「東京」=「都会」かというと、必ずしもそうではない。東京の西部に位置する多摩エリアには、山や渓流など豊かな大自然が広がっている。そこで今回は、プライベートでも仲良しという青柳文子と小谷実由の二人に、奥多摩の大自然を感じてもらうべく、関東随一の規模を誇る日原鍾乳洞と、この3月に正式オープンを控えた奥多摩初の常設型グランピング施設「Circus Outdoor Tokyo」を訪れてもらった。
ともに人気モデルでありながら、大分県別府市で育ち、実はアウドドア好きという青柳と、生まれも育ちも東京の下町で、趣味は純喫茶めぐりという小谷。姉妹のように仲良しでありながらも、ある意味対照的な趣味を持つ彼女らは、奥多摩の大自然の中で、何を見て、どう感じたのだろうか。
正直「奥多摩って言ったら、川とバーベキューでしょ?」ぐらいのイメージしかなかったです。(小谷)
—今日は奥多摩で、日原鍾乳洞巡りとグランピングを体験してもらったわけですが、まずは、全体を通しての感想から聞かせていただけますか?
小谷:楽しかった!
青柳:うん、想像以上に楽しかったね。特に、グランピング(自分たちでテントを張ったりせず、自然の中でホテル並みの贅沢なサービスが受けられるキャンプスタイル)っていうのは、雑誌とかでなんとなくのイメージはあったんですけど、もっとラグジュアリーを愛する人たちのたしなみだと思っていて。実は、そんなに自分に合うイメージを持っていなかったんですよね。
小谷:はははは。
青柳:けど実際に来てみたら、普通に「超やりたい!」って私も思いました(笑)。
小谷:うんうん。私は、そんなにアウトドア慣れしていないんですけど、そんな私でも、すぐに溶け込める感じがあって。それがすごく嬉しかったですね。
—最初に訪れた、関東随一と言われる規模を誇る日原鍾乳洞は、いかがでしたか?
青柳:結構すごかったというか、想像していたよりも全然大きくて、本当に驚きました。
小谷:大きかったよね。入り口からしばらくは、狭い洞窟みたいな感じだったのに、途中でいきなりホールみたいに開けたところに出て。あんなに天井が高い洞窟だとは思わなかったです。あの空間が自然に作られたっていうのが、ちょっと信じられなかった。
奥多摩の日原鍾乳洞に到着(詳細はこちら)
青柳:うん。やっぱり、奥多摩の自然はすごいなって思いました。しかも、今日回ったのは、全部東京の中なんですよね。東京に住んでいる人でも、奥多摩が実はこんな感じになっているのは、結構知らない人が多いんじゃないかな。
小谷:そうだよね。私だって、正直「奥多摩って言ったら、川とバーベキューでしょ?」ぐらいのイメージしかなかったです。なので、あんな巨大な鍾乳洞が広がってるとは、夢にも思っていなかったし。そういう意味では、冬に来ても楽しめるなって思いました。
水琴窟(すいきんくつ)にて、岩の下に隠れた、水を張った龜(かめ)に落ちる雫の音に耳を傾ける二人
—最近は多くのメディアでも、奥多摩の自然の魅力が紹介されていますが、実際に訪れてみるとやはり迫力が違いますよね。
小谷:写真で見るのと実際に行くのでは、やっぱり全然違いますよね。
青柳:私の場合、ネットで写真を見て満足しちゃうことがすごく多いんですよね。「どこか旅行に行こうかな」って思ってインスタのハッシュタグで検索しても、温泉とか雪景色の写真を見ていたら、「なんかもう行かなくてもいいかも」って満足してしまったり(笑)。でも、それではダメだなって、今日改めて思いました。
小谷:うん。どんどん空気が澄んでいく感じとか、鍾乳洞の中のちょっとひんやりとした感じや湿度は、実際行ってみないとわからないよね。かつ、壮大なものを目の当たりにすることによって、よりいっそう感動が倍増するというか。やっぱり、実際に足を運んでみないとダメだなって私も思いました。
みんなスマホを眺めるだけじゃなく、もっと五感で感じたくなっているのかな。(青柳)
—「山ガール」という言葉が生まれたあたりから、若い女性のあいだで、自然の楽しみ方が、ちょっと変わってきたように思うのですが、それについてはいかがですか?
小谷:最近も「女子キャンプ」みたいな特集があったりしますもんね。グランピングとかは、まさにそういう流れの中で生まれてきたものだと思うし。
青柳:何でそうなったんだろうね。
小谷:うーん、何でなんだろう。
—女性たちが、都会の生活に疲れ始めているのでしょうか?
