平成の30年間を振り返ると、社会情勢はもちろん、あらゆる分野において、まさに「激動の時代」だった。今年25周年を迎える「爽健美茶」は、時代に流されない根っこの強い植物のような生き方を実践している計25組のブランドアンバサダーを迎え、今回新しく就任するアンバサダーによる、この25年の間に生まれたヒット曲のオリジナルアレンジを配信する。
今回CINRA.NETでは、そのアンバサダーの1人、ゴスペラーズの“新大阪”をアレンジしたTeddyLoidにインタビューを行った。今年30歳を迎える彼もまた、平成の時代を駆け抜けてきた1人。その半生を振り返りながら、自身を形成した時代のカルチャーについて語ってもらった。
移り変わりの激しい中で、一過性のブームで終わってしまうものが多くを占める中、今なお人々の心を惹きつけ、残り続けるものがある。その違いはどこにあるのだろうか。
みんながまだ触れたことのないビートやサウンドを、いち早く知らせたい。
—TeddyLoidさんは今年で30歳、平成という時代も30年で幕を閉じます。この25年間の日本のカルチャーを、どんなふうに捉えていますか?
TeddyLoid:この25年間は、コミュニケーションツールがものすごく発達した25年だったと思います。僕自身はポケベルから携帯電話に代わる世代というか、小学生の頃にはすでに携帯があったし、「mopera」という携帯電話でインターネットに接続できる端末も出てきて。
TeddyLoid:僕が音楽を作り始めたのは小3の時なんですけど、「音楽を作るのが楽しい」というよりは「コンピューターを使って音楽を奏でるのが楽しい」という感覚だったんです。もしコンピューターやインターネットがなかったら、僕は音楽をやってなかったかも知れないし、やっていたとしても今とは全く違う表現になっていただろうなと思いますね。
—男の子が「メカいじり」や「プラモ製作」にワクワクするような感じ?
TeddyLoid:まさにそれです(笑)。あと、ゲームも僕は大好きだったのですが、ゲームもこの25年で大きく進化しましたよね。最初はダイヤルアップ接続で、「テレホーダイ」が使える深夜帯にオンラインゲームをやって、そのまま学校へ行く生活をしていたのが(笑)、光通信になって速度も上がり、ゲームのコンテンツ自体も進化した。
—TeddyLoidさんは、新しい端末やゲームなどにはいち早く反応するタイプのようですね?
TeddyLoid:大好きですね(笑)。iPhoneも初代モデルから持っているし、ピッチ(PHS)も当時、腕時計型のやつをいち早くGETしてました(笑)。あれって今考えると、Apple Watchのさきがけだったのかも知れないな。
僕がダンスミュージックをやっているのも、それと同じ感覚なんですよね。みんながまだ触れたことのないビートやサウンドを、いち早く知らせたいという気持ちがモチベーションになっているんです。
作曲家になるための基礎は、すべてエレクトーンに習ったといってもいいくらいです。
—音楽について、この25年をどう振り返ります?
TeddyLoid:個人的には中田ヤスタカさんと、小室哲哉さんの存在がとにかく大きいです。中田さんは高校生の頃から大好きで、渋谷のApple Storeのインストアライブを観に行き、出待ちして握手してもらったくらい(笑)。そういう憧れの人と自分の作品でこうして一緒に仕事が出来るのはありがたいことだなと思います。小室哲哉さんもそうです。物心ついた頃から聴いていた音楽の生みの親と、一緒に曲を作るなんて夢のようですね。
TeddyLoid『SILENT PLANET: INFINITY』を聴く(Apple Musicはこちら)
—この25年間はまさに、音楽プロデューサーの存在が大きかったと思います。今おっしゃった中田さんや小室さんの他にも、小林武史さんやつんくさんなど、いわゆる「裏方」とされていた人たちが脚光を浴びました。そこに憧れた部分もありますか?
