世界初ライブ開催。360°仮想空間でリアルとCGを同時に楽しむ、新しいエンタメの形

専用ゴーグルをつけて楽しむ、現実のステージとバーチャルCGがミックスされた世界初のライブ

新しい時代を予感させるテクノロジーにはワクワクさせられるものだが、近年、著しい成長を見せるのが、ヘッドマウントディスプレイを使った360°の3Dバーチャルリアリティー(VR)。同年3月にFacebookが買収した「Oculus Rift」をはじめ、仮想空間への没入度が従来より格段に向上した製品が今年から続々登場すると予測され、エンターテイメント界に革命が起こるのではとも言われている。

4月13日、東京・お台場地区にあるTFTホールで、このVR技術を活用した世界初の試み『MIXED REALITY LIVE!』が行なわれた。イベント名にある「MIXED REALITY(MR)」とはバーチャルとリアルを混在させた複合現実のこと。トヨタ「カローラフィールダー」のCMに出演する7組のアーティストの中から、PUFFY、加藤ミリヤ、清水翔太の3組が登場し、CM楽曲の“丘を越えて”のパフォーマンスを披露。観客はスマートフォンが搭載された専用ゴーグル(ハコスコ)を装着し、現実のステージとバーチャルCGがミックスされた映像を楽しんでいた。

『MIXED REALITY LIVE!』会場風景 撮影:三野新
『MIXED REALITY LIVE!』会場風景 撮影:三野新

今回のイベントで重要になってくるのが、「ハコスコ」(ハコ型スコープの略)と呼ばれる、ダンボールをフレームに使ったゴーグルだ。

スマホVR(バーチャルリアリティー)サービス・ハコスコ 撮影:三野新
スマホVR(バーチャルリアリティー)サービス・ハコスコ

これは、専用アプリやウェブサイトを開いたスマホを装着すると、360°のVR映像を見ることができるというもの。あえて簡単に言ってしまえば、周囲の視界をフレームでシャットアウトし、専用レンズを通してスマホの画面を見るための装置である。『MIXED REALITY LIVE!』で観客が体験するアーティストの映像はスマホのカメラを通した目の前の現実で、それ以外はCGで作られた仮想空間。そしてアーティストの歌声は、生音で直接耳に入ってくる。ちなみにハコスコは市販されており、ダンボール製ということもあって価格は1,000円(送料別)とお手軽だ。

現実と仮想がミックスされた世界だからできる、驚きの演出

我々記者陣はゴーグルは装着せず、肉眼でその様子を見つめるだけだったが、観客が専用ゴーグルを装着してVR空間が映し出されると、一斉に「おぉ~!」という声が場内に響き渡った。それぞれのハコスコに装着されたスマホはWi-Fiネットワークでサーバーから一斉制御され、デモンストレーションでマンモスやオーケストラのCGが映されると、「すご~い!」と手を伸ばしたり、その場でくるくるまわる人が続出。これだけでも抜群のエンターテイメント性が伝わってきた。

VRを体験する観客 撮影:三野新

VRを体験する観客 撮影:三野新
VRを体験する観客

そして音楽が流れ始めると、いよいよライブがスタート。しかし、PUFFYの二人がステージに現れても、なぜか観客はノーリアクション。数秒の間を置き、歌が始まる直前になって、ようやく「キャ~!」と歓声が広がった。実はこれ、ゴーグル越しには光の中から突如アーティストが現れるという仕掛けがされており、PUFFYがステージ中央に辿り着くまでは、ゴーグル越しの画面には登場していなかったのだ。現実と仮想がミックスされた世界ならではの演出だったといえるだろう。

