蓮沼執太が自身の活動を総括して語る。ソロ、フィル、アートなど

音楽、アート、舞台、広告など、あらゆる方面でその名前と活躍ぶりが目に入ってくる人物、蓮沼執太。2018年の活動だけ見ても、テレビやラジオをつければ蓮沼が作った音が流れてくるし、2月にニューヨークで個展を開いたかと思えば、4月には6枚組のCD『windandwindows』をリリース、そして7月18日には「蓮沼執太フィル」名義でアルバム『ANTHROPOCENE』を発表した。蓮沼の多面的な活躍は『windandwindows』の中身が象徴的で、そこには彼が手がけたCM、映画、ダンス、舞台、美術作品、ファッション、プロデュース作品の楽曲が、計80曲も収録されている。

今回の取材では、「蓮沼執太フィル」として前作をリリースした2014年から現在までの蓮沼自身の活動を振り返りながら、彼が「音楽」や「美術」をどう捉えているのか、そして、それらを通して社会とどうコミットしようとしているのかを聞いた。

現在は、様々な利便性が追求された結果、ひとりでも楽しく生きていけるような時代に見えるかもしれない。でも、蓮沼は、この時代の危険性を感じ取っている。他者との「共存」「調和」という言葉は、なんとなく堅苦しいし大きすぎて自分ごととして捉えづらいけれど、蓮沼率いる計16人のポップオーケストラ「蓮沼執太フィル」は、非合理的であっても人との違いを受け入れながら生きていくことの楽しさを、優しく、穏やかに、身近な距離から表してくれる。

数年前に僕は、蓮沼執太フィルを「やり切った」「満足した」とか言ってたけど、なに言ってんだと。

—蓮沼執太フィル(以下、フィル)としては4年半ぶりのアルバムリリースですが、まず、なぜこのタイミングでフィルとして作品を出そうと思ったのかを聞かせていただけますか?

蓮沼:フィルって、一応2010年結成ということにしているんですけど、もともとはアルバムとかを作るような集団ではなく、僕がソロで作っていた曲をライブでパフォーマンスするためにミュージシャンを呼んでいたのがベースなんです。年に2、3回コンサートをやるときに、パッと集まって上演するということをやっていたんですけど、ライブのたびに曲を作っていたら曲がたくさんたまって、「レコーディングをしよう」となったのが前作『時が奏でる』(2014年1月リリース)で。

それでアルバムを作って、全国ツアーをしたら、僕が大満足しちゃったんですよね。しかも、そのあとすぐに僕は「アジアン・カルチュラル・カウンシル」(アメリカとアジア、アジア諸国間での国際文化交流を支援するアメリカの非営利財団。以下、ACC)から助成金を受けてニューヨークへ行くことになって。フィルを「終了」としたわけではないですけど、別に誰かにやれって言われてやってたプロジェクトではないし、始まりもゆるやかだったから、「もしかしたら、もうやらないかもね」なんて言ったりもしていたんです。

蓮沼執太
蓮沼執太

『時が奏でる』リリース後のライブの様子

—『時が奏でる』リリース後の4年半は、フィルの活動は活発でなくとも、蓮沼さん自身は動き続けていた期間でしたよね。

蓮沼:個展をやったり、ソロで『メロディーズ』というプロジェクトをやったり(参考記事:「自分で歌う」を選んだワケ 傑作を生んだ蓮沼執太インタビュー)、タブラ奏者のU-zhaanと映画やCMの音楽を作ってアルバム(『2 Tone』、2017年2月リリース)も出したり。それなりに色々なことをやりつつも、1年半前(2017年2月)にスパイラルホールで、フィルとして『Meeting Place』という公演をやったんですね。

—『Meeting Place』こそが、またフィルを動かそうと思ったきっかけだった?

蓮沼:『Meeting Place』をやったとき、新曲を作って、会場に来た人へダウンロードコードを渡せるようにレコーディングもしたので、リハーサル、レコーディング、ライブという、音楽活動のパッケージを一気にやったんです。そのときが、素晴らしくて。

なにが素晴らしいかって、もちろん音もいいんだけど、メンバーが素晴らしかったんです。2~3年のあいだ、各々が音楽シーンで活躍するなか色々なことを経験していて、身なりとかも変わってたりして。数年前に僕は「やり切った」「満足した」とか言ってたけど、なに言ってんだと。自分の頭のなかで考えてたことはちっぽけだったな、と。まだまだ可能性が見つかるなと思って、そこからですね。

