弓木英梨乃は、なぜ若くしてKIRINJIや土岐らに求められるのか?

シンガーソングライターから、堀込高樹や秦基博らに求められる「ギタリスト」へ

8月7日、関交協ハーモニックホールにて、実に6年ぶりとなる弓木英梨乃のソロライブ『弓木流』が開催された。2013年に新生KIRINJIのメンバーとなった現在の彼女のイメージは、いわゆる「ギタ女」だろう。かつてはYouTubeにアップされたギターセミナーにおけるアニメ『けいおん!!』の楽曲“GO! GO! MANIAC”の演奏動画も話題を呼んだが、今ではKIRINJIのみならず、秦基博、土岐麻子、柴咲コウ、吉澤嘉代子など、様々なタイプのアーティストをサポート。中学からTHE BEATLESをコピーしまくる一方、スティーヴ・ヴァイやスティーヴィー・レイボーンといったギタリストに憧れ、ギターインストも作り続けてきた彼女のプレイは、今多くの人から求められている。

しかし、もともと彼女のキャリアはシンガーソングライターとしてスタートしていた。高校生のときに出場したコンテストでのグランプリ受賞を経て、まだ19歳だった2009年に発表したメジャーデビューシングル“LφST[ロスト]”は、いきなり映画の主題歌に起用されるなど、華々しいデビューを飾っていたのだ。

しかし、周囲からの大きな期待は、まだ若かった弓木にとって大きなプレッシャーとなり、結局数枚のシングルをリリースしたのち、オリジナルアルバムを発表することなく、「シンガーソングライター」としての活動はストップ。それでもギターが好きで、曲を作ることが好きで、試行錯誤の末にたどり着いたのが、現在の活動スタイルなのである。そんなシンガーソングライター時代以来となった今回のソロ公演は、これまでの活動を踏まえつつ、新たな一歩を示すものとなった。

歌ものとギターインストを織り交ぜた『弓木流』

1stステージと2ndステージの入れ替え制で行われた『弓木流』は、この日のために書き下ろした新曲7曲を演奏すると共に、昔から大ファンだったというつじあやの、現在サポートを務める土岐麻子を各回のゲストに迎えるという構成。サポートには共にKIRINJIとして活動する楠均(Dr)、土岐のサポートで共演しているSchroeder-Headzの渡辺シュンスケ(Key)、弓木とはデビュー前からの付き合いだという御供信弘(Ba)と、様々なタイミングで出会った凄腕たちが参加し、しっかりと脇を固めた。

左から:渡辺シュンスケ、弓木英梨乃、御供信弘、楠均
左から:渡辺シュンスケ、弓木英梨乃、御供信弘、楠均

オープニングのMCが流れ、ステージの幕が上がると、まずは弓木が一人でステージに立ち、早速ギターソロを披露。ピンクのワンピースにポニーテールという可愛らしい格好ながら、ゴリゴリと巧みに速弾きをする、そのギャップはやはり彼女の大きな魅力だ。

弓木英梨乃

ソロの途中でメンバーが加わり、軽快なポップナンバーの“カレーマンのベルト”、ミディアムバラードの“その子の恋”と歌ものを続け、さらには弓木がアコギ、御供がウッドベースに持ち替えて、渡辺のピアニカをフィーチャーしたジャズ / カントリー調のインスト“Forest Girl in 避暑地”へ。シンガーソングライターとして、ギタリストとして、独自のポップミュージックを追求してきた弓木英梨乃という音楽家のベーシックが、序盤からわかりやすく伝えられていった。

 

つじあやのや土岐麻子らとの共演で垣間見えた、プロデューサーとしての資質

一方、新たな弓木像を示したのが中盤のゲストゾーン。この日は「ゲストの普段は見られない部分を引き出す」がテーマだったそうで、弓木が提案したカバー曲をゲストが歌うというコーナーがあり、つじはキリンジの“アルカディア”、土岐はレベッカの“結接蘭 破接蘭”を披露。さらに、ゲストのオリジナル曲を弓木が大胆にアレンジし、つじの“月が泣いてる”はお得意のジャズ / カントリー調に、土岐の“How Beautiful”は3拍子の原曲を4拍子に変え、楽曲の新たな魅力を引き出していた。ここではシンガーソングライターでもギタリストでもない、「プロデューサー」としての弓木が垣間見えたと言えよう。