『MIXED REALITY LIVE!』PUFFYライブ風景 撮影:三野新
『MIXED REALITY LIVE!』PUFFYライブ風景

VRを体験する観客 撮影:三野新

こうしてCGで作られた丘の上でPUFFYが歌い、清水翔太、加藤ミリヤとリレー形式で歌い継いで再び3組が出揃うと、今度は「みんなー、後ろを見てー」とPUFFYが呼びかける。観客が一斉に後ろを振り向くと、仮想空間では1台のカローラフィールダーが急接近。すると、目の前まで迫ったところで、カローラフィールダーが観客の頭上を飛び越え、360度の仮想空間の中で観客の周りをぐるぐる回るという演出が。大きなドリフト音とともに会場が白煙に包まれると、観客は「えっ、えっ!?」とくるくるまわりながら驚いている様子。白煙が引くと仮想空間の中には実車の新型カローラフィールダーの姿が。ここでゴーグルを外すと、さっきまでアーティストが歌っていたスクリーンが割れており、目の前には本物の新型カローラフィールダーが待ち構えているというオチだ。

会場に現れた新型カローラフィールダー 撮影:三野新

百聞は一見に如かず。『MIXED REALITY LIVE!』の模様が動画でも公開

会場内には至るところに幾何学模様が描かれたセットが配されていたが、これをスマホのカメラが認識することで観覧者の位置を特定し、その位置に合わせたCGを表示することで、場内のどこに立っても違和感なく現実と仮想空間がミックスするように調整したそうだ。

会場の至るところに幾何学模様のセットが設置されている 撮影:三野新
会場の至るところに幾何学模様のセットが設置されている

今回のライブイベントを手がけたのは、昨年末から今年初頭にかけて行なわれた『進撃の巨人展』の360°体感シアターでも注目を集めた制作会社、dot by dot inc.。通常、この規模の設営なら半日ほどで終わるものだが、このイベントのために飛行場の倉庫を借りて事前テストを行ない、さらに2日前から現場入りしてセッティングしたという。

『MIXED REALITY LIVE!』の開発を手がけたPARTY中村(中央)、dot by dot inc.谷口(右)、Saqoosha(左) 撮影:三野新
『MIXED REALITY LIVE!』の開発を手がけたPARTY中村(中央)、dot by dot inc.谷口(右)、Saqoosha(左)

たった1回のイベントで終わらせてしまうには、実に贅沢だと思った人も多いだろうが、この『MIXED REALITY LIVE!』の模様は、4月22日から『TOYOTOWN(トヨタウン)』のウェブサイトで動画配信予定。リアルとバーチャルの視点を切り替えて見られる機能がつけられ、ライブ会場の観客と同様の体験ができるようになるそうだ。ここまでつらつらと文章で説明してきたものの、いまいち理解できなかったという人も少なくないと思う。百聞は一見にしかず。実際に目の当たりにすれば、そのすごさに驚くはずなので、ぜひこの動画で体験してみてほしい。

貪欲に最先端テクノロジーを取り入れるTOYOTAが見せる、未来の車のビジョン

なお、『TOYOTOWN』では現在、石川さゆり、加藤ミリヤ、清水翔太、細野晴臣、矢野顕子、OKAMOTO'S、PUFFYの7組が、それぞれ“丘を越えて”を歌いながら自撮りしたスピンオフ動画も公開中だ。YouTube上にある7つの動画が同時再生されるプログラムが組まれており、PCで再生した場合はクリックした動画だけ音量を大きくできる機能もついている。

『TOYOTOWN』「みんなで歌おう♪丘を越えて」
『TOYOTOWN』「みんなで歌おう♪丘を越えて」

今回の『MIXED REALITY LIVE!』の技術は、あくまでプロモーションのツールとして利用されたものだが、最新技術を積極的に取り入れるトヨタの姿勢は実に興味深い。 クリエイティブディレクターであるPARTYの中村洋基は、あくまで私見と前置きしたうえで、「この『MIXED REALITY LIVE!』の技術が進化すれば、車のフロントガラスに見える建物をリアルタイムで認識し、それに対して情報を表示するようなことも考えられる」と語っていた。昨今の若者は車に対して前時代的な印象すら抱いているかもしれないが、車に乗ればいつでも最先端でワクワクする体験ができる、そんな未来はもう足音を立てて近づいているのかもしれない。

イベント情報
『MIXED REALITY LIVE!』

2015年4月13日(月)
会場:東京都 TFTホール1000
出演:加藤ミリヤ、清水翔太、PUFFY



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