Galileo Galilei、洋楽離れの日本人に海外の音を届ける主導者

「邦楽」と「洋楽」という区分けに対する違和感

誰かとポップミュージックについて話すとき、我々は何の気なしに「洋楽」「邦楽」という言葉を使うことがある。でも、よくよく考えてみてほしい。これほどナンセンスな区分けもないような気はしてこないだろうか。少なくとも、筆者はこの分け方に対する違和感が、もうずいぶんと長いあいだ拭えずにいる。アメリカやヨーロッパ諸国はもちろん、東南アジアから中東、あるいはアフリカなど、今もさまざまな場所で生まれ続けているポップスを、一言で「洋楽」と括ること。そして、それと日本の音楽を分けるものとして「邦楽」という言葉を用いること。これは「ガラパゴス化」が指摘されるJ-POPの現状とも、決して無関係な話ではないと思うのだ。

言葉の垣根を簡単に取っ払う、平均23歳の熟練バンド

さて、こうした現在の国内シーンにおいて、誰よりも誠実に世界のポップスと向き合ってきたバンドがいることを、あなたはご存知だろうか。そう、Galileo Galileiである。欧米の新しい動きにシンパシーを強く抱きながら、あくまでも日本語のポップスを作ることに腐心してきた彼らは、いまやアメリカ在住のミュージシャンやエンジニアとみずからコンタクトをとり、自分たちのアルバムを制作するまでになった。現在のGalileo Galileiは、地元北海道に拠点をおきながら、ごく自然に海外のインディーポップと共振しており、さらにはそれを『ALARMS』(2013年)、『See More Glass』(2014年)という2枚の作品で見事に証明したのだ。

10月から始まった全国ツアー『Galileo Galilei "broken tower tour" 2015』で、彼らは『ALARMS』と『See More Glass』のサウンドプロデュースを手がけたクリストファー・チュウ(Vo)が率いるアメリカ在住バンド、POP ETCをオープニングアクトとして招聘した。ツアーファイナル前日に行なった筆者の取材で、Galileo Galileiの尾崎雄貴(Vo,Gt,Syn,Programming)は今回の共演についてこう語っている。

「俺たちは英語が全然話せないんですけど、それって、一緒に作品を作る上では大した問題じゃないんですよね。お互いの言葉がわからなくても、『1、2、3』で一緒に音を鳴らせば、もうそれでOK。その感覚をリスナーにもちゃんと伝えたかったんです。僕らは音を出すことでつながっているんだということを、ただクリスたちと肩を組んでる写真をSNSとかで見せるだけではなくて、実際にライブで感じてもらいたかった」

尾崎雄貴(Galileo Galilei)
尾崎雄貴(Galileo Galilei)

POP ETCのライブに対するGalileo Galileiファンのリアクションは?

そのPOP ETCを迎えたツアーもいよいよ最終公演。フロアは、アニメや映画の主題歌を入口にGalileo Galileiのことを知ったであろう10代や、彼らのデビューから共に年を重ねてきた20代など、幅広い客層でビッシリと埋め尽くされていた。

Galileo Galilei
Galileo Galilei

そこにまず登場したのはPOP ETC。今回に関してはオープニングアクトということで、時間にしてわずか20分ほどの短いセットだったが、POP ETCの三人はこの日、Galileo Galileiを観に来た人たちの心を確実に掴んでいたと思う。実際、その反応を見る限り、おそらくほとんどのオーディエンスが「もっと観たかった!」という気持ちに駆られていたのではないだろうか。ちなみにクリスは、先に行われた大阪と名古屋の公演についてこう振り返っていた。

「ステージに立つまではものすごく不安だったんだ。だって、オープニングアクトの演奏中なんて、他の国ではみんなしゃべってばかりで、実際はほとんど観てなかったりするものだからさ(笑)。でも、GG(POP ETCの三人はGalileo Galileiのことをこう呼んでいる)のファンは僕らの音楽も予習してきてくれたのか、なかには一緒に歌ってくれてる人もいて。そういうリアクションの一つひとつが、本当に嬉しかったんだ」

このツアーファイナルでも、クリスたちはおそらくこれと同様か、それ以上の手応えを掴んだことだろう。披露した4曲のうち、3曲は新曲。きたるべきニューアルバムへの期待も大いに高めるようなパフォーマンスだった。

