2万人以上の視聴者が集った市民主体のオンラインイベント
2021年に市制50周年を迎える多摩市主催の『みんなでつくる多摩市ONLINE文化祭』が11月7日(土)に開催され、2万人以上の視聴者を集めた。
TAMA-BASE(多摩市市制施行50周年記念市民事業実行委員会)のYouTubeチャンネルにて無料配信された同イベントは、新型コロナウイルスの感染拡大により地域の学校行事やイベント、演劇といった文化発表の機会が失われたことを受け、オンラインを通じて市民が発表する場を提供することで、市制50周年に向けてのステップとなることを目標に実施されたもの。
プログラムには、50以上の市民団体が参加したほか、眉村ちあきやザ・なつやすみバンドによるライブや、バストリオによる短編映画、DÉ DÉ MOUSEとホナガヨウコによる『オンライン盆踊り2020』など、プロのアーティストによるパフォーマンス、さらに多摩センター駅前のイルミネーション点灯の実況や、サプライズで打ち上げ花火も行われるなど、およそ7時間にわたる「盛りだくさん」の内容となった。
当日は、多摩センターに今年オープンした研修施設「LINK FOREST」の大ホールを使って行われる生配信と、あらかじめ制作された映像コンテンツ、そして各中継場所からの映像が、TAMA-BASEの配信する3つのYouTubeチャンネルから配信された。筆者は「LINK FOREST」で行われたパフォーマンスの現場に立ち合い、ch1から配信されるその模様を取材しながらch2、ch3で配信される収録コンテンツを時折視聴した。最大1500名まで収容できる大ホールに到着すると、そこにはライブを行うためのステージと、『オンライン盆踊り2020』のためのやぐら、そしてパフォーマンスの模様を撮影・配信するためのたくさんの機材が設置されていた。
オンラインとオフラインを繋ぎながら模索された、新しい文化祭の形
12時になり「開会式」が行われ、司会を務めるお笑いコンビのぺんとはうす、東落合小学校合唱団、ハローキティ、ぐでたまと共にステージに立った多摩市の阿部裕行市長が挨拶。「市民、アマチュアがメインでこうした規模のイベントは他にないものだと自信を持っています。ここでしか見られないコラボレーションやサプライズ企画もご用意しています。ぜひ今日は皆さん、最後まで楽しんでください」と視聴者に呼びかけた。
前列左から、ハローキティ、ぐでたま、阿部裕行(多摩市長)、ぺんとはうす。後列が東落合小学校合唱団 / ©'76, '13, '20 SANRIO APPROVAL No. P121116-1 S/D・G
東落合小学校合唱団による合唱の後は、ch1にて「眉村ちあきのオンライン文化祭ライブ」が配信された。シンガーソングライター眉村は昨年、多摩センター駅周辺で行われた『NEWTOWN2019』にも出演。この日は「LINK FOREST」にて事前に撮影したライブ映像が配信されたが、ライブ中、視聴者に向けて様々な絵文字・顔文字をYouTubeのコメント欄に書き込むよう促し、それに応える視聴者たちとの「時空を超えたコール&レスポンス」を成立させるなど、収録配信ならではの斬新な試みを行っていた。
一方、ch2、ch3では、国士舘大学・男子新体操部による華麗な演技や、桜美林大学・落語研究部が市内の老人ホーム、養護施設などを回りながら磨き上げた古典落語、TAMA-BASEが多摩市のキーパーソンを迎えて街の未来を語る「多摩市未来会議」など、様々な学校・市民団体による映像コンテンツが配信されていた。
また今回、多摩市立落合中学校や多摩市立和田中学校、多摩市立多摩中学校など、数多くの中学校から吹奏楽部が参加していたのも印象的だった。部員たちによる趣向を凝らした挨拶や、こだわりを感じる演目など、どの映像にも熱量が感じられ、ある意味では「卒業アルバム」のような大切な思い出の品が、図らずもコロナ禍によって作り出されたことに不思議な感慨を覚えた。
またTAMA-BASEの代表で、本イベントの制作にも深く関わっている瀧口寿彦もぺんとはうすとトークを繰り広げ、ユーモアを交えながら各プログラムの見どころや、制作の裏話、イベントに込めた思いなど熱く語っていた。
