スパルタと自由は紙一重 プログラミングは子どもの柔軟性を育てる

誰でも使えるプログラミング機材「micro:bit」って? 人生初のプログラミングに挑戦

2018年11月10日、11日の2日間に渡り開催されたCINRA.NET主催イベント『NEWTOWN2018』。元小学校を会場とする本イベントプログラムのひとつとして、マウスコンピューター協力のもと、小学生を対象としたプログラミングワークショップが行われた。 ワークショップに参加したのは、小学2年生から5年生までの子どもたち。そしてカルチャー / クリエイティブシーンを伝えるwebメディア『milieu』編集長の塩谷舞、マルチクリエイターのはましゃかの2人も、体験レポーターとして参加した。
今回のワークショップの様子とインタビューを収めたムービー。子どもたちの楽しそうな笑顔が印象的

塩谷舞
はましゃか

今回のワークショップは、ノートパソコンを使って「micro:bit(マイクロビット)」と呼ばれる小さなコンピューターにプログラミングを実装し、ラジコンカーを操作してサッカーの対戦をするというもの。micro:bitは英国放送協会(BBC)が主体となって開発した教育用マイコンボード(プログラムを実行するためのマシン)で、さまざまな国で子ども向けの授業に使われている。

今回講師を務めた、株式会社スイッチエデュケーション取締役社長の小室真紀(写真右)

スパルタで進むワークショップに負けじと、創造性を爆発させる子どもたち

会場にはひとり1台のノートパソコンが用意されていたが、席に着くなりさっそくパソコンを触り始める子もいれば、不思議そうに見つめるだけの子もおり、一人ひとりの性格やパソコンへの習熟度はバラバラ。そんな状況でワークショップは始まったため、まずはパソコンの使い方から説明するのかと思いきや、いきなりプログラミングの入力からスタートしたことには驚いた。プログラミングと言っても、用意されたメニューから命令の種類を選んで、数値を入れていくだけなのだが、それにしてもスパルタすぎるのではないだろうか。

生まれて初めてPCを触る子も。子どもたちの緊張感が伝わる

そう思っていたのも束の間、始めはドラッグ&ドロップさえおぼつかなかった子どもたちが、見よう見まねで、みるみるうちにパソコンを使いこなしていく。キーボードの使い方は一切説明していないのに、講師から「ここに100と入力してください」と言われれば、自発的に状況判断をしてキーボードを打ち始めるのだ。なかには普段からパソコンを使っているはずの塩谷やはましゃかよりも早くプログラミングを終えた子もいたほどだった。

そして講師は、ラジコンカーの右車輪を動かすプログラミングを教えると、今度は「左車輪は自分でやってみてください」と突き放す。ここで興味深かったのは、Aボタンで右、Bボタンで左の車輪を動かすプログラミングをする子もいれば、Aボタンだけで両輪が動くようにして、Bボタンはバックに使う子もいたこと。答えはひとつではないのだ。思い通りのプログラミングができ、笑顔を浮かべる子どもたちの姿が印象的だった。

プログラミングのあとは、工作の楽しみも。稼働力や防御力、さまざまな側面からデザインを考える

ひと通りラジコンカーを動かせるようになるまで、わずか40分ほど。ここからはロボットサッカーをするために、ラジコンカーを改造する時間となった。画用紙や割り箸、ストロー、針金などを使って、各々が自由に自分のマシンを改造したり、デコレーションしていく。さらに、自力でプログラミングをする場合は、モーターを追加することも許された。

塩谷、はましゃかの「大人チーム」もデコレーションにかなりこだわっていた様子

多くの子どもたちがボールに触れられる面積を広げる改造をするなか、モーターの追加にチャレンジした子も2人。さすがに自力では解決できず、講師からサポートを受けていたが、先端にコップをつけて回転させたり、コップを上下させてボールをキャッチできるようにしたり、それぞれが想像力を働かせながら改造を行っていた。また、試合で有利になることよりも装飾に力を入れる子もいれば、「相手を破壊するんじゃなく妨害しようと思った」と改造のコンセプトを語る子もでるなど、個性が発揮された時間でもあった。

