2019年はソロ始動15周年、ということで「9か月連続リリース」企画をぶちあげ、過去曲の2019年バージョンをデジタル / カセット / ストリーミング / アナログとメディアを変えて発表したり、“王者の休日”の「DLコード付きボクサーパンツ」を発売したりしてきたKREVA。その第6弾となるのが6月19日リリースのニューベストアルバム『成長の記録 ~全曲バンドで録り直し~』である。趣旨はタイトルのとおり。
ギリギリ「CDがまだ売れる時代」だった2001年にKICK THE CAN CREWでメジャーデビューして翌年“マルシェ”で『紅白歌合戦』に出演、2004年のソロデビューから現在まで、世の音楽状況がどんどん変わっていく中にあっても一貫してトップを走り続けてきたKREVAは、今どんなことを考え、どのように行動しているのか。『成長の記録』のことも、それ以外も含めて、正面から訊いた。
「やったことないことをやろうよ」っていうことを何回も言った。
―15周年プロジェクトの9か月連続リリースの一環で、バンドで録り直したベストアルバムを出そうということになったのは、どういう経緯だったんですか?
KREVA:15周年でなにする? っていうときに、すぐに、バンドで全曲録り直したベスト盤がいいんじゃないか、って思いついたんですよね。
これ、結構時間かけて録り直してるんですよ。スケジュールの関係で、1年半くらいかけて、徐々に。あいだに他のレコーディングとかもあったりして。
あと、もはや、ベストアルバムの価値っていうんですか? そこも考えたところですね。「プレイリスト」があるわけだから、それに代わるものってなんだろうって。それで、バンドで録り直したものがいいなと思って。
―バンドでのアレンジは、どの程度までメンバーに指示を出しているんですか? なんか、譜面を書けるようになったって聞いたんですけど。
KREVA:そうそう(笑)。人が書くのを見てたらね、書けるようになってきましたね。最初のうちは、「もっとこういうノリで」とか、そういう指示しかできなかったですけど、最近だと、必要であれば楽譜を書いて「こういうアレンジにしたい」って指示を出すことぐらいまではできるようになってきたかな。
―自分の曲をバンドサウンドにリアレンジするとき、モデルケースにしたバンドとか、ジャンルとか、あったりします?
KREVA:いないです。まったくいない。「こういう感じにしたい」とかいう話、一回もしたことないです。それでも、メンバーとサウンドを作ることは最初からできていたような気がする。みんな上手いし、それぞれの技を出してきてくれるので。音を出して、「これは違う」「それがほしいものだ」ってことは言えるから。
―そもそも、バンドの音楽って、好きですか?
KREVA:(笑)。はい、好きですよ。
―でも、バンドをやろうと思ったことはないでしょ?
KREVA:ないですね。高校生のときとか、友達がバンドやってても、自分もやりたいという発想にはならなかった。もうヒップホップだったんで。中学生のときから、バンドは聴くものだと思ってました。
―なのに、ライブをバンドでやるのもいいんじゃないか、と思い始めたのは……。
KREVA:それは明確なきっかけがあって。
KREVA“アグレッシ部 ~2019 Ver.~”を聴く(Apple Musicはこちら)KREVA“KILA KILA ~2019 Ver.~”を聴く(Apple Musicはこちら)
KREVA“スタート ~2019 Ver.~”を聴く(Apple Musicはこちら)
KREVA:『ROCK IN JAPAN (FESTIVAL)』のトリで、俺とDJ、ふたりだけで出たんですよ(2012年8月、GRASS STAGE)。そのときに、ステージからの景色を見て、「このスタイルでやることはやったな。次は全然違うことをやりたいな」と思えたんですね。「次はバンドかな」って、自然にそうなりました。
で、そこからバンドでライブをさんざんやってきて、でもちゃんと形に残したことはなかったし。全編生バンドの音に自分が乗っかってるものを作ったことがなかったので。
―やったことがないから、やっておきたいと?