蓮沼執太フィル。左から:Jimanica、宮地夏海、斉藤亮輔、小林うてな、ゴンドウトモヒコ、葛西敏彦、環ROY、K-Ta、蓮沼執太、木下美紗都、イトケン、三浦千明、石塚周太、手島絵里子、大谷能生、千葉広樹
蓮沼執太フィル。左から:Jimanica、宮地夏海、斉藤亮輔、小林うてな、ゴンドウトモヒコ、葛西敏彦、環ROY、K-Ta、蓮沼執太、木下美紗都、イトケン、三浦千明、石塚周太、手島絵里子、大谷能生、千葉広樹

—蓮沼さんが展覧会やACCなどのチャレンジをしていたあいだに、メンバーにも並行して生活があった。それに改めて気づいて感動したことが原動力になっていて、レコード会社的なサイクルとかそういうものは関係ないというのが、フィル的な感じがしますね。

蓮沼:僕がそもそもレコード会社のサイクルから逸脱して、本当に自由にやらせてもらっているというのもあるし、そういうのに縛られるのは音楽のためによくないとも思っていますからね。

長くやればやるほど、どんどんよくなっていくというのも必ずあると思うんですけど、それだけじゃなくて……メンバーそれぞれに生活があって、僕が歩んできたのと同じようになにかをやっている時間があったということ。それの重さみたいものを、自分のコンサートの演奏で知れるというのが素晴らしいなと思ったんです。だからこそ、これまでよりさらにメンバーの一人ひとりを個人として丁寧に見るようになりました。

蓮沼執太

—全体をコンダクトする蓮沼さんの意識や、メンバーに対する見方も変わったと。

蓮沼:そうですね。フィルって、「ライブのために今なにができるか」みたいなことを考えてやってきていたんですけど、4年半前と今では社会の状況もたくさん変化しているし、「メンバーとフィルを使ってなにができるだろうか」というふうに考えるようにもなりました。

「有限」で、全然違う人同士が向き合ったときに、自分だけではわからないような発見があるんです。

—今回の取材では、音楽でもアートでも活躍する蓮沼さんの個人史やスタンスを捉えたいとも思っているのですが、フィルは、蓮沼さんの活動のなかでどういう位置づけですか?

蓮沼:どういう位置づけなんだろう?……まず起動するのに、「よしやるぞ」ってならなきゃやれない。さっき言ったように、本当に1対1で見るから……しんどいですよね(笑)。

—15人と向き合うのは決して楽ではないですよね。スケジュール調整とか、今も蓮沼さんがやられてるんですか?

蓮沼:やってますよ。前は文句言ってたんけど、今はもう大丈夫です(笑)。

蓮沼執太

—フィルの作品のあいだに、『メロディーズ』という、ある種かなりポップな歌もののアルバムが挟まっているわけじゃないですか。それもすごく興味深いなと思うんですけど、それらの関係性についてはいかがですか?

蓮沼:『メロディーズ』は、曲作りをするなかでのひとつの新しい挑戦だったんですね。ポップスなんだけど、ちゃんと聴くとめちゃくちゃな構造になっている。自分の声域のなかで作られる音域を主旋律にして曲を作っていこうというコンセプトのうえで、いわゆるオーソドックスなJ-POPの作り方のような、メロディーに対して歌詞をパズルのように当てはめていくということをやってみたんです。ある意味、すごく合理的に作られていて。その作り方に、「飽きた」って言うのはおかしいかもしれないけど……いや、「飽きた」でいいのかな。

フィルは、僕がフレームを整えますけど、あとはもう自由。フレームは作るんですけど、結果的にフレームは超えていきます。4年半前の「満足した」という感覚と一緒で、結局自分の頭のなかでしかないことより、はみ出しちゃったほうが全然いいなって感じがするんですよね。

『メロディーズ』(2016年)収録曲

蓮沼執太『メロディーズ』ジャケット
蓮沼執太『メロディーズ』ジャケット(Amazonで見る

—でも、2作を聴くと、要素としては『メロディーズ』の一部が『ANTHROPOCENE』になっているのかなとも思いました。

蓮沼:そうですね。ただ、複雑なんですけど、ACCから帰ってきたあとにまたニューヨークへ行ったり、展覧会をやったり、森山未來の舞台(『JUDAS, CHRIST WITH SOY ユダ、キリスト ウィズ ソイ~太宰治「駈込み訴え」より~』、2017年1月開催)の音楽をやったりしているなかで『メロディーズ』を作っていたんですよね。だから、いくつかの層が同時に流れているんです。