日本人にとって耳馴染みの薄いサウンドも、丁寧に伝えていくGalileo Galileiの姿勢

そこからほぼ間をあけず、いよいよGalileo Galileiの三人が、サポートメンバー二人と共に登場。この日のライブ構成に関しては、彼らもかなり特別な意識をもって臨んでいたに違いない。尾崎雄貴の「これはPOP ETCにインスピレーションをもらって書いた曲」という言葉をそえて演奏した“Birthday”がなによりも象徴的だったように、この日のライブは現在進行形のGalileo Galileiを見せるだけでなく、ここまでの進化を遂げるうえで、POP ETCというバンドにどれほどの刺激を受けたのかを、改めて伝えていくようなステージだったのだ。実際、こうして両バンドが続けざまに演奏することで、オーディエンスはGalileo Galileiの近作における音作りと、POP ETCの音楽性がどのようにリンクしているのかを肌身で実感できたはず。そして、それは前述した「音を出すことで僕らはつながっている」という雄貴の発言につながるものでもあったと思う。

Galileo Galilei

彼らの共演はこれだけではなかった。アンコールで再びステージに登場したGalileo Galileiは、新曲“クライマー”を披露したあと、ステージ上にPOP ETCの三人を招集。そう、Galileo GalileiとPOP ETCのメンバー全員によるコラボレーションがここで行われたのだ。このスペシャルなセッションの曲目として彼らが選んだのは、The Supremesの“You Can't Hurry Love”。世界でもっとも有名なベースラインをもつこの曲について、オーディエンスにとても丁寧に説明する尾崎雄貴。そして、クリスはもちろん英語詞で、雄貴はそれを日本語に翻訳したリリックで交互に歌っていく。この八人のセッションに対して、およそ2000人のオーディエンスがハンドクラップで応えている光景は、間違いなくこの日のハイライトだろう。洋邦の垣根など存在しない、ポップス本来の美しい姿がそこにはあった。

Galileo Galiei、POP ETC
Galileo Galiei、POP ETC

これは余談だが、Galileo Galileiの演奏中、彼らのパフォーマンスと、それに対するオーディエンスの反応を真剣な表情で見つめているPOP ETCの三人を、筆者はたまたま見かけることができた。どうやら両バンドの絆は、このツアーを通じてさらに深まったようだ。ならば、次はオープングアクトとしての出演ではなく、この組み合わせのツーマンツアーも実現させてほしい。そんな思いを馳せながら、この日の会場をあとにした。

イベント情報
『Galileo Galilei “broken tower tour” 2015』

2015年11月6日(金)
会場:東京都 Zepp DiverCity
出演:
POP ETC(オープニングアクト)
Galileo Galilei

リリース情報
Galileo Galilei
『クライマー』期間限定通常盤(CD)

2015年12月9日(水)発売
価格:1,400円(税込)
SECL-1822

1. クライマー
2. ボニーとクライド
3. She
4. クライマー(TV Ver.)

リリース情報
Galileo Galilei
『クライマー』通常盤(CD)

2015年12月9日(水)発売
価格:1,300円(税込)
SECL-1821

1. クライマー
2. ボニーとクライド
3. She

リリース情報
POP ETC
『Souvenir』

2016年1月27日(水)発売

1. Please Don't Forget Me
2. Vice
3. I Wanted To Change The World But The World Changed Me
4. Running In Circles
5. What Am I Becoming?
6. Backwards World
7. Your Heart Is A Weapon
8. Beating My Head Against The Wall
9. Bad Break
10. I'm Only Dreaming
※日本盤のみボーナストラック3~4曲収録予定

プロフィール
Galileo Galilei (がりれお がりれい)

2007年、北海道・稚内市にて、尾崎雄貴(Vo,Gt,Synth,Programming)、尾崎和樹(Dr,Gt,Per,Rhythm Machine,Synth,Programming)、佐孝仁司(Ba,Gt,Synth,Programming)で結成。2010年2月ミニアルバム『ハマナスの花』でメジャーデビュー。リリースごとに支持を集め、その独自の音楽性と存在感で、平均年齢23歳にして同世代のカリスマ的存在に。2016年3月1日(火)苫小牧ELL CUBEを皮切りに、全18公演にわたる全国ワンマンライブツアーの開催が決定している。

POP ETC (ぽっぷ えとせとら)

2006年にカリフォルニアのバークレーで結成した3人組。現在のメンバーはクリストファー・チュウ(Vo,兄)、ジョナサン・チュウ(Gt,弟)、ジュリアン・ハーモン(Dr)。2008年にThe Morning Bendersとしてデビューアルバムを発表後、2010年に2ndアルバム『BIG ECHO』で世界デビューし、世界中から脚光を浴びる存在となった。2012年3月にバンド名をPOP ETCに改名。国内外のCM、アメリカの人気テレビシリーズ、世界的に支持を誇る映画などに楽曲が起用され、各方面で注目を浴びている。2011年には 東日本大震災支援チャリティEP『Japan Echo EP』を発表。その売上は日本赤十字を通して募金された。



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