Awesome City ClubのCD作品、ルミネのショーウィンドウ、ライブイベントが連動する新たな試み
4月5日に新宿LUMINE 0で『FIND NEW FUTURE NIGHT』が開催され、アートディレクター・YOSHIROTTENが空間プロデュースを手掛けた会場を舞台に、メインアクトのAwesome City Clubをはじめ、BOMI、Licaxxxがライブを繰り広げた。
LUMINE 0は昨年3月に新宿駅新南エリア、「NEWoMan」の5階にオープンしたルミネ初の直営イベントホール。「JAPAN CREATIVE TERMINAL」をコンセプトに掲げ、ファッションショー、演劇、展示会、セミナーなど、様々な目的で利用されているこの会場は、新宿の新たな情報発信基地となりつつある。
LUMINE 0 ラウンジ風景(撮影:Tetsuya Yamakawa)
今回のイベントはルミネの春キャンペーン「FINE NEW FUTURE」の一環として行われたもので、YOSHIROTENが手掛けたショーウィンドウの世界を現実化し、体験できるというもの。グラデーションが特徴的なライティングと、「街」を模したミニマルなデザインによって構成されたウィンドウのBGMとして、Awesome City Clubの“Cold & Dry”が使われていた。
その“Cold & Dry”を含むAwesome City Clubの最新作『Awesome City Tracks 4』のアートワークも、YOSHIROTTENが担当。2020年の東京オリンピックに向けて、再開発の進む現在の東京都市部のいたるところで見られる工事用の白壁に街のイメージを投影したアーティスト写真、その街をエディットしてビジュアル化したジャケット、そして、今回のルミネのショーウィンドウは全てが連動し、未来のイメージを作り上げているのだ(対談記事:YOSHIROTTEN×Awesome City Club ルミネを舞台に作品を創作)。
Awesome City Club『Awesome City Tracks 4』(Amazonで見る)
華やかなラウンジにて、近未来的なフード&ドリンクを提供
実際にLUMINE 0に足を踏み入れると、床には銀色のアルミが敷き詰められ、光のグラデーションが場内を包む。どこにでもありそうな植木の周りを、立体的にデザインされた蛍光管が囲み、アナログ的な手触りのある、不思議な近未来空間が作り上げられていた。
また、ラウンジの奥には「FIND NEW FURTURE」のロゴが映し出され、その下には数種類のドリンクやフードが。このメニューも非常にユニークで、シャーレのような器に入ったクスクスのサラダや、イカ墨の粉をまぶした真黒なフルーツフライ、グラスの上にカラフルな綿菓子を乗せたスパークリングワインに、LEDの光る氷が入ったカクテルなど、見た目からして楽しいフードやドリンクをお客さんが各々手にすることで、会場内にはさらに華やかなムードが生まれていた。
ざくろ&クランベリージュース(撮影:Tetsuya Yamakawa)
二人の女性が、会場をさらに華やかに彩った
光に包まれたラウンジに対し、透明のフィルムを挟んだライブスペースはシンプルな照明でまとめられ、ここでの主役はあくまでアーティスト。
ラウンジとライブスペースを区切るフィルム(撮影:Tetsuya Yamakawa)
オープニングのDJを務めたLicaxxxに続いて、昨年自伝的なコンセプトアルバム『A_B』を発表したBOMIは、新進気鋭の劇団「□字ック」とコラボレーションした2月のワンマンライブにも通じる、演劇的な要素も盛り込んだステージでオーディエンスの目を惹きつけた。『A_B』は“Cold & Dry”同様にTokyo Recordingsによるプロデュースで、彼らのような若いクリエイティブ集団の存在も、未来を感じさせると言えよう。
Awesome City Clubは、ライブハウスのライブとは違うステージで驚かせた
メインアクトのAwesome City Clubのライブは、ステージ後方にショーウィンドウと同じ映像を流しながらの“Cold & Dry”でスタート。atagiがセクシーかつソウルフルな歌声を響かせると、“Movin’on”“what you want”と続けていく。いつもよりも砕けた雰囲気でコール&レスポンスを求めるなどして、徐々にフロアを温めていった。
Awesome City Club。ショーウィンドウと同じ映像が流れた“Cold & Dry”を演奏中のワンシーン(撮影:Tetsuya Yamakawa)
“青春の胸騒ぎ”では、YOSHIROTTENが撮影と編集を手掛け、雪景色の中でメンバーの素の表情が楽しめるこの曲のミュージックビデオのアウトテイクと思われる映像が流れる。
その後、長い冬の終わりを告げるかのように“4月のマーチ”へ。ここまでatagiに比べてやや控えめだったPORINが「私の出番!」と言わんばかりにステージ前方でパフォーマンスを繰り広げると、フロアの温度が明らかに一段上がり、続く“Gold”では自然と手拍子が起こるなど、バンドがすっかり場の空気を掌握したことが伝わってくる。
