努力してできないことはない。高校生R&BシンガーKAHOHの夢

夢を口にするのを怖いことだと思っている人は、世の中に少なくないだろう。いくら生き方や選択肢が多様化しているとはいえ、大きな夢を口にすればバカにされるかもしれないし、反対されるかもしれない。受け入れてもらえたとしても、その夢を叶えるのは無理かもしれない。そうやって人知れず心のなかで消えていった夢は、誰にでもあるのではないだろうか。

2018年の夏、芸能事務所TWIN PLANETとSTARBASEによる共同オーディションで審査員特別賞を獲得した現役高校生のKAHOHは、自分自身の夢を恐れず言葉にし、それを成すために行動を起こし続けてきた人物だ。オーディションから約半年、とうとう2019年2月にLINE RECORDSから配信限定シングル『HERE WE ARE』でデビューを果たす。

インタビューでは照れることなく堂々と大きな野心を口にすると同時に、自分自身のことを「才能がない」「自分にはまだまだ足りない」と話すKAHOH。そんな彼女が17歳という若さで歌手デビューの夢を手に入れ、大きな目標へのスタートを切れた理由とは? 彼女の人生哲学やヒストリーを徹底解剖する。

がんばってもできないことはない。だから努力するのが嫌だと思ったことは、一度もないです。

—KAHOHさんは4歳からダンススクールに入ったそうですね。親御さんの意向ですか?

KAHOH:いえ、6歳年上のいとこのダンスレッスンについていって、それを見て「かっこいい! やりたい!」と思って始めました。両親はやりたいことはなんでもやらせてくれるので、すごく協力してくれて。週3でレッスンに行って、夜は毎日ダンスをしていました。勉強もそんなに好きじゃなかったし、ダンスしかしてなかった(笑)。

KAHOH

—ダンスのなにが、そこまでKAHOHさんを魅了したのでしょう?

KAHOH:ダンスを始めてすぐ、先生が(習熟度制の)クラスを上げてくれたのが、すごくうれしくて。評価されるのがうれしかったんだと思います。踊ることは心の捌け口とかそういうわけでもなくて、当たり前で自然なものだったんです。考えてすることじゃなかったんですよね。

—ということは、練習がつらくてダンスをやめたくなったことなどは?

KAHOH:ないですね。練習すればするほど、できることが増えるじゃないですか。そしたら評価してくれる人が増える。それがすごく楽しかったんです。

—へえ、すごい。私は4歳からピアノを習っていたんですけど、うまく弾けないと練習がつらく感じてしまって。

KAHOH:もちろん私も泣きながら練習しました! 私が嫌なのは、練習じゃなくて「できないこと」なんです。できないから必死に練習するんです。つらいと感じることは大体、できないことがあるからじゃないですか?

—たしかに、そういうパターンが多いですね。

KAHOH:歌がうまく歌えないからつらい、この振りが覚えられないからつらい――それは努力でまかなえるものだと思うんです。がんばってもできないことって、そんなにないじゃないですか? だから努力するのが嫌だと思ったことは、一度もないです。できないことが嫌だった。

—中学生で歌を始めたということは、歌とダンスの二足のわらじで活動を?

KAHOH:いえ、ダンスはやめたんです。初めて歌のレッスンを受けた時「私、これできる!」と思ったし、その瞬間にダンスをやめようと決意しました。

—思い切りがいいですね。普通なら、キャリアのあるダンスも新しく始める歌も、どちらも武器にしていこうと思いそうですが。

KAHOH:多分ふたつはできなかったと思う(笑)。どっちも中途半端にできるだろうけど、評価されるほどのクオリティーにはならない気がしたから。

—ひとつのことを突き詰めたいのは、評価されたい、できるようになりたいから。さきほどのお話とつながってきますね。

KAHOH:だから本当に、私は才能がないんですよ(笑)。歌も全然上手じゃない。だから尚更強く「がんばろう」と思うんです。がんばったぶんだけうまくなれるし聴いてもらえる。その感覚はすごく好きだし、大切ですね。

地元のイベントでダンスのコーナーがあるたび、ダンススクールの先生がシンガーとして私をステージに立たせてくれたので、中学生の頃はそういうイベントのステージに出てました。

—シンガーとして立つステージと、ダンサーとして立つステージ、なにが違いましたか?

