「周りを幸せにしてこそ、自分も幸せになれる」。そんなこと、口先で言うのは簡単だけれど、心から理解して行動に移すのはなかなか難しい。しかし本稿に登場するTSUUJII(POLYPLUS / Calmera)とNakamuraEmiは、それを素直に実行しながら、でも「自分はまだまだです」と言える謙虚さすら持っている。
NakamuraEmiと言えば、リアルなライフストーリーや自戒も込めたような生き方の道標を歌に乗せ、リスナーの脳みそと身体をグラグラと揺らし続けるシンガーソングライター。2018年3月に行ったインタビューでは、「30代の大人がサボってはいけないこと」をテーマに、人とのコミュニケーションにおける大切なことや、下の世代に伝えることをやめてはいけないといった話を、優しい口調で語ってくれた。
そんなNakamuraEmiにとって、サックスプレイヤー・TSUUJIIは、自身の楽曲(“晴人”“モチベーション”)やライブステージにたびたび招くほど音楽家として敬意を示しながら、ひとりの人間としてもリスペクトしている存在。そしてTSUUJIIにとってもNakamuraEmiは、大ファンであることを頻繁に公言しながら、同じくひとりの人間としてリスペクトし、人としてのあるべき姿勢を学んでいるという。
TSUUJIIがリーダーを務めるバンド「POLYPLUS」は、9月12日に1stアルバム『debut』をリリースした。30代になったタイミングで新たな一歩を踏み出したTSUUJIIにも、「30代の大人がサボってはいけないこと」をテーマに聞いてみたところ、ふたりは20代と30代の変化についても、優しい口調で、何度も笑いを交えながら語ってくれた。
私の周りも全員TSUUJIIのファンになっていくんです。(NakamuraEmi)
—おふたりは、音楽家としてはもちろんですが、人として尊敬し合っているというのが、いつもやりとりを見ていると伝わってきます。それぞれの生き方や考え方において、どういう部分をリスペクトしていますか?
NakamuraEmi:そもそもは、カワムラヒロシさん(NakamuraEmiのプロデューサー&ギタリスト)とTSUUJIIが知り合いだったんですけど、カワムラさんがTSUUJIIと一緒にいる時間を、すっごく楽しそうにしていて。一緒に音を出すのはもちろんだけど、人間的にすごく楽しかったみたいで、そこから私もだんだんと興味を持ったんですよね。
最初は「王子様」みたいなイメージがあって、それは今もあるけれど、実は「昭和な男」感満載で、すごく男気がある。「男に二言はない」という感じもあるし。TSUUJIIには、ライブでもレコーディングでも「この人に任せておけば大丈夫」という感じがすごくあるんですよ。私とカワムラさんだけじゃなくて、チーム全体が大信頼をしています。
TSUUJII:見てください、このお話を真横で聞いて、ニヤニヤしてる僕の感じ(笑)。
NakamuraEmi“モチベーション”。TSUUJII参加曲(Apple Musicはこちら)
—信頼できるというのは、技術はもちろんだけど、「責任感が強い」とか?
