「少女たちは、なぜ踊るのだろう?」――今回、新しい学校のリーダーズに取材するにあたって、筆者のなかにあったのは、こんな漠然とした問いだった。8月29日にリリースされるシングル『狼の詩』の表題曲にある、<ここで止まれば 石になる/石になりたくないだけさ>という強烈なフレーズに触発されたのかもしれない。答えは出なくても、上手く言語化はされなくても、「なぜ踊るのか?」という問いの、その先に出てくるものに触れてみたいと思った。和気あいあいとした取材現場だったが、とても深く、大事なことを教えてもらえたと思う。
先のことはあまり考えられない。今を全力で生きているだけ。(SUZUKA)
―今回のシングル曲“狼の詩”は阿久悠さんの未発表詞が使われていますけど、みなさんは歌詞を読んだとき、どんな印象を受けましたか?
RIN:この歌詞、すごいですよね。私はいつも、何回も何回も歌詞を読むんですけど、“狼の詩”は、男性の若さゆえの葛藤のようなものを感じました。
SUZUKA:個性がまだない、野生と好奇心だけで生きている若者って感じ。中学生の男子感というか……真っ白で、好奇心と野生的な感じがあって、でもまだ枠のなかにいるから、世界を見ていない感じ。日々勉強して、もがいて、悶えているだけ、みたいな。
SUZUKA:阿久悠さんは、それに対して「頑張れ」って言うんじゃなくて、その状態を表現しているだけっていう。それは、私たちが普段からMCで伝えていることと関連していると思う。この歌詞にある<若さがこんなにつらいとは>って、感じるときあるよね?
MIZYU&RIN&KANON:ある!
SUZUKA:でも、若いからこそできることもあると思うし、未成年で、お酒を飲めないからこその楽しさだってある。「お酒を飲めないの、つまんねぇ!」って言っている人たちは、まだ「若さ」を客観視できていないな、とも思います。
―すごく冷静に「若さ」を見ていますね。
SUZUKA:たとえば、20代を過ぎたくらいの男の人たちって、自分たちの個性や生活を大事にしている人たちが集まって、なにかをやっている気がするんです。今、目の前にいるCINRAの人たちを見ても、ライターさんも、カメラマンさんも、編集者さんも、着ている服とか佇まいとか、見るからにそれぞれの住んでいる世界は違う。住む世界が違う人たちが集まって、なにかを作っている感じがするんですよね。
それって、私たちからしたら、ないものねだりなんですよ。私たちは未成年だし、まだ「女の子」だし、プライベートと言っても一人暮らしみたいな感じではなく、学校とか放課後とか、そんな感じだし。
―ある意味、「閉ざされている」とも言えるし、「守られている」とも言える、そういう空間にいる感覚ですよね。
SUZUKA:それに、こうやって制服を着て、「学校」というテーマでパフォーマンスをすることは、生涯を通してやっていけることではないし。
MIZYU:そうだね。本当に、新しい学校のリーダーズ(以下、リーダーズ)は「今できること」と「制服っていう、今着ることができるもの」の表現だし。でも、今しかないから、とにかく全力感は出ちゃうよね。0か100かしか選べないんだから、やるなら全力でやる。あとのことなんて考えていられないよね。
SUZUKA:うん。先のことはあまり考えられない。今を全力で生きているだけ。
―僕はみなさんと初対面ですけど、4人の間には、無言のうちに、いろんなことをわかり合えているような空気感を感じます。この強い結びつきは、なにによって生まれているのだと思いますか?
KANON:私たちが繋がっているのは、それぞれの人間性ももちろん好きだけど、でもそれだけじゃなくて……なんて言えばいいんだろう? 言葉にするのは難しいね。
SUZUKA:イメージとか、感覚とか、愛とか、リーダーズに対する気持ちが全部一緒なんじゃないかな? 性格は、もしかしたら友達だったら合わないかもしれない。でも、リーダーズに対する感覚とイメージと愛が一緒だから、勝手に繋がっているって感じです。
もし、どれだけ性格が合っても、そこが違ったから一緒にパフォーマンスはできないと思うし……この4人は「夢に向かって突き進むための仲間」っていう感じ。4人の心がしっかりと、均等に一緒だからこそ、安心できるなって思う。
MIZYU:正直、結成したての頃は、舐めていたと思います。半分は遊び感覚だった、というか。でも、メジャーデビューして、今は常に頭のなかの50%以上はリーダーズのことだし、生活の軸はリーダーズにあるので、「(リーダーズとして)今、なにをするべきなのか?」というとは、すごく考えるようになりましたね。
いつも振り付けが完成すると感動がある。(MIZYU)
―メジャーデビューから1年経って、プロとしての自覚が芽生えつつあると。
MIZYU:そうだと思います。私たちはプライベートでも仲がいいし、4人の間に秘密もないんですけど、なんでも言い合えるからこそ、プライベートの話と、リーダーズの話はキッパリわけて話すようになったんです。全員にとってリーダーズが居心地のいい環境であるようにしたいし、それぞれが一番大きく羽を広げていられる状態でいたいから、今は割り切って、いいことも悪いことも全部言い合います。昔は、その感覚はあまりなかったよね?
