曽我部恵一×後藤まりこ 歌も人生も、原始的な欲望に従うままに

1972年にシングルとして発表された、吉田拓郎の代表曲“結婚しようよ”。ウェディングソングの草分けとしても知られるこの曲は、それまでプロテストソングが主流とされていた日本のフォークミュージックを再定義し、現在にいたるJ-POPの礎を築いたとも言われている。そんな名曲“結婚しようよ”を曽我部恵一と後藤まりこがデュエットでカバー。Bサイドには高田渡“銭がなけりゃ”のカバーを収録し、2曲入りの7インチシングルとして11月15日にリリースされる運びとなった。

今回のインタビューでは、まず彼らにこの2曲を選んだ理由からうかがっている。「結婚って楽しいですよね」と話す後藤と、“結婚しようよ”は人生のピークを描いた曲だと語る曽我部。ヒップホップ的なドラムループにギターサウンドを重ねた、この高揚感に満ちたトラックも含めて、彼らがふたつのカバー曲に込めたフィーリングは、とにかくハッピーで楽しげだ。

ところが、この取材の流れは同席していた28歳の編集者が発したひと言で大きく変わる。というのも、彼は今回のカバーシングルにはとてもシリアスなメッセージが込められているのではないか、と言うのだ。そんなわけで、インタビュー後半は20代後半男性の人生相談に後藤と曽我部が応じるという、予想外の展開に。それぞれに異なる結婚観も含めて、お楽しみください。

左から:曽我部恵一、後藤まりこ

小田島等のダメ出しで路線変更。“結婚しようよ”のカバーは、ポップでロマンティックの極みに

―まずは、今回おふたりが“結婚しようよ”をカバーすることになった経緯を教えてください。

曽我部:きっかけはライブだったんです。後藤さんの企画に僕が呼んでもらったとき、後藤さんから「なにか一緒にやれそうな曲ありませんか?」と訊かれて、そのときにパッと思い浮かんだ曲が“結婚しようよ”だった。それで早速リハーサルで一緒に歌ってみたら、それがすごくよくて。

後藤:歌割りもなにも考えずにやってみたんですけど、その時点ですごくよかったんですよね。リハ後の控え室でも「すごく合うね」ってふたりで話してて。

曽我部:リハの段階で「これ、ちゃんと録音しといたほうがいいな」と思ったんです。アコギの弾き語りとか、そういう形で記録として残しておいてもいいんじゃないかって。

曽我部恵一(そかべ けいいち)
1971年生まれ、香川県出身。1994年、サニーデイ・サービスのボーカリスト・ギタリストとしてメジャーデビュー。2001年よりソロとしての活動をスタート。2004年、メジャーレコード会社から独立し、東京・下北沢に「ROSE RECORDS」を設立。精力的なライブ活動と作品リリースを続け、執筆、CM・映画音楽制作、プロデュースワーク、DJなど、多岐にわたって活動を展開中。曽我部恵一と後藤まりこ『結婚しようよ』を7インチシングルとして2019年11月15日にリリースする。

―当初のレコーディングは弾き語りの予定だったんですか?

曽我部:うん。弾き語り+αくらいのアレンジでいいかなと思ってました。あと、今回の録音は僕の家でやったんですよ。スタジオで録るのもなんだかなと思って、同じ空間にマイクを並べて、ふたりで向き合いながら歌ったんです。

後藤:すごく新鮮でした。エンジニアさんもいないなかでライブみたいに歌うレコーディングって初めてだったし、曽我部さんの飼ってる犬がいたのもよかった(笑)。

曽我部:すぐ邪魔しにくるからね(笑)。なので、当初のオケはもっと軽い感じだったんですけど、ジャケットを頼みたくて小田島等くんに音源を送ったら、「このトラックじゃダメ」と言われてしまって。「後藤まりこと曽我部恵一が“結婚しようよ”をカバーするって、本当にすごいことなんだよ。俺の期待はもっとでかいから、もうちょっと頑張ってくれ」と。それで泣きながら作ったのがこれなんです(笑)。

―当初はどんなアレンジだったんですか。

曽我部:最初はビートもなかったんです。エレクトロニカみたいな揺らいだ感じのトラックに、ふたりの歌がふわっと乗っかればいいかなって。でも、小田島くんから「絶対に踊れるやつにしなきゃ。結婚パーティーで流せるようにしてよ」と言われて。

それで悩んでたら、ふと「1990年代のマンチェスターみたいな感じにしたいな」と思ったんです。それこそCandy FlipがThe Beatlesの“Strawberry Fields Forever”をカバーしたように、僕らが吉田拓郎の“結婚しようよ”をブレイクビーツでやったらいいんじゃないかって。それで作り直して小田島くんに送ったら、「これこれ!」って。