つじあやの
つじあやの

右:土岐麻子
右:土岐麻子

「KIRINJIのアルバム用に書いたんですけど、不採用になったのでここでやります」と堂々話して笑いを誘った2曲も面白く、ファンキーなカッティング主体の曲が最後にワルツへと展開する“キャベツのようなもの”も、変拍子を交えた“夕暮れカラス”にしても、弓木のオリジナリティーと、「KIRINJIがこういう曲をやったら面白いんじゃないか」というプロデューサー目線が上手く混ざったような良曲。また、弓木といえばやや天然な愛されキャラも大きな魅力だが、三人の先輩ミュージシャンを上手くいじりながらMCを進めていく様からは、人の扱いの上手さが感じられ、人柄的にもプロデューサー的な資質があるのではないかと感じられたのだった。

デビュー曲が予言していた「今日」、音楽家・弓木英梨乃の新たな始まり

最後に弓木は翌日の8月8日に26歳の誕生日を迎えること、7年前のデビュー後はまったく売れなくて悩み、音楽は趣味にしようと思ったこともあったが、それでもギターを弾き続ける中で、いろんな人と出会って何とかやって来れたということを話し、「今が一番楽しい」と笑顔を見せた。そんなMCに続き、この日のラストナンバーとして披露されたのは、デビューシングル“LφST[ロスト]”のカップリングに収録されていた“PRIDE”。

夢に描いた今日は少し違ってるけど
胸を張ってあの日を語れる そんな今日に出会えてよかった

そう、彼女は何も失ってなどいなかった。これまでの経験すべてを糧にして、音楽家・弓木英梨乃の新たな人生が、この日からまた始まったのだ。

 

弓木英梨乃

イベント情報
『弓木流 vol.1』

2016年8月7日(日)
会場:東京都 新宿 関交協ハーモニックホール
ゲスト:
つじあやの(1stステージ)
土岐麻子(2ndステージ)

弓木英梨乃
『「やさしく弾こう★エレキギター」発売記念 インストアミニライブ』

2016年8月28日(日)
会場:東京都 ミュージックランドKEY渋谷店1F 特設会場

『初心者向けエレキギターセミナー』
2016年9月18日(日)
会場:山梨県 島村楽器 イオンモール甲府昭和店

『「やさしく弾こう★エレキギター」発売記念 インストアミニライブ』
2016年9月24日(土)
※大阪にて開催。詳細後日発表

KIRINJI
『KIRINJI TOUR 2016』

2016年9月22日(木・祝)
会場:石川県 金沢 AZ
料金:オールスタンディング6,480円(ドリンク別)

2016年9月23日(金)
会場:京都府 磔磔
料金:オールスタンディング6,480円(ドリンク別)

2016年9月25日(日)
会場:宮城県 仙台 CLUB JUNK BOX
料金:オールスタンディング6,480円(ドリンク別)

2016年9月28日(水)
会場:東京都 お台場 Zepp Tokyo
料金:全席指定7,020円(ドリンク別)

2016年10月1日(土)
会場:北海道 札幌 PENNY LANE 24
料金:オールスタンディング6,480円(ドリンク別)

2016年10月8日(土)
会場:鹿児島県 CAPARVO HALL
料金:全席自由6,480円(ドリンク別)

2016年10月10日(月・祝)
会場:福岡県 福岡イムズホール
料金:全席指定7,020円

2016年10月15日(土)
会場:愛媛県 松山 WstudioRED
料金:全席自由6,480円(ドリンク別)

2016年10月16日(日)
会場:岡山県 CRAZYMAMA KINGDOM
料金:全席自由6,480円(ドリンク別)

2016年10月26日(水)
会場:愛知県 名古屋 ダイアモンドホール
料金:全席指定7,020円(ドリンク別)

2016年10月27日(木)
会場:大阪府 なんばHatch
料金:全席指定7,020円(ドリンク別)

2016年10月30日(日)
会場:東京都 品川 ステラボール
料金:全席指定7,020円(ドリンク別)

2016年10月31日(月)
会場:東京都 品川 ステラボール
料金:全席指定7,020円(ドリンク別)

