2018年において、待望視されていた作品が遂に到着した。mabanuaの6年ぶりとなるソロアルバム、『Blurred』である。近年彼がプロデューサーとして関わったアーティストは、藤原さくら、米津玄師、SKY-HI、LUCKY TAPES、RHYMESTERなど、数え上げればきりがない。7月15日に放送された『関ジャム 完全燃SHOW』(テレビ朝日系列)において、いしわたり淳治、蔦谷好位置と並ぶ姿からは、「時代の寵児」というやや大げさな言葉も思い浮かんでしまう。
この背景には、mabanua自身のルーツであるブラックミュージックの流行があったわけだが、決してその枠には収まらない、開かれた音楽家であるからこそ、彼は多くのアーティストから求められているのだ。そんなプロデューサーとしての華々しい活躍に加え、ドラマーとして、作家として、さらには昨年末に再始動したOvallのメンバーとして、様々な活動を展開してきたわけだが、その一方で、ソロアルバムの制作は決して簡単なものではなかったという。
この度完成した『Blurred』は、そのタイトルどおり、「曖昧さ」というカラーが強く打ち出され、ややアンビバレントながら、常に自然体なmabanuaの人間性そのものが色濃く反映された作品となった。そしてそれは結果的に、消費のサイクルが加速する現代に対する、明確な提言にもなっていると言えよう。
自分がやってる音楽のジャンルも活動のスタイルについて聞かれても、「いや、自分でもわからないです」っていう(笑)。
—ソロとしては実に6年ぶりとなるアルバムが完成したわけですが、作品の構想自体はいつ頃からあったのでしょうか?
mabanua:4年くらい前から漠然とあって、本当は2年前には完成しているはずだったんですよ。でも、作ったものを聴いてみると、ちょっと流行りに乗りすぎている感じがあって、賞味期限の短さを自分で感じてしまったんですよね。だからそこまで作ったものを一度消して、イチから作り直すことにしたんです。
今度は流行りとかを無視して、無意識のうちに貯蓄されたものから、何も考えずに出てきたものだけを厳選して作っていって。それでプラス2年くらいかかったんですよね。
—ここ数年はブラックミュージックがトレンドになって、だからこそ、mabanuaさんはプロデューサーとして求められ、時代の顔になったと言っても過言ではないと思います。振り返ってみると、mabanuaさんご自身はいつ頃からシーンの風向きが変わってきたと感じられましたか?
mabanua:Awesome City Clubや、世の中的にいうとSuchmosが大きいですよね。日本の若手バンドの間でのブラックミュージックブームと、海外のR&Bリバイバルが、同時に来た印象があって、今挙げた2つのバンドの登場からはそれを強く感じました。
SuchmosはJamiroquaiから影響を受けているってよく言われるじゃないですか? Jamiroquaiとか、いわゆるアシッドジャズって、自分が小~中学生ぐらいのときに流行っていたので、「あ、時代が一周したんだ」みたいな感じがありました(参考記事:Jamiroquaiが、Suchmosやブルーノ・マーズらに与えた影響とは?)。
—Awesome City Clubにプロデュースで関わられたときは、「これは自分の得意なやつだ」という部分と、「自分の知っているのとはちょっと違うな」という部分と、両側面あったかと思うのですが、実際いかがでしたか?
