2017年に福岡で結成された4人組、yonawoが、待望の1stアルバム『明日は当然来ないでしょ』を発表した。そのメロウな曲調とスムースな演奏から「ネオソウル」とも形容されてきた彼らだが、新作ではラフなプロダクションや歪んだサウンドも際立っており、このバンドのロック的な側面がうかがえる。古今東西のポップミュージックを貪欲に咀嚼しながら、今も目覚ましい音楽的な発展を遂げているyonawo。その現在地が『明日は当然来ないでしょ』には刻まれているのだ。
そんなyonawoが以前からファンであることを公言してきたのが、英・ロンドンを拠点とするエレクトロデュオのHONNEだ。2014年のデビューから瞬く間に世界的な人気を博すようになった彼らは、日本語の「本音」に由来する名前も示すとおり、なにかと日本と接点があるだけでなく、実際に日本語詞の楽曲もリリースしている。そして、彼らの奏でるグルーミーなサウンドと官能的な歌声をひとたび聴けば、yonawoが影響を受けているという話も大いに頷けるだろう。
さあ、今回はそんなyonawoとHONNEのオンライン対談をお届けしたい。会話を交わすのは、HONNEのジェームズとアンディ。そしてyonawoからはボーカルの荒谷翔大が代表となりつつ、他のメンバー3人もオンラインでその場に立ち会ってもらっている。期せずしてコロナ禍にアルバムを制作 / リリースした両者の対話は、おのずとその制作にまつわる話からスタートした。
「yonawoの曲は心地いいんだけど、ものすごくライブ感があるんだよね」(ジェイムス)
―HONNEのお二人は今、どちらにいらっしゃるんですか?
アンディ:自宅にいます。
ジェイムス:僕も自宅にいる。アンディは2日前から家にこもってて、僕も今日から自主的にしばらく隔離生活することにしたんだ。政府の方針によると、僕らが住んでいる地域は少人数なら外で会うことが許可されているんだけどね。僕らはいま家族と離れて暮らしているから、クリスマスには家族と安心して会えるように備えておきたいんです。
アンディ:あらちゃん(荒谷)たちが住んでるところはどうだい? そっちは今、どんな状況なの?
荒谷:最近また、感染者が増えてきちゃってますね。ちなみに僕らが住んでいるのは福岡というところなんですけど、お二人は知ってますか?
アンディ:知ってるよ! yonawoは東京からけっこう離れたところに住んでるんだね。まあ、今はどこに住んでいようと大変だよね。来年にはなんとかなってるといいんだけど。
―HONNEの最新作『no song without you』は、今年初頭にLAでレコーディングした後、ロンドンのスタジオで完成させたんだそうですね。今作には“s o c i a l d i s t a n c i n g”というインタールードも収録されていますが、世界的パンデミックはアルバムの制作にどんな影響をもたらしましたか?
HONNE『no song without you (Japanese edition)』を聴く(Apple Musicはこちら)
アンディ:影響はもちろんありました。というのも、レコーディング自体はコロナの感染拡大が深刻になる前に終わってたんだけど、そこから2人でロンドンに戻った段階で、ちょうどロックダウンになっちゃって。外出もできなくなったから、朝から晩まで一緒にスタジオで作業に打ち込んで、ロックダウン期間中にミックスまですべて終わらせたんだ。これって普通のやり方に思われるかもしれないけど、僕らにとっては新しいやり方で。
―元々お二人は、リモートで制作することが多いとうかがいました。
ジェイムス:そう、これまでの僕らは、別々の場所にいながら作ることのほうが多かった。でも、LAで顔を向き合わせながらレコーディングしてみたら、すごくスムーズに作業が進んだんだよね。というのも、やっぱりオンラインでのやり取りばかりだと、返信が遅くてヤキモキしたり、相手の反応をつい勘繰っちゃったりしがちで(笑)。
荒谷:それ、すごくわかります。自分がメンバーに伝えたいアイデアとかって、テキストやデータだけじゃなかなか伝わりづらかったりするんですよね。アレンジにせよ、ミックスにせよ、メンバー全員が同じ空間を共有しながら進めていったほうが、結果的にはスムーズだし、やっぱりそのほうが楽しいなって。
ジェイムス:うん、そのほうがお互いの感覚をちゃんと分かち合えるんだよね。じゃあ、yonawoはどうやって曲を作ってるの? 新しいアルバムを聴いたんだけど、すごくよかったよ。yonawoの曲は心地いいんだけど、ものすごくライブ感があるんだよね。
アンディ:僕もアルバムを聴いて、すっかりyonawoのファンになった。
「音楽を作る上で『基地』をもつって大事だよね」――二者が思う、自由に音楽が作れる環境、顔を合わせて制作する大切さ
荒谷:うわぁ、めちゃくちゃ嬉しいです……。今回のアルバムはまず僕が一人でデモを用意して、自粛期間が明けてからみんなでアレンジを詰めていきました。そこからは普段と同じようにスタジオで録ってます。
アンディ:コロナの影響はとくになかったの?
