女王蜂、5枚目のフルアルバム『Q』。このアルバムについて、筆者はバンドのフロントマンであるアヴちゃんにこんな言葉を投げかけてみた。「このアルバムを的確にレビューするとしたら、音の構造を綿密に捉えるか、あるいは、もはや書き手が自分の人生を書くしかないような気がします」。すると、アヴちゃんはこう答えた。「私が読みたいのは後者。それが『Q』に対するアンサーだと思う」。
筆者は職業柄、「書く」という言葉を使ったが、これは「生きる」と言い換えてもいいかもしれない。このアルバムは、このアルバムを聴いた全ての人が、自分の人生を生き抜くことで完成するアルバムだ。
今回、CINRA.NETではPerfumeやBABYMETAL、星野源といったアーティストたちの舞台演出や振り付け、あるいはリオデジャネイロオリンピック・パラリンピックの閉会式で行われたフラッグハンドオーバーセレモニーの、総合演出と演舞振付なども手がけてきた演出振付家・MIKIKOとアヴちゃんの対談を実施した。「Perfumeに憧れてバンドを始めた」と公言するアヴちゃんにとって、いわばMIKIKOは「始まり」を指し示した人物のひとり。
「生きること」を、聴き手を選ばない強靭なダンスポップとして提示したアルバム『Q』を作り上げた今、アヴちゃんと語り合う相手は、自身のルーツであり、日本のエンターテイメント界を代表するひとりであるMIKIKOでなければいけなかった。「踊ることとは?」「表現することとは?」――それらの問いに対する本質が言葉になって溢れまくった濃厚な対談、どうぞ心ゆくまで読んでください。
Perfumeは巫女なんです。ダンスなどを媒介にして、普通ではありえない何かを呼び出している。(アヴちゃん)
―今日の対談は、アヴちゃんがMIKIKOさんの大ファンで、既にプライベートでも交流があるというところから実現したんですけど、まず、アヴちゃんがMIKIKOさんの存在を認識したのは、いつ頃ですか?
アヴちゃん:学生時代ですね。私はPerfumeが大好きで、PVを見て踊りを真似していたんですけど、そのときにMIKIKO先生を知りました。もう、その頃から私にとっては「先生」でしたね。直接、師事しているわけではないけど、真似して踊っている私も、何かを受け取っている感覚があったんです。
MIKIKO:ありがとうございます。
アヴちゃん:Perfumeって、替えが効かないシステムなんですよ。あの三人は、ダンスをはじめとした様々なものを媒介にして、普通ではありえない何かを呼び出している感覚があって。いわば、Perfumeは巫女なんです。なので、私にとってPerfumeは、すごくホーリーなものだったんですよね。
私が出会った当時は、まだアイドルブームが来る前で、歌って踊ることに「(笑)」が付いていた時期だったと思うんです。でも、Perfumeの登場によって、「(笑)」は取られたんだっていう実感が、私のなかにありました。
MIKIKO:音楽が好きだったり、振り付けが好きだったり、性格とパフォーマンスのギャップが好きだったり、Perfumeには、いろんな側面から好きになる人がいると思うんですけど、今、アヴちゃんが言ってくれたような感想は初めて聞いたから、ビックリ(笑)。アヴちゃんのように、彼女たちの上から降ってくる何かを感じられる人は少ないと思います。でもPerfumeの虜になる理由はそこにあると思う!
アヴちゃん:私は、本当にPerfumeに憧れて、「私も、私のなかにある何かを呼び起こしたい!」と思ったんです。「私もハイヒールを履いてみたい」と思ったし、「何にでもなれる」って気持ちが湧いてきた。基礎は何もなかったけど、それでも「やっていくぞ!」って思えたんです。
アヴちゃん:最近まで、私が「Perfumeに憧れてバンドを始めました」って言うと、冗談だと思われることも多かったんです。だからこそ、のっちが、私たちの新作『Q』に寄せて「何にでもなれそうな気がするの」ってコメントを書いてくれたことは、本当に嬉しかった。私が初めてPerfumeを見て感じた喜びを、彼女もそのまま書いてくれたっていうことだから。
MIKIKO:Perfumeの三人は、踊っているときが一番素敵で可愛いと思うんだけど、特にのっちは、Perfumeになるときの自分が好きだから踊っている子なんですよね。彼女は三人のなかで一番無口だし、休みの日は家にこもっているようなタイプなんだけど、本当に音楽が大好きで、自分が音になる瞬間を求めて踊っている。リハーサルのときから、彼女はキラキラしているから。
アヴちゃん:のっちの変身はすごいですよね。セーラームーンみたいな変身って――普通の女の子が特別な存在になるようなことって本当にあるんだなって思いました。でも、現実の変身はなだらかに起こるものなんですよね。なだらかに変身する人ほど、ステージに立ったときにすごい輝きを放つ。その変身がなだらかであればあるほどミステリアスだし、変わったことに気づいていない人も、きっといると思うし。
MIKIKO:うん、Perfumeの三人は、本当に無意識にそれをやっていて。私もアーティストとして、彼女たちを尊敬していますね。
「人」を信じているっていう点では、私たちは同志だと思います。(MIKIKO)
―MIKIKOさんは、女王蜂の存在をどのように認識していましたか?