mabanua:自分がそのままやると、マニアックなほうにいっていたと思うんですけど、レコード会社の人からは「ポップな路線と黒い部分を両立させてほしい」みたいなリクエストをずっともらっていたので、そのバランスは難しかったですね。Ovallではちょっとよれるグルーヴをひたすら追求していたんですけど、Awesome City Clubでそういう要素を出しちゃうと、聴く層が限られちゃうかなとか考えたり。
—mabanuaさんが多くのミュージシャンから求められたのは、まさにその両側面を持ってらっしゃったからだと思うんですよね。過去のソロ作、特に2ndアルバムの『only the facts』(2012年)に関しては、ポップで開かれた作品になっていた。そこは大きかったと思うんです。
mabanua:そうかもしれない。昔からブラックミュージック一筋で聴いてきたわけでは全然なくて、今まで生きてきたなかのほんの数年、黒い音楽に没頭した時期があるっていうだけなんですよね。自分のなかでもジャンルがごちゃごちゃに混ざってるし、僕に対するイメージも人によって違って、ドラマーだと思ってない人もいたりしますからね。
「歌も歌うんですね。知りませんでした」とか言われるんですよ。でも、もともと自分はそういう人間というか、自分がやってる音楽のジャンルも活動のスタイルについて聞かれても、「いや、自分でもわからないです」っていう(笑)。
mabanuaがドラマーとして所属するOvallの『In TRANSIT』を聴く(Apple Musicはこちら)アーティストとして、世間の要望に添い過ぎるのはすごく危険。
—音楽的な幅の広さがここ数年のプロデュースワークでは強みとして作用した一方で、逆に言うと、ソロ作を作るにあたっては、改めてアイデンティティーを問われた数年でもあったと思うんですね。途中で一度作り直した理由も、そこにあるのかなと想像するのですが。
mabanua:そうですね。いろんな音楽を聴いて、幅広くやってる分、人にしてあげられることはいっぱいあるんですけど、自分のことになると「広げすぎちゃってたな」と感じて。今回ソロを作ってみて、自分の作品はもうちょっとパーソナルな意識で作ってよかったんだなって思いましたね。
—「広げるんじゃなくて、自分の好きなものを」という意識の転換は、もちろん一晩でガラッと変わったわけではなく、徐々に変わっていったのだと思いますが、そのなかでも、何か大きなきっかけとなるような出来事はありましたか?
mabanua:自分がアーティストとして日々暮らして音楽を聴くなかで、トレンドを意識しすぎたアルバムって、あんまり聴いてないことに気づいたんですよ。SpotifyとかApple Musicで聴いていた音楽を見てみると、そのアーティスト自身がとにかく夢中で作ったものとか、パーソナルな欲求だけで形作られた作品しか聴いてなくて。
—具体的な作品名を挙げていただくことはできますか?
mabanua:今作に参加してもらったCharaさんを例に出すと、一番ヒットしたのは『Junior Sweet』(1997年)だと思うんですけど、僕はCharaさんが一度メジャーを離れたときに作ったアルバム(2005年リリースの『Something Blue』)を一番聴くんですよ。
やっぱり、「最近のトレンドに、これとこれをちょっと取り入れてみました」じゃなくて、時代とか一切関係なく、その人の想いにフォーカスされたものを一番聴いてきたし、そういうもののほうが5年経っても10年経っても残る気がするんです。だから、自分もそういうアルバムを作るべきだなって気づいたんです。
—トレンドに近い場所にいた数年間だったからこそ、逆に自分自身であることの重要性を改めて感じた数年間だったとも言えそうですね。
mabanua:そうですね。やっぱり、アーティストとして、世間の要望に添い過ぎるのはすごく危険だと思っていて。逆に、聴いてくれる人が想像してないようなことをやるのが、アーティストとして本来あるべき姿だと思います。
自分がやりたいことをどんどんやって、アルバムごとにスタイルを変えたとしても「あの人、何やるかわかんないけど、そこがワクワクする」みたいに言われ続けるアーティストが、一番いいなと思う。たとえば、BECKって、『Morning Phase』(2014年)と新しいアルバム(2017年リリースの『Colors』)だと全然違うけど、それでも両方支持されているじゃないですか?
