音楽とカルチャーの祭典で繰り広げられた、このひ限りのライブと映像体験
スペースシャワーTVが主催する音楽とカルチャーの祭典『TOKYO MUSIC ODYSSEY』が今年も開催され、3月初めの1週間にわたって様々な企画が展開された。
その幕開けを飾ったのが、3月3日に渋谷WWW Xで行われた『SOUND & VISION』。「MUSIC×CREATIVE」をテーマに掲げ、音楽と映像とアートが一体となったこのイベントでは、クリエイターとのコラボレーションによって、DAOKO、HIFANA、きのこ帝国の3組が、この日だけのスペシャルなライブセットを披露。また、会場のロビーにはVR映像作品を体験できるブースが設置され、RADWIMPSの野田洋次郎によるソロプロジェクトillionのステーションIDや、水曜日のカンパネラの野外ライブをVRゴーグルで楽しむことができた。
10代最後のファンタジックなライブを披露したDAOKO
ライブアクトのトップバッターはDAOKO。彼女はライブを「総合芸術」と捉え、普段からステージとフロアの間に紗幕を下ろし、様々な映像を映し出すというクリエイティブな演出を行っている。この日は、LITEのVJなどを手掛けるKezzardrixと、プロダクションチームbackspacetokyoとのコラボレーションによって、リアルタイム生成によるモーショングラフィックス映像を使った演出が展開された。
1曲目の“かけてあげる”では、DAOKOがステッキを持ち、<魔法にかけてあげる>という歌に合わせてステッキを振ると、ファンタジックなグラフィックが現れる。また、“水星”ではDAOKOを包む水のドームが、サビで大きなミラーボールに変化したり、“ShibuyaK”ではGoogle Mapのごとく渋谷の街並みが平面と立体を行き来したりと、ダイナミックな動きはインパクト抜群だ。
さらに、“歌舞伎町の女王”では、普段のDAOKOのライブにも近い、デザインされた歌詞が映し出され、ラストはDAOKOが振り子の真ん中に立って、“ないものねだり”を披露。多彩な映像とライティングによる、あっという間の7曲だった。
ちなみに、DAOKOはこの日の翌日に20歳の誕生日を迎えたため、この日が10代最後のライブ。<迷子のオトナたちが 子供になりたがっている 迷子の子供たちが オトナになりたがっている>という歌詞に合わせて左右に揺れる振り子は、まさにオトナと子供の狭間にいたDAOKO自身を表したものだったのだろう。
鎮座DOPENESSも登場。いつまでも光る発想とユーモアに溢れるHIFANA×CRVJ
続いて登場したのは、普段からタッグを組むHIFANAとクリエイティブプロダクションCRVJによるコラボレーション。プログラミングやシーケンスを一切使わずに、サンプラーの手打ちでビートを叩き出し、さらには音と同期した映像が加わる手法はやはり面白い。
HIFANAは活動を開始した1998年から基本的にはこのスタイルを貫いていて、手法的にはオールドスクールだと言ってもいいだろう。しかし、技術が時代によって移り変わっても、発想やユーモアは古びないということを、彼らのステージは教えてくれる。なお、ライブ後半ではスペシャルゲストとして鎮座DOPENESSが登場。複数台のiPhoneによって撮影された姿がスクリーンに映し出される中、“Wake Up”“Mr.Beer”で会場を大いに盛り上げた。
きのこ帝国×MITCH NAKANOがフェティッシュに映し出した女性と花
HIFANAのライブ後は、昨年12月のデビュー記念日に3DVRでの生配信が行われた宇多田ヒカルのネットイベント『30代はほどほど』のメイキング映像が、4月のスペースシャワーTVでの本放送に先駆けて上映された。
ラストに登場したのはきのこ帝国。この日は雨のパレード、Gotch、DYGLなどのアーティスト写真やミュージックビデオを手掛ける新進気鋭の写真家 / 映像作家MITCH NAKANOとのコラボレーションが行われた。DAOKOやHIFANAが普段から映像を用いたライブを行っているのに対して、映像を用いたきのこ帝国のライブというのは、非常にプレミア度の高いものだったと言えよう。
1曲目を飾ったのは、ライブではなかなか聴くことができない“FLOWER GIRL”。きのこ帝国とMITCH NAKANOは、イベントに先駆けて行われた対談(きのこ帝国×MITCH NAKANO 初のコラボで表現する「死生観」)で、「花に死生観を投影する表現」という点において意気投合していたが、MITCH NAKANOらしい白を基調とした映像美の中、白人女性が手にしていたのは、やはり花であり、そこにはメッセージ性があったはずだ。
また、特にストーリー性があるわけではなく、2人の女性の様々な姿がフェティッシュに映し出されて行く映像は、ロードムービー的な感覚があり、もともとこの会場がミニシアターだったことを思い出させたりもした。
“MOON WALK”“LAST DANCE”と続いて、最後に演奏されたのは、対談でMITCH NAKANOが「一番好き」と言っていた“足首”。この曲もやはり、<街を抜けて花を探している>という歌詞が印象的だ。
そういえば、宇多田ヒカルの『Fantôme』や、その収録曲である“花束を君に”も、彼女の死生観が表れた曲であり、そんなリンクもこの日のライブを特別なものにしていたと言えるかもしれない。そして、この日のイベントの成功は、アーティストとクリエイター同士の花束を贈り合うようなリスペクトこそが、何より重要な鍵であったように思う。
- イベント情報
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- 『TOKYO MUSIC ODYSSEY 2017』
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2017年3月2日(木)~3月8日(水)
- 『SOUND & VISION』
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2017年3月3日(金)
会場:東京都 渋谷 WWW X
ライブ:
きのこ帝国×MITCH NAKANO
DAOKO×Kezzardrix+backspacetokyo
HIFANA×GRVJ
上映:
『behind the scene-宇多田ヒカル30代はほどほど。』
『「illion × SPACE SHOWER TV 「Told U So」ステーションID」3DVR ver.』
- 番組情報
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- スペースシャワーTV
『TOKYO MUSIC ODYSSEY 2017 SPECIAL』 -
2017年3月30日(木)22:30~23:30
- スペースシャワーTV
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