RIN:うん。今から考えると、薄かったと思う。
MIZYU:そのときは全力で仲良しって感じだったんだけど、今はもう「愛」ですね。3日間会わないだけでも心配になるし。お互いを放っておくことができないんですよね。
KANON:日々、支え合っていますね。プライベートでも、相談し合って、支え合って、それを繰り返して、今、4人が立っていられるっていう感じです。
―最近、4人で感動を共有した出来事などはありましたか?
SUZUKA:“狼の詩”の振り付けができたとき?
KANON:それ、私も思った。
SUZUKA:今回の振り付け、めっちゃ悩んだんですよ。悩み方も今までと違うパターンで、辛い感じの悩み方をして。わかりやすいコンセプトがある歌詞なので特に難しかったんです。
“狼の詩”には、「狼」っていうわかりやすいワードがあるからこそ、キャッチーに、期待通りに作ることはできるんだけど、そこの期待をどうやって裏切るのか? とか、そこにどうリーダーズらしさを入れるか? とか。でも、これまでのリーダーズらしさも裏切りたいし……。
MIZYU:一度完成したんだけど、「これでいいのか……?」って感じがあったんですよね。ミュージックビデオはもう撮ったんですけど、まだ悩んでいて。あとちょっと、あと1スパイス必要な感じ。
SUZUKA:まだ、もどかしいね。だから、本当の感動はこのあとにあるんだと思う。「わしらは、やればできんねん!」みたいな感動。
MIZYU:そう、いつも振り付けが完成すると、その感動があるんだよね。その感動を今は待っている状態ですね。いつも、悩んで感動して、悩んで感動して、を繰り返しているから、“狼の詩”は、あとちょっとで感動できるっていう感じです。
自分たちのダンスを見ている人たちの顔を見て、逆に私たちがパワーをもらう。(KANON)
―リーダーズは全曲、メンバー自らの手で振り付けされていますけど、ミュージックビデオなどが撮影されたあとも、振り付けは更新されていくものなんですか?
SUZUKA:そうですね。デビュー前の頃の曲とか、“毒花”も、今でもライブで振り付けを変えるし。
KANON:常に、1曲1曲が毎回のライブで成長していると思います。自分たちが踊ったビデオを見て、改善策を考えて、提案し合って。
MIZYU:「その曲が一番よく見えるように作りたい」というよりは、「その曲を一番表現できている振り付けを完成させたい」っていう感じなんですよ。それに、同じ振り付けでも、そのときの感情によって踊り方も変わるから、同じ曲でも、全部のライブで違う表現をしているようなものだし……なので、私たちの曲は全曲、まだ完成していないといえば完成していないんです。
―僕は、歌を歌う人や曲を作る人、楽器を演奏する人に取材をさせていただくことが多いんです。でも、踊る人には、あまり話を聞いたことがなくて。だからこそ、すごく抜本的なことを伺いたいんですけど、踊ることによって、みなさんはなにを得ているんだと思いますか?
MIZYU:う~ん……もはや、「踊る=生きる」みたいな感じなんですよね。そもそも、「踊っている」っていう感覚なのかな……? 会話で身振り手振りをするのも、なにかを表現するためじゃないですか。それと一緒で、曲に振り付けをするのも、「踊る」というよりも、「表現している」というほうがしっくりくるかもしれない。体全部を使って表現するのって、1人の相手になにかを伝えようとするときには、すごく伝えやすい方法だと思います。
SUZUKA:あと、やっぱり踊っていくなかで、お客さんを感じるのは大きいですね。お客さんがいない状態で踊ったら、ご飯を食べたのと同じくらいの満足度だけど、お客さんに見られている状態で踊ると、その視線を感じて、こっちもなにかを感じる。感じるものが全然違うんですよね。お客さんがいるときは、戦闘モードみたいな。それをやりきって、汗を飛び散らしたときの快楽……最高だね。
KANON:わかる。自分たちのダンスを見ている人たちの顔を見て、逆に私たちがパワーをもらうというか。あと、ダンスって、振りが同じでも、個性が出るんですよ。MIZYUだったら儚さが出てくるし、SUZUKAだったら力強くて芯がある感じがするし、RINだったらヒップホップが得意だからこその、独特な感覚があるし……それぞれの個性が出るから、ライブ中も、誰かのソロを横目で見て、鳥肌が立ったりする。
自分に対しても、他のメンバーに対しても、4人として見られていることに対しても、全部に自信を持って、自分たちが一番かっこいいと思っている。(MIZYU)
―やはり、個人で踊るのと4人で踊るのは全然違うものですか?