BECK『Morning Phase』を聴く(Apple Musicはこちら) BECK『Colors』を聴く(Apple Musicはこちら)
mabanua:あとは、ミシェル・ンデゲオチェロもそうですよね。ジャズだったり、ファンクだったり、ロックだったり、アンビエントだったり……あの人も何をやるかわからない面白さがある。自分が理想とするアーティストは、そういう感じなんです。
ミシェル・ンデゲオチェロ『Ventriloquism』(2018年)を聴く(Apple Musicはこちら)
今は、カラーをより明確にするべき時代。
—今って、プロデューサーの存在感が大きい時代でもありますよね。さっき話に出た、BECKの『Colors』はグレッグ・カースティンの存在が大きかったし、もちろん、mabanuaさんご自身も近年はプロデューサーとして大活躍をされていた。そういった時代感をどう捉えていますか?
mabanua:The Weekndのアルバムみたいに、「曲ごとにプロデューサーも録ってる場所も全然違う」という例もあれば、BECKとグレッグ・カースティンみたいに、一緒に1枚のアルバムを作る例もあったり、プロデュースとか作り方の流行りや傾向って、あるようでない気がする。ただ、今の時代感でいうと、よりカラーがあるもののほうが強い気がするんです。
—それはプロデューサーとしての立場から感じることですか?
mabanua:この前、藤原さくらちゃんの作品に全曲プロデューサーとして参加したんですけど(2018年6月リリースの『green』)、さくらちゃんだったらいろんなプロデューサーを立ててもいいかもしれないけど、「振り切る」っていう意味でも、1人のプロデューサーで作りきる意味は大きかったと思うんです。
さくらちゃんが自分と丸々1枚やることで、ファンにとっては一番好きなアルバムにもなり得るし、もしかしたら、一番嫌いなアルバムにもなるかもしれない。でも、いろんなものが生まれては消費されるなかで、より個のカラーを全面に出すためには、1人のプロデューサーで作るほうがいい気がするんです。
藤原さくら『green』を聴く(Apple Musicはこちら)
—ここ数年ではmabanuaさん以外にも、Kan SanoさんやMichael Kanekoさんなど「origami PRODUCTIONS」のメンバーが注目を集めましたが、それもやっぱり個の色があったからだと思うんですよね。職人的なアレンジャーとかサポートミュージシャンではなく、それぞれがアーティストであり、色を持っているからこそ、多くの人に求められたのかなと。
mabanua:各自が自分のアルバムを作っているのもあって、origamiには音楽を俯瞰で捉えられるアーティストが集まっているんじゃないかなと思います。プレイヤーに徹し過ぎると、音楽を俯瞰で見られなくなってしまう気がする。
マイクとか機材の質問をもらうことがよくあるんですけど、究極的なことを言うと、自分にとって別にマイクは音が録れたらどれでもいいんです。自分は「こういう曲にしたいから、あのスネアを使おう」って曲ありきで考えるんですけど、プレイヤーに徹してしまうと「いいドラムセットを買ったんで、これ使いたいんですよ」みたいなことになりやすいなと。
mabanua:でも、アーティストとして作品をトータルで作るときには、全体を見据えて、よりリスナーが聴きやすい形を第一に考えるんですね。origamiだと、誰かに単曲で依頼がきたときに、「アルバム全体をプロデュースすることも全然できますよ」みたいな提案をするんですよ。で、アルバムができたら、「ちなみに、ライブもできるんですよ」って提案する。そうすると、アルバムからツアーまで、全部が1つのカラーでまとめられるんですよね。そうやって、アーティストや作品のカラーをより明確にするべき時代に合わせた提案ができるのがorigamiの強みだと思います。
自分が好きな音楽を振り返ってみたとき、ジャンルが特定されていない音楽を好んでよく聴いていた。
—『Blurred』について改めて聞かせてください。以前まで作っていたものを一度消去して、もう一度作りはじめるにあたって、アルバムとしての青写真はどの程度あったのでしょうか?
