めまぐるしい時代の流れと一見逆行するような、「アンティーク家具」の楽しみ方とは?
「アンティーク家具」をGoogleで画像検索してみる。するとそこには、すみずみまで趣向の凝らされたキャビネットやソファ、天井いっぱいの飴色の照明などが現れ、重厚でドラマチック、かつ中世を思わせる格式高い空気が醸されてくる。しかし現在は2016年。情報機器とともに機能的でめまぐるしい時代の速度に生きる私たちにとって「アンティーク家具」とは何だろう? その着地点に思いを巡らせながら、ルミネが主催する『CLASS ROOM』が開かれる恵比寿の「CAFE PARK」を訪れた。
ルミネは月に1度のペースで「ライフスタイルをアップデートして、暮らしをもっと楽しもう」をコンセプトに、アート&カルチャー、ライフスタイルなどの各分野で活躍するクリエイターたちを招き、これからの自分らしい生き方を考える『CLASS ROOM』を開催している。今年で2年目を迎えるカルチャースクールの初回講座では、「アンティークのある暮らし」として、フランスのアンティーク家具やアート作品を中心に扱うインテリアショップ「H.P.DECO」のバイヤー、丹地宏太郎を講師に迎えアンティーク家具の魅力と楽しみ方を紹介。目からうろこの国内外のアンティーク事情が、静穏な口調で熱く語られた。
アンティーク家具の利点を知り、賃貸物件でも取り入れやすい方法を学ぶ
アールデコ、アールヌーボー、ミッドセンチュリー。各時代を彩る新しい家具やインテリアも、100年を節目に「アンティーク」と称されるが、その100年とはあくまで目安であり、良いデザインは新しい・古いの概念を超え継承される。しかし現代の製品に比べ、アンティーク家具が決定的に優れている要素があるという。それはずばり、耐久性だ。アンティークの製品は素材がシンプルなため修復が容易。結果として、長く愛用することができるのだそうだ。
一方、そんな耐久性に優れたアンティークの家具やデザインも、果たして現代の日本の住環境に違和感なく寄り添うのだろうか? という思いも頭をよぎる。この一片の疑問に対して丹地が提案するのが、賃貸物件にも取り入れやすいアンティークの壁紙だ。日本には非常に多くの壁紙が輸入されており、それらを部屋の一部に取り入れるだけでがらりと雰囲気が変わるため、他の家具への入り口となる。
その他にも、造形の美しいスプーンや食器を壁に飾って楽しむ、またはアンティークの額装に現代のアート作品を組み合わせるなど、新旧をミックスする方法もアイデアのひとつ。丹地は、イスにファーを取り付けた自作のインテリアを披露していた。世界的な人気スポットに「アンティーク」というキーワードが共通しているワケ
またこうした手法は、新旧の文化の共存を得意とするフランスやアメリカにも学べる。パリのブランド「ASTIER DE VILLATTE」は、アンティークの食器のデザインを昔ながらの技法で再現。他方、1999年ニューヨークにオープンし、現在国内外に展開する「ACE HOTEL」は、古い建物を改装し、アンティークとオリジナルの小物を組み合わせたインテリアを特徴とする現代的なホテルだ。同地では「Anthropologieや「H.P.F, Christopher」など、新旧の家具や雑貨を扱う店舗も人気を博しており、今日のシティガイドの人気スポットに通底するキーワードのひとつとしての「アンティーク」が見えてくる。
「アンティーク家具の第一歩は、自宅での滞在時間が長い場所や直接手に触れるもの、たとえばダイニングテーブルなどがおすすめです」。丹地はそう話し、昔の文化や技術に触れることが現代の生活を考えるきっかけになると締めくくった。アンティーク家具は、きっと私たちの慌ただしい日常に新たな時間軸をもたらしてくれる。そんな発見をもたらした2時間だった。
- イベント情報
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- CLASS ROOM
『アンティークのある暮らし』 -
2016年4月20日(水)19:00~21:00
会場:東京都 恵比寿 CAFE PARK
講師:丹地宏太郎
- CLASS ROOM
- プロフィール
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- 丹地宏太郎 (たんち こうたろう)
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フランスを中心とするヨーロッパの新しいクリエーションと、スタイルや年代にとらわれずにセレクトしたユーズド家具、アート作品などを取り揃えるインテリアショップでバイヤーを担当。H.P.DECOでは、アート感のある暮らし」をテーマに「家で過ごす」というもう1つの時間のためのインテリアを提案している。
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