KAHOH:歌は、自分だけを見てくれる!(笑) ひとりでステージに立つと周りのことを考えなくていいし、自分ができる最大のことをしたら、それがそのまま評価につながる。目で見なくても、音だけで伝わるのが歌のよさだとも思います。

—たしかに、ダンスパフォーマンスを楽しむためには、視覚も聴覚も必要です。

KAHOH:音楽は耳があればいいから、伝えやすい。私が歌を続けられているのは、自分のことをいちばんリアルに伝えられるからなんです。歌うのが嫌になった時期もあるけど、それは歌うことを嫌いになったのではなく、うまく歌えない自分のことが嫌いになった時でした。だから、音楽を嫌いになったことは一度もないんです。

「歌はやめたほうがいい。いちからやり直したほうがいい」ってボロボロに言われたこともあった。

—オーディション合格時に「たくさん悩んだ時期があった」とコメントしていらっしゃった時期もそうでしたか?

KAHOH:そうですね。中学3年の時期、めっちゃたくさんオーディションを受けて、全部いいところまでいって落ちてたんです(笑)。「歌はやめたほうがいい。いちからやり直したほうがいい」ってボロボロに言われたこともあって……それがいちばん悔しかったかも。たくさん泣きました。

「自分は人の心に届く歌を歌うことができない」「自分なんかの歌、誰も聴かない」と思った時期もあって。でも歌うことをやめることはできなかった。

—その理由は?

KAHOH:歌うことが好きだし、なにより歌は自分そのものなんですよ。だから歌うことをやめたら自分がいなくなっちゃう。ちゃんと歌を歌う人でありたいんですよね。

—KAHOHさんが好きな宇多田ヒカルさん、安室奈美恵さん、MISIAさんなどの女性シンガーは、2001年生まれのKAHOHさんが生まれる前から活躍している方々ですよね。上の世代の音楽を好む若い人たちはよく「お母さんがカーステで聴いていたから好きになった」とおっしゃることが多いですが、KAHOHさんは?

KAHOH:私の趣味です(笑)。ダンスの先生がMISIAさんを教えてくれて。それから、自分でYouTubeとかでめっちゃ調べて。関連動画でいろんなアーティストがたくさん出てくるから、2000年頃の曲をたくさん聴きました。その時代の音楽のリズム感がすごくかっこよくて好きなんです。

—KAHOHさんに限らず、今の10代、20代の方々は、昔の音楽をよく知っているなと思いますが、それにはインターネットの発達も大きく関係していると。

KAHOH:YouTubeとかストリーミングで音楽を聴いてきてるので、好きなアーティストという単位というか、曲単位で「これが好き」ってパターンがすごく多いんです。おまけに、昔の音楽に触れやすいんです。でもCDしかない時代だとそうはいかないですよね。

—その結果2000年頃の音楽に辿り着いて、興味が出てきたんですね。

KAHOH:今の音楽を否定するわけじゃないんです。でもこの時代は歌詞やグルーヴも「音楽」って感じがすごくするし、濃いように感じました。

今はSNSがあるから、アーティストと一般人の距離もすごく近いじゃないですか。宇多田ヒカルさんもMISIAさんも安室さんも、存在としてはすごく遠いですよね。でも音楽はすごく近くにいてくれる。音楽が本物で、リアルな感じがして、すごく好きなんです。こういう音楽をやっているからこそ、遠い存在になれたんだなとも思うんですよ。だからいろんな人が憧れる存在になるんだろうなって。

—KAHOHさんの言う「本物感」や「リアル」とは、どういうものでしょう?

KAHOH:超個人的な意見なんですけど、プライベートが一切見えなくて「その人のことを歌でしか知れない」って感じ。それがすごくかっこいいなと思うんです。

わからないから想像するじゃないですか。想像させる音楽をやっているのがかっこいい。SNSでその人のことを知るのは親近感が湧くけど、音楽=その人って感じるのが、すごくリアルだなと思うんです。その人の感情が音楽に乗っていて、すごく正直。……なんて言ったらいいんだろう、難しい(笑)。遠い存在なのに、音楽はリアルで近いのがかっこいい。

—お話を伺っていると、宇多田ヒカルさんやMISIAさんや安室奈美恵さんに憧れているというよりは、彼女たちが成し遂げていることをできるようになりたい、ということ?

KAHOH:そうです! 音楽としても存在としても、そういう唯一無二なところがかっこいい。カリスマですよね。そういうことができる人ってかっこいい! 私もかっこいいと思ってもらいたいんです(笑)。

夢を持つことを否定してきた人たちに、夢は叶うことを証明できたのがうれしい。

—KAHOHさんは現役の高校生ですが、高校生活はいかがですか?