KREVA:そうです。この15周年プロジェクトにおいては、「やったことないことをやろうよ」っていうのを何回も言ったと思います。カセットも、出したことがなかったからだし。あと、5月はパンツが出たんですけど……。
―ああ、下着ね。
KREVA:最初はTシャツを出そうっていう話をしていて。でも、15年ずっとファンでいてくれる人とか、もう1か月毎日着れるぐらいTシャツを買ってくれてると思うんですね。だったら作ったことないものにしようよ、っていう話から……“王者の休日”のミュージックビデオの中で、着替えてパンツになるシーンがあったんで、「パンツとかいいんじゃない? 全身KREVA色に染まるには(笑)」とか言って、作ってみたりとか。
ここ5年ぐらいは、音楽をやりたい気持ちはあるんだけど、言うことがない。
―今、自分が音源を作って出すときって……新人ならともかく、KREVAさんくらいキャリアと実績があると、なんで出すのかとか、出すことにどんな意味があるのかとか、そういうことを抜きにして無邪気に作るわけにはいかないじゃないですか。
KREVA:そうですね、まさに。だから、今回の『成長の記録』に関しては、逆にありがたいです。そういうことをなんにも考えなくてよかったから。新しく作った曲ではないですからね。
で、最近なにを考えてるかって言ったら、ここ5年ぐらいは……言うことないんですよね、今や。言うことを探してるというか。音楽をやりたい気持ちはあるんだけど、言うことがないなあ、って。
―言い尽くした?
KREVA:いや、「わざわざ音楽で言うほどじゃないなあ」っていう気がしちゃうんです。たとえば「すげえうざい、あいつ」って思ったときに、昔だったらそれを曲にできたと思うんですけど……歳を取ると、どんな怒りでも、ちょっとずつ収まってきたりとかするじゃないですか。それか逆に、もっと怒りが高まって、恨みみたいになったり。そうすると、どっちの場合でも、「みなさんに向けて曲という形で残す必要ないな」って。ツイートしたり、ブログに書いたりとかでいいんじゃないかな、っていう。
そういうことを思うと、「曲に残したい気持ちって、なに?」っていうことがすごい大きくなって。日々、言うことを探してる感じですね。わざわざ曲にする意味があること……。真理みたいなことじゃないと、言いたくないっていうか。
―ああ、なるほど。
KREVA:不思議な商売だなと思いますよ。特にラップだと、自己紹介するっていうひとつのフォーマットがあるじゃないですか。このあいだKICK(THE CAN CREW)のライブでもやったんですけど、15年前の自己紹介のラップとかしてるんですよ。30歳の奴だったら中3ですよ?(笑) 「××中学の○○です」って言ってるようなもんでしょ。
―「キャラ立ち3本マイク」とかね。
KREVA:おかしいじゃないですか?(笑) だから、言うことを日々考えたりします。ただ、音楽をやりたい、曲を作りたいっていう気持ちはものすごくあって。毎日家とスタジオの行き来ばっかりなんで、その中で言いたいことを見つけるのは難しいなあと思うんですけど。でも、やっぱり、やりたいんですよね。
頭の中をすり抜けていくような歌詞を書ける若い人とか、すごいなと思います。
―真理しか言いたくないっていうのは、このアルバムの曲目を見ても……“基準”“存在感”“成功”“居場所”って、タイトルだけで確かにそういうものになっているのがわかりますよね。
KREVA:はははは。ねえ? ただ、収録曲に関しては、バンドでずっとやってるもの、その中でも特に得意としてるもの、みんなで演奏して楽しいなと思ったもの、という基準で選んだので。言葉の面から選曲したっていうことはなかったですね。
―はい。だから、どの時期の曲を選ぼうが、こういう重いタイトルの曲が並ぶってことですよね。
KREVA:(笑)。最近はなんか、「ライトな聴き心地のものにしよう」っていうのができなくなっちゃいましたね。若いアーティストの曲とか聴いてると……頭の中を言葉がすり抜けていくような歌詞を書ける人とか、すごいなと思います。俺はなんか言っちゃうんですよ、意味があることを。昔は意味ないこともたくさん言えたんですけど、言えなくなってきちゃいましたね。
―この中で一番新しい曲は“存在感”ですよね。
KREVE“存在感”を聴く(Apple Musicはこちら)
KREVA:そうですね。最近は、言いたいことを探すんじゃなくて。『存在感』(2018年8月リリース)は、口が何回も言いたいこと、というか。口が「存在感がある!」って言いたいんですよ。
いつもはトラックを作ってそこに言葉を乗せるっていうアプローチなんですけど、この曲とかは、先に口が言いたいことを選んで、そこに音をつける、っていうのをやってみてできましたね。詞先じゃなくて言葉先、口気持ちいい先、というか。
“健康”(『存在感』に収録)も、「<結局やっぱり最後は健康>、これだな!」ってずーっと言いながら車を運転してスタジオに来て、そのままトラック作って、乗せて、みたいな。そういう感じになってきていますね。
「もう、音楽やってる場合じゃねえな」って、毎日考えますね。
―たとえば、KICK THE CAN CREWでデビューしてからブレイクするまでは、目標とか指針ってわかりやすかったと思うんですね。で、ソロになって最初の数年間も、ある程度はわかりやすかったと思うんです。
KREVA:わかりやすかったですね、まだ。
―でも途中から「あれ? 俺、なにを目指せばいいんだっけ?」って……。
KREVA:いや、本当にそうですね。
―それは音楽というもののありかたが変わったこともそうだし、KREVAさん自身のポジションの変化もあるだろうし。今は、どんなことを考えて活動していますか?