—色々な作品作りの層が、常にある。

蓮沼:そう。記録メディアの違いはあれど、ずっと複層的にやってました。『メロディーズ』を出してツアーをまわるとき、現地のミュージシャンとコラボレーションして曲を発表するということをやっていたので、アルバムの曲を含めるとトータル30曲くらい作ったんですけど、その裏でU-zhaanと曲を作ってましたし。U-zhaanとやっているときもフィルの公演があったし、U-zhaanとのコラボレーションの音楽的な方法論が『ANTHROPOCENE』に入ってたりもしますし。

—アルバムやプロジェクトごとに切ってるわけではなくて、すべてが絡み合って進んでいるんですね。

蓮沼:そうですね。ベーシックには「やりたいからやる」というのがあって、すべて「次はこういうものを作っていきたい」というところから始まっているんですけどね。

蓮沼執太 & U-zhaan『2 Tone』ジャケット
蓮沼執太 & U-zhaan『2 Tone』ジャケット(Amazonで見る

—先ほど「フィルはしんどい」という言葉も冗談交じりにこぼれましたけど、『ANTHROPOCENE』のステートメントには「フィルのメンバーと一緒に居ると、小さな勇気をたくさんもらえます」と書かれていますよね。ひとりで音楽を作ることもできる蓮沼さんにとって、15人と一緒にアルバムを作ることにはどんな価値がありますか?

蓮沼:自分で作品を作るとなると、どうしても内的になるんですよ。ネガティブな意味ではないんですけど、自分のなかに入っていくというのかな。で、自分のなかというのは、僕的に「無限」なんですね。それは音楽的にも表れていて。コンピューター、シンセサイザー、フィールドレコーディングとかを使って音楽を作るなかで、音色も響きも質感も「無限」なんですよ。

一方でフィルは、対人間同士なので、「有限」なんです。楽器も限られているし、音域も決まっている。「有限」で、全然違う人同士だからこそ向き合ったときに、「そんなことできるんだ」みたいな、自分だけではわからないような発見が毎回あるんです。

蓮沼執太

蓮沼執太

僕としてはすべて「音楽」を通じて人間がどう対峙していくか、どう現代社会と向き合っていくかというものになっているんです。

—この4年半のあいだ、『作曲的|compositions』と題した展覧会を、青森(2015年)、東京(2016年)、北京(2017年)、ニューヨーク(2018年)で開催し、さらに今年の4月から6月までは東京の資生堂ギャラリーで『蓮沼執太: ~ ing』を開催していました。音楽活動だけでも複層的に行う一方で、展覧会は蓮沼さんにとってどういう位置づけなのでしょうか?

蓮沼:こないだ松井みどりさん(美術評論家)と話したんですけど、松井さんは「フィルも展覧会も全部繋がってますよ、蓮沼さん」と言って、かなりロジカルに紐解いてくれたんです。キーワードとして「音楽」があるのと「美術」があるのとでは、フレームも文脈もアウトプットも全然違うから、どう思ってもらうかはみなさんにお任せします、とも思うんですけど、僕としてはやっぱり非常に繋がっていて。展示をするのも演奏するのも一緒というか。

蓮沼執太

—『 ~ ing』は、「みんなで音を作ってみましょう」という展示になっていましたよね。

蓮沼:そうですね。『蓮沼執太: ~ ing』の場合は特に、作曲するということが展示にも応用できると思いました。

僕は「compose(=作曲する、作る、構成する)」というのは、空間を「compose」することだと思っていて。作曲というのも、コンピューターのなかの波形、音をどうやってレコードという空間に入れるかだと思うんです。空間というものがあったときに、どういう作品をインストールしていくかというところで、視覚芸術になれば美術となって、聴覚的芸術になれば音楽となる。でも、音楽にだって、ミュージックビデオとかビジュアルがあるし、切っても切れないわけですよ。ライブだって、パフォーマーが動けばそれは身体的なものにもなるし、視覚的効果も音楽を聴く側に影響は与える。だから、視覚と聴覚の関係はかなり複雑なんですよね。

『作曲的|compositions』(ニューヨークにて)

『作曲的|compositions』(ニューヨークにて)
『作曲的|compositions』(ニューヨークにて)

『蓮沼執太: ~ ing』
『蓮沼執太: ~ ing』

—それってつまり、音楽と美術のあいだに境界はないという話だと思うし、蓮沼さんは「ひとつのことをやろうとしている」というふうにも聞こえるんですけど。

蓮沼:そうです、そうです。

—その「ひとつのこと」って、強いて言うならなんですか?