青柳:ああ、疲れてるのかなあ。
小谷:SNSが普及して、入ってくる情報量がどっと多くなってきたのもちょっと関係しているのかもしれないですよね。
青柳:ああ、みんなスマホを眺めるだけじゃなく、もっと五感で感じたくなっているのかな。
小谷:うん。今日だって車に乗りながら外の風景とかを見ていると、普段自分が暮らしているところとまったく違う景色が広がっているわけじゃないですか。そうすると、「何かもう全部どうでもいいなあ」っていう感じになってくるというか。
—(笑)。それは良い意味で?
小谷:もちろん(笑)。良い意味で、「ああ、何でこんなにちっちゃいことを悩んでいるんだろう」とか、「何でそんなことを気にしているんだろう」って思いながら、「別にどうでもいいじゃん」って気持ちが広くなっていく感じは確かにしましたよね。
青柳:私は中学生の頃、北海道に1年ぐらい住んでいたことがあるんですけど、朝起きて窓の外を見ると、雑木林にリスやキタキツネがいたりとかしたんですよ。ホント、朝は小鳥の鳴き声で目覚めるみたいな生活をしていたことがあって。
小谷:そんな時代があったんだ?
青柳:うん(笑)。実は、その頃の自分の五感の冴え方がちょっと忘れられないところがあって。自分の中のいろんな感覚が研ぎ澄まされて、感情とかもすごく敏感になっていってくというか。
都会で長く暮らしていると、どんどん「無敵モード」の感覚が鈍ってくるんですよね。(青柳)
—青柳さんは、大分県の別府で生まれ育ったんでしたっけ?
青柳:生まれは東京の品川なんですよ。だから、子どもの頃は奥多摩にキャンプに来たりしていて。で、5歳ぐらいのときに別府に引っ越したんです。別府は自然というよりは温泉のある観光地なので、中学の頃にちょっとだけ暮らしていた北海道の記憶が残っているんですよね。自分の感覚が研ぎ澄まされて、「私、何でもできるんじゃないか?」っていう感じになるというか。
小谷:「無敵モード」だ。
青柳:そうそう(笑)。何か無敵モードになっちゃって。その感覚って、やっぱり都会で長く暮らしていると、どんどん鈍ってくるんですよね。だから、定期的に自然に触れていたいというか、私が意外とアウトドアが好きなのは、そういう理由もあるんですよね。
—なるほど。小谷さんは生まれてからずっと東京ですか?
小谷:東京です。でも下町だったから、都心への憧れのほうが自然と触れたいみたいな願望よりも、ずっと大きくて……。
—東京の下町と言うと、どのあたりになるのでしょう。
小谷:葛飾区です。だから、少し中途半端な場所なんですよね。確かに田舎ではないけど、いうほど都会ではない。ちょっと足を伸ばせば、本当の都会に行けてしまうわけじゃないですか。そうなると、やっぱり子どもの頃は、どうしても街のほうに惹かれていくというか。
青柳:家族と一緒に行楽みたいな感じで、山登りに行ったりはしなかったの?
小谷:うーん、家族で行ったことはないかも。それだったら、お台場とか原宿に遊びに行っちゃうとか。
青柳:じゃあ、いわゆる自然体験みたいなものが、あんまりないまま育ったんだ。
小谷:学校の行事でしかなかったかも。高尾山に登るとか。あと、運動も別に好きじゃなかったし。だから、どんどんインドアなものが好きになっていって。ただ、大人になってからというか、最近になって、旅行がすごく好きになったんですよ。
—ほう。
小谷:いつも自分が暮らしているところとは、まったく違う次元の場所に行けて、それこそ五感が研ぎ澄まされるじゃないですけど、頭の回転が全然変わるんです。普段とは目につくものや気づくことも違うし。で、だんだん自然とかにも興味が出てくるようになってきて。
大人になるにつれて、そういう思考になれたのは、本当に良かったなって思うし、やっと気づいた感じが自分ではちょっとあるんですよね。
—そんな小谷さんを、アウトドアが好きな青柳さんは、どう見ているのでしょう?
