新たなカフェが続々オープン。福岡の個性派コーヒーショップ3選

スペシャルティコーヒーの流れも落ち着いた昨今。そうかと思いきや、今、福岡では、コーヒーは当たり前に美味しく、+αの個性がおもしろい、オリジナリティあふれるお店が続々とオープンしています。しかも、福岡の中心部や駅からは少し離れた、人通りの多くない場所に増えているのも特徴的。わざわざ足を運びたくなるニューオープンのお店を紹介します。

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※本記事は『HereNow』にて過去に掲載された記事です。

朝7時からオープン。メルボルンスタイルを味わえる『Modoo's Coffee Brewers』

2018年2月警固エリアにオープンした『Modoo's Coffee Brewers(モドゥコーヒーブリュワーズ)』のオーナーバリスタ廣瀬規一(ひろせきいち)さんは、ワーキングホリデーの制度を利用して、オーストラリア・メルボルンの『Dukes Coffee Roasters』をはじめとする、いくつもの有名コーヒーショップでバリスタ業務やロースティングのトレーニングを積んだ経験の持ち主。

モラトリアム的に過ごす人も多いワーキングホリデー。廣瀬さんは1年という限られた時間の中で、できるだけのことをやろうと決め、現地でエスプレッソマシンを買って、仕事から帰った後や休みの日も自宅でコーヒーを淹れる練習をした。「バリスタは学校に行けば誰でもなれるけど、誰でもなれるものを仕事にするなら、人の10倍はやらないといけないと思った」と。実際にModoo'sのコーヒーを飲むと、その熱意と努力が味につながっていることがわかる。

メニューは「オーストラリアのものをそのまま持って来ている」という言葉通り、ロングブラックやピッコロ、マジックなど、いわゆるオーストラリア定番のコーヒーメニューが並ぶ。日本ではあまり聞き慣れないかもしれないが、できれば飲んだことのないものも注文してみて。一杯のカップで、メルボルンのコーヒーショップを訪れたような気分になれると思う。

そんなオーストラリア仕込みの腕があっても、開店当初からお店は順風満帆というわけではなかった。福岡の中心部や、電車や地下鉄の駅から少し離れた雑居ビルの2階という立地は、コーヒーショップとしてはなかなかハードルが高い。

まずは認知してもらうため、最初の2ヶ月ほど雑居ビルの外の入口にある、一人しか立てないような狭いスペースでコーヒーを手売りしたと言う。最初の週は、通りすがりの通勤中の人に挨拶をしても完全にスルー。朝6~9時まで立っていても、1週間で10杯も売れなかった。翌週からは、顔を覚えてもらえたのか、挨拶をしたら返してくれる人がじわじわと増え、1日平均10杯ほど売れるようになった。その後は、朝早くからお店を開けてほしいという要望もあり、朝6時から店を開けることに。

現在は朝7時からの営業になったけれど、それでも福岡では数少ない早朝営業のコーヒーショップ。しかも、コーヒースタンドながら朝11時までの朝食メニューもあり、クロワッサンのエッグサンドや、サーモンとマッシュポテトのベーグルサンドにコーヒーが付いて、味もお腹も大満足の内容。

それ以外にも、カヌレやチーズケーキ、グラノーラバーなど手づくりのスイーツが並ぶ。最近は、オリジナルグッズのマグカップとサコッシュの販売も始めた。コーヒーショップではあまり見かけない手づくりのカヌレや、オリジナルグッズにしては珍しいサコッシュなどを店に並べる理由を尋ねると「人と違うことがやりたいから」と返ってくる。

人と同じはつまらないというこだわりの姿勢は、福岡でメルボルンスタイルを貫いているところにも表れている。オーストラリアの本場のコーヒーを味わってみたい人は、ぜひ『Modoo's Coffee Brewers』へ足を運んでみて欲しい。

Modoo's Coffee Brewers
住所:福岡市中央区警固3丁目1-28-202
営業時間:月ー金7:00~17:00, 土日祝11:00~19:00
定休日:木曜(不定休)
URL:https://www.facebook.com/mcb.coffee

空間すべてに店主のセンスがあふれる『NIYOL COFFEE』

お店というのは、お店をつくる人自身が表れるもの。この『NIYOL COFFEE(ニヨル コーヒー)』はまさにそんなお店だ。

2018年6月、早良区西新の裏通りにオープンしたばかりなのに、もう何年もその場所にお店があるかのような佇まい。外観や看板には新しさが感じられるものの、エントランスまわりにある植物や鉢植えは、しっくりとその風景の中に溶け込んでいる。

店内に置いてあるアイテムも、その風景にすでに馴染んでいるものばかりで、店の入口から奥までつながっている大きなカウンターテーブルも使い込まれているように見える。すべてが真新しい感じではなく、とても落ち着く空間だ。オーナーの越智大輔さんは「そう言ってもらえると嬉しいです。ずっと家にあった物や、好きで集めていた物を置いているせいですかね」と顔をほころばせた。

なんでも、このお店をオープンするまでの4年間、昼はコーヒー屋さんで働き、夜はアルバイトをしながら、開店資金を貯めてきたのだそう。少しお金が貯まるとエスプレッソマシンを買い、また少し貯まったら今度は焙煎機を買うという具合に、ひとつずつ準備を進めてきた。独特の風合いが素敵なホーマー・ラフリン社のアンティークカップは、日本ではあまり手に入らないので、オークションサイトで見かけるたびに落札して、少しずつ大切に集めたもの。そのうち自宅には、「お客さんさえ呼べば、家で営業できそうな状態だった」と言うほど、お店のためのアイテムが揃っていったそう。