NakamuraEmi:責任感はもちろんだし、TSUUJIIは、人と人のつながりを本当にすごく大事にするんです。私の周りの人とか、みんなのことをちゃんと覚えてくれている。私がお世話になってる美容師さんとかにまで、「Emiさんの髪をやってる方ですよね」って言ってくれるんですよ。そうやって、一つひとつのつながりを大事にしながらみんなとしゃべってくれるから、私の周りも全員TSUUJIIのファンになっていくんです。
それに、メールもすごくマメに「ありがとうございました!」ってくれたりする。このあいだは、私たちが大阪でライブをやった夜に、TSUUJIIが静岡でCalmeraのライブを終えたあと、ファンの方もたくさん乗っているバスにひとりで乗って大阪まで会いに来てくれて。その次の日の朝も、私たちが名古屋へ出発するタイミングにホテルまで来て、オロナミンCをくれたんです。しかも、車2台分、ちゃんとビニール袋にわけて……もう、それにみんなで感動して。そういう部分が信頼を生むんだろうなって。
—まさに“かかってこいよ”で歌われている<目に見えない小さな小さな積み重ねの『信頼』という宝物>というラインと、Emiさんが前回のインタビュー(NakamuraEmiと語り合う、30代の大人がサボってはいけないこと)で話しくださった、手間がかかるコミュニケーションにこそ人と人が通じ合えるものがあるということに、重なってきますね。
NakamuraEmi:そうなんですよ! 会いに行って、顔を合わせてしゃべって、その空間でみんなと時間を過ごす、ということをすごく大事にしている方。私は、自分の活動ばっかりやって、人に会いに行ったり時間を使ったりすることが億劫になっちゃうときがあるから……本当にすごいなと思います。
TSUUJII:今の言葉、そっくりそのままお返ししたい感じですけどね。もう、「以下同文」で(笑)。俺には、Emiさんはそういう振る舞いをすごくナチュラルにやっているように見えて……もしかしたら、めちゃくちゃ考えて努力されているのかもしれないですけど。Emiさんがそうやって人と接している姿を見て、「自分も見習わなあかんなあ」と思わされるんです。
TSUUJII:めちゃくちゃ印象的だったのが……まあ、日々たくさんあるんですけど(笑)、Emiさんを見ててグッときたエピソードベスト5に入ってくることがあって。
NakamuraEmi:なになに? 全部聞きたい(笑)。
Emiさんは演者の鏡であり、チームの真ん中に立つ人の鏡だなって、僕はそこで学ばせてもらったんです。(TSUUJII)
TSUUJII:Emiさんの『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.4』のリリースライブが恵比寿LIQUIDROOMで行われたとき(2017年6月)、僕のなかに湧き上がった「あの素晴らしい音楽の一部になりたい」という気持ちがもう止められなくて(笑)。普段そんな営業みたいなことは絶対にしないんですけど、「僕、その日空いてます」ってカワムラさんに連絡して、その結果、飛び入りで参加させてもらえることになったんです。それで、打ち上げにも連れて行っていただいたんですけど、そのとき、コロムビア(レコード会社)とオーガスタ(所属事務所)の「偉い人、上から5人」みたいな方々がいらっしゃったんですよ。
NakamuraEmi:そうだね。
TSUUJII:そのみなさんが、「NakamuraEmi」という人間が大好きで集まって来てる感じがすごくあったんです。もちろん、会社としてEmiさんの活動に期待しているのもあるでしょうけど、「これから頑張ってもらう所属アーティストやし、顔出しとこか」みたいな業務的な感じはまったくなかったんですよね。
TSUUJII:それに対してEmiさんは、一人ひとりに、丁寧に「ありがとうございました」「おかげさまで」って挨拶に回られていて。さらに印象的だったのが、ローディーさんや現場スタッフの方々一人ひとりにも、偉い方にされている挨拶となにも変わらない感じで「ありがとうございます」って心から言って回られていたんですよ。その人たちはすごく嬉しそうだったし、そういうEmiさんの接し方があって、一人ひとりが「もっとこのチームをよくするために頑張ろう!」と思える空気になるんだなって。これはもう、演者の鏡であり、チームの真ん中に立つ人の鏡だなって、僕はそこで学ばせてもらったんです。
NakamuraEmi:恐縮です(笑)。
TSUUJII:Emiさんチームと関わらせてもらえるようになって、自分が中心となってチームとしてなにかやりたいと思うようになった部分はすごく大きくて。だからPOLYPLUSは、僕がリーダーとして仕切らせてもらうからには、こういうチームを作りたいなとイメージしながらやっているところです。
NakamuraEmiさんという人を支え、より大きくするために、それぞれの立場の人が、自分のできることでこのチームに貢献しよう、そして楽しくていいチームにしようという感じが溢れ出ているのが、やっぱりめちゃくちゃいいなと思うんですよね。
—少しひねくれた質問をすると……いい言葉をかけるとか、それこそオロナミンCを差し入れに持っていくなど誰かを喜ばせようとする行為って、「媚びてると思われたら嫌だな」と考えてしまって動けなくなる人も多いんじゃないかと思うんです。そういうことを、おふたりは考えたりしないですか?
