大野雄二率いるバンド、『ルパン三世』を奏であげて解散を発表

大野雄二、『ルパン三世』の音楽を務め続けて39年

昨年10月から、アニメ『ルパン三世』の新テレビシリーズがオンエアされていることをご存知だろうか。実に30年ぶりの新シリーズということもあり、一部声優の交代はあったものの、オープニングで“ルパン三世のテーマ”が流れた途端、胸の高鳴りが止まらなくなったという人も多いと思う。

もはや説明不要かもしれないが、新シリーズでも音楽を担当しているのは大野雄二だ。1977年に放送が始まった第2シリーズ以来、劇場版も含め『ルパン三世』の世界観を築きあげてきた立役者のひとりで、74歳になったいまも現役バリバリ。もともとジャズピアニストだった出自もあって、近年はライブ活動も盛んに行なっており、そのなかでも『ルパン三世』の楽曲を中心に披露している6人編成の「Yuji Ohno & Lupintic Five」は、特に高い人気を集めている。

この新テレビシリーズ放送とYuji Ohno & Lupintic Five結成10周年を記念して、12月24日のクリスマスイブ、Yuji Ohno & Lupintic Fiveによるライブ『ルパン三世コンサート~LUPIN! LUPIN!! LUPIN!!! 2015~』が中野サンプラザで開催された。

Yuji Ohno & Lupintic Five with Fujikochan's / ©モンキー・パンチ/TMS・NTV 原作:モンキー・パンチ ©TMS
Yuji Ohno & Lupintic Five with Fujikochan's / ©モンキー・パンチ/TMS・NTV 原作:モンキー・パンチ ©TMS

「サービス精神旺盛」を有言実行するライブステージ

大野は過去にインタビュー(CINRA.NET掲載「“ルパン三世のテーマ”を生んだ大野雄二、現代の曲作りに物申す」)で、自身のライブを「サービス精神旺盛」と語っていたが、その言葉に偽りなし。開演前にはルパン三世(CV:栗田貫一)がジョークをふんだんに交えた影アナを担当し、オープニングでは黒バックに白文字がタイプされていくアニメ同様のタイトル映像を上映。主要キャラクターの映像を流しながら、そのキャラのテーマソングを演奏したり、新シリーズで使われているアイキャッチ(CMの前後に流れる短い映像)を生演奏するコーナーがあったり、ルパンファンにはたまらない演出が随所に散りばめられていた。

この日の編成は、ピアノの大野雄二とLupintic Fiveの五人に、ラテンパーカッションの川瀬正人、そしてTIGER、佐々木詩織、佐々木久美の三人によるコーラス隊「Fujikochan's」を加えた十人。手練れ揃いな演奏陣が生み出すアンサンブルはグルーヴ感たっぷりで、2曲目の“セクシー・アドベンチャー”で早くも手拍子が沸き起こり、3曲目の“BUONO!! BUONO!!”では客席にコーラスを委ねて一体感を作り上げるなど、本格的な演奏とサービス精神を見事に融合させて、序盤から一気に観客を引き込んだ。

ボーカル曲では、それぞれ異なる歌声を持つFujikochan’sの三人が、曲によってメインを歌い分けていたことでも楽しみを増幅させてくれた。特に新シリーズから登場したレベッカ・ロッセリーニのテーマソングである“ジェットコースター・ラブ”と“メランコリー・ベイビー”では、弱冠22歳の佐々木詩織が瑞々しさと憂いを帯びた二面性のある歌声で、スーパーセレブのスキャンダラスガールというキャラクターを見事に表現。

左から:佐々木久美、佐々木詩織、TIGER
左から:佐々木久美、佐々木詩織、TIGER

終盤の“銭形マーチ”や“ルパン三世のテーマ”では盛り上がりも爆発。最後に演奏された“サンバ・テンペラード”では観客も立ち上がり、場内は最高潮の熱気に包まれた。

©モンキー・パンチ/TMS・NTV 原作:モンキー・パンチ ©TMS
©モンキー・パンチ/TMS・NTV 原作:モンキー・パンチ ©TMS

まるでアニメの世界と現実を行き来するかのような存在

そして肝心の大野雄二のプレイだが、スイスイと泳ぐようにピアノを奏でたかと思えば、盛り上がるに従い立ち上がって演奏する場面もあり、終盤の“ルパン三世のテーマ”では、肘で鍵盤を叩くダイナミックな姿も見られた。その一方でアンコールでは、ルパンの初代声優である故・山田康雄の思い出に触れつつ、レクイエムを奏でるかのようにピアノソロで“MEMORY OF SMILE”を披露。実に感動的な時間だった。

大野雄二
大野雄二

ポーカーフェイスで冷静に仕事はこなす一方、人一倍情が深くて心の奥に熱い気持ちを隠し持つ。大野が演奏している姿を見ていると、まるで『ルパン三世』の世界に登場しそうな、そんなキャラクターが浮かび上がる。途中のMCでは、今回の新シリーズ開始に先立ち、50曲のオーダーに対して250曲も用意したというエピソードが明かされたが、それも内に秘めたルパン愛の強さの表れだろう。

