新潟市古町を拠点に活動する4人組アイドルRYUTistの新曲“ALIVE”が素晴らしい。蓮沼執太フィルが演奏する7分に及ぶミュージカルジャーニーの中で、メンバーの4人が美しいハーモニーや表情豊かなポエトリーリーディングを聴かせ、「今」という瞬間の刹那を刻み付ける。すでに「楽曲派」のリスナーから高い支持を集めていることも納得の名曲だ。
蓮沼のほか、Kan Sano、柴田聡子、パソコン音楽クラブといった名前も作家として並ぶニューアルバム『ファルセット』は、音楽ライターの南波一海が2016年にタワーレコード内に設立したレーベル「PENGUIN DISC」からのリリース。蓮沼と南波に加え、RYUTistファンの間では名物ディレクターとして知られる安部博明も交えて、“ALIVE”の誕生秘話を語ってもらうと同時に、「コロナ禍とアイドル」についても、それぞれの考えを聞いた。
新潟はどの県よりもアイドルに対して寛容な気がします。ただ、だからこそ、目標がボヤッとしちゃって。(安部)
―まずは南波さんと安部さんの関係性を紐解きつつ、これまでのRYUTistの活動を振り返っていただけますか?
南波:RYUTistは2011年に始まって、僕はそれくらいからアイドル関係の仕事が多くなり、地方とかにも行くようになって。2012年にローカルアイドルの特集本を作ったときにRYUTistも取り上げていて、安部さんとはその刊行イベントを新潟でやったときに初めてお会いしたんですよね。その後もタワーレコードでやってる番組(『南波一海のアイドル三十六房』)でRYUTistを特集したり、ワンマンのお手伝いをしたり、ずっと付き合いがあった中で、あるとき安部さんから「ずっとこのままやってても広がりがない」みたいな話を聞いて。
安部:2015年の年末だね。
南波:冗談交じりではあったけど、「もっと広がるような活動をしていかないと、このままいち地方アイドルで終わってしまう」みたいな話から「じゃあ一緒にやりましょう」ということになって、それがPENGUIN DISCを立ち上げるきっかけになったんです。
―RYUTistは拠点とする新潟の古町に会場を持っていて、スクールも運営していたり、言ってみれば、新潟だけでも活動が成り立っていたわけですよね。でも、安部さんとしてはさらに活動の幅を広げたくて、そのために南波さんたちと組んだと。
安部:地方アイドルに限らず、中学から高校とか、高校から大学、社会人になるタイミングとか、どうしても自分の人生を考える時期があって、そこをどう乗り切るかってどこのアイドル運営も考えなきゃいけないことで。RYUTistのメンバーも、中学から高校に上がるタイミングでいろいろ悩んでいたんですよね。
新潟がダメだとは全然思ってないけど、新潟だけで活動させるのは大人のエゴでしかないし、彼女たちがステージでパフォーマンスをする人として視野を広げる意味でも、誰かと組んでやりたいなって。
―アイドルを続けていくモチベーションを上げる必要もあったわけですね。
安部:環境的には恵まれてたと思うんです。地方アイドルブームみたいなのがあって、グループを立ち上げたら、わりとすぐ話題になったので。
―新潟といえば、やはりNegiccoの存在が大きかったわけですよね。
安部:そうですね。だから新潟にはアイドルを許容する地場ができていて、イベントでもテレビでも、どの県よりもアイドルに対して寛容なんじゃないかって気がします。ただ、だからこそ余計に目標がボヤッとしちゃって。やがてブームも去り、地方だけの運営だと限界がある中で、このまま続けても自分たちには明確な目標が提示できないから、南波さんでありタワーレコードさんと組んでやりたいと思って、今に至る感じですね。
―南波さんとしても、RYUTist自体に魅力を感じていたからこそ、レーベルをやってみようと思ったわけですよね?
南波:結局はそこに尽きるんじゃないですかね。あとは、安部さんが面白い人なんで。
―どんな風に面白い人なんですか?
南波:……ルックスが(笑)。あと、レーベルを始める前から、どういう音楽をやりたいのかがはっきりしてたんです。安部さんたちが作った『日本海夕日ライン』という2ndアルバムは、参加してる作家やミュージシャンがほとんど地元の出身で、「日本海夕日ライン」を巡っていくっていうコンセプトになっていて、そういうアイデアが出てくるのが面白いんですよ。
ただ、「いい音楽を作る」より先のことにあまり考えが及んでいなくて、メンバーの子たちもスキル的には本当にすごいところまでいってるんですけど、それをより多くの人に届けることにあんまり頓着してない。でもこんなに面白いことをやってるんだから、もっと見てもらいたいなって。安部さんのプロデューサーとしての手腕、メンバーのダンスのスキルとくせのない歌声のきれいさが、すごく魅力的で可能性を感じたんです。
蓮沼執太くんの作家性って、極めて健やかで爽やかなんだけど、行きすぎててあんまり気付かないだけで、やっぱりめっちゃ変、みたいな(笑)。(南波)
―今回蓮沼さんに楽曲提供を依頼したのは、どんな経緯だったのでしょうか?