KREVA:……「なにを他にやれば儲かるんだろう?」っていうのは、毎日考えてます。
―(笑)。音楽以外にね。
KREVA:はい。「もう、音楽やってる場合じゃねえな」って、毎日考えてますね。どうすればGACKTさんみたいに豪邸に住めるんだろう? って毎日考えてるんですけど……「株かなあ」「不動産かなあ」「店かなあ」とか、いろいろ。
―店やったり、ブランドやったりしてるミュージシャンも、いるじゃないですか。KREVAさんは、そういうことをしそうかしなさそうかっていったら、しそうなのに、やらないじゃないですか。
KREVA:そうなんですよねえ……結局やっぱり、音楽しかやりたいことがないんだな、っていう感じですかね、結論は。毎回。
―だから、困ってる、とまでは言わないけど……。
KREVA:いや、困ってますよ! すげえ困ってる。技術はどんどん上がっていくんですけど、そうすると、世の中の興味自体はどんどん狭くなっていくので。技術が高くなればなるほど、ニッチな世界になっていくというか。だからまあ、スーパーニッチにやっていくには、他で儲けるしかないなと思って。でもまったく思いつかないですね。やりたいこともないし。
―「こういう仕事ならやれるかなあ」って、途中まで考えたものってあります?
KREVA:いや、本当に本気で考えたんですけどね。ないですね。自分が持っているもので好きなのは、服か音楽なんで。服かな、と思ったんですけど、服自体もどんどんマーケットが小さくなってるし。だから……YouTuberになります。
―はははは。
KREVA:一番向いてると思う(笑)。……大学のときとかに、もっと人脈を作っていれば、いろんな広がりもあったと思うんですけど。大学時代はすべて音楽に捧げてきたから、友達もいないし。結局は、音楽にまつわることになっちゃうのかな。
でも、みんな苦しいんじゃないかな。
―この15周年プロジェクトが終わったら、次はなにしようとかは考えてます?
KREVA:いやあ、まったく考えてないなあ。まだどっぷり最中って感じだから。今も曲を作ってるし、一所懸命がんばってる最中ですね。
―楽しくやれてます?
KREVA:いや、苦しいですね。しっかり苦しいですよ、毎回。本当に、誰も助けてくれないんで。なんかもっと、取り巻きみたいなのがいっぱい……「イェー、最高っすねえ!」とか言ってくれる奴らがいれば、サクサクできると思うんですけど。
でも、みんなそうだと思います。みんな苦しいんじゃないかな。人のライブ観に行くときとか……そんなに行かないんですけど、小林賢太郎さんの舞台だけは、ずーっと行っていて。2回前の公演のときかな、「やっぱり、しっかり苦しいね」って言ってて。「生みの苦しみ、しっかり苦しい!」「そうですよね」って思ったし。
こないだ、ゴールデンウィークに、山本耀司(ファッションブランド「ヨウジヤマモト」を手掛けるデザイナー)のドキュメンタリーがテレビでやっていて……(NHKで放送された『ヨウジヤマモト~時空を超える黒~』)。
―ああ、見ました。
KREVA:「テーマを決めるのが毎回すごい苦しい」って話をしてたじゃないですか。「そりゃそうだよなあ、苦しいよなあ」と思って。だからもう、苦しいのはしょうがないって。楽にしてやろう、っていうのはないですね。
- リリース情報
-
- KREVA
『成長の記録 ~全曲バンドで録り直し~』初回限定盤A(CD+Blu-ray+写真集+豪華ボックス仕様) -
2019年6月19日(水)発売
価格:7,461円(税込)
VIZL-1604[CD]
1. Na Na Na ~2019 Ver.~
2. パーティーはIZUKO? ~2019 Ver.~
3. 基準 ~2019 Ver.~
4. ストロングスタイル ~2019 Ver.~
5. トランキライザー ~2019 Ver.~
6. イッサイガッサイ ~2019 Ver.~
7. 王者の休日 ~2019 Ver.~
8. I Wanna Know You ~2019 Ver.~
9. 存在感 ~2019 Ver.~
10. 成功 ~2019 Ver.~
11. KILA KILA ~2019 Ver.~
12. かも ~2019 Ver.~
13. 居場所 ~2019 Ver.~
14. アグレッシ部 ~2019 Ver.~
15. スタート ~2019 Ver.~
16. 音色 ~2019 Ver.~
17. C'mon, Let's go ~2019 Ver.~[Blu-ray]
