同じ「夢」を抱きながらもさまざまな試練や葛藤にぶつかり、それを乗り越えようともがく。小松菜奈と門脇麦がそんな主人公たちを演じる『さよならくちびる』が、5月31日から全国公開される。
ハル(門脇)とレオ(小松)によるギターデュオ「ハルレオ」は解散を決意し、マネージャー兼サポートメンバーのシマ(成田凌)とともに全国ツアーを行う。旅を続けながら全国のライブハウスで演奏しているうち、それぞれの「孤独」を抱えていた3人の関係性にも変化が訪れる。NUMBER GIRLの解散ツアーにインスパイアされ、主題歌を秦基博、挿入歌をあいみょんが楽曲提供しているだけあり、音楽映画としてのディテールやリアリティーにもこだわった本作。
そこでダブル主演を果たした2人の女優に、夢を叶えるための試練や葛藤をどのように乗り越えてきたのかを尋ねた。映画についてはもちろん、音楽や夢のことなどを語り合ってもらった。
音楽を聴かずに電車に乗るのと、聴きながら乗るのとでは景色の見え方が全然違うんです。(小松)
―今回、おふたりが共演した『さよならくちびる』では成功を夢見るデュオ「ハルレオ」を演じていますが、普段どう音楽を聴いていますか?
門脇:私は移動中に聴くことが多いですね。気持ちのオン / オフを切り替えたいときに音楽を聴きます。オンにしたいときはアップテンポな曲で、オフにしたいときは、私ずっとバレエをやっていたのでクラシックが多い。ただ、家ではあまり聴かないですね。家でも聴く?
小松:うん、私は家でも聴くんだよね。音楽ってすごいなと思うのは、普段見ている景色が変わるというか。たとえば、音楽を聴かずに電車に乗るのと、聴きながら乗るのとでは景色の見え方が全然違うんです。
映画でもそれは同じで。音楽が流れるだけでそのシーンに心が動かされる。あとは一緒に叫んだり踊ったり(笑)、気持ちを発散させてくれる音楽もあれば、心をリラックスさせてくれる音楽もあるじゃないですか。
―ちなみに今回「ハルレオ」というギターデュオを結成する上で参考にしたアーティストっていましたか?
小松:麦ちゃんと一緒にあいみょんさんのライブを観に行きました。あと、家ではYUIさんが演奏している姿を映像で見ていましたね。アコギの弾き方がカッコいいんですよ。手の動かし方や、マイクとの距離の取り方も勉強になりました。
いままでマイクの前に立ったことってほとんどなかったので、気がつくと離れて歌ってしまったりして、何回も注意されたんです(笑)。とにかく私たちは、「しっかり演奏する」ということよりも「魅力的に見せる」というところをがんばらなきゃいけなかったので、YUIさんの立ち振る舞いは参考にさせてもらいました。
門脇:私は、映画のライブシーンが参考になるかなと思って何本か見ました。『はじまりのうた』(ジョン・カーニー監督 / 2013年)や『ソラニン』(三木孝浩監督 / 2010年)、それこそYUIさんが主演している『タイヨウのうた』(小泉徳宏監督 / 2006年)も。ただ、ふたりでマイクスタンドの前に立って歌うという姿が想像つかなくて「一体どうなるんだろう?」って思っていました。でも、衣装合わせのときにスタイリストの伊賀大介さんが、「ツナギ」を持ってきてくださって。それを着た瞬間に、カチッとイメージが決まりましたね。
舞台に比べると、ライブってもっとダイレクトだなと思いました。(門脇)
―小松さんは、映画『さよならくちびる』で初の歌声披露ということですが、元々歌うことに苦手意識などはなかったですか?
小松:実は苦手なんですよ。家族とカラオケに行くのも嫌っていうくらいだったんです(笑)。ひとりで歌うぶんにはいいんですけど、人前でというのがもう本当に苦手だったので、今回「ギターを弾いて歌う」と聞いたときには不安でいっぱいでした。
でも、映画がオリジナル脚本だということと、麦ちゃんとの共演というふたつが決め手になったというか。役柄もとても魅力的でしたし、「きっと麦ちゃんと一緒なら大丈夫」という気持ちになって。実際とても挑戦しがいがあったし、やってよかったと思っています。
―門脇さんは、たとえば『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(廣木隆一監督 / 2017年)で歌を披露されていましたし、舞台でも人前に立って演技をされています。今回、ライブハウスで歌うシーンがたくさん出てきますけど、舞台とはどのような点が違いましたか?
門脇:舞台もお客さんが目の前にいらして、「生の反応を感じながら演じて」という意味では似ているかもしれませんが、アーティストの方のライブはもっとダイレクトに対お客さんだなと思いました。
あと舞台の場合は「この演出家さんが好き」とか「物語に興味がある」とか、あるいはキャストを目当てで来る方とか、お客さんがそれぞれ違う目的を持って集まると思うんですけど、ライブの場合は「この人たちの歌を聴きに来た」という一点だと思うので、それを考えるとミュージシャンの求心力って本当にすごいですよね。
―映画の中でふたりは、秦基博さんによる主題歌“さよならくちびる”と、あいみょんさんによる挿入歌“誰にだって訳がある”と“たちまち嵐”を歌っています。それぞれの楽曲の魅力について、どう感じましたか?