mabanua:『Blurred』というタイトルにも表れていると思うんですけど、ただ明るいだけの作品にはしたくなかったんです。アルバムの色を風景とか時間帯で表現するとしたら、夕日が落ちる前後、または朝日が昇る前後の時間帯の風景が思い浮かんでいて。
歌詞にしても、別れとも出会いともつかない内容が多いんですよ。ジャケットも、2人が寄り添ってるのかなと思ったら、これ、男の人が女の人の手を掴んでいるんですよね。離れようとするのを止めてるのか、単純に引き寄せてるだけなのか、どっちにも取れる。
—ただ2人が肩を寄せ合ってるわけではないんですね。
mabanua:そういう切なさみたいなのもあったり、暗いんだけどダークともまたちょっと違ったり、曖昧なぼやけた感じっていうイメージがずっとあって。そうすると、シンセの音もアナログに寄っていくというか、あまりバキバキしたものでない世界観で全体をまとめるように作っていきました。あと、改めて自分が好きな音楽を振り返ってみたとき、ジャンルが特定されていない音楽を好んでよく聴いていたんです。
—具体的にはどんな音楽でしょうか?
mabanua:僕、Unknown Mortal Orchestraが好きなんですけど、彼らの音楽ってサイケデリックとも言えるし、ヒップホップ要素もあるのに歌はフォーキーだし、ギターが歪んでるからロックでもある。ああいう音楽がすごく好きなんですよね。
以前よく比べられたToro Y Moiも、トラックものっぽい曲もあれば、バンド一発録りのアルバムもあったりする。ああいう「何やってるんだろう、この人?」っていうサウンドが、自分的には一番いいんです。「俺、R&Bやってます!」みたいな、R&Bのあるべき法則だけで固められた音楽とか、聴いていてあまり面白いと思わないんですよね。
Unknown Mortal Orchestra『Sex & Food』(2018年)を聴く(Apple Musicはこちら) Toro Y Moi『Boo Boo』(2017年)を聴く(Apple Musicはこちら)
—今はそういう音楽がポップミュージックとして一般化しつつありますよね。「ジャズとヒップホップのクロスオーバー」も、もうわざわざ言う必要がないというか、より若い世代の音楽って、クロスオーバーが前提になっているなと感じます。
mabanua:確かに。ジャズとヒップホップだけでも、他のジャンルが混ざっている感じが十分しますけど、今はそれだけでも足りない感じはありますね。
—今作にしても、ヒップホップなのか、ネオソウルなのか、ロックなのかって聞かれたら、「どの要素も入ってます」という作品だと思いますし。
mabanua:日本語で歌っているから邦楽と言えば邦楽だけど、オケだけ聴くと海外のサウンドっぽいとも言われます。悪く言うと「散漫」なのかもしれないですけど、よく言うと「誰でも、いろいろな角度から聴ける」ってことなのかなって。
そういうこともあってか、「普段パンクバンドをやってます」という人から「いつも聴いてます!」と言われたり、去年台湾へライブに行ったときは、ヒップホップの格好した人から「毎日聴いてるよ」って言われたりもして(笑)。こういうスタイルゆえに、いろいろな人が聴いてくれるのかなって。
mabanua『Blurred』を聴く(Apple Musicはこちら)やっぱり日本語は意味が直接的になりがちで、意識していなくてもJ-POP化してきちゃう。
—歌詞の話が出ましたが、これまでの作品が英語詞だったのに対して、今回は日本語詞だというのは大きなポイントの1つで、これはやはりプロデューサーとして日本のポップシーンと関わってきたことも関係しているのかなと。
mabanua:去年弾き語りライブをちょこちょこやったんですけど、そのときに日本語の強さを実感したんですよね。自分みたいなネイティブじゃない人間が、ミニマムな空間で、英語だけで1時間のライブを完結させるのって、リスナー側からしても結構ハードルが高いというか。そういうときに、日本語できちんと言葉尻に意味合いを持たせつつ歌えると、何かしら印象を持って帰ってもらえることが多い気がして。
バンドでも弾き語りでも対応できるようにと考えたときに、日本語で作ったほうが強いなと。なので、ちゃんと日本語がハマるようなメロディーをずっと模索しながら作っていたんです。でも、やっぱり日本語は意味が直接的になりがちで、意識していなくてもJ-POP化してきちゃうところが難しくて。また名前出しますけど、Charaさんはそのバランスがすごくいいんですよ。