1. 音色 ~2019 Ver.~
2. The Making of “音色 ~2019 Ver.~” in London[写真集]
『KREVA in LONDON 2019』(48ページ予定)
- KREVA
-
- KREVA
『成長の記録 ~全曲バンドで録り直し~』初回限定盤B(CD+DVD+写真集+豪華ボックス仕様) -
2019年6月19日(水)発売
価格:6,381円(税込)
VIZL-1605[CD]
1. Na Na Na ~2019 Ver.~
2. パーティーはIZUKO? ~2019 Ver.~
3. 基準 ~2019 Ver.~
4. ストロングスタイル ~2019 Ver.~
5. トランキライザー ~2019 Ver.~
6. イッサイガッサイ ~2019 Ver.~
7. 王者の休日 ~2019 Ver.~
8. I Wanna Know You ~2019 Ver.~
9. 存在感 ~2019 Ver.~
10. 成功 ~2019 Ver.~
11. KILA KILA ~2019 Ver.~
12. かも ~2019 Ver.~
13. 居場所 ~2019 Ver.~
14. アグレッシ部 ~2019 Ver.~
15. スタート ~2019 Ver.~
16. 音色 ~2019 Ver.~
17. C'mon, Let's go ~2019 Ver.~[DVD]
1. 音色 ~2019 Ver.~
2. The Making of “音色 ~2019 Ver.~” in London[写真集]
『KREVA in LONDON 2019』(48ページ予定)
- KREVA
-
- KREVA
『成長の記録 ~全曲バンドで録り直し~』通常盤(CD) -
2019年6月19日(水)発売
価格:3,141円(税込)
VICL-651981. Na Na Na ~2019 Ver.~
2. パーティーはIZUKO? ~2019 Ver.~
3. 基準 ~2019 Ver.~
4. ストロングスタイル ~2019 Ver.~
5. トランキライザー ~2019 Ver.~
6. イッサイガッサイ ~2019 Ver.~
7. 王者の休日 ~2019 Ver.~
8. I Wanna Know You ~2019 Ver.~
9. 存在感 ~2019 Ver.~
10. 成功 ~2019 Ver.~
11. KILA KILA ~2019 Ver.~
12. かも ~2019 Ver.~
13. 居場所 ~2019 Ver.~
14. アグレッシ部 ~2019 Ver.~
15. スタート ~2019 Ver.~
16. 音色 ~2019 Ver.~
17. C'mon, Let's go ~2019 Ver.~
- KREVA
- イベント情報
-
- 『KREVA 15TH ANNIVERSARY YEAR「KREVA NEW BEST ALBUM LIVE - 成長の記録 -」』
-
2019年6月30日(日)
会場:東京都 日本武道館
- プロフィール
-
- KREVA (くれば)
-
国民的人気を誇るHIP HOPアーティスト。HIP HOPの殿堂「B-BOY PARK」のMCバトルで3年連続日本一の栄冠に輝く実績を持ち、現在に至るまでその記録は未だに塗り替えられていない。2004年9月08日(クレバの日)に『音色』でソロメジャーデビュー。2ndアルバム『愛・自分博』でHIP HOPソロアーティストとして史上初のオリコンチャート初登場1位を獲得。リリースされる楽曲は常にチャート上位にランクイン。9月08日は「クレバの日」と日本記念日協会に正式認定される。これまでに23枚のシングルと7枚のオリジナルアルバムをリリース。2018年は『存在感』をリリースし、恒例のKREVA主催「音楽の祭り」『908 FESTIVAL 2018』を日本武道館で開催。2019年、ソロデビュー15周年イヤーに突入。1月から9月08日(クレバの日)まで9か月連続リリース中。6月30日、KREVA 15TH ANNIVERSARY YEAR『KREVA NEW BEST ALBUM LIVE 成長の記録』を日本武道館で開催する。HIP HOPシーンのみならず、日本の音楽界最重要人物のひとり。
- フィードバック 12
-
新たな発見や感動を得ることはできましたか?
-