TSUUJII:静岡から大阪へ行って、次の朝またオロナミンCを持って挨拶に行ったときは、さすがに「いやらしいかな?」って少し考えましたね。「ストーカーっぽいかな?」とか、「営業だと思われるかな?」って。でも、僕のEmiさんとEmiさんチームのみなさんへの愛と敬意にはなんの嘘もない自信があったので、みなさんにはちゃんと伝わるはずだと思って、行動に移しました。
NakamuraEmi:うん、まったく嘘くさくないし、営業だとか全然感じないです。本当の気持ちでやってくれているというのが伝わってくるから、チームのみんなが増して好きになっていくんですよね。
「うらやましい」って言ったらすごく簡単なんだけど……本当に、いいなあって思っています。(NakamuraEmi)
—音楽家、プレイヤーとしては、それぞれどう見ていますか?
NakamuraEmi:TSUUJIIは、音の説得力と、パフォーマンスと、瞬発力と、華で、一瞬でみんなをグーッと惹きつける。一緒にステージに立っていても、お客さんが目が離せなくなってるのを感じるんです。もう、この人がいればきっとお客さんは喜んでくれるっていう自信が、私だけでなくチーム全員にあるんですよ。
それに私は、セッションもフリースタイルもできないし、ちゃんと準備してからじゃないとライブができないタイプだから、音楽家としては自分にないものだらけを持っている。「うらやましい」って言ったらすごく簡単なんだけど……本当に、いいなあって思っています。
TSUUJII:僕は、嫉妬とかそういうレベルを通り越していて……Emiさんのライブは琴線に触れてきて、涙が出そうになるんですよね。表現者として、自分で作って表現して、それが人に伝わり、刺さる力が、もう段違いやなって。
そしてもう1組、ライブで僕の琴線に触れてくるアーティストが、THE イナズマ戦隊なんですけど。ボーカルの(上中)丈弥さんとEmiさんの魅力について話が盛り上がったときがあって、丈弥さんはEmiさんのことを「あの子やばいよね」「俺まじでバンドやっててよかったと思った」と言っていて。「どういう意味ですか?」って聞いたら、「自分がピンのシンガーソングライターで、Emiさんと同じ土俵に立ったとしたら、もうどっからどうやっても太刀打ちできないから。俺はバンドで、ずっと一緒に音を出してきたメンバーがいて、4人でバンドとしてやってるから戦えてると思う」と。あの上中丈弥さんをそう言わしめてました(笑)。
NakamuraEmi:丈弥さん、いつも会うと、「彼氏できたか?」しか言わないのに!(笑) そんなこと言ってくれてたんだ。
TSUUJII:たまにめちゃくちゃ真面目なこと言いますよね。20回に1回くらい(笑)。
音色とか、歌詞の書き方、間の取り方、挨拶の仕方、ステージでの曲紹介の仕方……もう、いろんなところでバレちゃうのが音楽なんじゃないかな。(NakamuraEmi)
—世の中には、「音楽と人間性は別物だ」という意見もあるじゃないですか。いい性格の人が、いい作品を作って人気を得るとは限らない、と。おふたりとしては、音楽性と人間性ってつながるものか、そうではないか、どう思いますか?
NakamuraEmi:私は、つながっちゃってるんじゃないかなって思います。
TSUUJII:僕も、そっち派ですね。表現者としては、たとえば立ち姿とかファッションとかも、すべてが絶対につながってると思うんですよ。
NakamuraEmi:TSUUJIの音の説得力や立ち姿は、まさに人間力も含めて、ああなるんだろうなって思うし。プレイヤーの人たちと合わさってセッションのなかであれだけ輝けるのは、普段のみんなとの交流の仕方があるからだろうなって、いつも思ってる。
TSUUJII:性格がいい悪いというより、たとえばパンクをやってたら、やっぱり生き方もパンクなほうがいいのかもしれない。もしくは、尖った音楽をやってるのに、めちゃくちゃ物腰が柔らかい、というのもひとつの表現になるかもしれない。どちらにせよ、僕は完全に切り離されることはないなと思いますね。
NakamuraEmi:音を出したときの音色とか、歌詞の書き方、間の取り方、挨拶の仕方、ステージでの曲紹介の仕方……もう、いろんなところでバレちゃうのが音楽なんじゃないかなって思うんですよね。
TSUUJII:本当にそう。以下同文です。
NakamuraEmi:(笑)。
NakamuraEmi:TSUUJIIは、素直な人だなって思う。POLYPLUSをなんで組んだのか気になってたんだけど、ステージを観ると、Calmeraのときと感情の出方が違うなと思ったから。Calmeraでは出せないものがあって、その音楽の衝動をどうするかを考えて、POLYPLUSを始めたんだなって。Calmeraでいるときと、POLYPLUSでいるときと、ソロでいるとき、精神状態は全部一緒?
