今年1月にデビューした現役高校生バンドNo title。ストリーミングサービスを使った観客参加型の新たなオーディション『LINEオーディション2017』で見事総合グランプリに輝いてから、1年弱が経過した。(参考記事:高校生バンドNo titleのシンデレラストーリーが始まった)
地元青森と東京を行き来し、高校生とプロミュージシャンという二足のわらじを履く彼らが、11月14日に3rdシングル『ねがいごと』を発表した。デビューを境に、音楽は「自分たちが楽しむため」のものから、「人々を喜ばせるため」のものに変わり、関わる大人も増えるなど、高校生にとってはとてつもなく大きな変化を経験した。3人にとって、この1年はどんな年だったのか? 来年公開のGReeeeNの名曲“愛唄”を映画化した『愛唄 -約束のナクヒト-』では主題歌に抜擢されるなど、今後の飛躍も楽しみな3人と、この1年の歩みを振り返ってみた。
この間初めて、私とポチで大きな仲違いをしたんですよ。(ほのか)
—今年1月にデビューしてから、1年弱が経ちました。振り返ってみて、どんな1年でしたか?
ほのか(Vo,Gt):私は、2人の成長が早かったなぁと。技術もそうなんですけど、ちょっと大人っぽくなって、立ち振る舞いがちゃんとしてきた感じがします。
ポチ(Pf):成長かぁ……。どうだろう。
あんべ(Gt):この1年は、こうした取材も含めてたくさんの方々と関わるようになりました。音楽面でも、レコーディングや、アドバイスをいただける機会が増えたりして、とにかくいろいろな活動ができた1年だったので、それを通して技術も向上しているかなと思います。
ポチ:技術はまだまだですけど、楽曲制作については周りのスタッフの方々からたくさん学びました。これまではピアノだけで作曲していたんですけど、最近は作曲ソフトを使うことが定着してきて。だから、曲の作り方自体が大きく変わりました。
—それぞれいろいろな方法を学んで、やれることが広がったんですね。
ポチ:そうですね。前は、メンバー個人個人で曲を作っていたんですけど、最近はみんなで集まってデモを作ったりしていて。
ほのか:ポチとあんべがそれぞれ作ったアイデアの中から相談してひとつを選んで、デモ作りを進めていくようになりました。
—そうやって全員の意見を取り込んで曲を磨いていくことで、今までとは完成するものが違ってきそうですね。デビューしてからの1年で、バンドや音楽に対しての意識に変化はありましたか?
あんべ:デビューするまではずっと趣味でバンドをやってきていて。でも、仕事という意識が大きくなるにつれて、音楽がより自分の生活の一部になってきました。
デビューするまでずっとやっていた部活の時間を音楽に充てるようになって、前より練習する時間も増えて。今では自分たちで曲を作って、プロの方と協力してひとつの曲になっていくという過程がすごく楽しいです。
ほのか:前まで私たちだけではできなかったことができるようになって、上を目指せるようになりました。ゼロから自分たちで音楽を作り出す身になって、プロの自覚が出てきたからこそ、今まで以上にやりたいことが増えてきて。そこで衝突もするんですけど、乗り越えていける力がついてきたことを誇らしく思います。
—一人ひとりのやりたいことや思いが強くなっていくと、やっぱり衝突は増えました?
ほのか:この間初めて、私とポチで大きな仲違いをしたんですよ。デモ作りの時に、「私はこうしたい」「俺はやりたくない」みたいな意見のぶつかりがあったんです。
だけど、私たちはそれぞれができないことを3人で補い合ってひとつの曲を作っている。だから、みんなの意見を聞き入れたり、しっかり言葉にして伝えていこうって決めて、仲直りしました。
—ちなみに、それはいつ頃のこと?
ほのか:かなり最近です(笑)。小さい仲違いはこれまでもあったんですけど、今回はすっごく長かった(笑)。
リーダーっていうこともあって、あんべが緩衝材になってくれて。私もポチもそれぞれあんべに相談して、あんべがそれをまとめてくれて、3人で集まって話し合う、みたいな。前までは時間が解決してくれると思って、ほとぼりが冷めるのを待っていたりもしたんですけど、それじゃだめだなって思い始めて。
あんべ:僕だけ学校が違うので、2人の普段の生活の様子がわからないんですけど、会った時に雰囲気を感じ取りました(笑)。
ほのか:毎日会うわけじゃないから、適切な距離感で客観的に見てくれているよね。
手が届かなかったところに少し近づいた気がします。(あんべ)
—あんべさんにとって、2人の仲違いはリーダーとしても大きかったんじゃないですか?
あんべ:デビューしてから「リーダーだから」っていうシーンは増えたんですけど、今回の仲違いは、リーダーの立場だからこそ学べるものがあったというか。3人でひとつのバンドだし、結局バンドをよりよくしたいっていう思いはみんな同じだから、そのうえで食い違ってしまうのは仕方ないって。
ほのか:3人でひとつっていう意識はすごく強いです。もともと全員、小中学校が一緒で私はポチともあんべとも仲がよかったから、運命的なメンバーだと思ってて。だから私はこの2人以外の誰かとバンドをやることは想像がつかないんです。バンドを掛け持ちする人の感覚があんまりわからないっていうか。でも、2人はたぶん違うよね?
