驚きづくしだった、WANIMA幕張公演。ド派手な演出より映える3人

計4.5万人を動員、幕張メッセ2デイズ公演

WANIMAの成長スピードがすさまじい。今から3年前の2015年4月、彼らはPIZZA OF DEATHからリリースされた1stミニアルバム『Can Not Behaved!!』のレコ発ツアーファイナルを渋谷TSUTAYA O-WEST(キャパ最大600人)で迎えた。それからほぼ2年後にはさいたまスーパーアリーナでの初ワンマンを成功させ、その1年後、つまり今年は幕張メッセ2デイズをソールドアウト。しかも夏には、7万人動員予定のメットライフドーム2デイズまで控えている。こんな状況、3年前には誰も想像していなかった。近年のロックシーンでは異例のスピードで、熊本出身の3人組は国民的ロックバンドへの階段を駆け登っている。

『WANIMA Everybody!! Tour』幕張メッセ公演(2018年4月22日。撮影:瀧本JON...行秀)

『WANIMA Everybody!! Tour』幕張メッセ公演(2018年4月22日。撮影:瀧本JON...行秀)
『WANIMA Everybody!! Tour』幕張メッセ公演(2018年4月22日。撮影:瀧本JON...行秀)

「ポップスター」と「ロックスター」の両方の地位を築き上げた

彼らが特異なのは、ロックバンドとして数多くのステージに立ち、全国を駆けずり回りながらも、地上波のテレビ番組やCMのタイアップなどを通じて、ポップアイコンとしてもお茶の間に浸透していることだ。以前であれば、テレビにばかり出ているロックバンド=セルアウト、というレッテルが貼られることもあった。しかし、WANIMAの場合そうはならない。その理由のひとつは、あらゆるメディアへのべつ幕なしに露出しているように見えて、しっかりと自分たちで取捨選択をした上でその一つひとつに全力で取り組んでいるのが伝わってくるからだ。これができるロックバンドはそういない。

ロッテ「爽」CMに、“シングル”が起用されている

WANIMAと大量の爽
WANIMAと大量の爽

さらにもうひとつの理由として挙げられるのが、WANIMAの歌詞だ。メンバーはどん底で打ちひしがれ、挫折を繰り返し、そこから這い上がってきた人間たちで、音楽がなかったらどうなっていたかわからないような危うさすらある。だからこそ生まれる歌詞は、かつての3人と同じような境遇に喘いでいる若者や大人の心に響きまくっている。

今やライブ以外の印象だけでも語られてしまうくらい、ポップスターとしても一定の地位を築いた彼らの現状に、「本当にすごい存在になったもんだ」と感心する。なぜなら、その一方でWANIMAというバンドは、いまだかつてないスケールの、とんでもないロックエンターテイメントを全国各地で繰り広げている「ロックスター」だからだ。

ライブバンドとしては異例ともいえる、何でもありのド派手な演出

日本のロックシーンにおいて、ライブハウスにこだわるバンドほど、大会場でのライブでも演出をシンプルにする傾向がある。近年は、必ずしもそうと言い切れない状況になってきているとは言え、やはり珍しい。しかしWANIMAは、『WANIMA Everybody!! Tour』のアリーナ編からセンターステージを導入し、銀テープを飛ばすキャノン砲、スモーク、炎、レーザーなど思いつく限りの特効を盛り込んだ、ド派手なショーを展開してきた。照明や演出に一流のスタッフを迎え、上記の要素を決して演出過多にならないように振り分け、バンドを盛り立てた。

WANIMAのこれまでの躍進を考えると、今回の演出面でのスケールのデカさには納得がいく。ライブがより重視されるようになってきた昨今において、こういった方向性は非常に正しいと言えるからだ。

『WANIMA Everybody!! Tour』幕張メッセ公演(2018年4月22日。撮影:瀧本JON...行秀)

『WANIMA Everybody!! Tour』幕張メッセ公演(2018年4月22日。撮影:瀧本JON...行秀)
『WANIMA Everybody!! Tour』幕張メッセ公演(2018年4月22日。撮影:瀧本JON...行秀)

ド派手な演出に全く飲み込まれないどころか、しっかり自分たちのものとして活かしきっているのが今のWANIMAのすごさ。この数年間、ほぼ毎日時を共にし、スタジオでの練習を重ねまくっているという彼らのアンサンブルは、とんでもない音塊となって、ステージ中央から360度に向けて放射される。筆者はセンターステージ編初日となる大阪公演を3月11日に観たが、この時点ですでに完成されたショーを見せていた。しかし、4月22日に行われた幕張メッセ公演2日目では、さらに洗練されたエンターテイメントが繰り広げられたのだった。

