大阪を拠点に活動する3ピースのロックバンドRe:nameが、前作『We Won't Know』からおよそ1年ぶりの2ndアルバム『postmodern indie』を昨年11月にリリースした。
メンバー流に意訳すると、「新世代のインディーミュージック」との意味を持つタイトルが冠せられた本作は、5 Seconds of SummerやOne Directionといった王道の洋楽ポップスに影響を受けながら、どこか懐かしく親しみやすいメロディーや、20代の若者が抱える葛藤やフラストレーションを綴った歌詞世界で聴き手の心を震わせる。これまで3ピースでのアンサンブルにこだわってきた彼らだが、ライブにおける同期演奏のための機材を導入したことによって、サウンドスケープに更なる奥行きと広がりが生まれたのも印象的だ。
中学・高校時代の同級生によって結成されたRe:name。バンドの規模が大きくなり、周囲の環境が変化していく中で彼らはどのようにお互いをリスペクトし合い、その関係性を維持してきたのだろうか。今年21歳を迎えるメンバー全員に、新作についてはもちろん、それぞれの音楽的ルーツやクリエイティブにおいて大切にしていることなどを語ってもらった。
究極をいえば、レコーディングからMV制作まで全て自分たちでできたら面白いなと思っています(高木)
―Re:nameは、メンバーそれぞれの役割分担がはっきりと決まっているそうですね。
高木(Vo,Ba):はい。バンド活動を続けていく中で、負担が偏ってしまうのは良くないなと。3人平等に役割があれば、お互いにその部分を信頼し合いながら続けていけるし、実際にそれで続けてこられた部分もあるなと。ちなみに僕は、主に作詞作曲、グッズやCDのデザインを担当しています。今ストリーミングで聴ける作品も、1枚目のEP『ALIVE』だけ知り合いのデザイナーにアートワークをお願いしたのですが、他は全て僕がデザインしています。
Re:name(リネーム)
2016年 大阪の北摂エリアにて結成されたポップロックバンド。メンバーは高木一成(Vo, Ba)、Soma(Gt, Cho)、ヤマケン(Dr, Cho)の3人。2016年にファーストEP『Re:start』でデビューを果たし、同年ファーストシングル『Forward/Somebody Like You』をリリースする。以降、コンスタントに作品を発表しながら精力的にライブを行い、2020年11月にはHAEDLINEの新レーベル"Lukie Waves"より、2ndアルバム『postmodern indie』を全国のタワーレコードにてリリースした。
―高木さんは、もともとデザインに興味があったのですか?
高木:興味はあったのですが、実際にやったことは全くありませんでした。ただ、頭の中にいつも「こんな感じのジャケットやったらいいな」というのがあって。だったら自分でやるのが一番再現性も高いんじゃないかと思ってやり始めたのがきっかけです。他のメンバーもいい反応をしてくれたので、それが自信にもなって今も続いています。それに、自分がバンドのデザインを担っているという意識があると、他のバンドのアートワークとかも気になるし、「あ、こういうのいいな」みたいに目がいくようにもなりましたね。
―最近、何か気になるデザインはありました?
高木:僕が一番尊敬しているのが5 Seconds of Summerというオーストラリアのバンドなのですが、彼らとThe 1975はずっと好きで、アートワークも参考にさせてもらっています。他にも、気になった海外のバンドはInstagramのアカウントをフォローして、そういうところからちょっとずつ要素を取り入れることで、日本の他のインディーズバンドと差別化できたらいいなと思っていますね。
Soma(Gt, Cho):僕はメンバーの中で一番パソコンに詳しいということで(笑)、動画の作成やサイトの更新なども行っています。(高木)一成と同じように僕も全くの独学で、最近だと“99”という曲のリリックビデオをYouTubeに上げたのですが、それもインターネットで編集の仕方などを調べました。特に好きな映像作家がいるわけではなく、その都度作りたいイメージをいろいろ検索して、参考にしたり吸収したりしていることが多いですね。
ヤマケン(Dr, Cho):僕はイベントやツアー、ワンマンの企画を立てるなど、主にバンドの見せ方、マーケティング的な部分を担当しています。バンド活動で最も大切なのは、常に前に進んでいる様子を見せることだと思っていて。今年はコロナ禍でなかなか動きづらかったのですが、YouTubeでメンバーと質問リレーをやったり、セルフライナーノーツを更新したり、お客さんを飽きさせない工夫をずっと考えていました。
―今後、活動の規模がもっと大きくなっていってもDIYは続けていきたいですか?