小松:秦さんの“さよならくちびる”は、すごく繊細で耳に残る曲なんですよ。誰が聴いても口ずさんでしまうというか。そういう曲を生み出せるって素晴らしいなと思っています。ただ、ギターがすごく難しかったんですよ。
門脇:難しかった!(笑)
小松:「いやこれ、できないよー!」ってなったんですけど(笑)、私たちに合わせて簡単なコードに置き換えてくださいました。レコーディングのときも、「もう少し、こんな感じで歌ってみて」とか「そんなに気を張らなくても大丈夫だから」みたいな感じですごく気も使ってくださって。だから、気持ちよく、伸び伸びと歌えました。
あいみょんさんの楽曲は、独特の言葉のセンスや心情の表し方が、すごくいいなあと思いながら歌わせていただきましたね。おふたりの曲じゃなかったら、また違った映画になっていたんだろうなと思います。
試練や葛藤が降り掛かっても、「ありがとうございます」という気持ちでいます。(門脇)
―映画の中でハルとレオは、同じ夢を抱きながらもさまざまな試練や葛藤に突き当たり、それを乗り越えようとします。おふたりは夢を叶えるための試練や葛藤をどのように乗り越えてきたのでしょうか?
小松:作品ごとに役柄も監督も違うので、そのたびに違う壁にぶつかっています。心が折れそうになるときもあるんですけど、きっと「大変じゃないこと」なんてないと思うんですよね。どんな仕事をしている人でも、それぞれに悩みがあるわけじゃないですか。だったら「壁すらも楽しんでやろう」と思うと、少し心が軽くなるというか(笑)。楽観的になれるかもしれないです。
あとは、友だちとおいしいものを食べに行ったり、共演者の方たちに自分の気持ちを素直に相談したり。そうすることで心が和らぎ、次のモチベーションに繋がることは多い気がしますね。やっぱり息抜きをしたり、人と話したりするのって大事なことなんだなって思います。
門脇:そもそも試練や葛藤って、大人になるにつれてどんどん少なくなっていくと思うんです。上手く立ち回るための術や力が備わっていくから、ある年齢を越えてなにか大きな壁に当たるというのは、すごくラッキーなことでもあるのかなと。そういうことがないと、もうひとつ上のレベルに上がれないと思いますし。だから試練や葛藤が降りかかっても、「ありがとうございます」という気持ちでいます(笑)。
それに、「やって意味のないこと」ってなくて、絶対にどこかに繋がっていくという意味では、そうした試練は未来の自分への「投資」ともいえる。そうやって考えたほうが、暗く鬱ぎ込むより力が湧いてくると思います。
- サイト情報
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- 『「さよならくちびる」カバーオーディション』
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小松菜奈・門脇麦をダブル主演に迎え、更に成田凌と、映画界最旬キャストで贈る青春音楽映画『さよならくちびる』が、5月31日TOHOシネマズ 日比谷ほかにて全国公開。小松と門脇が演じるのは、インディーズ界の新星ギターデュオ「ハルレオ」。今回は、そんな『さよならくちびる』とEggsがコラボレーションし、主題歌“さよならくちびる”のカバーオーディションを開催する。エントリー受付は6月9日(日)まで。
- アプリ情報
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- 『Eggs』
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アーティストが自身の楽曲やプロフィール、活動情報、ライブ映像などを自由に登録・公開し、また、リスナーも登録された楽曲を聴き、プレビューや「いいね」等を行うことができる、アーティストとリスナーをつなぐ新しい音楽の無料プラットフォーム。登録アーティストの楽曲視聴や情報は、「Eggsアプリ」(無料)をダウンロードすると、いつでもお手もとでお楽しみいただけます。
料金:無料
- 公開情報
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- 『さよならくちびる』
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2019年5月31日(金)からTOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開
監督・脚本・原案:塩田明彦
出演:
小松菜奈
門脇麦
成田凌
篠山輝信
松本まりか
新谷ゆづみ
日髙麻鈴
青柳尊哉
松浦祐也
篠原ゆき子
マキタスポーツ
主題歌:Produced by秦基博 うたbyハルレオ“さよならくちびる”
挿入歌:作詞作曲 あいみょん うたbyハルレオ“誰にだって訳がある”“たちまち嵐”
製作幹事・配給:ギャガ
制作プロダクション:マッチポイント
- プロフィール
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- 小松菜奈 (こまつ なな)
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1996年2月16日生まれ、東京都出身。2014年、中島哲也監督の映画『渇き。』で女優デビュー。以降、映画『溺れるナイフ』、『坂道のアポロン』、『恋は雨上がりのように』など、数々の話題作に出演。映画『さよならくちびる』が5月31日に公開。公開待機作に『閉鎖病棟(仮)』(19年11月公開)、『さくら』(20年初夏公開予定)
- 門脇麦 (かどわき むぎ)
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1992年8月10日生まれ、東京都出身。2011年にテレビドラマで女優デビュー。以降、映画『愛の渦』(2014年)、『NHK連続テレビ小説「まれ」』(2015年)、単独初主演映画『二重生活』(2016年)、日曜ドラマ「トドメの接吻」(2018年)、映画『チワワちゃん』(2019年)などに出演。『止められるか、俺たちを』(2018年)では、第61回ブルーリボン賞主演女優賞を受賞。今後は、来年の大河ドラマ『麒麟がくる』でヒロインが決定している。
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