TSUUJII:いや、全然違いますね。
NakamuraEmi:やっぱり、そうなんだ。
TSUUJII:人生をいっぱい生きたいなって。まさにおっしゃる通りで、POLYPLUSは僕にとって、Calmeraやソロではできない、表現したいもの、作りたいものをそのままぶつけられる場所になっているというか。
Calmeraは長くやってきたし(2010年に加入)、これからも母体のバンドとしてやるつもりですけど、良くも悪くもそのなかでの自分の役割があるんですよね。でも、本来僕はセッションとかが好きだから自由度の高いこともやりたいし、いろんな人と一緒に音を出してこそ音楽家として磨かれていくものだとも思っていて。だから、2014年に175RのYOSHIAKIさんと知り合ったのをきっかけに、一緒にセッションバンドをやりたい人に声をかけていったんです。
Emiさんの音楽とは、逆ですよね。正直、なんのメッセージもない。というか、なんのメッセージもなくありたいんです。(TSUUJII)
—そんなPOLYPLUSの1stアルバムがついに、9月12日にリリースされました。
TSUUJII:「自信作です!」って、リリースのタイミングでよく言う言葉じゃないですか?……でも、本当に自信作ができたなって思うんです。POLYPLUSとして、アルバムとして、1枚目の作品として、Playwright(所属レーベル)から出させてもらうものとして、「これでお願いします」と言えるものができた気がしています。
NakamuraEmi:“ppps”は、海外のライブの映像を見ていて感じる、同じグルーヴをずっとやってて、それが気持ちよくなってくる、みたいな感じがすごくあった。でも、後半の“tokyo class”“sugar”“late at night”もすごく好きだったなあ。ゆったりな感じもすごく心地よくて。
POLYPLUS『debut』(Apple Musicはこちら)
—TSUUJIIさんとしては、どういう1stアルバムにしようと思ったのでしょうか?
TSUUJII:それこそ前回のインタビュー(POLYPLUSを詳しく知る。fcp、Calmera、175Rらが新バンド結成)でも言ったように、「POLYPLUSはダンス音楽である」というところを突き詰めたくて。なにも考えずに聴けて、ある種トランスできるような音を作りたいし、ライブをしたいと思っているんです。Emiさんの音楽とは、逆ですよね。正直、なんのメッセージもないので。というか、なんのメッセージもなくありたいんです。
インストの音楽って、たとえばメロディーにこだわるとか、オーケストレーションにこだわるとか、なにか情景をイメージできる音にするとか、いろいろあると思うんですけど、POLYPLUSに関しては、そういう部分を全部削ぎ落として、残るものの純度を上げたいというか。ライブでも、リズムというもので人間の原始的なところに訴えかけると、会場全体がグルーヴして、2小節のフレーズでずっとフロアが揺れたりするんですよね。そういうものが作りたいなと思ってたら……思った通りにできた気がしています。
NakamuraEmi:レコーディングのときに「この音入れるかどうか」とか、そういう目標はTSUUJIIが主導権握ってやるの?
TSUUJII:いや……。
NakamuraEmi:みんなで?
TSUUJII:わりと全員な感じですね。
NakamuraEmi:すごいね! 合うんだね。
TSUUJII:バンドの動かし方とか進め方の部分は自分が中心でやらせてもらっているんですけど、セッションすることに関しては全員で、という感じですね。そういう意味でも、本当に素晴らしいメンバーです。
—ギター担当・Gottiさんの脱退(2018年6月に発表)は、リーダーのTSUUJIIさんとしてはどう受け止めたんですか?
