イベントの中止や外出自粛要請で多くの文化施設が苦境に
新型コロナウイルス流行の影響で、相次ぐイベントの延期や中止、政府や自治体からの不要不急の外出自粛要請などを受け、多くの文化施設が苦境に立たされるなか、感染拡大の防止に向けた客入れの停止を行なうため、政府からの助成金交付を求める運動「#SaveOurSpace」の発起人らによる記者会見が行なわれた。
ライブハウスやクラブ、劇場といった文化施設は、公演の中止や営業自粛による売り上げの急落に直面しているほか、感染拡大防止に務めたくても、その損失補償が提示されていないために営業を続けざるを得ない状況にも置かれている。
これらの施設が速やかに休業できるよう助成金の交付を求め、3月27日夜から署名運動がスタート。署名では、施設の維持費、従業員の給与、イベントの製作経費(出演料、音響、照明)、これまでに中止にした公演の実損額への助成を求めた(参考:コロナ感染拡大防止への文化施設閉鎖に伴う、助成金交付に向けた署名活動)。
助成金の交付を求める「#SaveOurSpace」の署名に30万筆以上が集まる
「#SaveOurSpace」の会見は、感染拡大を防ぐため、配信のみで行なわれた。登壇者は発起人に名を連ねる篠田ミル、スガナミユウ(LIVE HAUS)、Mars89と賛同人のLicaxxx。全員マスクを着用し、それぞれが一定の距離をとって着席する形で実施された。
会見では10万筆という当初の目標を大きく上回り、3月31日昼の時点で30万2536筆の署名が集まったことが明かされた。
発起人のひとりである篠田ミルは、「我々はクラブやライブハウスや劇場などの文化施設を代表して、安心してお店を閉めて自宅で待機するための助成金を求めます」と「#SaveOurSpace」の活動の趣旨を説明。
この問題は文化施設だけでなく、飲食店、宿泊施設、その他の娯楽施設や商業施設といったスペースにも関わることであるとし、「我々の活動をきっかけに、あらゆるスペースを営む人々が安心してお店を閉め、自宅で待機するための政府からの支援の道が開かれることを望みます」と述べた。
また「他業種と比べて集団感染の発生の可能性が高い場所であることは事実であり、今、感染の拡大を防ぐことはとても重要。文化施設の従業員、出演者、関係者で一丸となって新型コロナウイルスの感染拡大収束へ尽力する」と強調した。
「人間にとって欠かすことのできない存在である文化を育んできたのは、大小様々な文化施設」
さらに「文化は我々が人間であること自体を下支えする、人間が人間であるために必要不可欠なもの。我々人間が他の動植物や機械と違うのは、文化があるがゆえです」「文化の力を信じている」と文化の価値について言及。
「人間にとって欠かすことのできない存在である文化を守り育んできたのは、大小様々なライブハウス、クラブ、劇場などの文化施設。我々人間を人間たらしめる文化、ひいてはそれ守り育ててきた私たちの空間である文化施設に対するご理解とご支援をいただければ」と呼びかけた。
国が補正予算案を協議中。「とにかくたくさんの声を届けたい」
30万以上の署名を集めた今後の動きについては、明日4月1日よりこの署名と嘆願書を持って国会や議員会館のもとを訪れ、説明を行なっていくという。議員や行政の知見を得ながら、実効的な政策に落とし込むための活動を展開する。ドイツなど海外の事例も参照しながら、実現可能な道を模索していく。
また同じく発起人のひとりで、ライブハウスを経営する立場から窮状を説明したスガナミユウは「国が協議している補正予算案が今週中にもまとまるという流れがある。とにかくたくさんの声を届けたい」「予算を検討する段階において一つのカテゴリーに入るように、というのを一番に考えている」と話した。
「苦しんでいるのは文化施設だけでない」。他のスペースと連帯する動きも模索
また篠田は「自粛と経済の狭間で苦しんでいるのは文化施設だけでない」とし、今後、声をあげている他のスペースとも情報交換をしながら、連帯する動きも模索する考えを示した。
さらにこの活動を通じて得たコネクションや発信力を活用し、新型コロナウイルス感染拡大防止のための啓蒙活動を行なうほか、アメリカをはじめ世界各国のミュージシャンがオンラインフェスなどを通じて音楽業界に金銭を還元しようという動きがあり、そういった動きからも声がかかっていることを明かした。
「もう一度人が集まれる場所にさせてください」
賛同人であるLicaxxxは「現場で活動することを軸に置いている人が、この先困窮することは目に見えている。それよりも危惧しているのは、ライブハウスやクラブ、文化施設の経営が立ち行かなくなること。もし事態が収束してもそういった場所がなくなってしまうのは、音楽をやる者としても、愛する者としても危機的状況だと感じている」と危機感を示し、発起人の1人であるMars89は「日本では文化や芸術、エンターテイメントは命に関係ないから、補償は後回しという声もある。だが海外いる友人からは今、家にこもって生活するなかで映画や音楽、芸術にすごく救われているという話を聞く。文化や芸術がどういうところから生まれたのかということをもう一度よく考え、現場があることの大切さを噛みしめられたらと思う」と話した。
また会見では多くのミュージシャンやライブハウス経営者など、賛同人のコメントが読み上げられたほか、発起人の1人で、先日国会議員や菅官房長官と面談を行なったDJ NOBUから寄せられたメッセージが読み上げられた(全文はこちら)。
最後にスガナミは「今まさに世界中の人々が感染拡大の防止に取り組まなくてはいけない。そのなかで、できるだけみんなで手を取り合えるような方法を模索していけたらなと思ってる」と話し、「何も努力せずに助成だけ受けたいと思っているわけではありません。来ていただける方や出演していただける方、そういった方々の健康のこと、従業員や自分たちのことも考えて変わっていきたいと思っている。ぜひ、もう一度人が集まれる場所にさせてください。助成をご検討お願いいたします」と訴えた。
※記事掲載後、画像を追加しました。
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