最上もがヌード展を語る。アートかエロか?議論自体がナンセンス

「ヌード」をテーマとした作品のみに焦点を当てた国際巡回展『ヌード NUDE ―英国テート・コレクションより』が、横浜美術館で開催されている。

日本初公開となるロダンの大理石彫刻『接吻』をはじめ、テートのコレクションによってたどる、西洋美術における裸体表現の歴史。絵画、彫刻、版画、写真など、134作品からなる本展を、かつては自身も美術系の学校に通っていたという最上もがは、果たしてどう見るのだろうか。横浜美術館の学芸員・長谷川珠緒の案内のもとで鑑賞したのち、その感想と思うところを尋ねた。

みんな、新しい表現方法を生み出したいというか、多分だんだん飽きてくると思うんです。(最上)

—今回の展示をひと通りご覧になって、最上さんは、どんな感想を持ちましたか?

最上:すべてが理解できたわけではないですけど、テーマがヌードで共通している分、それぞれの時代によってどういう作品が好まれたのか、まったく違ったんだなと感じましたね。

それぞれの時代の人が試行錯誤しながら、自分たちがいいと思っている方法でヌードを表現していて、また次の時代には違う方法が出てくる。みんな、新しい表現方法を生み出したいというか、多分だんだん飽きてくると思うんです。

最上もが / スタイリスト:ヨシダミホ、ヘアメイク:澤西由美花(クララシステム)
最上もが / スタイリスト:ヨシダミホ、ヘアメイク:澤西由美花(クララシステム)

最上もが

—なるほど、面白いですね。

最上:いままではこうだったけど、自分はそれとは違う個性を出したいから、こういうやり方を試してみるっていう。そうやって、どんどん挑戦していきながら、新しく評価されるものがあったり、消えてしまうものがあったりで、その繰り返しだったのかなって思いながら見ていました。

ハモ・ソーニクロフト 『テウクロス』 1881年
ハモ・ソーニクロフト 『テウクロス』 1881年

ひとくちにヌードといっても、文字で表現された作品もあり、形態は多岐にわたる / フィオナ・バナー 『吐き出されたヌード』 2007年
ひとくちにヌードといっても、文字で表現された作品もあり、形態は多岐にわたる / フィオナ・バナー 『吐き出されたヌード』 2007年

長谷川:最上さんのおっしゃる通りだと思います。それぞれの時代にサロンのようなものがあって、そこで評価されるものが良いものとされるなど、ある種格付けがなされていました。ただ、その枠組みには飽き足らないアーティストというのが、やはりどの時代にもいて。そういう人たちが新しい表現に挑戦することによって、次の時代を作っていくんですよね。

左から:長谷川珠緒(横浜美術館学芸員)、最上もが
左から:長谷川珠緒(横浜美術館学芸員)、最上もが

長谷川:今回の展示は、8つのセクションから成り立っているのですが、基本的には、それぞれの時代におけるヌード表現の特徴というものが、時代を追ってたどっていけるようになっているんです。

最上:今回の展示も、最初のほうは神話や物語を描いたヌードが多いじゃないですか。あこがれや理想が入り混じった形のヌードというか。それは誰もが一度は通る道というか、「すごいなあ」って思って見ていたんですけど、そのうち、どれも同じにように見えてくるというか。

フレデリック・レイトン『プシュケの水浴』1890年発表 油彩 / カンヴァス Tate: Presented by the Trustees of the Chantrey Bequest 1890 image © Tate, London 2017
フレデリック・レイトン『プシュケの水浴』1890年発表 油彩 / カンヴァス Tate: Presented by the Trustees of the Chantrey Bequest 1890 image © Tate, London 2017

神話の一場面を描いた作品 / ハーバート・ドレイパー『イカロス哀悼』 1898年発表 油彩 / カンヴァス Tate: Presented by the Trustees of the Chantrey Bequest 1898 image © Tate, London 2017
神話の一場面を描いた作品 / ハーバート・ドレイパー『イカロス哀悼』 1898年発表 油彩 / カンヴァス Tate: Presented by the Trustees of the Chantrey Bequest 1898 image © Tate, London 2017

長谷川:そうですね(笑)。そのマンネリを打ち破ったという意味では、写真の発明も、大きかったと思います。「写実的に描く」という意味では、もう写真にかなわないわけです。もともと西洋の歴史画は、「記録」という意味合いも強かったのですが、よりリアルな写真が登場してからは、その役割を失ってしまうんですね。