南波:安部さんと、アルバムで誰に曲を頼めば面白いかっていう話をしてる中で……去年の6月、僕が母親とニューヨークへ旅行したときに、TORTOISEが『TNT』を丸ごと一枚演奏するライブをブルックリンでやっていて観に行ったんですよ。そうしたら、蓮沼くんはお家がブルックリンなのもあって、それを観に来ていて。
蓮沼:無料だったんですよね(笑)。
南波:公園でやるフリーライブだったんだよね。で、僕が「『TNT』観てます」ってツイートしたら、蓮沼くんが連絡をくれて。ライブ後に会うことができて、そのときの思いつきで「曲を書いてほしいんだけど」って話をしていたんです。
南波一海のTwitterより
南波:その後、8月にRYUTistがクアトロでワンマンをやって、2020年の6月にりゅーとぴあという新潟のホールでライブをすることを発表したんですけど、そのすぐ後に日比谷野外音楽堂で蓮沼執太フィルを観て、感動しちゃって。ニューヨークで会ったときはまだなんのアイデアもなかったんですけど、この音でRYUTistがホールでライブをやったら、めちゃくちゃ感動するんじゃないかと思ったんですよね。それで蓮沼くんに「ホールライブの核となる曲は作れないかな……フィル編成で」と恐る恐る連絡しました(笑)。
―ここでTORTOISEの名前が出るのはすごくいい話というか、僕からすると南波さんと蓮沼さんは「元HEADZのお二方」だったりもするので、交流は以前からあったわけですもんね。蓮沼さんは依頼を受けて、どんなことを思いましたか?
蓮沼:僕に楽曲を頼むくらいなので、変わったことをしたいんだろうなと思いました。なので、アイドルの形式みたいなことは特に考えず、自由に作ればいいんだろうなって。
南波:でも「フィルでお願いします」って言われたら、「え?」ってなるよね。
蓮沼:いや、なりませんよ。心配になったのはスケジュールと予算くらい。フィルは大きなスタジオに入って一発録りという方法で作っているので、全員集まれないとダメなんです。オーバーダブして、ポスプロしてって考え方じゃないので、そのあたりの調整が大変なんですけど、それ以外は特に問題はなかったですね。
―曲のアイデアについては、どの程度打ち合わせをしたのでしょうか?
安部:去年の11月に初めて蓮沼さんとお会いして、そのときに「7分くらいの壮大な曲を作りたい」ってお伝えしました。アルバムのほかの曲もそうなんですけど、RYUTistであんまりエッジが立ちすぎるのは違うと思っていて、「メロディーがいい」ということをすごく大事にしているんです。アレンジが多少難解でも、メロディーを聴いていいと思ってもらえる曲を作りたかったので、『時が奏でる』(2014年リリース、蓮沼執太フィルのアルバム)を聴いて「こういうのをやりたい」と思ったんですよね。
蓮沼執太フィル『時が奏でる』を聴く(Apple Musicはこちら)
南波:なぜか「7分」にこだわってたよね(笑)。
安部:短い曲の方がトレンドになってる中で、7分ってバカなんじゃねえかと思うけど、でもそれをやりたかったんですよね。あとは、感情が出せるところを作りたいとか、ちょっとしたラップパートにも挑戦したいとか、結構細かく伝えて。
蓮沼:『時が奏でる』は男女混成で作ったのに対して、RYUTistの4人の声が乗ることになるので、それだけで絶対新しくなると思いました。あと、この曲はハモリがとても難しいんですよ。あえてフィルっぽいハモリがいいと思って、一般的な歌謡曲では使われなさそうな和声でハモってるんですけど、それも受け入れてもらえてよかったです。
―レコーディングは東京でオケを、新潟でボーカルを録ったそうですね。
安部:蓮沼くん、あの人数をよくまとめるなって思いましたね。特に印象的だったのは、みなさんすごく真剣に取り組んでいただいたことで。実際アイドルをやってると、悲しい対応をされることもあるんです。
蓮沼:そうなんだ。それは本当にとてもよくないことですね。
安部:いやあ、あるよ。俺結構ノンポリだから、すぐ忘れちゃうんだけど、でも悲しいこともあるから、いつもどういう対応をされるのかっていうのは気にしてて。で、今回一回全部の音を録り終わった後に、ゴンドウ(トモヒコ)さんが「もう一回吹いていい?」って、時間がない中でもこだわってやってくれて、そういうのがすごく嬉しかった。みんなが真剣で、その分緊張感がえぐかったけど、ありがたいなって。
蓮沼:今回は録音1週間前くらいに蓮沼フィルのメンバーにスコアとデモ音源を渡して、リハーサルなしでレコーディングだったから一発勝負の雰囲気もあって、その分みんな真剣だったのもありますね。録音の現場で細かいアーティキュレーションを確認しながら、いい緊張感の中でできて、ベストを叩き出せたんじゃないかなって思います。
―南波さんは、楽曲に対してどんな印象をお持ちですか?