TeddyLoid:まさにですね。僕はボーカルだとかバンドだとか、そういう人たちへの憧れが子供の頃から全くなくて。多分、自分がバンドを組んだら他のメンバーに「こう弾いて欲しい」って注文ばかりつけてしまうと思うんですよ(笑)。
やっぱり小室さんも中田さんも、1人で自分の手の届く範囲で制作している。そのことに僕はすごく憧れていました。オーケストラの指揮者じゃないですけど、すべての楽器、サウンド、メロディ、歌を自分でコントロールしたくなるというか。
—TeddyLoidさんは2歳の頃からエレクトーンを習い始めたそうですが、その影響も大きいと思いますか?
TeddyLoid:ものすごく大きいです。エレクトーンというのは、メロディから伴奏、リズムまですべて1人で演奏する楽器ですからね。作曲家になるための基礎は、すべてエレクトーンに習ったといってもいいくらいです。
—小室さんはジャングルやドラムンベース、中田さんはダブステップやトラップなど、海外のトレンドをいち早く取り入れて、J-POPのフォーマットに落とし込んでヒット曲を作り上げてきましたよね。
TeddyLoid:しかも最近は、そんな日本の楽曲が逆に海外で評価を集めるようになってきています。Afrojack(EDMシーンを代表するアーティストの1人)も中田さんを絶賛していますしね。僕も中田さんや小室さんのように、海外のトレンドを日本に紹介し、日本の素晴らしさを海外に発信していくような、そんな存在になれたらいいなと思って日々精進しています。
ゴスペラーズの“新大阪”は、時代背景と僕自身の思い出が詰まった特別な曲ですね。
—今回、爽健美茶25周年のキャンペーンで、TeddyLoidさんがリミックスされたゴスペラーズの“新大阪”ですが、この曲にはどんな思い入れがありますか?
TeddyLoid:僕は中学の3年間、学校に行きながら毎週金曜の夜に新幹線で大阪へ行って、土日はコンサートをしたり、エレクトーンを教えたりしていたんです。つまり毎週、新大阪駅を使っていたわけですね(笑)。当時『ハモネプ』(フジテレビ系列のバラエティ番組の人気コーナーだったアカペラコンテスト)が流行っていて、その流れでゴスペラーズさんも大好きで聴いていたんですけど、この“新大阪”がリリースされたのも、ちょうどその頃でした。
この曲のテーマは「遠距離恋愛」だと思うんですが、中学生なりにとてもロマンティックに感じました。新幹線の最終便に独りで乗ることが多かったんですが、独特の雰囲気があって、この曲のメロウな質感がぴったりだったんだと思います。この曲を取り上げられることになってすぐに、温かみのあるメロウな歌声が魅力のウクレレシンガー、KAIKIくんに歌ってもらおうと声を掛けました。彼のエド・シーランの“Shape Of You”のカバーをプロデュースさせてもらったんですが、今回も切なげなすごくよいテイクを残してくれました。
ゴスペラーズ“新大阪”を聴く(Apple Musicはこちら)
—“新大阪”がリリースされたのは2003年。今から16年前になりますね。
TeddyLoid:その少し前から携帯電話が普及して、iモードも一般的になってきていた時。この曲の歌詞にも、<ヘッドホン あなたの好きな歌を聴く最終列車 直ぐにまた声が聴きたい 何気なく電話した次の約束を>という歌詞があるんですけど、全く同じようなことをしていて(笑)。今考えてみると、携帯電話やEメールのおかげで遠距離恋愛がしやすくなった時代だったのかなと思います。
—連絡が取りやすくなったと。
TeddyLoid:以前だったら手紙だとか、電話するにしても固定電話や公衆電話だから、かける時間も場所も限られる。リアルタイムのコミュニケーションを遠距離でするのは難しかったじゃないですか。そういう、時代背景と僕自身の思い出が詰まった特別な曲ですね。
—アレンジするときには、どんなことを心がけました?
TeddyLoid:たぶん、僕がこの曲をアレンジといっても想像しにくいと思うんですけど(笑)、BPM的にも「フューチャートラップ」という、僕がここ1、2年取り組んでいるジャンルに近かったので、それを取り入れてみました。フューチャートラップの特徴としては、ダブステップやトラップに近いビートで、美しく叙情的なフレーズやコードが乗っている。
日本ではまだそんなに浸透していないんですが、それを使ってリアレンジしたら面白いんじゃないかなと。実際にやってみたら、彼らのメロディセンスの良さを改めて感じましたね。やっていてとても楽しかったです。
—ゴスペラーズはRHYMESTERとも親交が深いですし、元々アカペラやゴスペルはブラックミュージックが発祥です。TeddyLoidさんの音楽性ともリンクする部分がありますよね?