青柳:うーん、そんなにインドアな感じだっていうのを、これまで知らなかったかも(笑)。そういうのとは関係なしに、この人とだったら何をしても一緒に楽しめるだろうっていうのは思っていて。だから今日はちょっとびっくりしたかもしれないです。「とんだもやしっ子だったんだ!」っていう(笑)。
小谷:はははは。
都会的な部分と自然的な部分が融合したら、こんないいものになるんだ。(小谷)
—鍾乳洞を見学しているときの様子が、結構対照的でしたよね。階段があったら、とりあえず全力で駆け上がって、上まで行ってみようとする青柳さんと、それには同行せず、いまいる場所をじっくり眺めながら、青柳さんを待つ小谷さんみたいな。
青柳:(笑)。でも実は昨日、私のところに、「私の最大限のアウトドアファッションがこれだ」みたいな感じで写真が送られてきて……。
小谷:ちょっとアクティブな格好がいいですって言われていたんですけど、「アクティブって何だろう」って、ちょっと確認したくて……。
青柳:そこにまず、びっくりしたっていう(笑)。
小谷:私、ダウンジャケットとかも持ってないから……それでも今日は、全然平気だった!
青柳:うん、それがすごく良いところだよね。
小谷:いろいろ考えた挙句、結局普通に街に出る格好で今日は来てみたんですけど、それでも全然平気でした。でも、私みたいなことを思っている子って、結構いっぱいいると思うんですよね。
—なるほど。
小谷:そういう意味で、グランピングはすごくいい入り口になると思いました。私のようにアウトドアがあんまり得意じゃない子でも、大丈夫というか。
青柳:そうだよね。グランピングだけだったら、サンダルで来ても多分大丈夫だと思う。
グランピング施設、「Circus Outdoor Tokyo」の「ASPLUND」テントに到着した二人(詳細はこちら)
小谷:でも、豪華なテントの中から、一歩外に出れば、ちゃんと夜空が見えたり、自然の良さも感じられるし、外ではキャンプファイヤーとかもやっているし。しかも食事に関しては、ちゃんとコース料理が食べられたりとか、ホントいいとこ取りな感じ。そのバランスが、すごくいいと思ったんですよね。都会的な部分と自然的な部分が融合しているというか、それを掛け合わせたら、こんなにいいものになるんだっていう。そういう驚きがありました。
青柳:しかも、そういうものが、東京の中にあるんだっていう。ホント、わざわざ来てみる価値はあるなって思いました。
小谷:うん。都内だけど、いい感じに足を伸ばしてきたみたいなところもあるし。
テントの内観。テントは全部で5種類あり、その内観はコンセプトから調度品まで、それぞれ異なる
青柳:そうだね。都心からだと電車で2時間ぐらい掛かるから、ちょっとした旅気分にもなれるし。さらに、荷造りしないでいいっていうのが、すごくいいかも。重い荷物を持ってこなくても、テントの中には何でもそろっているから全然大丈夫っていう。
小谷:やっぱりキャンプって、事前にいろいろ用意するのが、結構大変だったりするじゃないですか。基本的に、何もないところに行くわけだから、全部自分で準備して持ってこなきゃいけないっていうか。そこに、ちょっと億劫なイメージがあったんですよね。
グランピングだったら、お母さんやおばあちゃんも連れて家族みんなでキャンプを楽しめる。(青柳)
—そもそも、二人はキャンプとかされるんですか?
小谷:私は、まったくしたことないです。
青柳:好きは好きですね。そんなにしょっちゅうは行かないけど、結構行っているほうだと思います。ただ、やっぱりキャンプって……ちょっと申し訳ないんですけど、得意な人と一緒じゃないと、あんまり行きたくないっていうのがあって。
小谷:あははは、確かに。
青柳:でも、グランピングだったら、そういう人がいなくてもいいですよね。やっぱり、キャンプ中に考えなきゃいけないことは、いろいろあるじゃないですか。もうすぐ日が暮れるから、明るいうちにあれを準備して、これを準備してとか。そういうのがないから、グランピングはホント楽だなって思う。
小谷:もちろん、そういう準備が楽しいみたいなこともあるとは思うんですけど、やっぱり気軽にはできないよね。
料理は、「Circus Outdoor Tokyo」内にあるRestaurant OTTOの君塚博幸シェフが担当
君塚シェフの作ったメインディッシュに舌鼓を打つ二人。料理の内容は、現地に足を運んでのお楽しみ
—キャンプも楽しいですけど、やっぱりどこか「行くぞ!」って気合いを入れないといけないところがあるというか。
青柳:そういう意味では、お母さんとかも連れてこれそうですよね。お母さんとかおばあちゃんをキャンプに連れてくるのは、ちょっと申し訳ない感じがあるけど、グランピングだったら、家族みんなで楽しめるだろうし。あとは、赤ちゃんがいたりしても、大丈夫そうですよね。
小谷:そうだね。小さい子どもがいても、グランピングなら快適に過ごせそう。
普段の現実とは少し離れているところだからこそ、普段できない話ができると思う。(小谷)
—それにしても、グランピングのテント内の調度品には、驚きましたよね。