Base Ball Bear
『Base Ball Bear Tour「バンドBのすべて 2016-2017」(仮)』

※弓木英梨乃は全36公演にサポートギターとして参加

2016年11月11日(金)
会場:東京都 下北沢GARAGE

2016年11月12日(土)
会場:愛知県 名古屋DIAMOND HALL

2016年11月23日(水・祝)
会場:福井県 福井CHOP

2016年11月25日(金)
会場:石川県 金沢AZ

2016年11月26日(土)
会場:長野県 松本Sound Hall a.C

2016年12月3日(土)
会場:山口県 周南rise

2016年12月4日(日)
会場:島根県 松江AZTiC canova

2016年12月6日(火)
会場:京都府 京都磔磔

2016年12月9日(金)
会場:埼玉県 HEAVEN'S ROCK さいたま新都心 VJ-3

2016年12月11日(日)
会場:神奈川県 横浜BAY HALL

2016年12月17日(土)
会場:福島県 郡山HIP SHOT JAPAN

2016年12月18日(日)
会場:宮城県 仙台darwin

2017年1月7日(土)
会場:香川県 高松DIME

2017年1月8日(日)
会場:高知県 高知X-pt.

2017年1月14日(土)
会場:茨城県 水戸LIGHT HOUSE

2017年1月15日(日)
会場:栃木県 HEAVEN'S ROCK Utsunomiya VJ-2

2017年1月21日(土)
会場:長崎県 長崎DRUM Be-7

2017年1月22日(日)
会場:福岡県 福岡DRUM LOGOS

2017年1月27日(金)
会場:千葉県 千葉LOOK

2017年2月4日(土)
会場:鹿児島県 鹿児島SR HALL

2017年2月5日(日)
会場:熊本県 熊本B.9 V2

2017年2月11日(土)
会場:三重県 四日市Club Chaos

2017年2月12日(日)
会場:静岡県 静岡UMBER

2017年2月17日(金)
会場:岡山県 岡山IMAGE

2017年2月18日(土)
会場:広島県 広島CAVE-BE

2017年2月25日(土)
会場:愛媛県 松山サロンキティ

2017年2月26日(日)
会場:徳島県 徳島club GRINDHOUSE

2017年3月4日(土)
会場:岩手県 盛岡CLUB CHANGE WAVE

2017年3月5日(日)
会場:青森県 青森Quarter

2017年3月9日(木)
会場:北海道 帯広Rest

2017年3月11日(土)
会場:北海道 札幌PENNY LANE 24

2017年3月12日(日)
会場:北海道 旭川CASINO DRIVE

2017年3月18日(土)
会場:群馬県 高崎club FLEEZ

2017年3月19日(日)
会場:新潟県 新潟LOTS

2017年3月24日(金)
会場:大阪府 なんばHatch

2017年3月29日(水)
会場:東京都 ZEPP TOKYO

料金:スタンディング4,500円(ドリンク別)

プロフィール
弓木英梨乃
弓木英梨乃 (ゆみき えりの)

2歳半からバイオリンを始め、音楽のキャリアをスタートさせる。2009年、シンガーソングライターとしてメジャーデビュー。年齢とルックスからはギャップさえ感じさせる、テクニカルかつ、時に激しいギタープレイでも注目を浴びる。2012年よりライブサポートやレコーディング、ギタリストをメインに活動を始める。2013年夏より6人編成となった新生KIRINJIの正式メンバーとなる。個人としても、シンガーやアイドルへの楽曲提供、アレンジ制作を行うなど、その活動の幅を更に広げている。最近では、秦基博のライブやツアー、土岐麻子のライブに参加。



記事一覧をみる
フィードバック 11

新たな発見や感動を得ることはできましたか?

  • HOME
  • Music
  • 弓木英梨乃は、なぜ若くしてKIRINJIや土岐らに求められるのか?

Special Feature

Crossing??

CINRAメディア20周年を節目に考える、カルチャーシーンの「これまで」と「これから」。過去と未来の「交差点」、そしてカルチャーとソーシャルの「交差点」に立ち、これまでの20年を振り返りながら、未来をよりよくしていくために何ができるのか?

詳しくみる

JOB

これからの企業を彩る9つのバッヂ認証システム

グリーンカンパニー

グリーンカンパニーについて
グリーンカンパニーについて