4人:違います!
―我のぶつけ合いにはならないんですか?
RIN:それはならないですね。
SUZUKA:自分勝手な我はよくないです。作品をよくするためなら、納得できるけど。
KANON:私たちが話し合うのも、「作品をよくしてくこと」が大前提だから。
―踊っているときに、孤独感のようなものは感じませんか? 踊るということは、自分自身の体の動きや、その限界と向き合う行為なんじゃないかと思うんです。それは、とても個人的で孤独な行為でもあるのかなと想像するのですが。
MIZYU:……たしかに、ライブ中は、全然、他の3人のことは考えていないです。「もっと自分を見てほしい!」って思っていますね。「4人のことを見てほしい」っていう気持ちは前提にあるのかもしれないけど……「自分のこと、自分のこと」ってなっている。限界のときは本当に苦しいですけどね。でも、絶対に倒れたくないし、臨界点にはいきたい……いい意味で、自分に酔えている状態なんだと思います。
KANON:でも、そうなれるのも、「他の3人を信じている」っていう大前提があるからじゃない? 「個々」だけど「孤独」ではないというか。
MIZYU:そうだね。4人を当たり前に信じているから。自分に対しても、他のメンバーに対しても、4人として見られていることに対しても、全部に自信を持って、自分たちが一番かっこいいと思っている。
メンバーそれぞれの個性をちゃんと認めることで、「自分の個性はこれだ」って認識できる。(SUZUKA)
―MIZYUさんは、踊ることは生きることとイコールだとおっしゃっていましたが、みなさんが踊りはじめたきっかけと、自分たちにとってダンスが特別なものになった瞬間を、それぞれお教えていただきたいです。
SUZUKA:私のきっかけは、「姉みたいなの」がいて。
―姉、みたいなの?
SUZUKA:そこは濁すんですけど(笑)、その人からの影響です。最初は楽しく踊っていたんですけど、コンテストみたいな、ガチで戦う場所にも出るようになって、戦うことによる一体感みたいなものを感じるようになったんですよね。
それからリーダーズの活動がはじまって、自分たちで曲に対して振りを付けることになってからは、ダンスって本当にいろんな表現の仕方があるんだなって知ったんです。グルーヴ、機敏さ、セクシーさ……それに、さっきも言ったように、この4人もそれぞれに個性があるし。そういうことを意識するようになってから、本当にダンスって奥深いし、素敵なものだなって思うようになったんですよね。だから、自分にとってダンスが特別なものになったのは、結局、リーダーズがはじまってからかもしれない。
―KANONさんは?
KANON:私にはダンスの恩師がいて、その人を真似するところからはじめたんです。私、ずっとこの髪形を変えていないんですけど、その先生も、長い髪の毛を振り乱して踊る人だったんですよね。その人の踊りながら髪の毛をかきあげる姿とか、振り乱す姿に憧れて、真似したりしていて。そうしたら、その先生に「私みたいだね」って言われたんです。「私みたいにはできているから、これからKANONちゃんの踊りが見つかるといいね」って。
それで、「自分なりの踊りってどんなものなんだろう?」って考えるようになったんです。それから、リーダーズの振り付けも自分でするようになって、どんどんと「自分らしさ」が具体的にわかるようになって。だから、私も結局は、リーダーズの活動がはじまってから、ダンスが特別なものになったのかもしれない。
SUZUKA:メンバーそれぞれの個性をちゃんと認めることで、「自分の個性はこれだ」って認識できるよね。そうやって、自分のことをわかりはじめる、というか。
―他者を知ることで自分を知る、ということですかね。
KANON:そうそう。リーダーズはそれぞれがみんな違うから、余計、「自分ってこうなんだ」ってわかる。
音楽を体で表現することの楽しさや喜びに目覚めていったからこそ、私にとって、ダンスは特別なものになった。(RIN)
―RINさんはどうですか?