後藤:結果的にすごくよくなりましたよね。めちゃくちゃポップになった。

後藤まりこ(ごとう まりこ)
2003年に結成したバンド「ミドリ」でボーカルとギターを担当する。2007年、メジャーデビュー。2012年、ソロ1stアルバム『299792458』リリース。2013年、ソロ2ndアルバム『m@u』リリース。2014年、3rdアルバム『こわれた箱にりなっくす』を「EVIL LINE RECORDS」よりリリース。2019年12月11日、「DJ後藤まりこ」として1stアルバム『ゲンズブールに愛されて』リリースする。大阪出身。

曽我部:やっぱりポップが大事なんだなって改めて思いました。だってこれは後藤さんと歌うんだし、“結婚しようよ”はロマンティックの極みなんだから、結婚パーティーで絶対にかけたくなるような曲にしなきゃダメだなって。

シンガーとしては真逆のふたり。曽我部は、「命の根源で歌ってるような」後藤の母性と野性味に憧れる

―トラックもさることながら、歌録りを家で行なったのも重要なポイントですね。

曽我部:そうですね。僕、スタジオで歌を録るとけっこうダメで。

後藤:そうなんですか?

曽我部:なんていうか、うまく歌おうとしちゃうんです。スタジオで録ったものを家で聴き返すと「なんか一生懸命に歌いすぎちゃってるな~」って感じで、結局また家で録り直すってことが多くて。でも、後藤さんと一緒に歌ったらパッと自然な自分が出たんですよね。それがすごく不思議で。とにかく素晴らしい瞬間でした。あれはたぶん、後藤さんの母性なんだろうな。

後藤:え! 母性ですか?

曽我部:うん、すごく大きな母性のなかに自分がいるような感覚というか。後藤さんにはそういう大きさとか深さ、広さがあるんだと思う。だから、僕はあんなに自然に歌えたんじゃないかな。

―“結婚しようよ”という楽曲に、後藤さんはどんな印象を抱いていますか。

後藤:めちゃくちゃキャッチーでいいと思います。歌詞とかについては深く考えてなかったんですけど、素朴やし、万人向けやし、時代が変わっても歌い継がれる曲やと思う。

曽我部:後藤さんって、歌詞を解釈しながら歌ったりするんですか?

後藤:まったくしないです。

曽我部:やっぱりそうなんだね。大体の人は悲しい曲を悲しいふうに歌ったり、楽しい曲を楽しいふうに歌っちゃうんだけど、後藤さんの歌はそういうものを超越してる感じがする。ちょっと偽悪的になったり、そこに意味が介在してくるってことが全然ないから、なにをどんなふうに歌ってもキレイなんですよね。

後藤:曽我部さんと僕って、たぶんそこが逆なんやと思います。曽我部さんは歌詞をちゃんと解釈して、気持ちを込めて歌ってる。たぶん自分で歌詞を書くときもそうなんやろうなって。でも、僕はそれができへん。歌詞を書くときは「歌ってて自分が気持ちいいかどうか」しか考えてないし、人の歌詞をちゃんと読み解ける能力が僕にはないから。

曽我部:たしかに俺は、感情とか気持ちみたいなものを歌に込めちゃうんですよね。でも、本来それって余計なものだと思うんですよ。それは後藤さんの歌を聴くとよくわかるんです。

―後藤さんは歌詞を書くとき、なにかしらの情景やストーリーを思い浮かべたりはしないんですか?

後藤:たまにそういうときもあるけど、できないんです。いつも曲を作るときはいつもメロディーと歌詞が一緒に出てきて、それをワーっと叫んだときに「なるほど!」みたいな感じなので(笑)。

曽我部:そのときの感情がそのまま出ているってことだよね。ポップアートなんですよ、後藤さんは。で、僕は演歌みたいな感じ(笑)。後藤さんはポップで強くて、ちょっとワルい感じがあって、そこが素敵なんですよね。僕はつい「この気持ちを曲にしよう」とか考えちゃうんだけど、たぶん後藤さんには「なにを歌っても一緒でしょ?」みたいなところがあるんじゃないかな。どう?