高木:さっきも言ったように、自分たちがやりたいことは自分たちが一番分かっているので、出来る範囲のことはDIYでやっていきたいです。もちろん、3人でやれることには限界があるのですが、究極をいえばレコーディングからMV制作まで全て自分たちでできたら面白いなと思っていますね。
―みなさん中高生の頃からの付き合いだそうですが、環境が変わっていく中で関係性を維持するために心がけていることはありますか?
高木:かれこれ4年半くらい一緒にやっているんですけど、週に6回とか顔を合わせていれば「ああ、今日はみんな疲れてるんやろな」みたいな雰囲気の時ももちろんあって(笑)。そんな時でも沈んだムードにならんよう、まずは自分から明るく振る舞うようには努めていますね。みんな、ちょっとずつ気を遣い合っているんじゃないかなと。
Soma:自分が持っていないものを、他の2人が持っていることを素直に認めるというか、リスペクトすることが大切なのかなと思っています。
ヤマケン:僕らは仕事仲間でもないし、ただの友達という感じでもなくて。そんな距離感がすごく心地いいなと思っているんですよね。集まれば会話は多いけど、プライベートでは常に一緒というわけでもない。お互いの仕事をリスペクトしつつ、この近すぎも遠すぎもしない絶妙な距離感を今後も上手く保っていけたらいいなあと思っています。
ミスチルやサザン、星野源さんには共通したメロディーの良さがあり、一成の作るメロディーにもそこに通じるものがあると思っていて。(ヤマケン)
―これまでのインタビューを読むと「洋楽っぽさ」「洋楽感」みたいなものを大切にしているようですが、音楽的なルーツは3人とも洋楽なのですか?
高木:普段聴いている音楽は、3人ともバラバラですね。僕は中1の時に初来日のタイミングでOne Directionを知って、そこから洋楽にハマっていきました。5SOS(5 Seconds of Summer)も、1D(One Direction)の弟分ということから知ったんです。「バンドってカッコええな!」と思ったのは5SOSがきっかけで、そこから他の洋楽バンドも掘っていきましたね。
高木:The 1975は、いろんなジャンルを吸収しつつクオリティの高い作品を作っているところが好きです。今回のRe:nameのアルバムにもそういう部分で大きな影響を与えてくれました。彼らはライブもすごいんですよね。一昨年、『SUMMER SONIC 2019』で観たらショーみたいだったんですよ。コンセプチュアルな世界観が、他のバンドの見せ方とは一線を画していてものすごく感銘を受けました。
ヤマケン:僕はサザンオールスターズやMr.Children、最近だと星野源さんのような、日本のメインストリームにあるポップミュージックをずっと好きで聴いてきました。ジャンルも音楽性もそれぞれ違うんですけど、彼らには共通したメロディーの良さがあり、一成の作るメロディーにも、そこと通じるものがあると思っているんですよね。
Soma:僕は、小中時代はずっとGReeeeNばっかり聴いていましたが、中学の時に一成に勧められてジャスティン・ビーバーやOne Directionのような洋楽ポップスを聴き始めました。今はtofubeatsさんのようなヒップホップが好きなんですけど、アーティストで聴くというよりは、プレイリストで気になった曲を聴くことが多いですね。
ヤマケン:さっき一成が言ったように、僕ら聴いている音楽はバラバラですが、それぞれの円が重なるところがあるんです。例えば、車で移動中に一成がかけた音楽に僕とSomaが反応したり、Somaがかけた音楽に僕と一成が反応したり。そういう、3人に共通する「好み」を突き詰めていきたいと思っていますね。
高木:これからバンドがどんどん大きくなって、最終的には海外にもリスナーがたくさんいる状況を作っていきたくて。そのためにもSNSに英語表記を入れてみたり、Spotifyのプロフィール画面をちょっとこだわってみたりしています。海外のリスナーは正直まだ少ないんですけど、いつかイギリスやアメリカでツアーが出来たら最高ですね。
―そんなRe:nameが共感する、国内の同世代アーティストをあえて挙げるとすると?