蓮沼:僕の場合、音楽を作っているという感じがありますね。僕らは今レコーディングしたものを「音楽」と呼んでますけど、レコーディング技術なんてたかだか100年ちょっとで。

要は、文脈に紐づけていかなきゃいけないし、展示の作品を切っていくと美術史のなにかに繋がっているとかはあるかもしれないけど、僕としてはすべて「音楽」を通じて人間がどう対峙していくか、どう現代社会と向き合っていくかというものになっているんです。同タイミングで作っていた『 ~ ing』と『ANTHROPOCENE』は、僕の問題意識は共通しているし、やっぱりコンセプトもかなり近くなるんですよね。

結局、便利なほうばかりをやっていくと、いつの間にか失っているものがものすごくあって、それに気がつかずに終わってしまう。

—『ANTHROPOCENE』についても聞かせてください。地層の年代を意味するタイトルにしても、飛行機から地上を見ているジャケットにしても、今回のアルバムにはこれまでの作品にも増して俯瞰的な視線を感じました。ちょっと浮いた場所から人間社会を見ようとする態度というか。

蓮沼:俯瞰というよりも、見方を変えていこうよっていう感じに近いかもしれない。僕、飛行機から景色を見るのが好きなんですよ。普段とは違った視点で日常を見たときに、見えてくる景色があるから。「アントロポセン」という言葉は、オゾン層の研究でノーベル化学賞を取ったパウル・クルッツェンの造語なんですけど、人文学系で使われることが多いですよね。

蓮沼執太フィル『ANTHROPOCENE』ジャケット
蓮沼執太フィル『ANTHROPOCENE』ジャケット(Amazonで見る

—最近は、美術の世界でも聞くようになりましたね。

蓮沼:そうですね。要は、アントロポセンは「この地球になかったものを人間が生んでしまって、それが地層になってますよ」というもので、「人間のアクティビティーを見直していこうよ」というのが本当の意味だと思うんですけど。

僕がこうやってフィルのみんなとやるのは、経済的にも時間的にも非合理的だし、「ひとりでガンガン音楽作っていったほうがいいじゃん」っていう部分もあるかもしれないけど、音楽的にも芸術的にも可能性があると思っているからやっているわけで。「わざわざやっている」ということが、僕にとってはすごく「アントロポセン」的なんですよ。結局、便利なほうばかりをやっていくと、いつの間にか失っているものがものすごくあって、それに気がつかずに終わってしまう。それよりも、小さなきっかけを大切にしていこうよっていうのが、このアルバムですね。

—自然の長い時間のスケールのなかで人間の営みを捉え直してみようという視点は、最近色々な表現者から感じるものです。美術でも、近年の自然災害を受けて、日本という土地の条件と美術がどう関わってきたかを問う椹木野衣さんの『震美術論』(美術出版社、2017年発行)などがありましたよね。手触りは違うものの、『ANTHROPOCENE』にも同じ時代の空気が含まれているかもしれません。

蓮沼:露骨に「震災」どうこうとは言わないですけど、今あることを大切にやっていくのが一番だと思っていて、今なにができるのかを考えると、今の社会に関してどういうふうに自分の作品が在れるのか、ということだと思っています。

僕は「作品でなにができるか」ではなく、「作品がどう存在しているか」のほうが大切だと思っていて。啓蒙したいわけじゃなくて、各々が作品に触れることでどういうふうに感じ取ってくれるか、それがどういうふうに現代社会に対して機能していって、世界が変わるのかを考えたいんです。

蓮沼執太

—それこそが、『 ~ ing』と『ANTHROPOCENE』に共通しているコンセプト、問題意識とも言えそうですね。

蓮沼:結局、ひとりで生きているんじゃないので、みんなで生きていくなかでどう考えていくかが表れているんだと思います。『 ~ ing』もそう思ってやってましたね。作品に触れることによって、どうやって社会に機能していくかを積極的に考えていきたいなというのが、僕の今のフェーズなんです。

ミュージシャンが音を響かせて、観ている人もそこにいて、音楽で繋がるっていう、全員が役割のある公演として成立させたい。

—そういった意識の変化は、『ANTHROPOCENE』の曲作りにおいて、具体的にどういう違いとして表れましたか?