RIN:私、音が流れたらなんでも反応して踊り出すような子どもだったらしくて、小さい頃からダンスのレッスンを受けていたんです。私にも恩師のような人がいるんですけど、その先生は、音に対するアプローチがすごくかっこよかったんですよね。その人を見ながら、音に体をはめていくことの面白さに気づいて。
それから、ダンスがめちゃくちゃ楽しくなりました。その先生に、「音が好きだから踊っているんだって、ちゃんと感じていてね」って言われたことがあるんですけど、音楽を体で表現することの楽しさや喜びに目覚めていったからこそ、私にとって、ダンスは特別なものになったんだろうと思います。
―なるほど。「音と自分」の関係性ということですよね。MIZYUさんは?
MIZYU:私もRINと同じように、音が鳴ったら踊る子どもだったらしくて。母親に認めてもらって、ダンスを習いはじめたんですけど、当時は「自分としての表現」というよりは、先生の振り付けを正確に踊ることを楽しむ、みたいな感じだったんです。
でも、リーダーズに入って自分で考えて振り付けを踊るようになってから、よりダンスが楽しくなった感覚があって。考えてみたら、ソロ用に自分の振り付けを考えたことは前にもあったけど、グループありきで振り付けを考えたのは、リーダーズになってからが初めてだったんですよね。
―やはり、この4人であることが重要だったんですね。
MIZYU:そうですね。それに、音楽性も変わっていくので、新しいアプローチがどんどん自分たちのなかから出てくるし。普段は踊らないようなシティポップみたいな曲調の曲をいただいたときなんて、最初は「これ、どう踊るん?」みたいな感じだったけど、今では映像を見ると、「いい振り付けだな!」って自分たちでも思えるし。それってすごく大切なことだし、幸せなことだと思うんですよね。
ダンスをやっていなかったら、こんなに音楽も好きじゃなかったと思うし。絶対に、踊ったことで人生が華やかになっていると思う。(KANON)
―4人の話を聞いて思ったのは、みなさんのなかには、「踊る」という行為を通して、世界を知り、そして自分自身をより深く知っていく感覚がある、ということで。おそらく、曲を渡されて「これに振り付けをしてください」と言われるのは、「この曲に対して、あなたはどういう人間なんですか?」と問われているのと同じことなんだろうと思うんですよ。
SUZUKA:いいこと言いますねぇ。まさにその通りだと思います。
RIN:「踊っていなかったら、なにしていたんだろう?」って思うよね。きっと人生が全然違うものになっていたと思う。
KANON:そうだよね。私も、ダンスをやっていなかったら、こんなに音楽も好きじゃなかったと思うし。絶対に、踊ったことで人生が華やかになっていると思う。
SUZUKA:私は、もし踊っていなかったら、お笑い芸人になっていたかなぁ。
―ははは(笑)。
SUZUKA:……私、この間、駐輪場のおじさんに「今日はなにしてきたん?」って訊かれたんですよ。それで、「踊ってきましたよ!」って答えたら、「女優さんになりたいんか?」って言われて。「いや、別に。ダンスをやっていきたいんですよ」って言ったんです。そうしたら、そのおじさんに「ダンスって、おばちゃんになったらできないでしょ? それでも踊り続けるのかい?」って言われたんですよ。
MIZYU:へぇ……なんか、ドラマみたいだね。
SUZUKA:うん。そのときに、自分はダンスを生涯やっていくとか、そういうことを全然考えていなかったなって思って。とにかく、今を全力で楽しむことしかできないし、この先の体力のこととか、考えていなかった。だから今日、「なんで踊るのか?」みたいな話になったのは、タイムリーで、ちょっとびっくりしました。
- リリース情報
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- 新しい学校のリーダーズ×H ZETTRIO
『狼の詩』 -
2018年8月29日(水)発売
価格:1,296円(税込)
VICL-374281. 狼の詩
2. 雨夜の接吻
- 新しい学校のリーダーズ×H ZETTRIO
- プロフィール
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- 新しい学校のリーダーズ (あたらしいがっこうのりーだーず)
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模範的なヤツばかりが評価される時代、くだらない不寛容社会から、個性と自由ではみ出していく踊るセーラー服と奇行癖。その名も「新しい学校のリーダーズ」。攻めの利いたダンスとサウンド、独特なキャラクターとMCを武器に2015年7月から全国各地でライブ活動する傍ら、コイケヤ、UNIQLO、Google Android、ロッテ「Fit's」等の企業と、はみ出し具合が絶妙なコラボや出演を重ね、じわりと若者に刺さりはじめている。
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