南波:いやもう、ばっちりですよね。結局りゅーとぴあでのライブは中止になっちゃったんですけど、「ホールで映える」っていう最初のオーダーにばっちりハマってるし、オーダー以上のものになったと思います。ラップパートに関しては、環ROYくんみたいなラップは無理だから、語りっぽい感じがいいんじゃないですか? って話があった中で、結果的にはその間というか。音楽的にリズムにハマってて、とはいえラップほどではない、絶妙な語りパートになったなって。
もともとの蓮沼くんの作家性って、極めて健やかで爽やかなんだけど、行きすぎててあんまり気付かないだけで、やっぱりめっちゃ変、みたいな(笑)。そこがすごくハマったと思いますね。ポップスをちゃんとやりたいっていうのと、今回のアルバムは特に新しいことをやりたいっていうのもあって、すべて上手くいった感じがあります。
RYUTist“ALIVE”を聴く(Apple Musicはこちら)
―個人的には、クラップがすごく印象的で、あれが普通のリズムじゃないところに、蓮沼さんの作家性が表れているというか。
蓮沼:あれは、一通り録り終えて楽器を片付けた後に、フィルとRYUTistメンバーのみんなで録ったんです。オケと歌が分離しないように、フィルのメンバーとRYUTistのメンバーがなにかしら通じ合うような要素が“ALIVE”の中にあるといいなって思ったんですよね。あれは本当に変わってるクラップなので、こういうところが南波さんの言う「変」なところでしょうか(笑)。
実は日常なんてものはないんだよっていう。そういうことを意識して、ラジカルに「青春」を描いた。(蓮沼)
―歌詞に関しては、どの程度打ち合わせをしたのでしょうか?
安部:これまでの3枚のアルバムはどれも「新潟」にフォーカスした作品で。『日本海夕日ライン』(2016年リリース)もそうだし、前作の『柳都芸妓』(2017年リリース)は、古町には「古町芸妓」という芸子さんがいて、歌と舞でお客さんをもてなすという意味で、RYUTistが芸子さんに変わるものになれればっていうコンセプトだったんです。
でも今回は、彼女たち自身にこだわりたくて、青春感みたいなものをどうしても入れたかったんですよね。なので、それは蓮沼くんにも伝えたんですけど、それ以外はお任せだったので……どうやって書いたかは僕らも知りたい。
蓮沼:この歌詞を書いたのは、神奈川の葉山にある美術館で展示とイベントをやるための下見に行ってたときで、葉山の海を見ながらずっと考えてました。波を眺めていると、すべて同じ波に思えるんですけど、よく見ると、よく聴くと、毎回まったく違うものだと感じたんです。一つひとつ異なっていて、同じことなんて決して起こらないんだなと、思って。
この曲は、日常を歌ってるような歌詞だけど、実は日常なんてものはないんだよっていう。これを書いたときはコロナ禍になるなんて思ってなかったけど、生活に反復ということは、実はないんだなって思ったり、そういうことを意識してラジカルに青春を描いていますね。
蓮沼執太のInstagramより
―安部さんはこの歌詞をどのように受け止めましたか?