蓮沼:前は、楽器のためにスコアを書いていたんですよ。楽曲を書いて、スティールパンがあるといいなと思ったからスティールパンのスコアを書いて、それで「スティールパンの方、フィルに入りませんか?」って言ったら、(小林)うてなが手を挙げてくれた。でも今回は、スティールパンにではなくて、うてなに演奏指示を書いている。

—芝居でいう「当て書き」なんですね。

蓮沼:そうですね。ホーンセクションのなかで「なつみん(宮地夏海。フルート)がここで飛び出したら面白いだろうな」とか「(大谷)能生(サックス)がここで下にいったら面白いだろうな」というふうに、楽器ではなくて人を見てます。『時が奏でる』は、ドーンとダイナミックな音像になってるんですけど、『ANTHROPOCENE』は全員の顔が見えるような音作りになっているんです。そうさせている要因は、やっぱり、メンバーそれぞれに信頼が当然あるからですね。

蓮沼執太フィル『ANTHROPOCENE』(Apple Musicはこちら

—8月18日には、フィルの16人に加えて公募から選んだ10人とともに、「蓮沼執太フルフィル」としてコンサートが行われます。これもまた、非効率的ではあるけれども、人と交わることの本質が見えるものになりそうですよね。公募時の条件は、「音が鳴るもので音楽ができればなんでもOK」だったとか?

蓮沼:性別、国籍、年齢、楽器とかで制限するんじゃなくて、参加する意思があれば、それだけで素晴らしいことだと思ったので。この前(5月27日)、公開リハーサルをやって初めて26人で音を出したんですけど、即興したときにそれぞれの性格がすごく出てましたね。

—つまり、新たに加わる10人も、匿名的な存在ではないわけですね。

蓮沼:そう。26人で一緒にできるように再アレンジをしている曲もあれば、26人のために作っている新曲もあるんですけど、当て書きをさらに追求しているような作り方をしています。一人ひとり見ているのが、26個分になるというか。

しかも、会場がすみだトリフォニーホールというコンサートホールで、ライブハウスじゃないから音作りも全然違って。空間が違えば、音作りもアレンジも違うし、新しいフィルの演奏方法になるんじゃないかなという気がしていますね。一つひとつの音の響きを大切にして、聴いている人も参加しているって言うとおこがましいですけど、ミュージシャンが音を響かせて、観ている人もそこにいて、音楽で繋がるっていう、全員が役割のある公演として成立させたいと思って準備をしています。

蓮沼執太

—それを終えた次は、どういうことをやりたいかって考えていますか?

蓮沼:最近、機材とかを見ちゃうんですよ。なにかを作りたい気持ちの表れなんでしょうね。1月にはフィルとして草月でコンサートをやって、2月にはニューヨークで展覧会をやって、4月には『windandwindows』という6枚組のアルバム出して、『 ~ ing』をやってと、こんなにわちゃわちゃしているのに(笑)。次に進もうとする気持ちの動きはあると思うので、そこに正直に作れたらいいなと思いますね。

蓮沼執太

リリース情報
蓮沼執太フィル
『ANTHROPOCENE』

2018年7月18日(水)発売
価格:3,300円(税込)
COCP-40486︎

1. Anthropocene – intro
2. Meeting Place
3. Juxtaposition with Tokyo
4. the unseen
5. 4O
6. off-site
7. centers #1
8. centers #2
9. centers #3
10. TIME
11. Bridge Suites
12. NEW
13. Anthropocene – outro

イベント情報
蓮沼執太フルフィル
『フルフォニー Shuta Hasunuma Full Philharmonic Orchestra FULLPHONY』

2018年8月18日(土)
会場:東京都 錦糸町 すみだトリフォニーホール
料金:SS席6,000円 S席5,000円 A席4,000円 B席2,000円

蓮沼執太フィル
『ANTHROPOCENE - Extinguishers in Aichi』

2018年9月16日(日)
会場:愛知県 ナディアパーク デザインホール
料金:前売4,500円 当日5.000円 学生割引3,000円

『ANTHROPOCENE - 360° in Osaka』

2018年9月17日(月・祝)
会場:大阪府 味園ユニバース
料金:5,000円(ドリンク別)

プロフィール
蓮沼執太フィル
蓮沼執太フィル (はすぬましゅうたふぃる)

蓮沼執太がコンダクトする、総勢16名が奏でる現代版フィルハーモニック・ポップ・オーケストラ。 2010年に結成、2014年1月にファーストアルバム『時が奏でる』をリリース。蓮沼執太(conduct, compose, keyboards, vocal)|石塚周太(Bass, Guitar)|イトケン(Drums, Synthesizer)|大谷能生(Saxophone)|葛西敏彦(PA)|木下美紗都(Chorus)|K-Ta(Marimba)|小林うてな(Steelpan)|ゴンドウトモヒコ(Euphonium)|斉藤亮輔(Guitar)|Jimanica(Drums)|環ROY(Rap)|千葉広樹(Violin, Bass)|手島絵里子(Viola)|宮地夏海(Flute)|三浦千明(Flugelhorn, Glockenspiel)



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