しみにしてレコード店に行くんですよ。その感覚をファンのみなさんと一緒に味わいたかったんです。お客さんにも「これは自分が作ったアルバムなんだ」ということを体感してもらいたいと思いました。
―クラウドファンディングを経たからこそ生まれた楽曲も、今回のアルバムにはありますよね。
平井:もちろんそうですね。レーベルを辞めたときは、味方がいないと思う瞬間もあったんですけど、クラウドファンディングを通してたくさんの人が自分たちのことを助けようとしてくれていることが分かって。本当に自分たちが歌うべきテーマは、アルバムの1行目(<一人でも生きて行く事は出来る でもね誰かがいるなら はるか違う>)になっていることだったんだなって思ったんです。
―そうやって、QOOLANDの根本にはずっと変わらないファンへの思いや真摯さがあるからこそ、ファンと理想的な関係性を築けていて、クラウドファンディングに賛同してくれた人もたくさんいたんでしょうね。
平井:そうかもしれません。ファンのみなさんは、もしかしたらQOOLANDを代弁者として捉えてくれてるのかもなって思うこともあるんです。会社だったり、学校だったりに行くとき、「死ぬほど、楽しいぜ!」って思いながら行く人はそんなにいないじゃないですか。みんな何かしら「うまく折り合いをつける方法」を探しながら生きている。僕たちも自分たちの挫折とかを素直に歌っているから、信用してもらえてるのかもって思うんですよね。
どんな人でもいいから僕たちの作品を買ってほしい、ということではなくて、本当に好きな人にこそ聴いてほしい。(菅)
―『COME TOGETHER』のなかで、特に思い入れの強い楽曲をあえて選ぶとすればどれでしょうか?
平井:2曲目の“Shining Sherry”かな。
―その理由を教えてください。
平井:3月に熊本のフェスに行ったときのことなんですけど、ステージに上がったら目の前にお客さんが7人ぐらいしかいなかったんですよ。「おいおい、ここでやるのかよ」って思ったんですけど、その少ないお客さんのなかに1人、いつもライブを観に来てくれる人がいたんですね。
川崎:その子に向けて、全身全霊で演奏したよね。
平井:そうそう。そしたら、徐々にお客さんが集まりだして、結局規制がかかるくらいまでお客さんが埋まったんです。やっぱりそれは、そこでQOOLANDのファンが楽しそうにしてくれてたからだと感じていて。そのとき、“Shining Sherry”にはまだ歌詞がついてなかったんですけど、その場で<誰でもいいなら君がいい 誰でもいいわけじゃないぜ>という歌詞が生まれたんです。
菅:どんな人でもいいから僕たちの作品を買ってほしいということではなくて、本当に好きな人にこそ聴いてほしいと思ったんですよね。
平井:それに、そのフェスの後に歌詞を書き上げて、ライブで初披露したとき、一発でお客さんに響いたのがわかって。初めて味わうような感覚だったので興奮しましたね。どういう環境でもプレイしたら空気を変えられるようなエネルギーのある1曲ができたと思います。
―この曲の「君」は、もちろん聴いた人それぞれの愛する人や大切な人にも置き換えられるけど、QOOLANDがこの「君」に込めているのは、目の前にいるお客さんであると。
平井:1行目から、<欲しくなったもの 手に入るもの 増えすぎた事で君の事も見えなくなった>って歌ってますけど、まさにさっき話したように、目の前の人を見れなくなったこともあったけど、結局自分たちが書いたもの、ステージで歌っていくものというのは、全部目の前のお客さんのためでしかないですから。そういう強い気持ちを込めた1曲です。
みんなでやればもっと大きなところに行けるんだぜ、っていうのを見せたいです。「引き金を引いたのは、お前らやで」って。(平井)
―バンドをやっていく上で、成功に対する焦りとかはありますか?