荒谷:レコーディングに関しては、あまり変わらなかったですね。
逆に質問したいんですけど、お二人が所有しているスタジオって、どんなところなんですか?
アンディ:そんなに大きなスタジオではないけど、一通りのものは揃っているよ。コントロールルームとボーカルブースとドラムを録る部屋があって、すべてのものが常にプリアンプにつないだ状態でセットアップされてるから、いつでも近隣を気にせず好きな音が出せる。ただ、このスタジオを所有するようになったのは最近のことで、じつはこの5~6年くらいはずっと狭いアパートの部屋で作ってたんだけどね。
HONNEのスタジオの様子
荒谷:そうだったんですね。じつは僕らも最近、福岡に自分たちのスタジオを作ろうとしていて、その物件が決まったところなんです。
ジェイムス:いいね。福岡って、家賃はどうなの? 東京で広いスペースを借りるとなると、やっぱりロンドンみたいに高いんだろうなと思うんだけど。
荒谷:東京よりはずっと安いですね。ただ、僕らが借りた場所はオフィスビルの一室なので、しっかり防音したとしても、生ドラムはさすがに叩けないかな。
アンディ:やっぱりドラムを録れる環境は限られてくるよね。でも、自分たちの所有スタジオがあるというのは素晴らしいことだよ。みんなで集まって、24時間いつでも作業できるんだからね。
荒谷:そうですね。僕らの意識としては、みんなといつでも集まれる遊び場が地元にほしかったというか。
ジェイムス:一緒に音楽を作る上で、自宅とは別の「基地」をもつってことは大事だよね。やっぱり自宅で作業してると、セッションしているときに同居人がいきなり部屋に入ってきたり、いちいちプラグインを設定し直したりしなきゃいけないんだけど、スタジオを所有してからはそういう手間やストレスがなくなって、僕は音楽制作がより楽しくなったから。
アンディ:うん。僕も最近はスタジオでの作業に(日本語で)「生き甲斐」を感じてるよ。
荒谷:生き甲斐!(笑) なにか気に入ってる日本語って他にもありますか? お二人が「ホンネ(本音)」という名前にしたのは、それが自分たちの音楽に合う言葉だったからだと聞いたんですけど。
アンディ:今パッと思いつく言葉は「わびさび」だね。不完全なものに美を見出すという考え方にすごく惹かれるし、そういう美意識は僕らにもあると思ってる。もちろん不完全なものをあえて作ろうとは思ってないけど、たとえばギターの演奏がちょっとヨレたり、レコーディング中にたまたま誰かの会話を拾っていたりすることってあるでしょ? 僕らはそういう意図していない音や声をなるべく作品に残したいなって、いつも思ってるんだ。
荒谷:わかります。僕たちもレコーディングや曲作りでは、4人の演奏している姿がパッと浮かぶような音にすることが大切だなと思ってて。
ジェイムス:メンバー全員がおなじ部屋にいるときの雰囲気って本当に大切だし、たとえばテープ録音された昔のレコードを聴いてたりすると、そういう空気感がちゃんと伝わってくるんだよね。
それがデジタルレコーディングに移行したことによって、いつからか誰もが非の打ち所がない音を追求するようになった。でも、それもいまやある程度のところまで行き着いて、最近はまたアナログ的な不完全さをみんなが求めているよね。
荒谷:まさに。僕らも自分たちの不完全さまで伝わるような作品が理想的だなと思ってるので、いまのお話にはすごく共感しました。ただ、僕らの場合は4人でバンドをやってるんですけど、HONNEはお二人で活動されていますよね? きっと演奏者を外部から招くこともあると思うんですけど、レコーディングではどこまで自分たちで演奏されているんですか?