そうなったときに、画家たちのあいだでも「自分たちは何を描くべきか?」という議論がなされ……いわゆる「印象派」と呼ばれる絵画が登場するのは、そういう文脈だったりするんです。そして、そのあと戦間期の社会情勢のなかではシュルレアリスムが出てきたりと、新しい表現って、美術界だけではなく科学技術だったり、社会の動きも緊密に繋がっているんです。

印象派を代表する画家ルノワールの作品 / オーギュスト・ルノワール『ソファに横たわる裸婦』1915年 油彩 / カンヴァス Tate: Bequeathed by Mrs A.F. Kessler 1983 image © Tate, London 2017
印象派を代表する画家ルノワールの作品 / オーギュスト・ルノワール『ソファに横たわる裸婦』1915年 油彩 / カンヴァス Tate: Bequeathed by Mrs A.F. Kessler 1983 image © Tate, London 2017

老いた身体を、そのまま表現していたりするのはやっぱり、生きてきた証を表現したかったのかなって思いました。(最上)

—今回の展覧会は、ヌード表現の歴史をたどる趣向があるわけですが、そもそもの話として、どの時代にも、やはり「ヌード」というのは、普遍的なテーマとしてあったわけですよね。

最上:やっぱりみんな、曲線美が好きなんですかね(笑)。僕も美術の学校に行っていた頃、ヌードデッサンを描くのがすごく好きだったんですよね。

最上もが

—(笑)。特に描きたい体型とかあったのでしょうか?

最上:昔は、きれいなものを描きたいという気持ちが強かったから、胸だったら大きいほうがいいとか、自分のなかの理想像があったんですけど、年齢を重ねていくにつれて、ありのままを描くことの楽しさに気づき始めたんです。

最近は、写真とかも加工がすごい多くて、余計なものを消したりとかするんですけど、人って絶対歳を重ねていくので、それを否定してしまったら、その生き方さえも否定しているように思えてしまうし。

—たしかにそうですね。

最上:今回の展示も後半になるにつれて、老いた身体を、そのまま表現していたりするじゃないですか。それはやっぱり、生きてきた証を表現したかったのかなって思いました。理想の体型を描くことから、きれいごとだけではない現実を、ちゃんと見せるように変わっていったのかなっていう。そのあたりの流れがわかる感じが、すごく面白かったですね。

ジョン・コプランズ 『セルフ・ポートレート(フリーズno. 2、4枚組)』 1994年
ジョン・コプランズ 『セルフ・ポートレート(フリーズno. 2、4枚組)』 1994年

絶対殴り書きだろうけど、数秒でこんなに的確に物を捉えることができるんだっていう驚きがあるんです。(最上)

—とりわけ印象に残った展示とかって、何かありましたか?

最上:やっぱり、ロダンの『接吻』があるところのセクションがすごく良かったですね。ロダンの彫刻がいちばん強く記憶に残っているけど、そのまわりに展示されていたホックニーのエッチングとか、ターナーのスケッチやピカソのエッチングも、すごく良かったです。

本展の目玉ともいえるロダンの彫刻 / オーギュスト・ロダン『接吻』1901-4年
本展の目玉ともいえるロダンの彫刻 / オーギュスト・ロダン『接吻』1901-4年

長谷川:8つに分かれたセクションのなかで、実はそのセクションだけ、時代ではなく「エロティック・ヌード」というひとつのテーマで括られているんですね。ロダンの『接吻』を中心に、そこにはターナーやピカソ、ルイーズ・ブルジョワ、ホックニーが、それぞれのやり方で、ヌードが持つエロティックな可能性を追究した作品が展示されているんです。

ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー『ベッドに横たわるスイス人の裸の少女とその相手』「スイス人物」スケッチブックより 1802年 黒鉛、水彩 / 紙 Tate: Accepted by the nation as part of the Turner Bequest 1856 image © Tate, London 2017
ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナー『ベッドに横たわるスイス人の裸の少女とその相手』「スイス人物」スケッチブックより 1802年 黒鉛、水彩 / 紙 Tate: Accepted by the nation as part of the Turner Bequest 1856 image © Tate, London 2017

最上:僕、漫画家さんとかのラフ――清書じゃなくて、色を乗せる前のデッサンの殴り書きぐらいなものが、結構好きで。これ、絶対殴り書きだろうけど、数秒でこんなに的確に物を捉えることができるんだっていう驚きがあるというか。

線の描き方って、いちばんその人の個性が出ると思うんです。そういう意味で、このセクションにあるラフな感じの絵は、見ていてすごく面白かったですね。

最上もが

—このへんのスケッチって、発表することを前提としていないものも、結構混じっていますよね?