後藤:ありますあります。

曽我部:やっぱりそうなんですね。美空ひばり的というか、そういう感じがする。10年くらい前に初めてミドリと対バンしたときも、同じようなことを思ったんです。この人は自由でポップだなって。かといって歌になにも意味がないわけじゃなくて、そのときの感情が全部入ってる。ひょっとしたら、女性の歌って自然とそういう方向に向かうのかな。女性のすごい歌手って、命の根源で歌ってるような感じがするんですよね。でも、男はやっぱり頭で歌っちゃうからさ。だから、僕はビョークとか後藤さんに憧れるんです。

後藤:僕は曽我部さん、かわいいなと思いました。飼ってらっしゃるワンコと似てるなって。

曽我部:(笑)。

後藤:“銭がなけりゃ”のオケを曽我部さんがイチから構築していく過程を、僕は横でずっと見てたんですけど、そのときの曽我部さんは「ここはこんな感じがいいかな?」「いや、なんか違うなぁ」「よし、いいね」みたいにずっと独り言を言ってて(笑)。なんかそれが、子どもがこうなってる感じ(集中してそれしか見えなくなってる状態)みたいで、めちゃくちゃかわいかったんです。曽我部さんのそういう姿を見れたおかげで、僕もすごくリラックスできたというか。

曽我部:たしかに、少年とお姉さんみたいな感じだったね(笑)。

「曽我部さんはいろいろ考えてはるけど、僕は基本マジでゴリラなんですよ」(後藤)

―カップリングが“銭がなけりゃ”に決まったのは、どういう経緯で?

後藤:“結婚しようよ”のレコーディングがめっちゃ楽しくて、僕が「もう1曲録りたい」と言い出したんです。

曽我部:それで僕が「じゃあ、“結婚しようよ”と同じようなタイプの曲で、なにかいい候補ありますか?」と訊いたら、後藤さんがたくさん案を出してくれて。

後藤:僕が候補を20曲くらい曽我部さんにLINEで送ったんです。そしたら曽我部さんが“銭がなけりゃ”がいいねって。

曽我部:すごく好きなんですよ、この曲。DJを頼まれたときは高田渡さんのレコードを必ずかけるんですけど、これがまた気持ちいいんだよね。みんながワイワイしてるところで、「銭がないなら田舎に帰ったほうがいいよ」みたいな歌をかけるっていう(笑)。しかも、“銭がなけりゃ”はすごく楽しそうな感じの曲でしょ? それもすごく爽快だなって。

曽我部恵一と後藤まりこ“銭がなけりゃ”を聴く(Apple Musicはこちら

―“銭がなけりゃ”は社会風刺的なプロテストソングなんだけど、つい笑っちゃう感じがありますよね。

曽我部:うん。のんびり生きようよ、みたいな感じがするよね。あと、A面の“結婚しようよ”は明るい未来を感じさせる曲なんだけど、そのレコードをB面にひっくり返したら「実際に住んでみたらけっこう大変だった」みたいな曲が入っているってのも、二面性があっていいかなって(笑)。

後藤:“結婚しようよ”を録るときはお互いに少し緊張してたから、歌にも「結婚する前のふたりの距離感」みたいな感じがでたと思うんです。でも、“銭がなけりゃ”を録るときは僕もすっかり原始人になれたので。曽我部さんはいろいろ考えてはるけど、僕は基本マジでゴリラなんですよ。

曽我部:“銭がなけりゃ”という曲が、まさにそういう野性な感じを求めてたからね。それにしても“結婚しようよ”のテイクは本当に最高だと思う。教会ですっと指輪を取り出したような、あったかい温度感があるというか。そういうテイクが録れたなって。

「『結婚しようよ』と相手に伝えるときって、たぶん人生のピーク」(曽我部)

―曽我部さん自身も結婚をモチーフにした歌を書いてますよね。結婚に対するポジティブなイメージって、昔からずっと変わらないものですか?

曽我部恵一BAND“結婚しよう”を聴く(Apple Musicはこちら

曽我部:いやいや、僕は離婚してますから。

後藤:え、曽我部さんって離婚されてたんですか? 知らんかった。いま言われるまで忘れてましたけど、そういえば僕も離婚してるんですよ(笑)。

曽我部:じつはふたりとも離婚してるっていう(笑)。でも、そういう諸々の経験みたいなものは、今回の歌には全然介在してこなかったな。ちいさな街の教会にふたりで入っていくような、そういう気持ちしかなかったというか。自分の結婚観と照らし合わせたりとか、そういうのは一切なかった。

後藤:結婚って楽しいですよね。

曽我部:うんうん。楽しいよね。

後藤:僕、お付き合いしてなかった方と結婚したんです。付き合うよりも結婚したほうがおもしろいかなと思って、「じゃんけんで僕が勝ったら結婚しよう」って。今でもその人とはすごく仲よくて、むしろ離婚後のほうが仲いいくらいだし、未だに「結婚、楽しかったね」みたいな感じなんです。感傷的な気持ちじゃなくて、ただすごくいい思い出って感じ。

