虎ノ門ヒルズに入居したIT企業がオフィスを公開した理由
藤子・F・不二雄プロと共同制作したキャラクター「トラのもん」も話題をさらった虎ノ門ヒルズ。商業ゾーンやオフィス、ラグジュアリーライフスタイルホテル「アンダーズ東京」などが入居するこの複合施設は、敷地内に森美術館が監修するアジアのアーティストの作品を配置するなど、単なる「商業施設」にとどまらないブランディングが特徴的。虎ノ門・新橋・霞ヶ関エリアを変えていくきっかけとなるような東京の新たなランドマークとなっています。
そんな虎ノ門ヒルズに、急成長著しいIT企業「cloudpack」(運営:アイレット株式会社)のオフィスが入居し、内覧会が開催されました。cloudpackは、アマゾン ウェブ サービス(米国Amazon.com社がウェブサービスの形態で提供しているITインフラサービス群の総称)における各種プロダクトの導入・設計・保守運用などクラウドコンピューティングのフルマネージドサービスですが、ITベンチャー企業がオフィス内を一般に公開するのは希な例。それもそのはず、オフィスのデザインを手がけたのは、アメリカの『THE INTERNATIONAL ARCHITECTURE AWARD 2010』に入選経験もある若手建築家・谷尻誠。通常のオフィスとは一線を画す、オフィス空間をレポートしてきました。
若き建築家・谷尻誠が見出した、オフィスとホテルの共通点
谷尻さんが手がける設計・デザインの根底には、「建築をベースとして、新しい考え方や新しい関係を発見していくこと」というコンセプトが貫かれています。個人邸宅や店舗はもちろん、瀬戸内しまなみ海道にオープンした、サイクリストのための複合施設「ONOMICHI U2」の設計を手がけるなど、公共スペースデザインでも注目を集めている谷尻さんが、cloudpackの新オフィスにもたらしたコンセプトは「海外のリゾートホテル」。デザインを依頼したアイレット代表取締役・齋藤将平さんもそのコンセプトに共感したそう。
「弊社はクラウドサービス&システムを提供する会社ですが、最も大切にしているのは対面のコミュニケーション。谷尻さんが挙げた『ホテル』というコンセプトは、僕の考えと非常に合っていました。というのも、オフィスは無機的に仕事をこなすだけの場所ではなく、社員とお客様へのホスピタリティーを大事にしながらコミュニケーションを密に図る場所だと思ってるんですよ」(齋藤)
オフィスを「ホテル」に見立てた谷尻さんは、どのようにしてその考えに至ったのでしょうか?
「オフィスとホテルには似てる機能が多いと思ったんです。まずどちらも、エントランスで受付し、待ち合わせをしますよね。会議や打ち合わせに出向くことは、ホテルのレストランやバーを訪れるのと似ているし、オフィスで自分の席に着く行為は、ホテルのフロントでキーを受け取って自分の部屋に入る行為に重ねられる。一方、オフィスで人を待つときはソワソワしますけど、ホテル風のロビーならくつろいで待つことができます。だったらオフィスもホテルのようにしてしまえばいい。そんな発想の転換が、オフィスにおける最大のホスピタリティーになると考えました」(谷尻)
出社が楽しみになる、「もうひとつの我が家」
その言葉通り、新オフィスの内装はIT系企業とは思えないウッディで温かな雰囲気に包まれています。隠れ家カフェのような入り口はcloudpackのロゴが入ったガラス張りの木製扉。その扉を開けると、ゆったりとくつろげるソファと手書きのメッセージが描かれた大きな黒板がゲストを出迎えます。
さらに、浴室をイメージした会議室を横目に進むと、廊下の突き当たりには「CIGARS」というネオンが掲げられたガラス張りの喫煙スペースが! オフィスの中にシガーバー? と驚かされます。
「喫煙者にとって喫煙室での雑談は、柔軟なアイデアが生まれる場であり、気軽なコミュニケーションを図れる時間。革張り椅子や、葉巻を飾った古家具調の棚などの調度品は『ホテル』をイメージして、谷尻さんにこだわっていただきました」(齋藤)
「僕だったら、友達に自慢したくなるようなオフィスで働きたいと思うんです。そうすれば、インナーブランディングであると同時に外へのブランディングにも繋がり、いい人材が集まるきっかけにもなる。その意味でも、今回のcloudpackさんのオフィスデザインは僕のこだわりの塊です」(谷尻)
「オフィスは居心地良くくつろげる場所であるべきです。毎朝、会社に行くのがイヤでは仕事をする気にもならないので、このオフィスは出社が楽しみになるような『もうひとつの我が家』を目指しました。デスクのあるワークスペースには靴を脱いで上がる仕様になっていますが、それも社員からの要望。自宅に帰ったようにリラックスできる空間を、みんなも求めているようです(笑)」(齋藤)
機能型オフィスとは、まったく趣を異にするcloudpack虎ノ門新オフィスは、谷尻誠というユニークな発想と齋藤社長の柔軟さで生まれた、新しいオフィススタイルの提案でもあります。「働きやすい空間とは?」「人が喜んで働きたくなるオフィスとは?」 、建築デザインという側面からだけでなく、cloudpackの今回の施策は、これからの産業振興にとっても意義ある試みといえるでしょう。
- イベント情報
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- cloudpack 虎ノ門ヒルズ新オフィス内覧会
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2014年8月22日(金)16:00~18:00
会場:東京都 cloudpack虎ノ門ヒルズ新オフィス
- プロフィール
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- cloudpack (くらうどぱっく)
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Amazon Web Services (AWS)の導入設計、環境構築、運用・保守までをトータルでサポートするマネージドホスティングサービス。EC2やS3をはじめとするAWSのプロダクトを、構築はもちろんのこと、24時間サポートや、サービス監視、バックアップなどの作業代行や技術サポートを行い、お客様の運用負荷を可能な限り軽減することを目指している。
- 谷尻誠 (たにじり まこと)
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1974年広島生まれ、建築家。Suppose design office 代表。広島・東京の2か所を拠点とし、住宅、商業空間、会場構成、ランドスケープ、プロダクト、アートの インスタレーションなど、仕事の範囲は多岐にわたる。現在、穴吹デザイン専門学校 特任講師 、広島女学院大学客員教授。
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