長谷川:そうですね。ターナーのものは、ある意味オフィシャルなものでは、まったくないですね。今回、展示しているスケッチは、風景画家として知られるターナーが、旅行の際に携えていたスケッチブックに、売春宿の情景などを描いたものになるのですが、実際問題、ターナーという画家のイギリスにおける名声というのがありまして。彼の死後、それを汚すと判断した学芸員と遺産管理人が、そういった作品を処分したとも言われているんです。

長谷川珠緒

長谷川:なので、今回展示しているものは、なかなか目にすることのできない貴重なスケッチということになります。ただ、そういったスケッチにも、状況の空気感を描く、ターナーならではのタッチが感じられるんです。公表するためではなく、好きで描いているものだからこそ、画家本来の特徴が活き活きと表れている感じはありますよね。

人間のいちばんの欲求はやっぱりエロなのかなって思っていて。だからこそ、みんな描きたいし、表現したいんじゃないかな。(最上)

最上:このホックニーのエッチング(銅版画)は、いつ頃の作品になるんですか? ちょっと現代風のイラストみたいな感じもありますけど。

デイヴィッド・ホックニー『23, 4歳のふたりの男子』C .P. カヴァフィスの14編の詩のための挿絵より 1966年 エッチング、アクアチント / 紙 Tate:Purchased 1992 © David Hockney
デイヴィッド・ホックニー『23, 4歳のふたりの男子』C .P. カヴァフィスの14編の詩のための挿絵より 1966年 エッチング、アクアチント / 紙 Tate:Purchased 1992 © David Hockney

長谷川:こちらは、1966年の作品ですね。ホックニーは現在も活躍している、イギリスを代表する画家です。彼自身、同性愛者なんですが、イギリスでは1967年まで、同性愛が違法だったんですね。

—制作された当時としては、非合法な性を描写したものだったんですね。ホックニーの作品に限らず、いつの時代も、アートかポルノかみたいな論争は、ヌード表現にはつきものです。

最上:でも、人間のいちばんの欲求は、やっぱりエロなのかなって、僕は思っていて。だからこそ、みんな描きたいし、表現したいんじゃないかなって思います。あと、欲求が満たされないからこそ描いてみるっていうのもあるのかな。

最上もが

—表現の根源がエロにあるなら、アートかポルノか、なかなか白黒つきにくいものではありますね。

最上:そうですね。そもそも、それがアートかどうか決める必要性なんて、まったくないと思うんですよね。たとえば、このロダンの『接吻』だって、「わっ、この作品は、ちょっとエロくて見れない」っていう人が絶対いると思んです。そんなのはもう、受け取るほうの感覚次第でいいと思うんですよ。論争すること自体がナンセンスというか。

—そこは、論理の部分ではないですからね。

最上:あと結局、こういうものを作っている時点で、本人は絶対エロい気持ちにはなっていると思うんですよね。というか、それがなければ、官能的な美を表現できないと思うんですよ。

長谷川:アートか否かの線引きを巡る状況は、いまも意外と変わってないですよね。結局その社会において、何が規制されるのかっていう議論は、常にあることですし、いまも「えっ、それがダメなの?」っていうことは多々あるので。その境界は、国によっても状況によっても違いますし、特に日本においては非常に曖昧なものになっています。

—今回の展覧会は、作品によってレイティング(年齢制限)みたいなものはないのですか?

長谷川:もうけていません。先ほどのホックニーの作品のように、同性愛が違法だった時代に、それに反抗して表現をしている人がいた……そういう時代や社会が実際にあったという事実を伝えた上で、そこに議論が生まれるのなら、その議論をもうけるべきであるというのが、テートのスタンスでもあるんです。

最上:でも、すごい繊細な話ではありますよね。異性愛が普通だと思っている子どもは、同性愛を気持ち悪いって思ってしまうかもしれないじゃないですか。そこはとっても繊細で、難しい問題なのかなって思っちゃうんですよね。

最上もが

—ちなみに、最上さんは、バイセクシャルであると書かれたりすることもありますが、そう書かれるのって、本人として、どうなんですか?