今後のWANIMAのキーとなり得る、2つの楽曲

これまでに数多くの名曲を生み出してきたWANIMA。今後、セットリストの重要な一角を担うのは、この日もライブ終盤にプレイされた“シグナル”だろう。WANIMAらしい真っ直ぐなメロディーと力強いメッセージは、この日一番の大合唱を巻き起こした。

もうひとつ挙げなくてはならないのが“Drive”。WANIMA初の映画主題歌として書き下ろされたミディアムナンバーだ。一般的にはあまり知られていないかもしれないが、WANIMAはメンバー全員が高いレベルの歌唱力を誇る。この楽曲でも冒頭から3声の美しいハーモニーが響き渡った。2時間半もの間ずっとシンガロングし続け、暴れまくっていたフロアも、このときばかりは演奏にじっと耳を傾けていた。

映画『OVER DRIVE』の主題歌に、“Drive”が起用されている

WANIMAにしかできない、ステージパフォーマンス

ちなみに、この日会場に詰めかけたのは2万を超える大観衆。その大部分を占めていたのは元気な若者だ。自分の世代を代表するバンド、自分の想いの全てを託したくなるようなバンドに熱狂する姿は実にまぶしかった。MCで、ドラムのFUJI(32歳)よりも年下の人は? と問うた際、ほぼ全員かと思うぐらいの手が挙がったのには圧倒された。

『WANIMA Everybody!! Tour』は、オープニングからエンディングの最後の1秒まで楽しめる構成になっていたのが本当に見事だった。そして、そつなくこなすのではなく、全方向に気を配りながらも随所に無駄な動きやおふざけを交え、それでいて全くバテることなく2時間半を完走した3人のパフォーマンスが、むき出しの人間性が、とにかくすごかった。

KENTA(撮影:瀧本JON...行秀)
KENTA(撮影:瀧本JON...行秀)

KO-SHIN(撮影:瀧本JON...行秀)
KO-SHIN(撮影:瀧本JON...行秀)

FUJI(撮影:瀧本JON...行秀)
FUJI(撮影:瀧本JON...行秀)

WANIMAは様々な先輩バンドから影響を受けているが、決して先人の手法をなぞっているだけではない。自分たちの頭で考え、トライ&エラーを繰り返し、2010年代も後半に差し掛かった日本のロックシーンにこれまでになかった新しい道を築き上げようとしている。

イベント情報
『WANIMA Everybody!! Tour』

2018年4月22日(日)
会場:千葉県 幕張メッセ

WANIMA
『Drive』

2018年5月16日(水)配信リリース

『WANIMA Everybody!! Tour Final』

2018年8月25日(土)、8月26日(日)
会場:埼玉県 所沢 メットライフドーム
料金:7,400円(税込)
※アリーナスタンディングエリアは小学生以下入場不可

プロフィール
WANIMA
WANIMA (わにま)

KENTA(Vo, Ba, ワンチャン)、KO-SHIN(Gt, Cho, 無口)、FUJI(Dr, Cho, 食いしん坊)。2010年結成。東京都在住熊本県出身3ピースロックバンド。2014年10月「沢山の人達にWANIMAの音楽を届ける!!」をモットーに1stミニアルバム『Can Not Behaved!!』でデビュー。2015年11月に1stフルアルバム『Are You Coming?』をリリース。オリコンデイリーアルバムチャートでは11月4日付で1位、週間チャート4位を獲得し、iTunesチャートでも首位を獲得。2017年3月にはわずかデビュー後2年5か月で、10万人を超える応募が殺到した、さいたまスーパーアリーナの初ワンマンを大成功させ、日本を代表するロックバンドへと急成長を遂げた。そしてWarner Music Japan内レーベル:unBORDE(アンボルデ)と新たにタッグを組み勢いは更に加速する。2018年1月17日に全14曲を収録した待望のメジャー1stフルアルバム「Everybody!!」(読み:エビバデ)をリリースし、オリコンウィークリーチャート1位やiTunes週間アルバムランキング1位などを獲得!!様々な分野で開催しがちな日本代表WANIMAの勢いは止まらない、まさにチカラー!!である。



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