あんべ:うん。僕は、川谷絵音さんのように、バンドを掛け持ちしたり、プロデューサーもやったり、それぞれ違った音楽性で曲を作れる人をすごく尊敬しています。僕も、将来はプロデュースワークや楽曲提供にも興味があります。
ポチ:僕はこの2人とやることがすごくしっくりきているので、ほのかと同意見ですね。音楽性というより、精神的な意味でこの3人でやることに意味があると思います。
—その意見は、ほのかさんとポチさんが合うんですね(笑)。
ほのか:ほんとだ!(笑)
—自分自身の変化についてはどう思いますか?
ほのか:私は変わりたいって思っています。でも、変えなくていいところは変えたくない。たとえば10年経っても、今と変わらず若い人に向けて歌いたいと思っています。若い人に響くような歌詞を書きたい。
そのためには、なにか捨てなきゃいけないものがあるかもしれないけど、それもいい変化として受け入れたい。すごく前向きな気持ちです。
—変化するために、捨てなきゃいけないものってなんでしょう?
ほのか:私の場合は、高校生の放課後によくある、友達とカラオケに行ってご飯食べて、みたいなことですかね。小さいことなんですけど、そういう高校生の生活にちょっと憧れたり羨ましい気持ちもあったりする反面、今私にはそういうのを捨ててでもやりたいことがあるので。無駄に捨てたわけではないし、悔いてもいないし、必要なことだったと思います。
—音楽に進むために、そういう憧れは捨てたと。
ポチ:それで生活に変化もありましたけど、最初の頃に比べたら少しは慣れてきたよね。
あんべ:うん。こうして東京に来て取材してもらったり、プロの大人の人たちと一緒にレコーディングさせてもらったり、普段自分たちが聴いているLINE MUSICで曲が出せたり、手が届かなかったところに少し近づいた気がします。
—そういう世界に足を踏み入れて、戸惑いはありませんでしたか?
あんべ:もちろんありました。音楽は趣味としてやっていたので、それがだんだんと仕事になってくるにつれて……でもさっきポチが言っていたように、1年経ってようやく生活にも慣れてきました。楽しんで活動できているので、このまま続けていきたいなって思っています。
ほのか:うん。日々戸惑いはあるけど、それ以上に楽しいほうが勝ちます。変化があるたびに「私たちも、こういうことができるようになったんだな」って。
—ちなみに、デビューしてから学校の友達や周囲の人の変化はありましたか? 学校で有名人になったりとか。
ほのか:意外と、なにも変わらないかも。
あんべ:プロの音楽スタッフの人とどんな話をするのかとか、どんな場所でレコーディングしているのかとか、最初はいろいろ聞かれることも多かったですけど、とくに変化という感じではないですね。学校の友達は、今まで通り学校の友達のままです。
ずっと自分に対して劣等感を感じていたんです。(ほのか)
—新曲の“ねがいごと”は、変化することに対して少し戸惑いながらも、変化していこうとする前向きな歌詞が印象的でした。「君」に語りかけるような歌詞でしたが、「君」は誰をイメージして書いたんですか?
ほのか:そうですね。ポチやあんべ、周りの友達とか。まだ2年生ですけど、高校生活も確実に終わりに近づいていっていて、時間の早さをすごく感じるようになってきたんです。卒業って誰でも経験するけれど、そういう変化が晴れ晴れしたものになればいいなと思って。
—あんべさんとポチさんから見て、ほのかさんの歌詞はどうですか?
あんべ:今までは情景の描写が多かったし、哲学的というか抽象的な表現が多かったんですけど、“ねがいごと”は人との繋がりや自分たち自身がテーマになっていたりして、今までとは違うなと思いました。
—より身近で親密な歌詞になったというか。ポチさんはどうですか?
ポチ:ちょっと意外でした。あんべも言っていたけど、これまではちょっとカタくて、文学的で難しいって思っていたんですけど、今回は「こういうのも書けるんだな」と思ってびっくりしました。
—ほのかさんは書き方を意識的に変えたんですか?
ほのか:最初に歌詞を書きあげた時にはやっぱりまだカタかったんです。日頃から歌詞の断片をメモに書き溜めているんですけど、その時の感情が溢れた濃いフレーズばかりで。今までは、それを1曲の歌詞に欲張って詰め込みすぎる癖があったんです。だけど、今回は詰め込みすぎたものを分解して、聴いた人が共感したり、いろんな想像ができたりする歌詞になるよう、周りの方からアドバイスをもらいました。
—客観的に歌詞を見てもらって、書き直す作業をしたんですね。
ほのか:はい。「人が聴いたらこういうふうに感じるから、もっとわかりやすく書いてみて」とか、ちゃんと理由を教えてくださって。すごく苦労したんですけど、最終的には自分の感情も伴いつつ、人にも伝わりやすい書き方を見つけられました。
バンドを始めた時、私は2人と違って楽器がうまく弾けなかったので、ずっと劣等感を感じていたんです。でも、作詞をするようになってそういうネガティブな考えはしなくなったし、自己表現として楽しめるようになったと思います。
—2人は、ほのかさんのそういう劣等感を知っていました?
