デビューから25年、変わることのないCharaの核心
アルバムのイメージっていうのは女の子。女の子の部分てさ、ババアになっても変わらないしさ、ここで歌ってる女の子ってすごい切ないんだよね。
Charaはこう言っていた。25年前、雑誌『宝島』(1991年12月号)のモノクロページに載った短いインタビュー。まだ23歳。デビューアルバム『Sweet』をリリースしたばかりのことだ。今思えば、すごい言葉だと思う。「最終的には何をやってもチャラなんだなって言われるようになりたい。いい曲を作って、いいバラードを歌っていきたい」とCharaはそのインタビューで語っていたが、きっと80歳になっても歌っているだろう。そして、彼女はその通りの人生を歩んできている。
15枚のオリジナルアルバムをリリースした今も、シンガーソングライターとしてのCharaの核にあるものは変わっていない。一貫して「愛」をテーマに曲を作り、ときに息の混じったウィスパーボイスで、ときに透明感ある伸びやかな歌声で、それを届けてきた。
「職業欄に『女』と書きたいくらいの人だから」と様々な場所で語るChara。その言葉の通り、彼女は一貫して「ガーリー」であり続けている。そして、それはファッションやコーディネートといった後天的なセンスや技術として身につけられるようなものじゃないと思う。もっとピュアな、内奥にいる「女の子」の持つ切なさや喜びが、歌と、その人自身の佇まいに宿っている。だから、彼女は今もずっと「憧れの的」であり続けるのだと思う。
Charaと二人の男たち。傑作『Junior Sweet』の誕生前夜
そんなCharaにとっての代表作が、1997年にリリースされ100万枚を超えるセールスを記録した5枚目のアルバム『Junior Sweet』だ。
Charaは決してデビューからすぐにブレイクしたわけじゃない。彼女が世に登場した91年の当時は渡辺美里のようなパワフルな女性シンガーの方が主流で、ソウルやR&Bにルーツを持ち、メロウで甘い歌声のCharaは決して王道の存在ではなかった。それでも作品を重ねるごとに評価を高め、着実に人気を獲得していった彼女にとって、人生のターニングポイントになったのがその後に訪れた二つの出会いだった。
93年、Charaは気鋭の若手映画監督として注目を集めていた岩井俊二からのオファーを受け、映画『PiCNiC』(1996年公開)に出演。そして、その映画の撮影をきっかけに出会った俳優・浅野忠信と恋に落ちる。94年には、初の武道館公演で1万人の観客の前に立ち、全てが初めての状況下におかれ、途中ステージを中断せざる得ない状態にしまうという「事件」もあった。背景にあったのは私生活の変化だ。雑誌『ローリングストーン』(2016年8月号)に掲載された水曜日のカンパネラ・コムアイとの対談で、Charaは当時のことをこう振り返っている。
妊娠してたんです。妊娠がわかって、でもマスコミには言っちゃいけなくて。そうすると“母力”が出るみたいで(笑)。こんなジャンプして大丈夫か、こんなノースリーブで大丈夫かって思って、ナイーブになったんだよね。こんなところで歌えないよって、胡座かいて座っちゃった。もともと、幸せになるために音楽を始めたからね。
そして95年、Charaは浅野忠信と入籍し、長女SUMIREを出産する。さらに96年には岩井俊二監督の映画『スワロウテイル』で主演をつとめる。劇中に登場する架空のバンド「YEN TOWN BAND」のボーカリストとして歌った“Swallowtail Butterfly ~あいのうた~”は初のオリコンシングルチャート1位を獲得した。女優としても高い評価を集めたCharaは『日本アカデミー賞』主演女優賞にて優秀賞も受賞した。
女性として、シンガーとして誰よりも輝いていた瞬間に生まれた二つの名曲
二つの出会いが、アーティストとして、そして「女」としてのCharaを変えた。時代を代表するアイコンとして一躍ブレイクを果たした。そして、母となったことで、シンプルで真っ直ぐな言葉を歌えるようになった。そういう様々な面での転機が結実したのが、97年に3年ぶりのアルバムとしてリリースされた『Junior Sweet』だった。
Chara『Junior Sweet』ジャケット(Amazonで見る)
ジャケットには、浅野忠信と手をつないだChara自身が写っている。アルバムは、愛する人と家族になった幸せ、母としての包容力が溢れ出すような一枚に結実した。中でも、シングルとしてリリースされた“やさしい気持ち”は、彼女の代名詞のような一曲だ。
また、故・吉村秀樹(bloodthirsty butchers)と名越由貴夫(YEN TOWN BANDのギタリストとしても知られる)と共作した“タイムマシーン”のミュージックビデオには浅野忠信が出演している。幸せな風景を描いていても、まるで「それがすでに失われてしまった未来から振り返っている」かのような痛みや喪失感のようなもの、内奥の切なさがその表現には宿っていた。
アルバムの最後に覗かせる、「母」としてのChara