TeddyLoid:すごくありました。僕自身、ヒューマンビートボックスやヒップホップもずっとやっているんですけど、ゴスペラーズさんのメンバーにも酒井雄二さんというビートボックスがめちゃめちゃ上手い方がいるし、ブラックミュージックにも精通していてビートへの関心もすごく高いグループなんだと再認識しましたね。
お客さんとのコミュニケーションに重きを置いた楽曲が増えたように感じます。
—今回、キャンペーンソングとして発表されたアレンジ楽曲の中で、特に思い入れがあるのは?
TeddyLoid:まずはnobodyknows+さんの“ココロオドル”(2004年)。僕、SOUL'd OUTというラップグループのライブでDJをやっていたんですけど、よくフェスでお会いしていたのがnobodyknows+さんだったんです。この曲は夏の曲だしフェスで盛り上がりました。MASAYOSHI(IIMORI)のアレンジを聴くのも楽しみですね。
nobodyknows+“ココロオドル”を聴く(Apple Musicはこちら)
TeddyLoid:坂本冬美さんの“また君に恋してる”や、一青窈さんの“ハナミズキ”のような楽曲が、アレンジによってどんなふうに蘇るのかも気になりますね。今回リストアップされた曲は、どれも「和」の要素を強く感じるというか。日本的な情緒を感じさせるものが多いのも印象的です。
坂本冬美“また君に恋してる”を聴く(Apple Musicはこちら)一青窈“ハナミズキ”を聴く(Apple Musicはこちら)
—楽曲には、ももいろクローバーの“走れ!”も入っています。アイドルソングも、この25年で大きく変化しましたよね。
TeddyLoid:まず、人数が増えましたよね(笑)。1980年代は多くてもせいぜい5人くらいだったと思うんですけど、どんどん増えて今や何十人というグループもある。
ももいろクローバー“走れ!”を聴く(Apple Musicはこちら)
—1曲のアイドルソングに込められている情報量がどんどん増えていったのも、単純に歌う人が増えたというのもあるかもしれないですね。
TeddyLoid:ももクロを手がけているヒャダインさんの楽曲とか、歌詞の文字数がとんでもないことになっていますよね(笑)。「情報過多の現代」を象徴しているともいえる。
それと、お客さんとのコミュニケーションに重きを置いた楽曲が増えたように感じます。コールや振付を意識した構成やフレーズが随所に散りばめられていて、ライブを意識したアレンジになっているものが多くなった印象ですね。
やっぱり大切なのは「人と人とのコミュニケーション」。
—「制約の中で発展した音楽」という意味では、アニソンとアイドルソングの親和性ってすごく高いと思うんです。先日、BOOM BOOM SATELLITESの中野雅之さんに取材したとき、「アニソンは89秒という決められた尺の中で、1曲をどう表現するか? で進化してきた」とおっしゃっていて。
TeddyLoid:なるほど。確かに「日本のアニメが楽曲を進化させた」という側面はあると思います。僕は『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』(2010年)や『ME!ME!ME!』(2014年)といったアニメの音楽を担当させてもらっているんですけど、作品自体が海外で評価されて、僕の音楽も認知されるキッカケになっていたりします。
—ちなみにこの25年間で、音楽以外のカルチャー、例えば今おっしゃったアニメや映画などで印象に残っているのは?
TeddyLoid:真っ先に思いつくのは『攻殻機動隊』(1995年)と『イノセンス』(2004年)かな。どちらも監督は押井守さんですね。あとは『けいおん!』(2009~2010年)のインパクトが大きかった。バンドカルチャーと「萌え」カルチャーを、うまくミックスさせた画期的な作品だったと思います。
映画のことを話し出すと、5、6時間かかっちゃうんですけど……(笑)。そのくらい大好きですね。日本映画でいうと『バトルロワイヤル』(2000年)。もう、本当に衝撃を受けましたね。「こんな世界があるんだ……!」って。普段の生活では体験できないことを、映画の中では疑似体験できる。それは自分の音楽制作にも影響を与えていると思います。誰もやったことのないアプローチや、誰も聞いたことのない音色というものを常に探りながら曲を作っているので。
—今挙げてくださったような作品が強く記憶にも残っている反面、この25年間の中には一過性で終わってしまったものも多かったと思います。その中で「忘れさられてしまうもの」と「記憶に残り続けているもの」の違いはどこにあると思いますか?