MIKIKO:女王蜂は、映画『モテキ』(大根仁監督、2011年公開)で知りました。私は、閉じ込めてもはみ出してくる人間性や生々しさに感動を覚えてほしいと思って表現をしているんですけど、その点で、女王蜂とやっていることは一緒のような気がしています。
MIKIKO:たとえば、Perfumeについてテクノロジーの観点から感想を言ってくれる人は多いけど、「めちゃくちゃ熱い人たちだからこそ、テクノロジーとかけ合わせて面白いんだよ」って私は思っているし、アヴちゃんはそれをわかっている。「人」を信じているっていう点では、私たちは同志だと思います。
アヴちゃん:おこがましいけど、私もMIKIKO先生のことを同志だと思っています。やっぱり「人」ですよね。人は、永遠に人に「慣れない」んですよ。人と人が交わるところにはいつだって驚きがあるから。どれだけ音楽の享受の仕方が変わっても、ステージがなくならないのはそういうことだと思う。
アヴちゃん:この間、「ELEVENPLAY」(MIKIKOが主宰するダンスカンパニー)の公演を観させていただいたんですけど、あの現場では、誰もがMIKIKO先生の作るものを信じている状態が存在していると思うんです。今、バンドのライブでそういう景色はなかなか生まれないんですよ。承認欲求でやっているだけの人が多くて……そういう人たちを見ると、「『叫び』じゃないならやるなよ」って思ってしまうんです。
私は、「『人』を引き出すためのダンス」を作りたいし、限界を一瞬超えたときに初めて見えるものが見たいだけ。(MIKIKO)
―アヴちゃんにとって表現の本質は、「叫び」に近いと。
MIKIKO:ダンスも、「どう見られたらいいんだろう?」って考えながら踊ったら絶対にダメなんです。集中力が極限まで高まったとき、自分の思考と身体の表現が合致する瞬間に、その人だけが持っているものが出るんですよ。
それって、「今日はあの人が見ているから、かっこよく見せよう」とか、そんな邪念がちょっとでもあったらできないことで。ただただ自分を信じて、今できることを、その瞬間に、その空間で、音になって、やる。私たちがやっていることは、そういうことになんです。
アヴちゃん:言わば、「忘我」ですよね。我を忘れて、自分を入れものにする。
MIKIKO:うん。その状態で踊れるかどうかがダンサーの永遠のテーマだし、チャレンジすべき部分。その快感を知らないと、進めないんです。これは、ELEVENPLAYのダンサーにも伝えていることで。
MIKIKO:私は、そもそも踊れることを自慢したいとも、ダンスが世の中に広まればいいとも思っていないんですよ。とにかく、「『人』を引き出すためのダンス」を作りたいし、限界を一瞬超えたときに初めて見えるものが見たいだけ。人が無自覚のギリギリの状態で覚醒する瞬間って、すごく色っぽいから。
アヴちゃん:わかります! もう本当に先生、大好きです。
私は、このアルバムで「みんな」の話をしたかった。(アヴちゃん)
―MIKIKOさんは、女王蜂の新作『Q』をどのように聴かれましたか?
