ハルカトミユキが『シアノタイプ』の発表に伴うワンマンライブを、新代田FEVERで開催した。メジャーデビューというタイミングであることや、それによるメディアへの露出量の増加を考えると、FEVERというハコは今の彼女たちにとってやや小さいように思えたが、やはりチケットは早々にソールドアウトとなったようだ。
僕はこの日までにハルカトミユキのライブを2度観たことがあったのだが、その時点での僕から見た彼女たちの魅力というのは、まず第一にリリカルな美しいメロディーと、詩情あふれる歌詞との組み合わせであり、その次がサウンドメイキングと歌の力で、楽曲そのもののよさと比べると、ライブはまだ発展途上という印象が強かった。しかし、この日のライブは、バンドとしての基礎体力の向上がありありと感じられるものになっていた。
Syrup16gをはじめ、数多くのバンドで演奏するドラマーの中畑大樹をはじめとしたサポートメンバーの演奏は骨太だし、海外のインディーロック好きを公言するミユキのカラフルかつストレンジなサウンドの再現性も高い。おなじみになってきたミユキのダンスはさらに自由度を増して、独特の振付けを中畑と共に踊った“Hate you”は、シリアスな雰囲気のライブの中で、貴重ななごみの時間になっていた。そして、ハルカもまた歌い手としての存在感を増し、特に、少ない言葉に想いを込め、オーディエンスをグッと曲の世界に引き込む曲紹介は、詩人としてのハルカの真骨頂とも言えるほど、非常にかっこよかった。
しかし、彼女たちのライブが他とは替えの利かない唯一無二の空間だったかと言えば、現時点でそこまでは言い切れない。いわゆる大衆的な女性シンガーソングライターとも違うし、コアな音楽ファンが好むインディーバンドとも違う彼女たちの立ち位置というのは、どっちつかずの中途半端なものになってしまう危険性を常にはらんでいるということを、改めて感じる部分もあった。
ただ、それでも彼女たちに可能性を感じるのは、やはり瞬時に聴き手を魅了することのできるメロディーと言葉の力をすでに持っているからだ。この日のライブで言えば、1曲目の“消しゴム”や、“グッドモーニング、グッドナイト”といった、二人だけによる弾き語りで披露した曲の説得力が素晴らしく、これは凡庸なシンガーソングライターやインディーバンドが束になってかかっても敵わない、彼女たちのスペシャルな部分だと思う。
そう考えていくと、彼女たちはガツガツとライブを繰り返すというよりも、まずは楽曲の精度をさらに突き詰めて、それによってより多くの人々を巻き込むことで、遠くない将来にホールクラスでのライブを行うような、そういうタイプのアーティストになり得るのではないかと思う。ライブの現場も多様化していて、叩き上げのライブバンドがフェスでのし上がっていくのも1つの手なら、タイプこそ全く違えども、amazarashiのように最初から大きなステージを前提としたバンドもいる。シンセの多様な音色も、研ぎ澄まされた言葉も、ホールのクリアな音響で聴いたら、また違った広がり方をするはずで、それは単純にファンとして聴いてみたいという部分だったりもする。
年明けには東名阪のワンマンツアーが決定し、東京では2月8日に渋谷クラブクアトロでのライブが予定されている。今の彼女たちであれば、十分ハコの規模に見合ったライブができると思うが、必ずしも順番に規模を広げていかなくてもいいのではないか。シアノタイプカラーのハルカの衣装を見つめながら、僕はそんな青写真を思い描いていた。
- イベント情報
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- ハルカトミユキ ワンマンライブ
『シアノタイプ』 -
2013年12月10日(火)OPEN 19:00 / START 19:30
会場:東京都 新代田 FEVER
- ハルカトミユキ ワンマンライブ
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- ハルカトミユキ ワンマンツアー『青写真を描く』
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2014年2月1日(土)
会場:大阪府 Music Club JANUS2014年2月2日(日)
会場:愛知県 名古屋 ell.FITS ALL2014年2月8日(土)
会場:東京都 渋谷CLUB QUATTRO
- リリース情報
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- ハルカトミユキ
『シアノタイプ』(CD) -
2013年11月6日発売
価格:3,150円(税込)
AICL-25981. 消しゴム
2. マネキン
3. ドライアイス
4. mosaic
5. Hate you
6. シアノタイプ
7. 7nonsense
8. 振り出しに戻る
9. 伝言ゲーム
10. 長い待ち合わせ
11. ナイフ
12. Vanilla
- ハルカトミユキ
- プロフィール
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- ハルカトミユキ
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2012年終盤に突如現れた、新生フォークロックユニット、ハルカトミユキ。詩人・ハルカ(Vocal / Guitar)と奇人・ミユキ(keyboard / Chorus)のデュオ。1989年生まれの二人が立教大学の音楽サークルで知り合い、唯一「同じ匂いがする」とひかれあう。森田童子、銀杏BOYZ、Nirvanaを同時期に聴いていた「言わない」世代が静かに奏でるロックミュージック。2012年11月14日、『虚言者が夜明けを告げる。僕達が、いつまでも黙っていると思うな。』(H+M Records)でデビュー。iTunesが選出する2013年ブレイクが期待新人アーティスト「newARTIST2013」にも選ばれる。2013年3月13日、2nd e.p.『真夜中の言葉は青い毒になり、鈍る世界にヒヤリと刺さる。』(H+M Records)を発売。2013年11月6日に待望のメジャー移籍第1弾となる1stフルアルバム『シアノタイプ』を発売予定。
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