ラジコンカーに割り箸とコップを取り付け、ボールをキャッチできるように改造していた

ついに試合開始! ロボットサッカーで、教室内も大盛り上がり

工作の時間が終わると、最後は4チームに分かれてロボットサッカーの総当たり戦。試合では車両同士が激しくぶつかってひっくり返る場面も多く、予想以上の迫力に見守っていた親たちも大騒ぎとなった。改造が思い通りに機能した子もいれば、うまく操作できずにオウンゴールをしてしまう子もおり、得点が入るごとに一喜一憂。しかし、表向きはゲームを楽しんでいるように見えるが、別の視点から見ればプログラミングや改造の実証実験でもあり、パートナーとの役割分担やコミュニケーションを学ぶ機会でもあったと思う。

車体が激しくぶつかり合った結果、コートから脱輪してしまうことも

全試合を終えたあとは、優勝チームだけでなく、個性的な改造を行った子やデコレーションに力を入れた子も表彰。約2時間半に渡るワークショップは終了した。

子どもたちの親からは、「子どもが試行錯誤している様子は授業参観では見られないので、新しい息子の一面が見られてよかったです」「パソコン自体、ほとんど触ったことがなかったのに、楽しそうにやっていたので驚きました。案外ちゃんとできてて、やってみないとわからないなと」といった感想も寄せられた。親子ともに、新しい発見の得られたワークショップになったようだ。

最後に、子どもたちと一緒になって楽しんでいた塩谷、はましゃかの両名にも感想を聞いた。

塩谷:私は小学5年生からパソコンを触っていたので、小学校や中学校でのパソコンの授業が暇で仕方なかったんです。色を塗ったり文字を書いたり、すぐにできてしまうけど、他のことをやったら怒られる。そういう原体験があったんですけど、今日のワークショップでは発展の天井がないように感じました。できる子はどこまでも伸びるし、ついていけない子も最低限サポートしてくれる。それぞれの能力に合った育て方をしていたのが、めちゃくちゃいいなと思いました。

はましゃか:プログラミングはしたことがなかったので、絶対に無理だと思っていたんですけど、お子さんたちに教えてもらいながら学ぶことができました。子どものほうが覚えが速いんですよ! 後半はプログラミングそっちのけで工作に力を入れていたので、デザイン賞をもらえるかなと期待していたんですけどダメでした(笑)。

ワークショップを見ていて感じたのは、子どもは興味を持つ道具を与えれば、あとは勝手に学んでいくということ。始めは「もっと基礎から教えたほうがいいのでは?」と心配してしまったが、それは完全に杞憂に終わった。ちなみにmicro:bitは2,000円程度で手に入る(ラジコンカーは別売り)。子どもにパソコンを買うなら、一緒にmicro:bitも与えてみてはいかがだろうか?

なお、マウスコンピューター特設サイトでは、塩谷舞と今回講師を務めた小室真紀との特別対談記事も掲載している。こちらもあわせてチェックしてほしい。

サイト情報
「NEWTOWN micro:bit ワークショップ」特設サイト

今回のワークショップの内容をより詳しく、初めてのパソコンの選び方も含めてご紹介します。また、参加頂いた塩谷舞さん・講師の小室真紀さんに今後の教育の観点でお話いただいたインタビューも公開中!

商品情報
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プロフィール
塩谷舞 (しおたに まい)

アート、デザイン、音楽、映画、ファッション、文学、映像、舞台、デジタルアート、伝統芸能など、あらゆるジャンルを取り扱うカルチャーWebマガジン『milieu』の編集長。1988年、大阪・千里生まれ。京都市立芸術大学 美術学部 総合芸術学科卒業。大学時代にアートマガジン『SHAKE ART!』を創刊、展覧会のキュレーションやメディア運営を行う。2012年にCINRA入社、Webディレクター・PRを経て、2015年からはフリーランスとして執筆・司会業などを行っている。

はましゃか

1994年生まれ、多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業。イラストレーターとしてのほか、モデル、役者、コラムニストなど様々な形で表現者として活躍するマルチクリエイター。写真に手描き文字とイラストを組み合わせた「#しゃかコラ」がInstagram(@ shakachang)を中心に話題沸騰中。



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