MIKIKO:今日も何度も聴いてきたんだけど、すごく踊れるアルバム。特に、アルバムの前半は自然と身体が動くんだけど、明るい曲ほど切ないんですよね。そして、後半の“Q”以降の3曲は、すごくあたたかい。
MIKIKO:人には、明るさと痛みが同じ温度であるものじゃないですか。それが、アルバムに熱量として出ているなって思いました。アヴちゃんという人のあたたかさがすごく伝わってきますよね。
アヴちゃん:ありがとうございます……本当に嬉しい。
MIKIKO:この間、「ステージの上から『踊れ!』と言うバンドマンは多いけど、その本人は本当に朝まで踊ったことがあるのか?」っていう話を、アヴちゃんとしたんです。上手い / 下手の問題じゃなく、朝まで踊り明かしたときの、あのとき感情や状態を知っている人じゃないと作れない曲はあると思うんですけど、女王蜂はそういう曲を作っていますよね。
アヴちゃん:私はこのアルバムを作る前、もっと人を知ろうと思って、朝まで素面で踊りながら、いろんな横顔を見たんです。踊り明かしたからこそミラーボールの美しさを感じたし、それに始発で帰る電車のなかからビル街を見たとき、「これ、夕暮れか朝焼けか、わからんなぁ」って思ったんですよ。そこには、嬉しくて涙が溢れるような、対岸にあるもの同士が同時にふわっと出てくる、藤色と橙色のような気持ちがあったんですよね。
―喜びと切なさが同時にこみ上げてくるような感じというか。
アヴちゃん:この気持ちや景色を音にしようと思ったら、自然にこのアルバムができあがったんです。自分ですごく大きいことを言うようだけど、2017年のダンスミュージックの決定打は、このアルバムやと思う。
MIKIKO:うん、うん。
アヴちゃん:女王蜂は、「メンヘラ」とか「サブカルチャー」というレッテルを貼られることもあるけど、このアルバムにはそんなものないと思うんです。たしかに今までの作品では、まるで私がジャンヌ・ダルクのように存在していた部分もあって。
―たしかに、聴き手がアヴちゃんを仰ぎ見るような側面があったように思います。
アヴちゃん:でも、ジャンヌ・ダルクを特別な存在たらしめているのは、最後に燃やされたからなんですよね。「じゃあ、彼女が燃やされなかったらどうなったんだろう?」っていう感覚が、このアルバムなんです。誰かを殉死させて、その特別性をファッションのように身につける……そういう文化から聴き手を引きずり下ろして、私は、このアルバムで「みんな」の話をしたかったんです。
表現者っていうのは、「気づき」を作る仕事じゃないですか。(アヴちゃん)
―この『Q』というアルバムには、本当に「みんな」という言葉がしっくりきますよね。聴き手の誰もが主役になれるアルバムだと思います。
女王蜂『Q』通常盤ジャケット(Amazonで見る)
アヴちゃん:うん。ヴィレヴァンにいる子にも、ドンキにいる子にもわかってほしいって思うから。もちろん、今作の曲も、これまでも曲も、全てが私の人生と紐づいていて。だけどこのアルバムを作るにあたっては、私という人間を知らなくても楽しんでもらえなくてはいけないっていう意識があったんです。
それはPerfumeを見て女王蜂を始めたことが、私なりのアンサーだったように、このアルバムを聴いた人が、その人生のアンサーに気づいてくれればいいなって思うから。今思えば、私は勝手にMIKIKO先生から「気づき」を受けたんだと思うんです。表現者っていうのは、「気づき」を作る仕事じゃないですか。
MIKIKO:そうだね。たとえば、「気づいたら涙が出ていた」っていうことを言う人がいるけど、そういうものを作れるのは、アヴちゃんのような人だと思う。
アヴちゃんの考え方を知らなくても、世の中の人が、アヴちゃんから生まれた音楽を聴いて、なぜだかわからないけど涙を流す……そういうものを作ることが、私たちの役目だと思うから。それができる人は限られていると思うし、簡単に言うと「本物」はそれほどの想いを持って作っている。アヴちゃんは「本物」だと思います。
「流行らそうと思って作ったものは売れねぇんだよ!」って思います。(MIKIKO)
―MIKIKOさんは、PerfumeやBABYMETALの振り付けや演出をされることで、常に「みんな」とも対峙してきたのではないかと思うんです。去年の「恋ダンス」(ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』及び、その主題歌である星野源“恋”のPVで披露されたダンス)も、とても大きなムーヴメントになりましたよね。MIKIKOさんご自身は、あの状況をどのように見られていたんですか?
