ロバート・カークマン&トニー・ムーア&チャーリー・アドラードによる同名アメリカンコミックを、映画『ミスト』のフランク・ダラボンがテレビドラマとして企画した『ウォーキング・デッド』は、「覚悟」以外の何物でもない傑作テレビドラマだ。
ホラー映画の人気ジャンルのひとつである、ゾンビ。しかし連続テレビドラマでそれを題材にするのは挑戦であり、かつ無謀だ。ゾンビを出すからには、悲惨な死体は必要不可欠で、血や残酷描写なしでは成立しえないからだ。そもそも死者が生き返った世界というのは、いわゆる終末である。家族や恋人、知人がゾンビと化してしまう世界に明るさなどなく、同時に生き残った者のサバイバルが始まり、通常の世界では隠されていた人間の欲や闇が丸裸にされてしまう。ゾンビとの戦いもあるが、生き残った者同士の醜い争いも生まれるだろう。一方で、残酷描写や重いトーンを無視して作るとするなら、確実にどっちつかずの作風となり駄作の烙印を押される。テレビでは絶対にできないことをしなければ成立しないジャンルなのだ。
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これらの設定を無視することなく、真正面からやってのけた人がいた。脚本家兼監督であり、大のホラー映画フリークであるフランク・ダラボンだ。彼が製作総指揮を務め、第1話の監督も務めた『ウォーキング・デッド』には覚悟が宿っている。ゾンビメイクや残酷描写には一切手抜きがないし、少女ゾンビの脳天を打ち抜くシーンを丸々見せるテレビドラマなんて考えられない。ゾンビを切り刻んで自分たちの身体に腐肉を塗りつけるというシーンも原作同様に平然とやってのける。下半身が切断され、内臓を引きずりながら這いまわる女ゾンビなど、放送禁止レベルだろう。生き残りグループ内での争いや、ゾンビウィルスに感染しての自殺、ゾンビになってしまった親族を殺さねばならぬ葛藤など、ドラマ部分でも楽観は一切排される。
残酷だが、それだけではないのが本作のミソであり、さすが名脚本家・ダラボンが製作総指揮に入っただけのことはある。残酷かつ過酷であればあるほど、困難に負けずと立ち上がる人間たちの姿が尊く浮き上がり、何としてでも生き残ろうとする人間たちの生命力が、一筋の希望としてドラマを引っ張る。ヒーロー不在の、市井の人々たちによるサバイバルという点も親近感があり、感情移入しやすい。また原作コミックにはないオリジナルストーリー、オリジナルキャラを投入することによって登場人物たちを多角的に浮き上がらせ、立体感を持たせることに成功している。原作を余裕で超える、絶妙かつ説得力ある脚色は素晴らしい。仲たがいの結果、ダラボンが降板してしまったシーズン2にも、これらの覚悟が宿っていればいいのだが…。
- 作品情報
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- 『ウォーキング・デッド』(DVD)
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2012年2月24日発売
価格:9,975円(税込)
DABA-4135『ウォーキング・デッド』(Blu-ray)
2012年2月24日発売
価格:12,495円(税込)
DAXA-4135 - 『ウォーキング・デッド』
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ジョージア州の郊外にて保安官をしているリックは、逃走犯追跡中に犯人の発砲した銃弾に倒れ、瀕死の状態に陥ってしまう。無事意識を取り戻すのだが、都市は既に壊滅、「ウォーカー」と呼ばれる死人が徘徊する黙示録的な世界を目の当たりにする。妻と息子が行方不明であると知ったリックは、アトランタに軍の避難所があり、CDCと呼ばれる疾病対策センターが問題解決にあたっていることを偶然出会ったモーガン親子から聞き、アトランタへ向かうのだが、そこは既にウォーカーによって占拠された後だった…。
一方、リックの妻ローリや息子カール、リックの元同僚シェーンらは、市内から数マイル外れた採石場で他の生存者たちと共に避難キャンプを設置、無事生き延びていた。そして、市内のデパートに避難していた生存者たちにより偶然助けられたリックは、今度は自らリーダーとなり、彼らを導き市内を脱出、無事妻子との再会を果たす。
生存者たちはそれぞれの思いや葛藤を抱え、時には争いながらも次第に絆を深めていく。しかし、ウォーカーの魔の手はすぐそこまで迫っていた。絶望的に壊滅状態となり果てた世界の中で、彼らはどう生き抜いていくのか。そして、彼らが下したそれぞれの決断とはー?
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