曽我部:“結婚しようよ”は、「結婚しようよ」と思ったときの曲なんですよ。そのあとの人生がどうだったとか、そういうことじゃなくて、それこそ「じゃんけんで勝ったら結婚しようよ」と言った瞬間のことを歌ってる。それって最高じゃないですか。「結婚しようよ」と相手に伝えるときって、たぶん人生のピークですよ。そんな素晴らしい瞬間を拓郎さんは歌にしたんだから、そりゃ最高だよね。結婚ソングはどれもいい。<一生一緒にいてくれや>とかさ(三木道三“Lifetime Respect”)。

山元(CINRA.NET編集部):なるほど……じつは僕、今回の選曲を勝手にシリアスなものとして受け止めていたところがあって。

曽我部:へえ! どういうこと?

「ヤンキーの思考とか行動原理で生きたほうがいいんですよ」(曽我部)

山元:自分の話になってしまって申し訳ないんですが……20代後半になったものの自分ひとりで生活していくだけで精一杯で、特に結婚の予定もなにもないのもあるけど、「結婚かぁ……」みたいな感じで自分ごととして考えられないんです。

曽我部:なるほどね。いまの20代にとっては、結婚そのものが現実的じゃないのかなぁ。

後藤:きっと山元さんは結婚という言葉がファンタジーに聞こえないんでしょうね。リアリティーを含みすぎてるから、重たく捉えちゃうのかも。

山元:そういう部分もあると思います。結婚したり、家族を持つことって人生における大事な転換点なんだと思いますけど、少なくともいまの自分にはそういうことに向き合ったり、自分ごととして考えたりする余力がないんですよね。一概に言うことはできないですけど、ここ近年、日本全体で未婚率が上昇している背景と自分も決して無縁ではないなと。

曽我部:それこそ“銭がなけりゃ”ってのもあるもんね(笑)。

後藤:なるほど(笑)。

山元:あと、原曲がリリースされた当時とは状況が違うという前提ですけど、だんだんとゆとりがなくなっているこの社会で、「結婚しようよ」っていう言葉の無垢な感じがまぶしいというか。すごくキリキリとした世の中だからこそ、他人同士が家族になって一緒に生きていくことの尊さがあると思うんですけど、世の中の状況に対するある種の「問い」として、この曲を送り出したのかなと感じていたんです。

―山元くんの話を聞いていると、“結婚しようよ”の響き方は世代ごとに多少違うのかもしれないですね。

曽我部:たしかに。PUNPEEくんの“お嫁においで”のカバーも、今の社会的な状況も鑑みつつ、「迷ってるけど……結婚するか!」みたいな歌だったよね。でも、そうはいっても結婚って今も昔も変わらずファンタジックな制度だと思うんです。

後藤:特定の誰かとずっと一緒にいたいとか、そういう考えにはならないの?

山元:うーん……やっぱりお金がないとか、この先もちゃんと生活していけるかとか、現実的なことばかり考えちゃって。

曽我部:「お金がもう少し貯まってから」とか、そういう人って多いと思う。

後藤:でも、ちょっと考えすぎやないかな。たしかに都会の男性はそういうことを考えるけど、田舎のヤンキーはそんなこと言わんし。

曽我部:そうそう。ヤンキーの思考とか行動原理で生きたほうがいいんですよ。だから、山元くんはまず剃り込みを入れたほうがいい。それか眉毛を細くするとか。

―(笑)。

曽我部:それこそ最近はファッションや漫画でも、ヤンキーものがまた流行ってるよね。もしかするとみんな、どっかで「これからはヤンキーみたいな生き方じゃないと無理だな」みたいに思ってるんじゃないかな。後藤さんはさっき自分を原始人と言ったけど、俺は後藤さんも基本的にヤンキーだと思ってる。俺自身も、いまは自分をもっとヤンキーにしていかなきゃって思ってるよ。

誰かを愛する気持ちも激しい怒りや憎しみも、歌にするうえでは平等に普遍的で、根っこは同じ

後藤:曽我部さんが眉毛を細くしはじめたら、めっちゃ面白いですね(笑)。

曽我部:まあ、今のヤンキーってことね(笑)。もっとシンプルに生きたほうがいいというか。セックスがしたいとか、そういう原始的な欲望って大事だと思うんだよ。人間は欲望を持って生きている以上、そこに向かってまっすぐ生きるのはいいことなんじゃないかな。

山元:なんというか、勝手に自分を抑圧して生きているところがあるんだろうなと思いました。「ちゃんとしなきゃいけない」と思いつめすぎてしまっているというか。

後藤:え、なんでちゃんとしなきゃいけないの?