アルバムは2分弱のピアノの小曲「せつないもの」で終わる。当時のインタビューでCharaはその曲が子守唄であることを明かしている。
今回のアルバムには子守唄が入ってるんですよ。『せつないもの』っていう。こうやってスーちゃんに添い寝しながら歌ったりするときはあるんだけど、気がつくと大きい声で歌ってたりするから(笑)。『月刊カドカワ』(1997年10月号)
2016年9月21日には、Charaのデビュー25周年を記念したリマスター盤『Junior Sweet-25th Anniversary Edition-』がリリースされる。
Chara『Junior Sweet-25th Anniversary Edition-』ジャケット(Amazonで見る)
19年前にCharaが添い寝していた「スーちゃん」は、現在、モデル・SUMIREとして目覚ましい活躍を見せている。時代は巡り、しかし色褪せない輝きが、このアルバムには刻み込まれている。
- リリース情報
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- Chara
『Junior Sweet-25th Anniversary Edition-』完全生産限定盤(CD+BD) -
2016年9月21日(水)発売
価格:5,184円(税込)
KSCL-30025/6[CD]
1. ミルク
2. やさしい気持ち(しあわせ version)
3. しましまのバンビ
4. 私の名前はおバカさん
5. タイムマシーン
6. 勝手にきた
7. どこに行ったんだろう?あのバカは
8. 私はかわいい人といわれたい(Original version)
9. Junior Sweet
10. 花の夢
11. 愛の絆
12. せつないもの
[Blu-ray]
・Opening(from 1997年11月1日CHARA)
・やさしい気持ち(from 1997年11月1日CHARA)
・Swallowtail Butterfly~あいのうた~(from 1997年11月1日CHARA)
・BREAK THESE CHAIN(from 1997年11月1日CHARA)
・勝手にきた(from 1997年11月1日CHARA)
・どこに行ったんだろう?あのバカは(from 1997年11月1日CHARA)
・私はかわいい人といわれたい(from 1997年11月1日CHARA)
・ミルク(from 1997年11月1日CHARA)
・Happy Toy(from 1997年11月1日CHARA)
・Tiny Tiny Tiny(from 1997年11月1日CHARA)
・せつないもの(from 1997年11月1日CHARA)
- Chara
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- Chara
『Junior Sweet』(CD) -
2016年9月21日(水)発売
価格:2,700円(税込)
KSCL-300271. ミルク
2. やさしい気持ち(しあわせ version)
3. しましまのバンビ
4. 私の名前はおバカさん
5. タイムマシーン
6. 勝手にきた
7. どこに行ったんだろう? あのバカは
8. 私はかわいい人といわれたい(Original version)
9. Junior Sweet
10. 花の夢
11. 愛の絆
12. せつないもの
- Chara
- イベント情報
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- 『“Junior Sweet”Intimate interlude tour』
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2016年9月18日(日)
会場:大阪府 Zepp Namba2016年9月21日(水)
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM2016年10月2日(日)
会場:愛知県 Zepp Nagoya2016年10月30日(日)
会場:群馬県 高崎club FLEEZ2016年11月2日(水)
会場:東京都 赤坂BLITZ2016年11月3日(木)
会場:東京都 赤坂BLITZ
- プロフィール
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- Chara (ちゃら)
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1991年9月21日にシングル「Heaven」でデビュー。オリジナリティ溢れる楽曲と独特な存在感で人気を得る。1997年のアルバム「Junior Sweet」は100万枚を超えるセールスを記録し、ライフスタイルをも含めた“新しい女性像”としての支持も獲得。一貫して「愛」をテーマに曲を創り、歌い続け、今年デビュー25周年を迎える。
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