音楽も笑いも飲み込んだ、縦横無尽なポップユニット・4×4=16
今月も音楽アプリ「Eggs」とCINRAの共同主催による無料音楽イベント『exPoP!!!!!』がTSUTAYA O-nestにて開催された。
トップバッターは、かつてOK?NO!!というインディーポップバンドに在籍していた上野翔と菅野明男の二人からなるユニット、4×4=16(シシジュウロク)。
Cymbalsを敬愛する「ポップス職人」上野と、シティボーイズ(大竹まこと、きたろう、斉木しげるによるコントユニット)といとうせいこうを敬愛する「言葉の人」菅野による、音楽も笑いも飲み込んだクロスカルチャー感満載のポップユニットだ。
ステージにはバックバンドを従えた6人編成で登場。冒頭の“4×4=16 through”から、ファンキーな人力ヒップホップグルーヴに乗せて繰り出される、菅野と上野によるラップのたたみかけが最高! 音源では清水裕美(ex.lylical school)がボーカルを務める“Goodbye Girl”は、清水の代わりにキーボードの深澤希美(austines)が可愛らしく清廉とした歌声を披露。
ラップもギターポップも好き勝手に横断しながら、「これが俺たちのカルチャーだ!」と力強くぶつけてくるさまが最高だった。
結成8か月で破格の存在感を示したNewspeak
2番手に登場したのは、今年3月結成ながら既に大きな話題を集める4ピースバンド、Newspeak。
イギリスでのバンド経験もあるフロントマンのReiと、元go!go!vanillasのryoyaを中心に、CurtissのYohey、カナダ人ドラマーのStevenが加わった、音楽性も佇まいもワールドワイドなポップバンドだ。
1曲目の“Media”から、そのスケールの大きさを見せつけていく演奏を披露。抒情的なメロディーラインはColdplayのようなスタジアムバンドやThe Chainsmokersのような現代のエレクトロニックポップに通じる普遍性を感じさせる。
特にラストに演奏された“July”の、空間的な広がりを見せるグルーヴ感、そして徐々に熱量を増していくエモーションがそのまま演奏と歌となって放出されていくさまは圧巻。この国のバンドシーンにおいて他に類を見ない器のデカさを見せつけた。
「ポップ」と「ドープ」を行き来する、踊Foot Works
3番手は、「もっとPOPをDOPEに、ずっとDOPEをPOPに」をテーマに掲げるヒップホップユニット、踊Foot Works。
いい意味で歪で、エクレクティックな感性を持った音楽性はもちろん、処女作『ODD FOOT WORKS』をフリー配信にてリリースするなど、その活動スタンスにおいても新時代的な感性を持った4人組だ。
DJ、ギター、ベース、MCという一風変わったバンド編成から放たれるのは、ビートもメロディーも言葉も思想もロマンも、全部が一緒くたになったかのように重く深い音塊。トラックの上に重ねられるギターとベースの「圧」によって、音源ではポップに響いていた楽曲たちも、ライブではよりドープに、まるでフロアの「空気」を作っていくかのような濃密さで表現される。
そんなドープな音世界の中心で、凛とした佇まいで自由な言葉を重るラッパー、Pecoriのカリスマティックな存在感もまた印象的だった。
高度なスキルと軽妙な遊び心を併せ持つセンスフルなクルー、SUSHIBOYS
4番手は、埼玉出身、もともと同じコンビニで働いていたという3MCから成るヒップホップクルー、SUSHIBOYS。
今年、デビューEP『NIGIRI』がリリースされたのだが、作品のリリース前から岡崎体育に注目アーティストとしてツイートされ、SEEDAをして「和製のODD FUTURE」と言わしめた今大注目の一組だ。
プロフィールによれば「牧場で放牧されている羊からインスパイアされた」という、その自由なラップスタイルがSUSHIBOYSの持ち味。メロウでソウルフルな“軽自動車”や、『アルプスの少女ハイジ』のOPテーマをサンプリングした“ひつじTRAP”など、多様なトラックの上を縦横無尽に乗りこなす巧みなフロウは、高度なスキルと軽妙な遊び心を感じさせる。
海外のトレンドもふんだんに取り入れながら、そこにSUSHIBOYS独自の「いなたさ」をあえてぶち込んでいく、そのバランス感覚に圧倒的なセンスを見た。
鬼才・常田大希を擁し、ただならぬ色気を纏う逸材・King Gnu
この日のトリを飾ったのは、東京藝術大学出身のクリエイター・常田大希を中心に結成されたバンド、King Gnu(キングヌー)。
今年は1stアルバム『Tokyo Rendez-Vous』をリリースし、さらに常田は、米津玄師『BOOTLEG』の楽曲制作にも参加したことも話題に。確実に、この先の国内シーンのキーとなっていくであろう存在だ。
King Gnuの魅力、それは一言でいえば「色気」だろう。THE YELLOW MONKEYにも通じる歌謡性の高い洗練されたメロディーと歌、ロックもインダストリアルもソウルもヒップホップも昇華した、モダンかつソリッドなサウンドプロダクション――そうした全てから滲み出る猥雑な色気は、この日の超満員のO-nestのフロアにも浸透していた。
特に本編ラストを飾ったKing Gnu流のゴスペルとも言うべき“サマーレイン・ダイバー”の、「聖」も「俗」も飲み込んで降り注ぐような音の洪水は、崇高さすら感じさせるほどに素晴らしかった。
事前に予約を締めきるほどに多くの人たちが集まったこの日の『exPoP!!!!!』。音楽性も佇まいも五者五様ながら、確実に新しい価値観を持ったアーティストたちの台頭を感じさせる、素晴らしく雑多で、刺激的な一夜だった。
- イベント情報
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- 『Eggs×CINRA presents exPoP!!!!! volume104』