MIKIKO:もちろん、「『恋ダンス』の人」みたいに言われることは違和感があるんですけど、そこまでだったらまだいいんです。ただその後、「『恋ダンス』みたいなのをお願いします」っていう発注を恥ずかしげもなくしてくる人がいるんですよね。まさに日本のシーンを象徴しているなって思いました。
―なるほど。
MIKIKO:「恋ダンス」は流行らせようと思って作ったわけではないし、偉そうに聞えるかもしれないけど、「流行らそうと思って作ったものは売れねぇんだよ!」って思います。下心を持って作ったものではなく、発信する側が全員本気でぶつけ合ったものしか人の心に届かないと信じて、誠意を持って作るだけですね。
アヴちゃん:手加減は絶対にバレますよね。私、MIKIKO先生を見ていて思うのは、最強の委員長だということで。
―どういうことですか?
アヴちゃん:今の時代って、みんな、委員長よりも副委員長の方が好きなんですよ。責任を負って全員を率いるよりも、それなりに権限があって似たことができるポジションを美味しいと思う人が多い。ただ、副委員長は最強の委員長には絶対に勝てないと思うんですよね。
―MIKIKOさんは、まさにそういう方だと。
アヴちゃん:私は、MIKIKO先生を通して初めて、ダンスに解釈を持つことができるということを知ったんです。MIKIKO先生は、その道を作った人だと思う。Perfumeの世界観を踏襲しようとした人たちはいっぱいいたはずですけど、MIKIKO先生には、レッテルを燃やすぐらいの熱さが毎回あるなって思います。
MIKIKO:レッテルを貼られがちだから、一生懸命燃やしているんです(笑)。
誤解を恐れずに言うと、わかってもらおうと思ってやったことはないかも。(MIKIKO)
―踊りや振り付けというのは、人を自由にする反面、誰もが同じ動きをすることで、人を規制する力も持っている、二面性のあるものでもありますよね。
MIKIKO:うん、そうですね。型を知らなければ踊れないダンスもあるし、何も知らないからこそ踊れるダンスもある。私はどちらでもいいと思います。もちろん、「インプロで踊れてなんぼだ」っていう発想から、振り付けを馬鹿にしている人もいるだろうし。でも結局、私の振り付けって、私のフリースタイルを5人が真似したら「振り付け」になったっていうだけなんです。1人が踊ったらフリースタイルだけど、それをお揃いで踊るから振り付けになっているだけで。
アヴちゃん:素敵……じんとしました。今って至るところで「手段の目的化」が溢れているじゃないですか? ここまで目的を目的のままで、どんどんとすごいものを呼び起こしている先生は、本当にすごいと思います。それは自分たちも目指すところだったし、突っ張ってきたところなんです。
―MIKIKOさんにとって振り付けを作ることが目的じゃないように、アヴちゃんにとっても音楽を作ることが目的ではないと。
アヴちゃん:「あくまで目的があってやっている。手段はいとわない」っていう。でも、だからこそ孤独になったり、活動休止してしまったときもあったんです。先生は、そこまで強くご自身の道を進まれていくなかで、「誰もわかってくれへんのかな?」って、孤独を感じていた時期はありませんでしたか?