15時からは、ザ・なつやすみバンドと落合中学校吹奏楽部によるスペシャル・コラボライブが「LINK FOREST」にて生配信された。2組による共演は、『NEWTOWN2019』以来2度目となる。まずはザ・なつやすみバンドが“赤いワンピース”や“なくてはならない”“ファンファーレ”を含む5曲を演奏。スティールパンやフルート、トランペットによる心地よいフレーズが会場いっぱいに広がった。そして、颯爽と登場した落合中学校吹奏楽部とともに“せかいの車窓から”“S.S.W(スーパーサマーウイークエンダー)”の2曲を演奏し、最後は全員で“毎日がなつやすみだったらいいのになぁ”とシンガロング。YouTube上のコメント欄も賑わい、老若男女、プロとアマ、リアルとオンラインなど、数多くの垣根を越えて音楽を楽しむその様子に、胸が熱くなった。
あたりが少し暗くなり始めた頃、多摩センター駅前ではイルミネーションの点灯が行われ、その様子がch1にて生中継された。今年の点灯は児童館とのコラボ企画として、子どもたちが倒したドミノが最後に多摩センター駅前にあるイルミネーションを点灯させるというコンテンツに。市内にある10もの児童館で、それぞれ制作されたドミノ倒しの映像が次々と繋がり、最後イルミネーションに光が灯った瞬間、会場からは「おお!」というどよめきの声が上がった。
さらにこの日のサプライズ企画として、聖蹟桜ヶ丘の多摩川河川敷からおよそ10分にわたって大きな花火が打ち上がり、その様子も生中継された。次々と打ち上がる色とりどりの花火が画面に映し出され、会場にいた撮影・配信スタッフも思わず作業の手を止め魅入っていた。
本イベントのクライマックスは、DÉ DÉ MOUSEとホナガヨウコによる『オンライン盆踊り2020』。“light night dance”や“花火少女、宇宙”“back to love”など代表曲が流れ出し、それに合わせてDÉ DÉ MOUSEが太鼓をドドンガ、ドンと叩き始めると、楽曲は一気に「盆踊り」仕様に。ホナガヨウコが振り付けたキュートで楽しいダンスを、Zoomで参加した視聴者と一緒に踊るユニークで画期的な試みだ。最初はその様子を遠巻きに見ていた東落合小学校合唱団の生徒たちや、直前のプログラムに出演していた地域の踊り手たちも、DÉ DÉ MOUSEに促されて一緒に踊り始めるという、まさにこの日のフィナーレに相応しい空間となった。
ハローキティ、ぐでたまも参加 / ©'76, '13, '20 SANRIO APPROVAL No. P121116-1 S/D・G
閉会式では、冒頭に東落合小学校合唱団が歌った“この街の地図”を、作曲者で、多摩市にもゆかりのあるShifoとともに合唱し、この日のイベントは全て終了。開会式で阿部市長が述べていたように、『みんなでつくる多摩市ONLINE文化祭』はまさに市民やアマチュアがメインで作り上げた画期的なもの。コロナ禍により多くの文化発表が奪われてしまったが、市をあげて開催された今回のイベントによって、来年の市制50周年記念に向けての「カルチャーを止めない」という機運もきっと高まったことだろう。
- イベント情報
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- 『みんなでつくる多摩市ONLINE文化祭』
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2020年11月7日(土)12:00~19:00にTAMA-BASEのYouTubeチャンネルで配信
プログラム:
DÉ DÉ MOUSEとホナガヨウコ『オンライン盆踊り2020』
バストリオ『縄文のはじまりとおわり』
永山フェスティバル実行委員会『永山ソング』
TAMA映画フォーラム実行委員会『第30回映画祭 TAMA CINEMA FORUM』
多摩センターイルミネーション『イルミネーション点灯式』
and more
料金:無料
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