ヤマケン:今度のツアーにも出演してもらう予定の、KADOMACHIという名古屋のバンド。自分たちがやりたいサウンドを鳴らしていると思うし、CDを透明ケースにしたり、フェスを自分たちで企画したり、自分たちがどういうことをやりたいのかがはっきり見えている。アプローチの仕方こそ違えど、僕らも見習いたいと思います。
高木:同世代といえるか分からないのですが、次の神戸公演で一緒に出てもらうSlimcatが好きです。大学の先輩で学部も一緒ですが、9割くらい英詞で洋楽みたいなんですよ。僕らRe:nameは英語と日本語の歌詞が半々みたいな感じで、いろんなジャンルを取り入れているんですけど、Slimcatはストレートなロックでジャケはアメコミっぽい感じを意識していて、完全に振り切っているところが洋楽っぽくてすごくカッコいいなと思っています。
Soma:同い年だとFAITHがすごいなと思いますね。見た目から華があるし、曲も英詞で洋楽テイストに溢れてて。しかも個人の演奏レベルが高過ぎて、何回か一緒にやったことがあるんですけど、そのたびに驚かされていました(関連記事:悩みはどこの国でも変わらない。FAITHが歌う普遍的な若者の悩み)。
マスク越しでも喜んでくださっている表情は分かるので、ライブってやっぱりいいなあと思いました。(Soma)
―2ndアルバム『postmodern indie』についてもお聞きします。まず、タイトルがユニークだと思ったのですが、どんな意味が込められていますか?
高木:「新時代のインディーミュージック」みたいな意味にしたくて。パッと意味が伝わらないように、あえて難しい単語を用いてみました(笑)。今回、サウンドにも新しい要素をたくさん取り入れたし、「Re:nameはこういう音楽もできるんやで?」というメッセージもタイトルに込められたんじゃないかと思っています。
―アルバム制作に取り掛かる前、ライブで同期させるための機材も揃えたと聞きました。それもやはり、3ピースの音楽性をもっと拡張させたいという思いがあったのでしょうか。
高木:そうですね。昨年までは「3人だけでどこまで表現できるか?」をテーマにしていたのですが、活動を続けていく中で「もう1本ギターが入ったら、もっといろんな表現ができるのに」と思うことも多くなってきて。2020年になり、コロナが来るか来ないかくらいの頃、お世話になっている地元のライブハウス、LIVE SQUARE 2nd LINEさんに、同期をする時に必要な機材環境などを相談したんです。今回はライブでの同期演奏を前提に曲作りをしたおかげで、アレンジの幅が広がったところは確かにあります。それに、コロナになって時間がたくさんできたので、そこで曲作りにも時間をかけられたのも大きかったですね。
―音数が増え、アレンジの幅も広がっていく中で、ギターやドラムのアプローチも変わっていきましたか?
Soma:例えば“Late Night City”という曲は、ギターの本数をかなり重ねているんですけど、それぞれの帯域がなるべく被らないように気をつけました。
Re:name“Late Night City”(Apple Musicはこちら)
Soma:あと3ピースの場合、途中でギターソロを弾くとコードを鳴らす楽器が他になくなってしまうので、どうしても音がスカスカになってしまうんですけど、同期の場合はそういう心配をすることなく自由にリフやソロが弾けるので、プレイの幅はかなり広がりました。
ヤマケン:ドラムに関しては、同期が増えたことでクリックに対してよりシビアになったところはありますね。これは同期が増えたことと直接は関係ないのですが、アレンジが広がったぶん、あらかじめ曲ごとにドラムサウンドを決めて、エンジニアの方にThe 1975やDYGL、星野源さんなど参考音源をいろいろ送るということを、今回のレコーディングで初めてやったんですよ。なので、曲ごとにドラムサウンドは色々変わっていると思います。
―メロディーはポップでキャッチーなのに、歌詞はシリアスだったりネガティブだったりするものが多いのもRe:nameの特徴なのかなと思いました。
高木:誰だったのかは忘れてしまったのですが、「めちゃくちゃ落ち込んだときや、めちゃくちゃ嬉しいときのように、感情が大きく揺れると歌詞が生まれやすい。なので、その時の心の動きはノートに書き留めておくといい」と言っていた人がいて。「確かにそうやな」と思って、ずっと心に残っていたんですよね。僕自身、悲しいことや悔しいとき、葛藤しているときのことを思い出しながら歌詞を書くことが多いけど、そのときに頭の中で鳴っているメロディーはポップなので、無意識にそういう構造になっているのかも知れないです。