最上:男性だけを恋愛対象として見ているわけではないっていうのはたしかに話したんですけど、それですごい戸惑ったのは、LGBTの団体さんから「ありがとうございます」って連絡がきて。別に主張したいわけでもなく、ただ疑問に思っていただけなんですよね。

さっきのアートの定義の話じゃないですけど、異性愛が普通って、誰が決めたのって思いますし、それを別に意識してなかっただけで。僕は、自分が好きだと思った相手が、異性だろうが同性だろうが関係ないって思っています。

—そもそも、はっきり分ける必要性があるのかと。

最上:そうなんです。ただ、自分はそうだったっていうだけの話です。

フランシス・ベーコンの作品を鑑賞する最上。テートの所蔵作品ではなく国内の美術館のコレクションからの特別出品作。
フランシス・ベーコンの作品を鑑賞する最上。テートの所蔵作品ではなく国内の美術館のコレクションからの特別出品作。

でんぱ組.incにいた頃は、すごく身体を鍛えていたんです。腹筋が割れちゃって、ちょっと修正が入りそうになったくらい(笑)。(最上)

—再び展示会のほうに話を戻すと……その他に、何か気になった点はありましたか?

最上:最後、写真で締めるところにちょっとビックリしました。でも絵画だけではなく、ロダンをはじめ彫刻も結構置いてあったし、ナイロンタイツで作った作品とかもありましたよね。そうやって絵に限らず、いろんなヌード表現をみんな試してきた歴史だったんだなっていうのは、わかりました。

ヘンリー・ムーア『倒れる戦士』 1956-57年頃(1957-60 年頃鋳造)ブロンズ
ヘンリー・ムーア『倒れる戦士』 1956-57年頃(1957-60 年頃鋳造)ブロンズ

最上もが

長谷川:そうですね。そういった意味では、取っ掛かりやすいものにはなっていると思うんですよね。ジャンルとかではなく、「ヌード」というひとつのテーマで貫かれているので。みなさん、ヌードは自分でも馴染みがあるでしょうし。

—いま最上さんが言われた最後のセクション「儚き身体」の展示は写真が中心となっていて、そこにシンディ・シャーマンの「見られることを拒否する」大判の写真が並べられているのが、すごく印象的でした。最上さんはご自身も、写真を撮られる機会が多いと思いますが、撮られる側の立場としてはいかがでしょうか。

「撮影後のポルノ女優」に扮する作家のセルフポートレート。自らの身体が消費されることを拒むような視線が印象的 / シンディ・シャーマン『無題#97』1982年 タイプCプリン ト Tate: Purchased 1983 ©Courtesy of the artist and Metro Pictures, New York
「撮影後のポルノ女優」に扮する作家のセルフポートレート。自らの身体が消費されることを拒むような視線が印象的 / シンディ・シャーマン『無題#97』1982年 タイプCプリン ト Tate: Purchased 1983 ©Courtesy of the artist and Metro Pictures, New York

最上:そうですね。ヌードではないですけど、グラビアをやっているときに、最初はエロく見られてしまうことがすごく嫌だったんですよね。それで美術を習っていた頃、自分も女性の身体がすごく好きで、ヌードデッサンとかの授業がすごく好きだったなと思って「グラビアのときも、身体が美しく見えるように、ポーズを考えればいいんだ」って思ったんです。

なので、光だったりポーズによってどのぐらいきれいに見えるかっていうのを、すごく考えながらグラビアをやっているところがあって……。

—なるほど。

最上:だからグラビアをやっていて、エロさを出したいというよりも、そのときしか見せられないきれいな身体を見せたいっていうのはありますね。でんぱ組.incにいた頃は、すごく身体を鍛えていたんですよね。鍛え過ぎて腹筋が割れちゃって、ちょっと修正が入りそうになったくらい(笑)。

最上もが

—ははは。

最上:ただ、青年漫画誌のグラビアとかって、やっぱり男性が見るものなので、ちょっと丸くて柔らかい感じのほうが好まれる傾向があって。でも女性はそういうものよりも、身体を引き締めて見せたいっていう人のほうが多いので、ヌードの感覚みたいなものは、みんな個々に違いますよね。自分を貫きながらも、どれだけ読者の方に納得してもらえるのかっていう、そのバランスを考えながらやっているところがあります。

今回の展示もそれぞれの時代によって、その人が描きたいものと、どういうものがウケるのかっていう、そのバランスというか試行錯誤のなかで表現されてきたのかなって思って。そういうところも面白かったですよね。

ピエール・ボナール『浴室』1925年 油彩 / カンヴァス Tate: Presented by Lord Ivor Spencer Churchill through the Contemporary Art Society 1930 image © Tate, London 2017
ピエール・ボナール『浴室』1925年 油彩 / カンヴァス Tate: Presented by Lord Ivor Spencer Churchill through the Contemporary Art Society 1930 image © Tate, London 2017

人間を描いているから、生々しいものになっているんですよね。それが、見る人に考える時間を与えてくれると思うんです。(最上)

—では最後、最上さんとしては、本展をどんなふうに見ることをお勧めしますか?