アンディ:ほぼ全てのパートを自分たちで演奏してるよ。今回の作品ではルーベンさんという人にもピアノを弾いてもらってるんだけど、それも2曲くらいかな。管楽器やストリングスの演奏者を呼ぶこともあるけど、基本的には二人ともマルチ・インストゥルメンタリストだからね。
荒谷:ほとんど二人が弾いてるんだ! すごい。じゃあ、ギターソロなんかもお二人が弾いてるんですね。とくに僕らは“All in the Value”のソロが本当に大好きで。車のなかであの曲がかかると、毎回みんなブチ上がるんです。
ジェイムス:ありがとう! でも、それを言うならyonawoのギターも素晴らしいよ。今度僕らが日本に行くときは、背中を合わせて一緒にギターソロを弾こうよ(笑)。
斉藤:ぜひお願いします!(笑)
「ライブで得られるものって、バーチャルでの体験とは置き換えられない」(アンディ)
―共演が実現する日を楽しみにしてます。とはいえ、当面は日本とイギリスを行き来することもまだ難しそうですよね。双方の音楽活動にも制限がなにかとあると思うのですが、yonawoとHONNEはそれぞれ今後どのように活動していこうと考えていますか?
ジェイムス:今の希望的観測としては、来年9月くらいにはまたツアーがスタートできたらいいなと思ってるんだけど、ライブに関しては正直まだ見通しが立たないのが現実だよね。
ただ、こうしてまとまった時間ができたことによって、今回の作品ではさまざまな実験をすることができたし、じつはその流れで今も僕らは曲を作り続けているんだ。だから、次にまた日本に行く頃には、もしかしたら新しいアルバムを2枚くらいは出しているかもしれない。
アンディ:うん、そんな感じで今の僕らは曲作りを楽しんでる。とはいえ、しばらく人前で演奏できなくなってしまったことは本当に残念に思ってて。やっぱりライブで得られるものって、バーチャルでの体験とは置き換えられないんだよね。できることなら、今すぐにでも日本行きの飛行機に乗りたいなと思ってる。
ジェイムス:今回のことで思い知らされたよね。飛行機で世界中をツアーして回るのって、正直すごく疲れるんだけど、いざそれができなくなってしまうと、自分たちにとってツアーがいかに大切だったかってことが本当によくわかった。
というか、生活すべてがそうだよね。それこそ今の僕らは、そこにいる人がただ咳をしただけでビビっちゃうわけでさ。友達とビールを飲んだり、ジムに通ったり、パンを買いに行ったり、そういう以前は当たり前にしていたことが、今はすごくありがたいことに思えるよね。
荒谷:僕らはそんなに疲れるほどのツアー経験がまだなくて、それこそ今回のツアーが初のワンマンツアーなんです。
ジェイムス:そうなんだ! お客さんは会場に入れるの?
荒谷:はい、半分のキャパでやります。
ジェイムス:素晴らしいね。今はなにかとフラストレーションを感じることもあるだろうけど、いいツアーになることを祈ってるよ。早く僕らも福岡に行きたいな。
荒谷:来た時は僕らが街を紹介しますね(笑)。あと、もしよければ僕がつくった日本語詞の曲を、いつかHONNEに歌ってほしいです。
アンディ:パーフェクト! 楽しみにしてるよ。
ジェイムス:次に会う時は一緒に音楽やろうね。yonawoのみんなもロンドンに来たら僕らのスタジオにおいでよ。
斉藤:うわ、絶対に行きたい! よかったらスタジオの動画とか写真を見せてもらえませんか?
ジェイムス:Instagramやってる? DMで送るよ(笑)。
yonawo一同:やった!