TeddyLoid:最初の話に戻ってしまいますが、結局は「人と人とのコミュニケーション」なのかなと思います。「TeddyLoid」という名前の由来でもあるほど影響を受けた、ヴィリエ・ド・リラダンのSF小説『未来のイヴ』(1886年)を読んで思ったのも、やっぱり大切なのは「人と人とのコミュニケーション」だということでした。
—小説のどんなところに影響を受けたんでしょう?
TeddyLoid:主人公のエディソン博士は「完璧な彼女」を求めてアンドロイドを作るのですが、彼が求めていたものは結局「生身の人間」だった。音楽や映画などのカルチャーも同じで、どれだけテクノロジーが発達しても、求めているのは「人と人とのコミュニケーション」なんじゃないかと。
僕が今回、ゴスペラーズさんの“新大阪”をリミックス曲として選んだのも、最新のビートやサウンドに、「人と人とのコミュニケーション」という普遍的なテーマを乗せたかったからなんです。
—どれだけテクノロジーが進化しても、人の心は「会いたい誰か」を求めているというメッセージとも言えますね。
TeddyLoid:そう思って聴いてもらえたら嬉しいです。僕が音楽をやっているのは、多くの人に笑顔になってほしい、感動してほしい、少しでも気持ちが動いてほしいという初期衝動ですから。
—今回発表されたアレンジをどんなふうに楽しんでもらいたいですか?
TeddyLoid:若い子たちには、アレンジによる最先端のビートやサウンドを入口に、「名曲が持つ普遍性」に触れてもらいたいし、オリジナル曲のリアルタイム世代には、「懐かしさ」を入口に今の若いクリエーターがどんなサウンドやビートを奏でているのか知ってもらえたら嬉しいですね。そういう意味では、老若男女どの層にも楽しんでもらいたいです。
—今回、爽健美茶は、時代に流されない根っこの強い植物のような生き方を実践している方にアンバサダーとなっていただきました。TeddyLoidさん自身が、「周りに流されない芯のある生き方」を貫くために心がけていることはどんなことですか?
TeddyLoid:「常に楽しく仕事をする」ということですかね。僕、今まで一度も「辛い」とか「苦しい」って思ったことがないんですよ(笑)。「常に楽しく」を心がけていると、アイデアもどんどん湧いてくる。もちろん、職種によっては難しいことも、大変なこともあると思うんですけど、出来るだけポジティブに考えるようにする。
人生は一度きりだし、やりたいことは出来る限りやったほうが後悔は少ない。どうしてもやらなきゃいけないことがあったら、ポジティブ思考で対処することが大切なのかなと思います。
- キャンペーン情報
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2019年5月13日(月)~10月31日(木)
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- プロフィール
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- TeddyLoid (てでぃろいど)
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音楽プロデューサー / DJアーティスト。18歳でMIYAVIのメインDJ~サウンドプロデューサーとして13か国を巡るワールドツアーに同行し、キャリアをスタート。m-flo、ゆず、柴崎コウ、ももいろクローバーZ、中田ヤスタカ、KOHH、HIKAKIN & SEIKIN、Crossfaith、米良美一、the GazettE、ちゃんみな、DAOKO、アイナ・ジ・エンド(BiSH)、IA、じん他、様々なコラボレーション、プロデュースが国内外で話題に。『Panty & Stocking with Garterbelt』、『ME!ME!ME!』等のアニメのサウンドトラック、ゲーム、CM音楽等も多数手がける。また2016年には海外のSpotifyで最も再生された日本のアーティスト5組に選出され、2017~2018年には4カ国13都市に及ぶワールドツアーを敢行。2018年11月にはコラボレーション大作『SILENT PLANET』の完結編、集大成として、2枚のアルバムを連続リリースした。
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