菅:俺はあんまりないです。このアルバムを作ってから意識が変わって、俺らは俺らなりのやり方でやっていけばいいなって思えるようになったし、だからこそ「あれも試したい、これもやってみたい」と思うことがいっぱいある。だから周りと比べている時間がないです(笑)。
平井:自分は焦りではないですが、ファンのみなさんの期待に応えたいという気持ちはまだまだあります。このアルバムもファンのみなさんのおかげで作れたアルバムなので、ここで止まっているわけにはいかない。みんなでやればもっと大きなところに行けるんだぜ、っていうのを見せたいです。「引き金を引いたのは、お前らやで」って言いたい。勝手ですけど(笑)。
―今後のQOOLANDとしての理想のあり方ってありますか?
平井:今までいろんなステージでやらせてもらったんですけど、満足したことは一度もなくて。だから、「ここがゴール」と思えるゴールはまだ見つかってないんです。でも、とにかくQOOLANDをかっこよくしていくことが目標かもしれない。今QOOLANDを好きって言ってくれている人たちの輪がもっと大きくなって、今まで立ってないような舞台、例えば武道館とか東京ドームとかにも立てたらいいなって思います。
川崎:自分たちもわからないような未来にお客さんと行きたいなと思っていて。活動が思うようにできなかった時期もあっただけに、四人で演奏できるということ、それをお客さんが待っていてくれるというのが、とにかく幸せなんです。それを噛み締めてますね。
- リリース情報
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- QOOLAND
『COME TOGETHER』(CD) -
2015年12月9日(水)発売
価格:2,376円(税込)
STRD-10021. Come Together
2. Shining Sherry
3. セレクト(うーっはーっ!!)
4. ある事無い事
5. 一つの法則
6. ループは止まった
7. 言えない人が言えてたら
8. 叫んでよ新宿
9. ラストセンサー
10. ゆとり教育概論
11. Today Today Today & Yesterday
※初回特典としてパスコード付きカード「SHARE TOGETHER」封入
- QOOLAND
- イベント情報
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- QOOLAND
『“COME TOGETHER” RELEASE TOUR 2016』 -
2016年2月5日(金)
会場:千葉県 LOOK2016年2月6日(土)
会場:埼玉県 HEAVEN'S ROCK 熊谷 VJ-12016年2月7日(日)
会場:茨城県 水戸 LIGHT HOUSE2016年2月10日(水)
会場:大阪府 心斎橋 Pangea2016年2月12日(金)
会場:東京都 新代田 FEVER2016年2月13日(土)
会場:愛知県 名古屋 CLUB ROCK'N'ROLL2016年2月26日(金)
会場:広島県 CAVE BE2016年2月28日(日)
会場:岡山県 CRAZY MAMA 2nd Room2016年3月4日(金)
会場:新潟県 CLUB RIVERST2016年3月6日(日)
会場:栃木県 HEAVEN'S ROCK 宇都宮 VJ-22016年3月11日(金)
会場:静岡県 UMBER2016年3月25日(金)
会場:宮城県 仙台 FLYING SON2016年3月26日(土)
会場:秋田県 Club SWINDLE2016年3月27日(日)
会場:山形県 酒田 MUSIC FACTORY
- QOOLAND
- プロフィール
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- QOOLAND (くーらんど)
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2011年9月結成。平井拓郎(Vo,Gt)、菅ひであき(Ba,Cho)、タカギ皓平(Dr)、川﨑純(Gt)からなる4人組ロックバンド。活動開始から年間100本以上のライブ活動を行い続けている。ロッキング・オン主催のコンテスト『RO69JACK 2013』でグランプリを獲得。2014年には『教室、千切る.ep』『毎日弾こうテレキャスターagain』『片道4,100円』『街と大都市』『Rental』(TSUTAYAレンタル限定ミニアルバム)の5作品をリリース。2015年7月に「ファン参加型アルバム制作プロジェクト」と題し、クラウドファンディングを実施。2015年12月9日、2ndフルアルバム『COME TOGETHER』をリリース。
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