- リリース情報
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- yonawo
『明日は当然来ないでしょ』初回限定盤(CD+DVD) -
2020年11月11日(水)発売
価格:3,960円(税込)
WPZL-31783/4[CD]
1. 独白
2. 逢えない季節
3. トキメキ (Paraviオリジナルドラマ「love⇄distance」主題歌オープニング曲)
4. rendez-vous
5. good job
6. cart pool
7. 蒲公英
8. 202
9. 天神
10. ムタ
11. 麗らか
12. close to me
13. 生き別れ
14. 告白[DVD]
1. 矜羯羅がる
2. ijo
3. しあわせ
4. 26時
5. Mademoiselle
6. ミルクチョコ
7. 202
8. good job
9. 天神
10. トキメキ
11. 蒲公英
- yonawo
『明日は当然来ないでしょ』通常盤(CD) -
2020年11月11日(水)発売
価格:3,080円(税込)
WPCL-132451. 独白
2. 逢えない季節
3. トキメキ (Paraviオリジナルドラマ「love⇄distance」主題歌オープニング曲)
4. rendez-vous
5. good job
6. cart pool
7. 蒲公英
8. 202
9. 天神
10. ムタ
11. 麗らか
12. close to me
13. 生き別れ
14. 告白
- HONNE
『no song without you』国内盤(CD) -
2020年10月28日(水)発売
価格:2,178円(税込)
WPCR-183561. dear P / ディア・P
2. no song without you / ノー・ソング・ウィズアウト・ユー
3. free love / フリー・ラブ
4. iloveyoumorethanicansay / アイラブユーモアザンアイキャンセイ
5. by my side / バイ・マイ・サイド
6. la la la thats how it goes / ラ・ラ・ラ・ザッツ・ハウ・イット・ゴーズ
7. one way to tokyo / ワン・ウェイ・トゥ・トーキョー
8. can’t bear to be without you / キャント・ベアー・トゥ・ビー・ウィズアウト・ユー
9. loving you is so easy / ラビング・ユー・イズ・ソー・イージー
10. s o c i a l d i s t a n c i n g / ソ ― シ ャ ル デ ィ ス タ ン シ ン グ
11. lines on our faces / ラインズ・オン・アワ・フェイセズ
12. gone gone gone / ゴーン・ゴーン・ゴーン
13. our love will never die / アワ・ラブ・ウィル・ネバ―・ダイ
14. smile more smile more smile more / スマイル・モア・スマイル・モア・スマイル・モア
- yonawo
- イベント情報
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『「明日は当然来ないでしょ」release one man live tour』 -
2020年11月22日(日)
会場:愛知県 名古屋 CLUB QUATTRO
17:00開場 18:00開演2020年11月23日(月・祝)
会場:大阪府 BIGCAT
17:00開場 18:00開演2020年11月28日(土)
会場:北海道 札幌 BESSIE HALL
17:00開場 18:00開演2020年12月20日(日)
会場:福岡県 福岡 BEAT STATION
17:00開場 18:00開演2020年12月23日(水)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-EAST
18:30開場 19:30開演
- yonawo
- プロフィール
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- yonawo (よなを)
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荒谷翔大(Vo)、田中慧(Ba)、斉藤雄哉(Gt)、野元喬文(Dr)による福岡で結成された新世代ネオ・ソウル・バンド。2018年に自主制作した2枚のEP「ijo」、「SHRIMP」はCDパッケージが入荷即完売。地元のカレッジチャートにもランクインし、早耳リスナーの間で謎の新アーティストとして話題に。2019年11月にAtlantic Japanよりメジャーデビュー。配信限定シングル「ミルクチョコ」「Mademoiselle」を11月&12月に2ヵ月連続でリリース。2020年4月15日(水)に初の全国流通盤となる6曲入りのミニアルバム「LOBSTER」をリリース。4月24日(金)に配信限定シングル「good job」、5月1日(金)には過去のデモ曲をまとめた配信限定アルバム「desk」、6月12日(金)にParaviオリジナルドラマ「love⇄distance」主題歌オープニング曲「トキメキ」を配信限定でリリース。8月14日(金)には、史上初となる福岡FM3局で同時パワープレイを獲得した「天神」の配信がスタート。そして、11月11日(水)には、待望のファーストフルアルバム「明日は当然来ないでしょ」をリリース。
- HONNE (ホンネ)
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ボーカル/プロデューサーを務めるアンディとマルチプレイヤー/プロデューサージェイムスからなるロンドン出身の2人組エレクトロ・ポップ・デュオである。ユニット名は日本語の「本音」の意味を気に入り、まさに自分たちの作っている曲を表していると考えたことに由来する。2016年にデビューアルバム『寒い夜の暖かさ~ウォーム・オン・ア・コールド・ナイト~』、2018年にはセカンド・アルバム『ラヴ・ミー/ラヴ・ミー・ノット』を発売し、トム・ミッシュらが参加するなど注目を集めた。ここ日本を含め、公演は世界各地でソールドアウトを記録。最新作『ノー・ソング・ウィズアウト・ユー』では自身2度目となる日本語歌唱にも挑戦している。
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