MIKIKO:誤解を恐れずに言うと、わかってもらおうと思ってやったことはないかも。もちろん、踊りが認めてもらえることや、踊ってくれる相手が楽しいと思ってくれることは大前提だけど、自分の目的を誰かに強要する気もないし、今でも「対自分」で作っているから。
アヴちゃん:……素敵です。
自分のことを無駄にしている人に腹が立つんですよね。「持て余している場合じゃないよ」って、一人ひとりに言いたい。(MIKIKO)
MIKIKO:アヴちゃんがすごいのは、若くして、こんなにも明快に自分の思考を話せるところだと思う。私は、28歳まで自分の思考と器が一致しない感覚があったんです。当時の私はダンサーと教えることを両立していて、みんな慕ってくれてはいたけど、自分のなかではピンときていなくて。
28歳のときに「演出家と振付師になりたい」って思ったんですけど、その「なりたい」を見つけられたことが、すごく大事だったんですよね。自分の全エネルギーを使えるものを知ったし、そこから生まれる馬鹿力を、身をもって知ったから。
アヴちゃん:私もバンドを始めたとき、自分が今まで生きてきたことや、自分が内包していた熱を形にできるかもしれない……そんな「やってやった感」や「手に入れた感」があって。それが、先生が28歳のとき感じた合致に近い、私にとっての体験だったのかもしれないです。
MIKIKO:だからこそ、自分のことを無駄にしている人に腹が立つんですよね。どんな人でもすごいから。「持て余している場合じゃないよ」って、一人ひとりに言いたいし、私の振り付けを踊った人には、「私はこの角度で可愛く見えるのかも」っていう喜びを知ってほしい。やっぱり、自分の嫌なところやコンプレックスだって、チャームポイントに変えていけるものなんですよね。それは、世の中に訴えたいですね。
アヴちゃん:そうですよね。バンドマンには、「解き放つ」という言葉を歌詞でしか使えない人がすごく多いんですよ。でも、日常生活のなかで誰しもが解き放たれる瞬間ってあると思うし、その瞬間があったからこそ、「解き放つ」という言葉があるわけですよね。MIKIKO先生の作る世界には、その「解き放つ」感覚が、すごくフラットに存在していて。今、こうやってお喋りしていても、佇まいや、指先の動き一つひとつに、その感覚が宿っているのを感じます。
私は、自分の心の形を知りたいんです。(アヴちゃん)
―MIKIKOさんは、先ほどアヴちゃんを「本物」だとおっしゃいましたけど、ステージに立つために必要な資格って、あると思いますか?
MIKIKO:資格のようなものは、特にないと思うんですよ。ただ、「何かになりたい」じゃなくて、「自分を出したい」っていう人にステージに立ってほしいな、とは思います。たとえば、ニューヨークのハーレムやゲットーには、生活の貧しさや、ある日突然、仲間が殺されてしまうような環境にいる悲しみや怒りを身体で表すために生まれたダンスがあるんですね。
MIKIKO:でも、その悲しみや怒りを知らない日本人が、その身体の動きだけをそのまま真似することに、私はすごく気持ち悪さを感じていて。別に、貧しくない人が無理に貧しくなる必要はないんですよ。それぞれの土地やシチュエーションに、たぎる想いはあるはずなんだから。
アヴちゃん:何かに触れたとき、その人自身がどうするか?――芸術ってそういうことですもんね。でも、今の日本の音楽も、アメリカやイギリスのナードなミュージックシーンから、エッジーな部分を持ってきて、それを膨らませて作っているようなものが売れている。それは変な感じがするんです。もっと、自分のなかから生まれてくるものに目を向けて、捉えてほしいなって思う。
―アヴちゃんが生み出し続けているのは、まさにそういうものですもんね。
アヴちゃん:うん。私は、「『自分』ってなんなんやろう?」っていう自問自答を無意識にたくさんしてきたし、答えに辿り着いたまま生まれてきた気もするんです。男でも女でもありながら平然と生きているし、イスラムの名前で、仏教徒で、クリスマスが誕生日で……この体型も含めて、全てがデザインされて生まれてきたんじゃないか? って思ってしまう。……でも、そのデザインはデザインとして、私は、その先にある、自分の心の形を知りたいんです。
―そのためにあるのが女王蜂なんですね。
アヴちゃん:そう。「『自分』とは何だろう?」って突き詰めていくことは、すごくカロリーのいることだけど、でも、「なぁに?」って、自分で自分に問うことは、すごく重要なことだと思うんです。それを「怖い」とか「痛い」と思うんじゃなくて、「私は今どう思っているんだろう?」「こう思っているんだよ」っていう自分との対話は、自分に向き合っていないとできないし。そこにある辛さもまた、よさですよね。
―今日のお二人の対話から、女王蜂が如何に今のバンドシーンにおいて特別な存在かが如実になったし、同時に、女王蜂と共鳴する存在に、MIKIKOさんのような日本のエンターテイメント界の第一線にいる方がいたという希望も明らかになった気がします。
アヴちゃん:うん、そうですね。昔の自分だったら「私も頑張ります!」と言うのが精一杯やったと思うんです。でも今は、「一緒に闘いたいです」って言える。「いつか一緒に何かやれたら嬉しいな」って思えている。それが本当に嬉しいです。
MIKIKO:こちらこそ。女王蜂には、いつかPerfumeと対バンしてほしいです。
アヴちゃん:絶対やりたい!