KAHOH:今は和歌山から大阪の高校まで毎日通っていて。学校にはモデルの子とか個性的な子もいっぱいいるんですよ。それが自分にとってすごく大きかった。この学校に入ってなかったら、田舎でちょっと目立つ子でしかなかったかも(笑)。

—KAHOHさんが通っているような専門分野が学べる学校は自分の進むべき道に進んでいる人が多いですよね。そして個性的な存在や、個性的な道に進むことを自然なことだと思っている。

KAHOH:学校のみんなはそれぞれ夢があるので、「なんでやりたいことをやるのに恥ずかしがるの?」みたいな感覚なんです。私もそういうマインドに変わりました。

—そういう環境に身を移し、2018年夏にオーディションで才能を認められました。いい変化があったタイミングで結果が出たのではないでしょうか。

KAHOH:これまでオーディションに落ち続けたのは全部、このためだったんだなと本当に思うんです。

調子に乗ってると思われるかもしれないけれど、自分は(アーティストに)なれると思ってたんですよ。ずっと自分に「絶対に私は人と違う」と言い聞かせてきたから、夢を持つことを否定されることも気にしなかった。そんな人たちに「夢は追いかければ叶う」と自分自身で証明できたのがうれしい。

—冒頭でおっしゃっていた、「努力すれば結果が出る」論と通じますね。

KAHOH:うん。才能はないけど、自分のことを疑わなかった。

誰かの二番煎じで終わるなんて絶対嫌なんです。やるなら絶対に1番がいい。

—今回のデビュー曲“HERE WE ARE”も17歳で新しい道へと踏み出すKAHOHさんの心情にぴったりの曲では。

KAHOH:「誰かがいたおかげで自分は夢を追いかけられた。これからもこの先もがんばっていくぞ!」という曲でもあります。今も今までもこれからも、ひとりじゃなにもできないから。

初めてこの曲を聴いた時は、もうすぐ留学してしまう友達のことが浮かんだんです。その子にも私にも大きい夢があって、いつか一緒に仕事しようね! って夢の話をたくさんしているんです。だから悲しいさよならだとは思わない。まさに歌詞のとおりですね。2番のここの歌詞がすごく好きで。

—<傷つくことも 傷つけることもない世界にいたのならば きっと君の胸の痛みに悩みも全部 こうやって分け合えてはいなかったのかな>というラインですか。

KAHOH:その友達と初めてケンカして、この歌詞が痛いほどわかったんです。ケンカしなくても傷つくことはあるじゃないですか。でもそれを知らないと人に優しくできない。「傷ついたことも傷つけたこともある」ってところが、偽善者ではない感じがして好きですね。

—この先どんなアーティストになっていきたい、というイメージをお持ちですか?

KAHOH:大好きなR&Bを歌いたいですね。じつは曲作りもちょっと始めてみたんですよ。でも、私もどんなアーティストになっていくのかはまだわからなくて……これからみんなで一緒にKAHOHのことを作っていきたいです。

さっき、かっこいいと思うアーティストについて話しましたけど、私の「こうなっていきたい」というイメージは大きなものしかない。そこに行くため、近付けるためなら、その道順はなんでもいいんです。

—大きな目標というと?

KAHOH:スーパースターです! 私の音楽が身体の一部になってくれる人がたくさんできるまで、ずっと歌を歌っていたい。「KAHOHの曲は、みんな知ってるから流しておくか」くらいになりたいですね(笑)。

—スーパースターにもいろんな規模感がありますよね? 日本での大スターなのか、それともThe Beatlesやマイケル・ジャクソンのような存在なのか。

KAHOH:後者です!(笑) 目標は大きくなきゃ面白くないじゃないですか。行けるところまではどこまでも行きたいんです。The Beatlesやマイケル・ジャクソンなんて、ものすごい勢いで走らないとなれないじゃないですか。私、自分のことを追い込んでないとだめなんです。

—なぜそこまで行きたいと思うのでしょう?

KAHOH:せっかくこうやってスタートラインに立てたんだから、1番になりたくないですか? 誰かの二番煎じで終わるなんて絶対嫌なんです。やるなら絶対に1番がいい。

—野心をこれだけ言葉にできる勇気にも感服です。誰かの1番になって、その「誰か」をめちゃくちゃ増やしたい、ということですね。

KAHOH:そうそう! そういうこと!(笑) 流行りじゃなくて、いつまでも残る音楽をたくさん作りたい。どんなものも、残るものは本物ですから。

リリース情報
KAHOH
『HERE WE ARE』

2019年2月6日(水)配信

プロフィール
KAHOH
KAHOH (かほ)

現役高校生R&Bシンガー。2001年生まれの17歳。地元和歌山で4歳からダンスを始め、中学生から本格的に歌うことに目覚める。2018年に開催されたオーディションで才能を見出され、MACOらが所属するSTARBASEとマネージメント契約をする。透明さと力強さを兼ね備えた歌声で、大阪など関西でライブを中心に勢力的に活動中。2019年、LINEの音楽レーベル「LINE RECORDS」からのデビューが決定。2月6日にデビュー曲「HERE WE ARE」を配信リリースする。



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