TSUUJII:もう、苦渋の選択で。メンバーのなかで一番付き合いも長かったですし、ずっと理解者でいてくれたので。それに、もちろん純粋にプレイが最高だったから、一緒にやりたかったですけど……でも、メインバンド(Neighbors Complain)の動きがあるなかで、POLYPLUSの動きを鈍くしてることをGottiさんが申し訳なく思ってるなっていう感じはあったんです。それで、「これ以上はお互いを苦しめていってしまうことになるな」って、Gottiさんと半年に渡って30回くらい電話しながら決めました。
プレイヤー同士としても、バンドメンバー同士としても、なにかネガティブなことがあったのかというと、本当に1ミリもないんです。僕は「Neighbors Complainで頑張って」と思ってるし、向こうも「頑張って」って思ってくれてると思うから。いつかフェスとかで一緒になったときに、弾きにきてくれたらいいんじゃないかなって。ひとつの目標ができましたね。
年齢が上がってくると、「なにかあったときに、どれだけの人を守れるか」ということを考えるようになりました。(TSUUJII)
—TSUUJIIさんがPOLYPLUSとして1stアルバムを出す年齢と、Emiさんが『NIPPONNO ONNAWO UTAU vol.1』を出された年齢は、まったく同じで30歳なんですよね。前回のEmiさんのインタビューでは「30代の大人がサボってはいけないこと」というテーマで話をさせてもらいましたが、20代と30代を比べると、生き方や考え方にどういう変化があると言えますか?
NakamuraEmi:20代の頃、『NIPPONNO ONNAWO UTAU vol.1』を出すまでは、バラードばっかり歌ってたし、「なんで音楽をやってるんですか?」って聞かれたら「人を感動させたいからです!」と答えていて、歌詞とかも人に嫌われないように、当たり障りのないことを書いていたんですよね。でも、レゲエやヒップホップのミュージシャンと出会ったりライブを観たりしたときに、「ああ、自分はなんて飾った音楽をやってきたんだろうな」と思って。
当時付き合ってた彼に「お前は、歌はいいんだけど、音楽がなんか気持ち悪いんだよな」って言われて。その「気持ち悪い」がなにか、ずっとわからなかったんですけど……それこそさっき言ったみたいに、音楽は自分から出るものでやるのが一番なのに、飾ってたからだと思うんですよね。
TSUUJII:そういうお話は、Emiさんの“Rebirth”という曲にもだいたい書かれているので聴いてみてください(笑)。
NakamuraEmi:すごいよ、TSUUJII(笑)。本当にその通りです。
NakamuraEmi“Rebirth”(Apple Musicはこちら)
—今日話してくださったことにもつながる気がしますが、20代って人に好かれたい、評価されたいという気持ちが勝って、自分を大きく見せようとしちゃうけど、30歳前後になると、それよりも大事なこと、それこそ周りの人を大事にしてこそ自分らしさを保てるとか、そういうことがわかってきて実行ができる年齢なのかなと。
TSUUJII:今の事務所の社長に昔言われたことで、言ってもらってよかったなと思っていることがあって。それは、Calmeraも僕個人も、いろんな先輩に可愛がってもらってきたけど、本当に長くやっていこうと思ったら、ちゃんと後輩がついてくる人でありバンドにならないといけない、ということで。
この5年くらいで、後輩が増えてきたんですよね。どこまでその子たちの役に立てるかはわからないですけど、僕が経験したことを言ってあげるとか、なにかやってあげたいとか、そういう発想を持って生きていくのと、そういう発想すらないまま生きるのとでは、この5年が全然違うものになってたなという実感があるんです。
それこそ20代の最初の頃は、「有名になりたい」「売れたい」「稼ぎたい」とか、自分の欲求でしか思っていなかったけど、年齢が上がってくると、「なにかあったときに、どれだけの人を守れるか」ということを考えるようになりました。それは、家族、仲間、後輩、先輩、もっと言ったら道行く人……。頑張る理由ってそういうことかもしれないな、って思うようになりましたね。
NakamuraEmi:かっこいいね、TSUUJII。
—そういう想いがあるなかで、POLYPLUSはどういうことを実現する場でありたいですか?
TSUUJII:CDというのは、まだまだ生きているアイテムだと思うんですよ。POLYPLUSはメンバーそれぞれにメインバンドがあるし、基本的にはメインバンドを侵さないようにというなかでやっているので、ライブ活動には制限があって。でもCDは、ひとり歩きしてくれる可能性のあるものだと思うし、音楽がいろんな人に届いて心を高ぶらせたり癒したりするのって、やっぱり夢があると思うんです。それを僕らに近いジャンルのなかで見せてくれているのが、fox capture planやbohemianvoodooらPlaywrightのバンドだと思うから、一番目の前の目標というと、Playwrightのなかで売り上げ1位になるっていう。
POLYPLUS『debut』ジャケット(Amazonで見る)
—そうして、前話してくれたように(TRI4TH×カルメラ対談 J-JAZZやインスト音楽への問題意識を語る)、管楽器業界全体も底上げしていくと。
TSUUJII:このあいだCalmeraを観に来てくれたお客さんが、「EmiさんのところでTSUUJIIさんを知って、めっちゃいいなと思って、いろいろ観に行ってます。その結果、サックスを始めました!」って言ってくれたんですよ!