安部:<桜並木が恋をして>っていうフレーズがあるので、春にリリースしたい気持ちが強くあったんですけど……春がなくなってしまい、リリースが7月に伸びた中、この曲を出すことの意味を改めて南波さんと話していて。
南波:コロナがあって、分岐してしまった世界があるじゃないですか? 「コロナがなかった方の、みんなが体験したかもしれない春」みたいなことを、結果的にめちゃくちゃ感じたんですよね。
蓮沼くんの話に結び付けると、やっぱり同じことはないっていうか、日々はめちゃめちゃ奇跡的なことで成り立っていて、ちょっとしたことで、そこにあったはずのリアルな春がすっかりなくなってしまうこともある。それを急に感じてしまって、不思議だなと思っていて。
安部:ミュージックビデオを作ってくれた吉開(菜央)さんもすごく気さくな方で。「桜の季節に出せなくてすみません」って言ったら、「お花見ができなかったから、逆にいいかもしれませんね」って言ってくださって。春がすっかり抜け落ちしてしまった中で、それを補完するかのように曲とミュージックビデオが出せるのはよかったのかなって思います。
南波:ヒップホップの人はすごく速く今の状況に対応して、YouTubeに曲をバンバン上げてるじゃないですか? アイドルは、そこは弱いんですよね。なぜなら、多くのアイドルは自分たちで曲を書いてなくて、誰かにお願いして、それをレコーディングするという手順を踏まないといけないから、どうしてもスピード感は出せない。そもそも、そういうことを歌うのは相性が悪いというか、仮に政治的な意味を持っちゃったりすると、それを嫌だと思う人もいると思うんです。でも、その一方では「今を切り取りたい」という気持ちもあって、“ALIVE”は結果的に今の状況にハマる曲になったから、RYUTistとして今を表現できた気はしています。
安部:後付けにはなってしまうけど、蓮沼くんのさっきの話を聞くと、余計にそうだなって思いますね。
蓮沼:僕の歌詞って、大体いつも同じことを言ってるんですよね。今回はタイトルが“ALIVE”で、<桜並木が恋をして>って言ってるように、主体が「木」なんです。桜並木が恋をすると、風がなびいて、葉が擦れて、音になる。人間だけが主役じゃない。ずっとそういう立場で作品を作っています。今回もそういうニュアンスは入ってるので、人間が外に出られなくなってしまった以降の世界とも重なる部分はあるんじゃないかなって思います。
蓮沼くんから「真面目に音楽を届けることなんじゃないの?」って言われて、リアルに今はそれが大事な気がしています。(安部)
―「コロナ禍とアイドル」という話もしたいのですが、ライブはもちろん、「会いに行くこと / 接触すること」が難しくなった中で、多くのグループがファンとの新たな関係性を模索していると思います。安部さんや南波さんはそれについてどうお考えですか?
安部:本当に難しいですよね。これまでリアルでやっていたチェキ会とかを、ネットでやる動きがあると思うんですけど、これがずっと続くわけはないと思っていて。
逆に言うと、音楽がよりストレートに伝わりやすくなる気もしています。なにかを売るために、インストアライブを増やすとか、接触のバリエーションを増やすとか、そういうことを頑張る流れがあったけど、RYUTistはもともと「音楽を届けたい」っていうのが芯にあったので、当たり前ですけど、ミュージックビデオをちゃんと作ったり、アウトプットをちゃんとして、作品自体を評価してもらうことでお客さんの気持ちを掴めればなって。
南波:RYUTistは音楽を軸にずっとやってきたんですよね。これからは、さらにそっちにフォーカスしていくのかなって。今あちこちでこの10年くらいのビジネスモデルが崩壊してると思うんですけど、それはCDを売ってなにかをつけるというビジネスのフォーミュラが強すぎて、変化が遅かったからで。例えば、ストリーミングの再生回数で生きていけるようになればそれでいいわけで、そういうところにもう少し重きを置いて活動していかないといけないかなって。
―ポジティブに捉えれば、コロナは変化のきっかけであって、そのタイミングで蓮沼さんだけでなく、Kan Sanoさん、柴田聡子さん、パソコン音楽クラブといった名前が作家として並ぶ、音楽的な完成度の高いアルバムが出ることには、意味があるように感じます。
安部:レコーディングが終わった後、タクシーに乗ってるときに、蓮沼くんから「真面目に音楽を届けることなんじゃないの?」って言われて、リアルに今はそれが大事なんじゃないかって気がしています。アイドルの世界は、1人のファンにCDを5~6枚買わせることでなんとか成り立ってたりもしたけど、本来は1人1枚でいいわけじゃないですか? これまで以上に音楽と向き合って、彼女たちがアイドルとして輝ける場所をみんなと一緒に提供していきたいです。
RYUTist“ナイスポーズ”を聴く(Apple Musicはこちら)。作詞・作曲・編曲:柴田聡子
「裏方」って言われる人も実は主役。その人が欠けちゃうと作品にならないですからね。(蓮沼)
―アルバムの1曲目には、蓮沼さんの作編曲による“GIRLS”がイントロダクションとして収録されていて、そこから“ALIVE”に繋がる流れもいいですね。
南波:曲名はなにも指定してなかったんですけど、曲自体も声のカットアップだし、人にフォーカスしてることがちゃんと伝わるから、すごくいいタイトルだなって。
蓮沼:音楽にとって、やっぱり人間の声は最大の個性なんですよね。
安部:タイトルが決まったのは結構遅かったですよね?