―それは是非、観たいですね。
アヴちゃん:もちろんPerfumeの三人には、会うと未だにドキドキするんですけどね(笑)。でも、今は彼女たちが「ライブよかったよ!」ってニコニコしながら言ってくれるし、今日も、こうやってMIKIKO先生と話すことができた。これは、私にとって「夢を叶えた」っていうことなのかもしれないけど、「じゃあ、その後どうするの?」って問われたとき、私は「闘う」という言葉を使いたいです。
今の日本で、女王蜂がスタンダードの位置に行けたら、本当に面白くなると思うんですよね。今日、そこに行きたいっていう欲望が、覚悟と共に芽生えました。そのために、みんなが理解できるんだけど、ディテールと祈りと呪いは私にしかわからない、そんな謎がある作品をこの先も作っていけたらなって思います。
- リリース情報
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- 女王蜂
『Q』初回生産限定盤(CD+DVD) -
2017年4月5日(水)発売
価格:3,800円(税込)
AICL-3289/90[CD]
1. アウトロダクション
2. 金星 Feat.DAOKO
3. DANCE DANCE DANCE
4. しゅらしゅしゅしゅ
5. 超・スリラ
6. 失楽園
7. Q
8. つづら折り
9. 雛市
[DVD]
1. 金星(2016.07.09 at Zepp DiverCity)
2. ヴィーナス(2016.07.09 at Zepp DiverCity)
3. スリラ(2016.07.09 at Zepp DiverCity)
4. 折り鶴(2016.07.09 at Zepp DiverCity)
5. 告げ口(2016.07.09 at Zepp DiverCity)
6. 鬼百合(2016.07.09 at Zepp DiverCity)
7. 始発(2016.07.09 at Zepp DiverCity)
8. 緊急事態(2016.07.09 at Zepp DiverCity)
9. 金星(Music Video)
10. DANCE DANCE DANCE(Music Video Full ver.)
11. 失楽園(Music Video Full ver.)
12. Q(Music Video Full ver.)
13. アウトロダクション(Music Video Full ver.)
- 女王蜂
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- 女王蜂
『Q』通常盤(CD) -
2017年4月5日(水)発売
価格:2,800円(税込)
AICL-32911. アウトロダクション
2. 金星 Feat.DAOKO
3. DANCE DANCE DANCE
4. しゅらしゅしゅしゅ
5. 超・スリラ
6. 失楽園
7. Q
8. つづら折り
9. 雛市
- 女王蜂
- イベント情報
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- 『女王蜂 全国ワンマンツアー2017「A」』
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2017年5月25日(木)
会場:京都府 磔磔2017年5月27日(土)
会場:香川県 高松 DIME2017年6月2日(金)
会場:宮城県 仙台 darwin2017年6月3日(土)
会場:岩手県 盛岡 CLUB CHANGE WAVE2017年6月11日(日)
会場:石川県 金沢AZ2017年6月25日(日)
会場:愛知県 名古屋 BOTTOM LINE2017年7月2日(日)
会場:東京都 お台場 Zepp DiverCity Tokyo
-
- 『女王蜂単独公演 全国ツアー2017「A」番外編』
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2017年7月29日(土)
会場:大阪府 OSAKA MUSE2017年8月8日(火)
会場:東京都 鶯谷 キネマ倶楽部2017年9月2日(土)
会場:北海道 札幌 ペニーレーン242017年9月10日(日)
会場:兵庫県 神戸VARIT.
- プロフィール
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- 女王蜂 (じょおうばち)
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2009年、アヴちゃん、やしちゃん、ルリちゃんの3人で結成。2010年7月、『FUJI ROCK FESTIVAL』の「ROOKIE A GO-GO」枠に選出され出演を果たし、2011年にメジャーデビュー。同年公開された久保ミツロウ原作の映画『モテキ』のテーマソングおよび出演バンドへの抜擢。独創的かつ衝撃的なパフォーマンス、そのニュース性が音楽業界のみならず各方面で常に話題に。2017年4月、通算5枚目となるアルバム『Q』をリリースした。
- MIKIKO (みきこ)
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演出振付家。ダンスカンパニー「ELEVENPLAY」主宰。Perfume、BABYMETALの振付・ライブ演出をはじめ、様々なMV・CM・舞台などの振付を行う。メディアアートのシーンでも国内外で評価が高く、新しいテクノロジーをエンターテインメントに昇華させる技術を持つ演出家として、ジャンルを超えた様々なクリエーターとのコラボレーションを行っている。
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