―歌詞をよく読むと、日本語では言いにくい本音が英語で書かれた部分に隠されているのかなとも思いました。
高木:そこに気づいてもらえるのはすごく嬉しいですね(笑)。僕はいつも洋楽を聴くとき、最初は意味が分からなくてメロディーやサウンドを楽しんでから、次に歌詞の和訳を読んで「ああ、こんなことを歌っているのか」と発見するのが楽しくて。僕らの曲も、まずはメロディーやサウンドを聴いてもらい、次に歌詞を読んで意味を確かめてから、英語詞の和訳にも目を通してもらう。そうやって、1曲で3回味わってもらうのが理想かなと思っています(笑)。
―“ティーンエイジャー”はヤマケンさんが作詞を手掛けていますね。後半の力強いシンガロングが印象的です。
ヤマケン:タイトル通り、10代の持つ勢いを表現したくてシンガロングにしました。10代から20代に差し掛かるときって、これから大学に入学してお酒も飲めるようになって、新しい出会いや経験もたくさん増えるし毎日ワクワクしていたんですよね。今、自分は21歳なんですけど、たった2、3年前のことなのに、あの頃の新鮮さはとうに無くなってしまったな、と。もちろん、今は今で別の楽しさがあるんですけど、10代の頃の思いを忘れないうちにカタチに残したくて曲にしました。これを聴けば、いつでもあの頃に戻れるんじゃないかという、ある意味では自分のために書いた曲ですね。
―この曲をライブでシンガロングする日が待ち遠しいですね。
Soma:先日、Re:nameはワンマンライブを行なったんですけど、お客さんは感染予防対策も万全にされていたし、こういう状況なので大きい声が出せない中、ライブ中もそれを自主的に守ってくださっていて。きっと、この先のライブも無事に開催されることを願っての行動だと思うし、それがひしひしと伝わってきたのが本当に嬉しかったです。マスク越しでも喜んでくださっている表情は分かるので、ライブってやっぱりいいなあと思いました。
―まだまだ予断の許さない状況ですが、バンドとして今後どのように成長していきたいですか?
高木:これからも、他のバンドとは違うことをやり続けていきたいです。そして最近思うのは、「Re:nameの音楽を聴いている自分、カッコいいな」と思ってもらえるようなバンドになること。Re:nameというバンドの価値を、もっと上げていきたいと思っています。
ヤマケン:今のメンバーの距離感を保ちながら、一成のやりたいことを具現化していきたい。今の形を壊さずブレず、楽曲の精度や規模をどんどん大きくしていきたいです。そして、いつかは星野源さんのように、メインカルチャーに軸足を置きつつもやりたいことをマニアックに追求し続けるアーティストになりたいです。日本人なら誰でも知っているような、国民的バンドになれるよう頑張ります。
- リリース情報
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- Re:name
『postmodern indie』(CD) -
2020年11月25日(水)発売
価格:2,200円(税込)
LKWV-00021. Swingboat
2. Maybe I Was Wrong
3. Future There
4. orange
5. byebye
6. FILM
7. seventeen
8. Late Night City
9. wasurete
10. We Got Love
11. Somebody Like You(2020 ver.)
12. ティーンエイジャー
- Re:name
- プロフィール
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- Re:name (りねーむ)
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2016年 大阪の北摂エリアにて結成されたポップロックバンド。メンバーは高木一成(Vo, Ba)、Soma(Gt, Cho)、ヤマケン(Dr, Cho)の3人。2016年にファーストEP『Re:start』でデビューを果たし、同年ファーストシングル『Forward/Somebody Like You』をリリースする。以降、コンスタントに作品を発表しながら精力的にライブを行い、2020年11月にはHAEDLINEの新レーベル"Lukie Waves"より、2ndアルバム『postmodern indie』を全国のタワーレコードにてリリースした。
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