最上:まずは、何の知識も入れずに見るのがいいと思います。アートをあらかじめ説明されるのって、ちょっとナンセンスだと僕は思っていて……まずは、自分が見たまま感じたものを大事にして、そのあとに解説だったり何だったりを見たり聞いたりしながら、自分の感覚とすり合わせるのがいいと思うんですよね。

あ、それは自分が感じたものと同じだったとか、作家本人はこういうふうに説明しているけど、違うふうに捉えることもできるなって考えたり。そうやって、自分の感覚だけではないものを学べる場所でもあるのかなって思いました。

バークレー・L・ヘンドリックス『ファミリー・ジュールス: NNN(No Naked Niggahs[裸の黒人は存在しない])』 1974年 油彩 / 麻布 Tate: Lent by the American Fund for the Tate Gallery, courtesy of the North American Acquisitions Committee 2011 image © Tate, London 2017 ©Estate of Barkley L. Hendricks. Courtesy of Jack Shainman Gallery, New York
バークレー・L・ヘンドリックス『ファミリー・ジュールス: NNN(No Naked Niggahs[裸の黒人は存在しない])』 1974年 油彩 / 麻布 Tate: Lent by the American Fund for the Tate Gallery, courtesy of the North American Acquisitions Committee 2011 image © Tate, London 2017 ©Estate of Barkley L. Hendricks. Courtesy of Jack Shainman Gallery, New York

アンリ・マティス『布をまとう裸婦』1936年 油彩 / カンヴァス Tate: Purchased 1959 image © Tate, London 2017
アンリ・マティス『布をまとう裸婦』1936年 油彩 / カンヴァス Tate: Purchased 1959 image © Tate, London 2017

—今回の「ヌード」展には、「そのヌードには、秘密がある。」というキャッチコピーがついていますが、その秘密は作品を見てから知ったほうが良いと。

最上:そうですね。ラブラブの恋人同士を描いた作品だと思って見ていたら、実は不倫関係だったとか(笑)。あとやっぱり、風景画とかと違うのは、どれも人間を描いているから、とても生々しいものになっているんですよね。それが、見る人に考える時間を与えてくれると思うんです。これで何を表現したかったんだろうっていう。

ただ裸体を描きたかったのか、それともそれを描くことによって、何か訴えるべきことがあったのかとか。多分そういうものを、見ながら感じることができると思うので、とりあえず来てみて、自分の目で見てみるのがいいと思います。自分の感覚という意味でも、何か新しい発見があるかもしれないし。

—そういう意味でも、やっぱりロダンの『接吻』は、面白かったですよね。

最上:『接吻』は写真で見るよりも、生で見たほうが断然良かったですね。そう、あの照明がすごい良かったですね。

オーギュスト・ロダン『接吻』1901-4年 ペンテリコン大理石 Purchased with assistance from the Art Fund and public contributions 1953 image © Tate, London 2017.
オーギュスト・ロダン『接吻』1901-4年 ペンテリコン大理石 Purchased with assistance from the Art Fund and public contributions 1953 image © Tate, London 2017.

長谷川:ありがとうございます(笑)。私たちとしても、そこはものすごく力を入れたところなので、とても嬉しいです。そもそも、3トン以上もある、あれだけ重いものを展示する機会は、現代美術とかいろいろやってきたなかでも、いままでなかったことなのでかなり大変でしたね(笑)。

最上:そう、写真で見ると、ちょっと石膏みたいな感じがあるけど、実際に生で見てみたら、ホントに柔らかそうに見えたんですよね。とても大理石には思えないというか。照明の光を吸って、何か不思議な質感があったし。そういうのを、実際に見にきて、感じて欲しいなって思います。

最上もが

イベント情報
『ヌード NUDE ―英国テート・コレクションより』

2018年3月24日(土)~6月24日(日)
会場:神奈川県 横浜美術館
時間:10:00~18:00(5月11日、6月8日は20:30まで、入館は閉館の30分前まで)
休館日:木曜(5月3日は開館)、5月7日
料金:一般1,600円 大学・専門学生1,200円 中高生600円 65歳以上1,500円(要証明書)
※小学生以下、障害者手帳をお持ちの方と介護の方1名は無料

プロフィール
最上もが (もがみ もが)

1989年2月25日生まれ、東京都出身。



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