NakamuraEmi:えー! すごい!
—Emiさんとしては、なにを大事に活動を続けていきたいですか?
NakamuraEmi:いっぱい経験をして、とにかく自分らしい作品を作り続けることですね。今は、『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5』(2018年3月)を出してから感じたものをもとに、制作をしているところです。
TSUUJII:Emiさんは、本当に歴史に名を刻むべき人だと思ってるので。少なく見積もって瀬戸内寂聴さん、大きくいくならマザー・テレサくらい、と踏んでます(笑)。僕はそれを見届けたいですね。
- リリース情報
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- POLYPLUS
『debut』(CD) -
2018年9月12日(水)発売
価格:2,500円(税込)
PWT-049︎1. we gotta luv
2. ratz
3. m'n'dass
4. ppps
5. wake me up (cover of Avicii) 6. tokyo class
7. sugar
8. late at night
9. limiter
- POLYPLUS
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- NakamuraEmi
『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5』(CD) -
2018年3月21日(水・祝)発売
価格:2,916円(税込)
COCP-40289 / COCP-40297︎1. Don't(Album mix)
2. N
3. かかってこいよ
4. 新聞
5. 波を待つのさ
6. 星なんて言わず
7. 教室
8. モチベーション
- NakamuraEmi
- プロフィール
-
- POLYPLUS (ぽりぷらす)
-
2014年9月結成の5人組インストセッションバンド。メンバー各々がそれぞれのバンドで活動する中、「フロアを躍らせるセッションを!」を合言葉に、Sax. TSUUJII(from Calmera)とDr. YOSHIAKI(from 175R)を中心に、Key. MELTEN(from JABBERLOOP/fox capture plan)、Ba. YUKI(from JABBERLOOP)、Gt. Gotti(from Neighbors Complain)が集結。その場の空気と集う人々のテンションに合わせ自由に音を紡いでいく「セッション」を大切にし、時にクールに、時にハイテンションに、ジャンルやカテゴリを飛び越えたダンサブルなサウンドを展開。高い演奏力とフロアを巻き込む空気感で観る者を魅了し、躍らせ、着実に支持を拡大中。結成4年目に突入し、次なるステージへの飛躍が期待される注目のバンド。2018年、結成4年目に突入し、4月1日告知解禁と同時にシングル楽曲を突如配信、10日後にはタワーレコード限定でCDを発売し、発売日にはタワレコジャズランキング第1位、総合ランキング第3位にランクインし大きな話題をさらった。そしてこのタイミングでGt. Gottiがメインバンドの活動に専念するために離脱を決意。4人体制になり、言わばサードシーズンに突入し、より柔軟かつ刺激的な活動スタンスで次のステージへの飛躍が期待される注目のバンド。
- NakamuraEmi (なかむら えみ)
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神奈川県厚木市出身。1982年生まれ。山と海と都会の真ん中で育ち幼少の頃よりJ-POPに触れる。カフェやライブハウスなどで歌う中で出会ったHIPHOPやJAZZに憧れ、歌とフロウの間を行き来する現在の独特なスタイルを確立する。その小柄な体からは想像できないほどパワフルに吐き出されるリリックとメロディーは、老若男女問わず心の奥底に突き刺さる。2016年1月20日、日本コロムビアよりメジャーデビューアルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU BEST』をリリース。収録楽曲の“YAMABIKO”が全国のCSやFM/AMラジオ52局でパワープレイを獲得。2017年3月8日に2nd Album『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.4』を、そして5月24日にTVアニメ『笑ゥせぇるすまんNEW』のオープニングテーマ“Don't”が収録された主題歌シングルをリリース。2018年3月21日、3rd Album『NIPPONNO ONNAWO URAU Vol.5』をリリース、5月から全国22か所を巡る全国ツアーを行った。
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