南波:だから、文字情報の印刷が結構ギリギリで。いろいろ急かしちゃったんだけど、結局発売延期になるっていう(苦笑)。
安部:ミックスもやり直してもらったしね。
蓮沼:そうだ、その粘り強さはみなさんに伝えておきたい。やっぱり安部さん面白いなって思ったのが、ミックスを僕と葛西(敏彦)さんでやっていて、マスタリングまで終わった後に、安部さんから「もう一度ボーカルのミックスをし直してほしい」っていうオーダーがあって。すごく丁寧に、「本当に申し訳ないんですけど」って言ってくれたんですけど、いいものにするためのガッツがすごいなって。
安部:南波さんは最初のミックスがすごくいいって言ってたんですよ。今までの作品はめちゃくちゃ整ってて、南波さんとしては人間味に欠ける気がするっていうことで、今回はもうちょっと生々しくて、新しいRYUTistがいいねって。
南波:歌を直しすぎないのがトレンドにもなってるから、そういう意味でも生々しくていいなって。でも、これまでの整った状態の作品を聴いてた人からすると、もしかすると違和感を感じるかもしれないから、その間を取ってもらったというか……マスタリング後にね(笑)。
安部:マスタリングが終わって、余計気になっちゃったんだよね。妥協をしたくないというか、この曲をもっと好きになりたくて。でも、葛西さんに連絡したときは本当に申し訳なかったです。ここまでやってくれてるのに、俺はなにを言ってんだと思いつつ、それでも「お願いできますか?」って言って……。この間葛西さんからメールをいただいて、「想いがあって作るのが一番なので、いいミックスになったと思います」って言ってくれて、本当によかったです。
南波:俺も安部さんも結構注文を付けるから、それで誰かと険悪になることもあるけど、最終的にいいものができれば、みんな「よかったです」ってなるんですよ。
たまにTwitterで「RYUTistいい曲書いてもらったな」とか見かけるけど、「いやいや、こっちからいろんなオーダーをして、何度もラリーをした上でできてるんですよ」って気持ちにはなりますよね。もちろん楽曲は作家の力が大きいんですけど、みんなで頑張って曲ができてるんです。
蓮沼:フィルで言うと、葛西さんもメンバーであって、「裏方」って言われる人も実は主役っていうか、その人が欠けちゃうと作品にならないですからね。“ALIVE”も曲に関わる全員がギリギリまで頑張ってできた曲なので、それは伝えておきたいです。
- リリース情報
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- RYUTist
『ファルセット』(CD) -
2020年7月14日(火)発売
価格:3,300円(税込)
PGDC-00121. GIRLS
2. ALIVE
3. きっと、はじまりの季節
4. ナイスポーズ
5. 好きだよ…
6. センシティブサイン
7. 絶対に絶対に絶対にGO!
8. 青空シグナル
9. 時間だよ
10. 無重力ファンタジア
11. 春にゆびきり
12. 黄昏のダイアリー
- RYUTist
『ALIVE』 -
2020年6月11日(木)配信
- RYUTist
- プロフィール
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- 蓮沼執太 (はすぬま しゅうた)
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1983年東京都生まれ。蓮沼執太フィルを組織して国内外でのコンサート公演をはじめ、映画、演劇、ダンス、CM楽曲、音楽プロデュースなど、多数の音楽制作。また「作曲」という手法を応用し物質的な表現を用いて、展覧会やプロジェクトを行う。2013年にアジアン・カルチュラル・カウンシル(ACC)からの支援を受けアメリカにて滞在プログラムに参加、2017年に文化庁東アジア文化交流使に指名されるなど、日本国外での活動も展開。主な個展に『Compositions』(ニューヨーク・Pioneer Works 2018)、『~ ing』(東京・資生堂ギャラリー 2018)など。26人編成によるアンサンブル・蓮沼執太フルフィル『フルフォニー』を8月26日にリリース予定。『第69回芸術選奨文部科学大臣新人賞』を受賞。
- 南波一海 (なんば かずみ)
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1978年生まれ。音楽ライター。レーベル「PENGUIN DISC」を主宰する。タワーレコードの配信番組『南波一海のアイドル三十六房』などに出演。著書には『ヒロインたちのうた~アイドル・ソング作家23組のインタビュー集』(2016年、音楽出版社)など。
- 安部博明 (あべ ひろあき)
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山形県出身。RYUTistマネジャー / ディレクター。
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