Chara“Symphony feat. mabanua”を聴く(Apple Musicはこちら)
—ああ、そうですよね。
mabanua:Charaさんの歌詞は日本語詞でも、はっきりと意味はわからない。でもなんとなくストーリーが伝わってくるから、自分で模索する楽しさがあるんですよね。意味はわからないんだけど、すごく切ない気持ちになったり、ストーリーが思い浮かんでくる。リスナーに自然と考えさせる瞬間が生まれるくらいの日本語の感じがすごくいいなと思って。そういう日本語だと、どんなオケを作ってもハマりやすいんですよね。
ゴッチさんの知恵を拝借できるんだったらこれ以上のことはないなと。
—そんなアルバムのなかに、ゴッチさん(ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文。ソロ名義はGotch)が作詞をした“Heartbreak at Dawn”も収録されていますね。
mabanua:ゴッチさんのソロの2ndアルバム(2016年リリースの『Good New Times』)ってほとんど英語じゃないですか。1stアルバム(2014年リリースの『Can't Be Forever Young』)は全部日本語で歌っていたのに。だから自分と逆なんですよね。もともと日本語で歌ってたゴッチさんが最近英語で歌いはじめて、英語で歌っていた俺は最近日本語で歌いはじめた。
そういうこともあって、ゴッチさんには作詞を依頼しました。あの人は英語と日本語のメリットとデメリットをすごく把握しているし、もともとASIAN KUNG-FU GENERATIONで養ってきたあの歌詞力があるわけで。その知恵を拝借できるんだったらこれ以上のことはないなと思って。
Gotch『Can't Be Forever Young』を聴く(Apple Musicはこちら) mabanuaがドラムで参加したGotch『Good New Times』を聴く(Apple Musicはこちら)
—もともと日本語に対するこだわりがすごい人ですもんね。
mabanua:そうですね。あとうちの奥さんが、英語で歌った自分の曲より、日本語で歌ってるゴッチさんの曲を気に入ってるんです。「“Can't Be Forever Young”の歌詞がすごくいい」みたいなこと言われると、「そっか、じゃあ俺も日本語で歌うか」ってなって(笑)。直接的な内容を日本語で書くのは嫌だけど、少なくとも、自分の奥さんをそういう気持ちにさせるような歌詞をちょっとでもいいから書きたいなと(笑)。
—いい話ですね。まさに、パーソナルな側面が出てる(笑)。
mabanua:そうです、そうです。世間の流行りじゃなくて、うちの奥さんの流行り(笑)。
安全牌でいくほうが楽だし、安心じゃないですか。でも、こういう時代だからこそ、逆にそれはしちゃいけない。
—最後に、ソロアーティスト、プロデューサー、バンドマンなど、様々な顔を持つmabanuaさんから見た、これからの音楽家にとって重要だと思うことを話していただけますか?
mabanua:やっぱり、アーティストの意思が見えないものはよくないと思います。ポップミュージックになればなるほど、売れれば売れるほど、いろんな人の意見や想いが入り込むわけじゃないですか? そうすると、アーティストのやりたいこと、作品としてあるべき姿というのが薄れていくような気がする。
mabanua:でも今、メジャーなフィールドで生き残れているアーティストは、自分のやりたいことを明確に具現化できている人だと思うんです。サカナクションの山口一郎さんとか、椎名林檎さんとか、ゴッチさんもそう。そういう人じゃないと、たぶん2~3年で契約を切られて終わっちゃう。そういう意味でも、何がしたいのかがはっきりわかるようにしたほうがいいと思います。
去年、RHYMESTERのプロデュースをやったときに、宇多丸さんが「RHYMESTERはアルバムを出すごとに、半分のファンがいなくなる。でも、いなくなった分だけ新しいファンがつくんだよね」と言っていて、それってかっこいいなあと。まさにそれが、「自分たちのやりたいことを優先させる」ということなのかなって思ったんです。
mabanua:結局、流行りとか周りからの要望に合わせて作っていくと、それ以上のものはできない。それは音楽に限らないと思うんです。メディアにしても、「こんな人を取り上げるの?」とか「こんな視点で捉えるなんて今まで想像できなかった」みたいなもののほうが、書いている側も読む側もワクワクするし、「次どんな記事を出してくるんだろう?」って思われたほうがきっといいじゃないですか?