そこまで時間と労力をかけ、入念に準備をしたうえでの開店と聞けば、年月を経たような愛着あふれる空間になっているのも納得だし、どうりで落ち着くはずである。

さらに、リラックスできる空間はなんと地下にも。『NIYOL COFFEE』には地下シェルター「OOLJEE」(ナバホ族の言葉で“月”という意味)という貸しスペースがあり、アコースティックライブや古着のポップアップショップなどのイベントを開催している。コーヒーを飲みにきたお客さんにも開放しているので、地下で飲みたい場合は注文時にその旨を伝えテイクアウトカップにしてもらい、店の外をぐるりと回って建物の裏手から入ろう。大きなスピーカーから音楽が流れる、天井の低い空間は、まるで秘密基地にいるような高揚感と隠れ家感がどちらも味わえる。

落ち着く理由は、もちろんコーヒーの美味しさにもある。越智さんは、某大手コーヒーチェーンで7年間、前述のとおり別のコーヒー屋さんで4年間働いていただけでなく、糸島の『Tana Cafe + Coffee Roaster』で焙煎の勉強もしてきた。最初に『NIYOL COFFEE』を訪れた時に、私が少し濃い目のラテやカプチーノが好みだとわかったのか、次に行った時は「よかったらダブルショットにしてみませんか?」と、さらに好みの味のコーヒーを出してくれた。細やかな気遣いだけでなく、好みをすぐに理解して柔軟に対応してくれることにも心動かされた。

ただ、越智さんは「コーヒーの味は、帰り際にそういえば美味しかったなとか、あとで思い出してまた行きたいと思ってもらえればいい」のだと言う。「せっかくお店まで来てくれたなら、ゆっくりしていってほしくて。ぬくもりのある木や緑があって、人が安らいだり、ワクワクしたりする、おもしろいお店にできたらいいなと思います」と。

コーヒーを飲む時間を豊かにしたいという越智さんの思いが、『NIYOL COFFEE』にはあふれている。

NIYOL COFFEE
住所:福岡市早良区祖原14-21
営業時間:月8:00~20:00, 火水金10:00~20:00, 土11:00~22:00, 日11:00~18:00
定休日:木曜
URL:https://www.niyolcoffee.com/

行列で2時間待ちになることも。白くてスタイリッシュな人気カフェ『Siro Coffee』

人通りもまばらな早良区の住宅街の一角に、行列の絶えないカフェ『Siro Coffee』がある。オーナーの後野陽平(あとのようへい)さんは、2017年4月のオープン以来、そんな人気店を一人で切り盛りしている。

そもそも、後野さんは一人で働きたいからお店をオープンしたのだと言う。美容学校時代に某大手コーヒーチェーンでアルバイトをしていた後野さんは、学校を卒業して美容師になったものの、しっくりこなかったため美容師を辞め、イタリアンレストランなどいくつかのバイトを転々とした。そして『Siro Coffee』をオープンする直前は、同じく早良区西新の『TRICKSTER COFFEE』でも働いた。

そんな中、「今までやってきた仕事で、自分ひとりでもできる仕事は何だろう?」と考えた時に、コーヒー屋さんならできそうかなと思い至った。近所の整骨院で、お店をやりたいことを世間話程度に話したら、「近くにある期間限定の店舗が空くみたいだよ」と教えてもらい、帰りにその物件に立ち寄ってみた。

家からも近く、路面店で、広さも十分。しかも、商店街から少し離れた静かな場所ですぐに気に入った。時を置かずに物件が空くこともわかり、貯金も計画性もなかったけれど、とりあえず物件を押さえた。結果「物件を押さえたらもうやるしかない、という感じで。なんとかなるかと思ってお店を始めた」のだそう。

軽い世間話をきっかけにトントン拍子に話が進んだので、現在の内装やインテリアも最初からアイデアがあったわけではない。オープンが決まってから、インターネット上で手当たり次第に枯木を買ってみて、最初にカウンターの上に取り付けてみたところ、いい感じだったのでそのままかけることにした。それが今ではお店のシンボル的なインテリアになっている。窓にかかっている布も、開業前の準備期間にとりあえず目隠しとしてかけてみたら、外から見た時のロゴとのバランスもよかったのでそのまま使い続けている。

そして、インテリアの方向性を決めたのはSlayer社のエスプレッソマシン。このエスプレッソマシンのデザインと白い本体が気に入って購入を決めたから、インテリア全体も白を基調にすることにした。さらに、白のエスプレッソマシンでコーヒーを淹れるから、店名を『Siro Coffee』にした。

メニューは、アメリカーノなどの定番のコーヒーよりも、ほうじ茶ラテや平日限定の塩きな粉シェイクなど、スイーツ系ドリンクの方が断然人気。客層が10代後半~20代中心ということもあり、美味しさはもちろんのこと、白くシンプルなインテリアにスイーツ系ドリンクが“映える”のもまた、人気の秘密だろう。

ただ、後野さん自身はカフェラテが一番好きで、こだわりもある。豆は基本的に「Coffee County」のダークローストで、ミルクは「村山牛乳」のものを使うと決めている。「同業者のプロが見たら、エスプレッソマシンの使い方も笑われるくらい、僕は全然わかっていないんです」と謙遜するが、他人から言われることはそれほど気に留めていない。最終的に自分好みの味であればいい、結果がよければすべてよしだと思っているからだ。

『Siro Coffee』の魅力は、スタイリッシュなインテリアやスイーツ系のドリンクだけではない。好きなことだけをやるという、後野さんの肩の力が抜けた姿勢もまた魅力の1つなのだ。

Siro Coffee
住所:福岡市早良区城西2-12-16
営業時間:12:00~19:00
定休日:水曜、第1・3・5火曜
URL:https://www.instagram.com/siro_coffee/


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