この日のロビーには、ルパン一味&銭形警部とともに、アニメ同様のタッチで描かれた大野雄二の等身大パネルも展示されていたが、これは単なる賑やかしの展示物ではなく、『ルパン三世』の世界をそのまま描いたものだと感じた人も多いのではないだろうか。アニメ内にこそ大野は出てこないものの、実はルパン一味や銭形警部をずっと近くで見守っている一人のピアニストがいて、ライブのたびに現実世界に現れる。そんな気さえ感じさせるほど、ルパン一味の中に自然と溶け込んでいた光景が目に焼き付いた。

会場ロビー風景 ©モンキー・パンチ/TMS・NTV 原作:モンキー・パンチ ©TMS
会場ロビー風景 ©モンキー・パンチ/TMS・NTV 原作:モンキー・パンチ ©TMS

大野雄二 ©モンキー・パンチ/TMS・NTV 原作:モンキー・パンチ ©TMS
©モンキー・パンチ/TMS・NTV 原作:モンキー・パンチ ©TMS

ライブ4日後に、突然発表された解散

しかしながら、これを書いているさなか、Yuji Ohno & Lupintic Fiveが解散するという情報が飛び込んできた。大野自身においても、2~3月に決まっているソロライブ2本を最後に、少しの間ライブ活動を休むそうだ。新シリーズ放送でルパン熱も高まっているタイミングでの解散は残念だが、音楽活動を引退するわけではなく、公式Twitterによると本人は2016年も「やるき満々」と話しているそうなので、今後の活動に期待するほかないだろう。

新シリーズでは、舞台となっているイタリアの世界観に合わせてマンドリンを用いた“ルパン三世のテーマ”や、作詞・つんく、歌・石川さゆりによる新曲“ちゃんと言わなきゃ愛さない”など、新鮮な楽曲も数多く発表されている。リスナーとしての勝手な意見ではあるが、ライブ活動を休止することで、作曲活動がより盛んになると好意的に受け止めたい。まだまだワクワクさせてくれる曲を聴かせてくれますよね?

イベント情報
『ルパン三世コンサート~LUPIN! LUPIN!! LUPIN!!! 2015~』

2015年12月24日(木)
会場:東京都 中野サンプラザホール
出演:
Yuji Ohno & Lupintic Five with Fujikochan's

リリース情報
Yuji Ohno & Lupintic Five with Fujikochan's
『ルパン三世コンサート~LUPIN! LUPIN!! LUPIN!!! 2015~』(Blu-ray)

2016年3月23日(水)発売
価格:6,264円(税込)
VPXQ-79006

Yuji Ohno & Lupintic Five with Fujikochan's
『ルパン三世コンサート~LUPIN! LUPIN!! LUPIN!!! 2015~』(DVD)

2016年3月23日(水)発売
価格:5,184円(税込)
VPBQ-19095

Yuji Ohno & Lupintic Five
『Yuji Ohno & Lupintic BEST』(CD)

2015年12月16日(水)発売
価格:3,780円(税込)
VPCG-83508

[DISC1]
1. FLYING MAGNUM
2. HOLY BUT EASY
3. あの日の絵画 feat. 中納良恵
4. Night Sailing
5. OPUS#3
6. HOT SAMBA
7. Treasures of Time feat. Predawn
8. Lonesome City Breeze
9. Summer Samba(So Nice)
10. ハーレム・ノクターン
11. Cute
12. サンバ・テンペラード
13. LIFE'S A FLAME~Pf solo
[DISC2]
1. LUPIN AU GO GO
2. MOVE ON UP
3. LOVE SQUALL
4. Moon River feat.今井美樹
5. But Not Really
6. トルネード
7. LOVE THEME -ルパン三世 愛のテーマ-
8. ミシェル feat. 加藤ミリヤ
9. Jeannine
10. 銭形マーチ
11. THEME FROM LUPIN THE THIRD '89(Lupintic Five Version)
12. FAIRLY NIGHT~Pf solo

プロフィール
大野雄二
大野雄二 (おおの ゆうじ)

小学校でピアノを始め、高校時代にジャズを独学で学ぶ。慶應大学在学中にライト・ミュージック・ソサエティに在籍。藤家虹二クインテットでJAZZピアニストとして活動を始める。その後、白木秀雄クインテットを経て、自らのトリオを結成。解散後は、作曲家として膨大な数のCM音楽制作の他、『犬神家の一族』『人間の証明』などの映画やテレビの音楽も手がけ、数多くの名曲を生み出している。リリシズムにあふれた、スケールの大きな独特のサウンドは、日本のフュージョン全盛の先駆けとなった。その代表作『ルパン三世』『大追跡』のサウンドトラックは、1970年代後半の大きな話題をさらった。2015年10月に日本テレビ、読売テレビほかで放送される『ルパン三世』新テレビシリーズの音楽を担当するなど、その勢いは止まらない!



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