曽我部:コンプライアンスとかもそうだけど、社会の決まりごとを守るべきだっていう、そういう考え方はたしかにあるよね。だから、気持ちはわからなくもないけど、もっとみんな自分の欲求に忠実に生きたほうがいい。だから、後藤さんのライブは最高なんですよ。

後藤:自分のやりたいことをやりたいようにやってるけど、僕、人は絶対に傷つけたくないんです。故意に誰かを傷つけるとか、そういうのはありえない。

山元:たとえば、どうやってお互いの違いを認めて受け入れるかとか、ゆとりや寛容さが失われつつある社会で自分のことだけで精一杯にならないためにはとか……そういうことを考えると、誰かと一緒に生きていくのは簡単なことじゃないなと思うんです。夫婦や家族のあり方って、どういうふうに考えていけばいいんだろうって。

後藤:そこは多様でいいやん? 逆に僕はいまの時代ってすごく選択肢が広がってるような気がするよ。同性同士の結婚とか、昔は変とされてたことが今は認められてるし、それって僕はすごくいいことやと思う。それにみんなが思いやりをもって生きていけば、絶対にイヤな社会にはならへんと思ってるから。もうちょっと明るく考えてほしいな。

山元:なんか、ただ考えすぎているだけの自分に情けなさを感じてきました……。

後藤:情けなくてもいいんだよ。酒でも飲んだら?

曽我部:後藤さんの人生相談、最高だね。これ、CINRAで毎月やったほうがいいよ(笑)。でも、おもしろいね。僕は「結婚」って勝手にポジティブで普遍的なテーマだと感じてたけど、いまは違うってことか……でも俺、やっぱりラブソングしかないと思うんだよ。その人が好きだなっていう気持ち、そこに時代は全然関係ないと思う。いい歌は全部ラブソングだと思ってるし、自分もそういう曲が作りたいんだよね。

曽我部恵一“LOVE-SICK”を聴く(Apple Musicはこちら

後藤:僕はどっちかというと、怒りのほうが大事やと思ってます。「ぶっ殺す」とか「ムカつく」とか、そういう気持ちのほうが普遍的なんやないかなって。

―なるほど。対照的な意見にも聞こえますね。

曽我部:でも、根は一緒ですよね?

後藤:うん、一緒。

曽我部:『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(2019年公開、監督はクエンティン・タランティーノ)って観ました? あの映画は、完全に愛じゃないですか。暴力もたっぷりあるんだけど、あれはタランティーノの映画への愛でもあるし、歴史への憎しみもあるし、それも含めて感動的な愛の物語だと僕は思ったんだよね。だから、ラブソングだろうが憎しみだろうが、僕は同じだと思う。いまその人の感情が出ているもの。そういう歌はいつの時代でも響くんだよね。

リリース情報
曽我部恵一と後藤まりこ
『結婚しようよ』(7インチアナログ盤)

2019年11月15日(金)発売
価格:1,650円(税込)
ROSE-241

[SIDE-A]
結婚しようよ
[SIDE-B]
銭がなけりゃ

イベント情報
『曽我部恵一ソロコンサート「それからlove -東京編-」』

2019年12月21日(土)
会場:東京都 下北沢CLUB Que

2019年12月22(日)
会場:東京都 下北沢CLUB Que

プロフィール
曽我部恵一 (そかべ けいいち)

1971年生まれ、香川県出身。1994年、サニーデイ・サービスのボーカリスト・ギタリストとしてメジャーデビュー。2001年よりソロとしての活動をスタート。2004年、メジャーレコード会社から独立し、東京・下北沢に「ROSE RECORDS」を設立。精力的なライブ活動と作品リリースを続け、執筆、CM・映画音楽制作、プロデュースワーク、DJなど、多岐にわたって活動を展開中。曽我部恵一と後藤まりこ『結婚しようよ』を7インチシングルとして2019年11月15日にリリースする。

後藤まりこ (ごとう まりこ)

2003年に結成したバンド「ミドリ」でボーカルとギターを担当する。2007年、メジャーデビュー。2012年、ソロ1stアルバム『299792458』リリース。2013年、ソロ2ndアルバム『m@u』リリース。2014年、3rdアルバム『こわれた箱にりなっくす』を「EVIL LINE RECORDS」よりリリース。2019年12月11日、「DJ後藤まりこ」として1stアルバム『ゲンズブールに愛されて』をリリース。大阪出身。



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