PORINが「歌舞伎町とかがあって、新宿は怖いイメージもあったけど、こんな素敵な空間があるのを知って、新宿という街が好きになりました」と語ると、テンションの上がってきたatagiはルミネの思い出話の流れから、過去の恋愛経験を赤裸々に告白。場内がアットホームな雰囲気になると、次の“Don’t Think, Feel”では勢いそのままにステージを降り、フロアでパフォーマンス。すると、ノリのいいお客さんが切れ味のあるダンスを披露して、場内からの喝采を浴びるという微笑ましい一幕もあった。
ファッションブランド「GAP」とのコラボレーションビデオ最後はAwesome City Clubが提示する「2010年代デュエットソングの決定版」である“今夜だけ間違いじゃないことにしてあげる”を披露し、大盛り上がりでライブは終了。いつも以上に人間臭い側面も垣間見えたこの日のステージからは、やはり未来を作るのは人間の熱量そのものなのだということが改めて感じられた。
2020年に向けて変化が起きつつある、「カルチャーと都市」の関係性
「都市と音楽の未来」をテーマに、3月上旬の1週間、渋谷を舞台に開催されたスペースシャワーミュージック主催の『TOKYO MUSIC ODYSSEY』や、同じく渋谷を舞台に10年以上の歴史を誇り、「CREATION FOR THE FUTURE」を掲げる老舗の都市型フェス『SYNCHRONICITY』など、今改めて都市と文化の関係性が見直され、そこから未来を見出そうとする動きが活発になってきている。
今回の「FIND NEW FUTURE」もまた、そんな動きの中のひとつであり、ルミネという、街の生活導線の中にある商業施設がそこに参画するということは、とても意義のあることだったと言えよう。そして、「街」を活動の基盤に置き、最新作の中で<いつかじゃなくて 明日じゃなくて 今すぐに飛び立って 未来は百花繚乱>(“Action!”)と歌うAwesome City Clubがそこで大きな役割を果たしたことは、彼らにとってもとても意味のあることだったに違いない。
- イベント情報
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- 『FIND NEW FUTURE NIGHT』
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2017年4月5日(水)
会場:東京都 新宿 LUMINE 0
出演:
Awesome City Club
BOMI
Licaxxx
スペースデザイン:YOSHIROTTEN
- プロフィール
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- Awesome City Club (おーさむ してぃー くらぶ)
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2013年春、それぞれ別のバンドで活動していたatagi(Vo,Gt)、モリシー(Gt,Synth)、マツザカタクミ(Ba,Synth,Rap)、ユキエ(Dr)により結成。2014年4月、サポートメンバーだったPORIN(Vo,Syn)が正式加入して現在のメンバーとなる。「架空の街Awesome Cityのサウンドトラック」をテーマに、テン年代のシティポップをRISOKYOからTOKYOに向けて発信する男女混成5人組。2015年、ビクターエンタテインメント内に設立された新レーベル「CONNECTONE(コネクトーン)」の第一弾新人としてデビュー。2017年1月25日に、4thアルバム『Awesome City Tracks 4』をリリースし、4月より全国ワンマンツアーを開催。
- BOMI (ぼーみ)
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2012年6月に日本コロムビアよりミニアルバム『キーゼルバッファ』でメジャーデビュー。リード曲"キューティクル・ガール"が、スペースシャワーTVが主催する、その年最も輝いていたミュージックビデオ「Music Video Awards 50」にノミネートされる。1stアルバムからは、楽曲"エクレア"を映画『今日、恋をはじめます』に提供し、好評を博す。これまでにフルアルバム2枚、ミニアルバム4枚(デビュー前のタワーレコード限定版を含む)、昨年にはお面(グッズ)での配信シングル『Y.O.U』を発表している。2015年は『OTOSATA Rock Festival』、『ROCK IN JAPAN FESTIVAL』、『SUMMER SONIC』などのフェスへ出演。2016年12月に、アルバム『A_B』を発表した。
- Licaxxx (りかっくす)
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1991年、東京生まれ。DJ。BSスカパー『BAZOOKA!!!』(月曜21:00)、J-WAVE『SONAR MUSIC』(水曜23:30)、『SPUR』音楽連載を務める。
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