青柳:ホント、そうですよね。まさに「インスタホイホイ」というか(笑)。絶対写真を撮って、インスタにアップしちゃいますよね。
小谷:実際、アップしちゃったもんね(笑)。
青柳:うん(笑)。ただ、「インスタ映え」だけで終わらせるのはもったいない。もしホントに泊まりにくるんだったら、写真は多分撮っちゃうだろうけど、それをアップするのは帰りの電車の中でやるとか……。
小谷:ちゃんと、あの雰囲気を楽しんでほしいよね。まあ、写真は撮っちゃうと思うけど(笑)。
実際に掲載されたこの日のInstagram画像
青柳:あと、泊まるんだったら、やっぱり楽しいのは、夜の語らいじゃない? 星空を見ながら、ちょっと夢とかを語っちゃったりして。
小谷:それはもう、都心のカフェとかではできないような話をしちゃうでしょうよ(笑)。心の奥底でずっと思っていたけど、ちょっと恥ずかしくて言えなかったことが、言えちゃうと思う。
青柳:キャンプファイヤーの炎を見ながら語らったりね。
小谷:何かやっぱり、普段の現実とは少し離れているところだからこそ、普段できない話ができると思うんですよね。それこそ、さっき言った「全部どうでもいいじゃん」じゃないですけど、心が解放されているから、良い意味で気を使わなくなるだろうし、きっと自然体になれると思う。
—最初の話ではないですけど、実際体験した人が増えるにつれて、グランピングのイメージも変わっていくかもしれないですよね。
青柳:そうですよね。何か勝手にイケイケなイメージを持っていたかも(笑)。
小谷:そうだよね(笑)。そういう意味でも、もっと一般化してほしいかも。多分、どんな人でも楽しめるものだと思うので。
さっき覗かせてもらったテントって、それぞれ世界観がはっきりしていて、内装のテーマもちゃんと統一されていたじゃないですか。サーカスの控室のイメージとか。そういう意味では、コスプレをする人たちも、結構ハマるんじゃないかなって思いました。あのテントの中で、コスプレ写真を撮っても、ちょっと面白いんじゃないかなって。
「Circus Outdoor Tokyo」公式Instagramにアップされている、サーカスの控室をイメージしたテント『Sheep Ship』(内装:THE GLOBE)
—確かに、ちょっとロールプレインゲームに出てくるような世界観だったかもしれないです。
小谷:そういう仲間でやってきて、みんなでワイワイ楽しんでもいいと思うし。そうやって、いろんな人たちが、いろいろなやり方で楽しめるものなんじゃないかなって思いました。
—そもそも、グランピングの文化自体、さまざまなカルチャーが入り混じった集合体みたいなところがありますもんね。
小谷:そうですよね。私たちが普段見ているものとは全然違うというか、ある意味現実離れしたところもあって。そういう意味では、ちょっとテーマパークっぽいところがあるかもしれないですよね。
—日原鍾乳洞もそうですが、そういう場所が、東京の中にあるというのが、今日のポイントであり、最大の発見でしょうか。
青柳:そうですね。私も東京で暮らすようになって結構経ちますけど、まだまだ東京には、知らないことが多いなって改めて思いました。
小谷:うん。やっぱり、「東京」とひと口に言っても、都心があって、自然があって、私が育った下町みたいなところもあるわけで。そうやって、いろんなグラデーションがあって成り立っているんだなって思ったし、これを機会に、改めていろんな東京を訪ねてみたいなって思いました。
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- 日原鍾乳洞
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関東随一といわれる規模を誇る鍾乳洞。荘厳な雰囲気を漂わせる白衣観音をはじめ、巨大なカエルを思わせるガマ岩、時の彼方に引き込まれそうな天井知らずなど、幻想的な景観を繰り広げている。とくに新洞部分はみごとに成長した石筍、石柱の数々が乱立する別世界。想像を超えた大自然の神秘に出会える。
- プロフィール
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- 青柳文子 (あおやぎ ふみこ)
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1987年12月24日生まれ、大分県出身。モデル・女優。独創的な世界観とセンスで同世代女性の支持を集め、雑誌に、映画、TVドラマなど多方面で活躍中。昨今では、映画や旅行について、コラムを連載するほか、ファッション・ビューティ関連商品のプロデュースを行うなど、多彩な才能に人気を博している。
- 小谷実由 (おたに みゆ)
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ファッション誌やカタログ・広告を中心に、モデル業や執筆業で活躍。一方で、様々な作家やクリエイターたちとの企画にも取り組む。昭和と純喫茶をこよなく愛する。愛称はおみゆ。
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