—そうですね。メディアの話にとどまらず、あらゆることに通じる話だと思います。
mabanua:みんなリスクを恐れるというか、安全牌でいくほうが楽だし、安心じゃないですか。でも、こういう時代だからこそ、逆にそれはしちゃいけない。
mabanua:今回のアルバムを作るのも辛かったんですけど、そういう苦しみや不安の上に、新しい面白いものができると思っているんです。きっと、1stアルバム(2008年リリースの『done already』)みたいにずっとヒップホップのアルバムだけを作っていたら、今の自分はいないんじゃないかな。ファーストを聴いてくれた人のなかには、2ndアルバムを聴いてがっかりした人もいるとは思うんです。でも、セカンドを作ったことで広がったもののほうがむしろ大きかった。
だから、結論としては、自分がそのときにやりたいものをやればいいっていうだけの話なのかなと思います。だって、「この6年のプロデュースで培った大衆性を今回のアルバムに盛り込んでみました!」なんて言われても、そんな音楽、絶対聴きたくないと思うんですよね。
- リリース情報
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- mabanua
『Blurred』限定盤(2CD) -
2018年8月29日(水)発売
価格:3,240円(税込)
OPCA-1039[DISC 1]
1. Intro
2. Blurred
3. Heartbreak at Dawn
4. Night Fog feat. Achico
5. Fade Away
6. Overlap
7. Cold Breath
8. Tangled Up
9. Call on Me feat. Chara
10. Scent
11. Imprint
[DISC 2]
DISC 1のインストゥールメンタルバージョンを収録
- mabanua
『Blurred』通常盤(CD) -
2018年8月29日(水)発売
価格:2,700円(税込)
OPCA-10381. Intro
2. Blurred
3. Heartbreak at Dawn
4. Night Fog feat. Achico
5. Fade Away
6. Overlap
7. Cold Breath
8. Tangled Up
9. Call on Me feat. Chara
10. Scent
11. Imprint
- mabanua
- イベント情報
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- 『mabanua tour 2018“Blurred”』
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2018年11月1日(木)
会場:福岡県 BEAT STATION2018年11月14日(水)
会場:東京都 渋谷 WWW X2018年12月14日(金)
会場:大阪府 心斎橋 CONPASS料金:各公演4,000円
- プロフィール
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- mabanua (まばぬあ)
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日本人ドラマー、プロデューサー、シンガー。ブラック・ミュージックのフィルターを通しながらもジャンルに捉われないアプローチで全ての楽器を自ら演奏し、国内外のアーティストとコラボして作り上げたアルバムが世界各国で話題に。また、プロデューサーとして100曲以上の楽曲を手がけ、多数のCM楽曲や映画、ドラマ、アニメの劇伴も担当。またToro Y Moi、Chet Faker、Madlib、Thundercatなど海外アーティストとも多数共演。さらに、Shingo Suzuki、関口シンゴとのバンド “Ovall” としても活動し、大型フェスの常連となる。また、ビートメイカー・Budamunkとのユニット「Green Butter」、タブラ奏者・U-zhaanと共に「U-zhaan × mabanua」、ASIAN KUNG-FU GENERATION・後藤正文のソロプロジェクト「Gotch BAND」のメンバーとしても活動中。
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