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2017年12月21日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
mei ehara
入江陽
大比良瑞希
高井息吹
リツキ
- プロフィール
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- 4×4=16 (ししじゅうろく)
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4×4=16(シシジュウロク)。2010年頃結成、2016年から断続的に活動開始。神奈川県出身の上野翔(ラップとギターと作曲)と菅野明男(ラップと作詞)の2人組。前身バンド「OK?NO!!」解散後はSoundCloudへの音源公開を中心に活動。上野は静岡朝日テレビのインターネットTV番組『Aマッソのゲラニチョビ』の音楽担当や、別バンド「毛玉」、「箱庭の室内楽」のメンバー(Gt)としても活動中。ゆるめるモ!などのバックバンドも務める。Cymbalsや□□□に憧れながら、4畳半の自室で日々Macに向かい楽曲制作中。
- Newspeak (にゅーすぴーく)
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John Doe Tokyo活動休止後のReiが2014年にリバプールに渡英。現地英国人とThe Never Never Clubを結成しリバプールやロンドンを拠点にライブ活動を行う(その間BBCへの出演も)。2016年に帰国したReiと、古くから親交があったRyoya(ex.go!go!vanillas)の再会により話はバンド結成へと向かう。ベースにはCurtissのYohey、そして惜しまれつつも解散となったKando Bandoのフロントマンであり音楽プロデューサーのStevenがドラムに加わりNewspeakは結成された。
- 踊Foot Works (おどふっとわーくす)
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2020年型のグルーヴとポップネスをリプレゼントするTOKYO INV。もっとPOPをDOPEに、ずっとDOPEをPOPに。Pecori(Rap)、Tondenhey(Gt)、fanamo'(Cho)の3人で2016年末始動。今年3月にアルバム『ODD FOOT WORKS』をシェア。耳の早いリスナーのみならず多くのアーティストからも注目を集める。5月に下北沢GARAGE『PACHINKO』で初ライブ。6月にサポートメンバーだったSunBalkan(Ba)が正式加入。7月と8月、MONO NO AWARE、呂布、LEO今井らを招き初の自主企画『TOKYO INV.』を開催。7/28、『FUJI ROCK FESTIVAL'17』に出演。8/9リリースの『WHERE, WHO, WHAT IS PETROLZ?? - EP』に参加。
- SUSHIBOYS (すしぼーいず)
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日本のヒップホップグループ埼玉県出身。ファームハウス、エビデンス、サンテナの3MC0DJ構成のグループ。結成前は3人が同じコンビニエンスストアで働いていた。店員だったファームハウスが廃棄になった鉄火巻きをほおばるサンテナとエビデンスを見てクルー結成を決意。当初はハーコーマナースタイルを前面に出したスーパーギャングスタスタイルで活動していたが、ある日訪れた牧場にて、放し飼いにされていた羊の自由なスタイルに衝撃を受け、スタイルを大幅に変更し現在の変幻自在なスタイルを確立。誰もマネできない楽曲やMVが話題になりCDをリリースする前にもかかわらずヤフーニュースに取り上げられ岡崎体育がツイートしラッパーのSEEDA、SALUやLick-G、唾奇らが高評価している。初となるEP『NIGIRI』は即完売、iTunes HIPHOPチャートで初登場1位を記録。Apple Music の「今週のNEW ARTIST」に選出された。渋谷タワーレコードでのインストアLIVEには見れない人が出るほどSUSHIBOYSを見に多くの人が訪れ、会場を寿司詰め状態にした。人を羊に変え常に新鮮なネタを届ける今話題の3MCがSUSHIBOYSである。
- King Gnu (きんぐ ぬー)
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東京藝術大学出身で独自の活動を展開するクリエイター常田大希が2015年にSrv.Vinciという名前で活動を開始。その後、メンバーチェンジを経て、常田大希(Gt.Vo.)、勢喜遊(Drs.Sampler)、新井和輝(Ba.)、井口理(Vo.Key.)の4名体制へ。SXSW2017出演後、米国7ヶ所を廻るツアーを敢行。帰国後の2017年4月、バンド名をKing Gnuに改名し新たなスタートをきった。夏にはFUJI ROCK FESTIVAL、RISING SUN ROCK FESTIVALにも出演し急激に注目を集める音楽集団King Gnu。Spotify バイラルチャートで早くもTOP5入りした「Tokyo Rendez-Vous」、King Gnu独自のポップセンスと色気が凝縮されたLIVEでのキラーチューン「Vinyl」を収録した待望の1st ALBUM「Tokyo Rendez-Vous」を10月25日にリリースし、iTunes オルタナティブランキングで1位を記録。2018年1月28日に渋谷WWWで開催される初のワンマンLIVEのチケットが即完売するなど、トーキョー・ニュー・ミクスチャースタイルと称されるサウンドで急激に注目を集めている。
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