ポチ:知らなかった……。
あんべ:僕も初めて知りました。でもそれは別にいいと思います。いろいろな歌詞を書いてほしいと思うので、そういう感情も大切だと思うし。
ほのか:そういう感情は、考えていると出ちゃいそうになるんですよ。だからこれまでは頑張って消してきたんですけど、そういう気持ちを持っている人ってたくさんいると思うから、共感してもらえたらいいなと思います。
今回、歌詞の書き方を変えてみて、宇多田ヒカルさんとか、誰もがわかる言葉で書いていて、でもハッとさせられるってすごいなって改めて思って。宇多田ヒカルさんがあの歌詞にあの声を乗せるから響くっていう、その人ならではの形があるんだなと気づいたんですけど、そこで「私が書く歌詞の私らしさってなんだろう?」って思い始めました。
私は、進路が別々になっても3人でやっていきたいし、できるかなと思っています。(ほのか)
—今回のように歌詞の新たな書き方を覚えると、今まで書けなかったことも表現できるようになるでしょうし、自分らしいオリジナリティーのある歌詞っていうところにも着実に近づいていけそうですね。歌詞もそうですが、ほのかさんが映画『愛唄 -約束のナクヒト-』(2019年1月公開)の主題歌で、GReeeNの楽曲のボーカリストを務めたのも新たな試みですよね。
ほのか:GReeeeNさんが「透明感のある女性ボーカルが必要」ということで、私を選んでくださったと聞いています。歌うことが決まってすぐにレコーディングがあったので、実際に映像と歌を合わせてみるまでは全然実感がなくて(笑)。映像と一緒に見て初めてじわじわ実感した感じです。
—自分の歌声と映像が合わさった時、どんな気持ちでした?
ほのか:驚きました。「これ私なんだ! えー!」って今もどこかで思っています(笑)。映画の主題歌なんてめったにできないお話だと思いますし、すごく光栄です。
—あんべさんとポチさんは、近くでほのかさんを見ていてどう思いました?
あんべ:今まではずっと地元とかの小さな場所でライブをしてきましたけど、映画になるといきなり規模が全国になるから驚いています。公開が楽しみです。
ポチ:突然、映画の主題歌を歌うとなって、「急に大きくなった!」って。だから、近くで見ていても気持ちが追いついていないんですよね。
—じゃあ、3人とも今現実に起こっていることと、それに伴う気持ちにちょっとギャップがある状態?
ほのか:そうですね。「わあ! エンドロールに名前がついてる!」みたいな(笑)。
—なるほど(笑)。今3人は高校2年生ということで、そろそろ進路についても考え始める時期ですよね。みなさんは高校を卒業した後の自分たちを、どんな風に考えていますか?
ほのか:私は、進路が別々になっても3人でやっていきたいし、できるかなと思っています。2人にはあんまり聞いたことないですけど(笑)。
ポチ:僕も、続けていきたいと思っています。
あんべ:うん、続けていきたいです。
ほのか:よかった(笑)。
- リリース情報
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- No title
『ねがいごと』 -
2018年11月14日(水)配信
- No title
- 作品情報
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- 『愛唄 ―約束のナクヒト―』
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2019年1月25日(金)から全国公開
監督:川村泰祐
脚本:GReeeeNと清水匡
主題歌:GReeeeN“約束 × No title”
出演:
横浜流星
清原果耶
飯島寛騎
成海璃子
財前直見
富田靖子
中山美穂
中村ゆり
野間口徹
西銘駿
奥野瑛太
配給:東映
- プロフィール
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- No title (のー たいとる)
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リーダーのあんべ(Gt)、ほのか(Vo&Gt)、ポチ(Piano)の3人からなる、青森県三沢市出身の現役高校生バンド。2017年、LINE社主催の「LINEオーディション2017」で「総合グランプリ」を獲得。2018年1月、LINEの音楽レーベル「LINE RECORDS」より「rain stops, good-bye」でデビューし、LINE MUSIC最高6位を獲得。同MVはYouTubeで120万回再生突破。また6月リリースの初となるオリジナル曲「超えて」は、自身で作詞作曲を行い、LINE MUSIC最高9位を獲得、MVはYouTubeで115万回再生突破。また同曲は、青森出身のメンバーとゆかりのある、青森朝日放送「めざせ甲子園2018」のテーマソングになり、ほのかは「5代目ABA高校野球イメージガール」にも就任。2曲共に、プロデュースはGReeeeN等を手がける音楽プロデューサーJINが担当。2019年1月25日公開の映画『愛唄 ー約束のナクヒトー』では、GReeeeNが歌う主題歌「約束 × No title」にも抜擢! GReeeeNが初の脚本となる本作では、楽曲制作過程において、必要不可欠だったのが歌い出しの女性ボーカル。透明感のある「声」を探し求め、No titleの起用を決定。
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