スカパラ新曲はユニゾン斎藤と。無茶振りにも応える斎藤の歌唱力

サルサの楽曲構成が取り入られた、スカパラの新境地

東京スカパラダイスオーケストラが、通算41枚目となるニューシングル“白と黒のモントゥーノ feat. 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)”をリリースする。

本作は、テレビ東京系ドラマ『新宿セブン』のオープニングテーマとして書き下ろされたもの。質店の店主で天才鑑定士の主人公が、自分なりの正義を貫き、「物事に白黒つけていく」というストーリーを、ピアノの黒鍵と白鍵に喩えた曲タイトルが象徴的だ。また、舞台となる新宿・歌舞伎町の「猥雑さ」と「無機質さ」が入り混じった独特の風景は、総勢9名のメンバーによるソリッドで疾走感溢れる演奏と、ゲストボーカルとして迎えられた斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)の、類い稀なるハイトーンボイスによって見事に音像化され、今までのスカパラにはなかった新たな境地に達している。

この楽曲の大きな特徴は、タイトルにもなっている「モントゥーノ」という、サルサの楽曲構成が取り入られていることだろう。サルサは通常、大きく前半と後半のセクションに分けられる。前半は、例えばイントロがあってAメロ、Bメロ、サビといった具合に、いわゆる歌モノの一般的な構成と同じ。そして、この前半セクションのあと、管楽器による短めのフレーズを挟み、ボーカルとコーラスによる掛け合い(サルサ用語では「コロカンタ」という)が繰り広げられる。この後半のセクションのことを、「モントゥーノ」というのだ。

本作でいえば、演奏開始から1分35秒を過ぎたところ、斎藤宏介と加藤隆志によるツインギターの短いブレイクと、その直後のGAMOによるサックスソロを経て始まる掛け合いコーラス <Blanco y negro / Montuno>の部分が、「モントゥーノ」ということになる。

『白と黒のモントゥーノ feat. 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)』ジャケット
『白と黒のモントゥーノ feat. 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)』ジャケット(Amazonで見る

作曲は沖祐市(Key)。抑揚たっぷりのメロディーと、Bメロからサビに向けてのめまぐるしい転調、そして曲の後半で2倍になるリズムなど、息をもつかせぬドラマティックな展開が、艶やかなサルサのリズムによく合っている。じつは先日、彼らにインタビューをする機会があり、それによればこの転調は、NARGO(Tp)のアイデアだったという。後述するが、この部分は「メロディーラインが複雑すぎるのでは?」と、歌入れのギリギリまでメンバー間で意見が割れていたらしい。

スカパラメンバーが息を飲んだ、完璧に外さない斎藤宏介のボーカル

今回、スカパラが「サルサ」を取り入れたのは、今年行われた中南米ツアーや、昨年の2度にわたるブラジル公演の影響が大きい。メキシコ、ブラジル、コロンビア、チリ、アルゼンチンを巡り、現地の人々から熱烈な歓迎を受け(メキシコでは、まるでアイドルコンサートのような掛け声が飛び交ったという)、地元アーティストたちとの交流を通して中南米音楽に傾倒していった彼らが、その要素を取り入れるのは自然の流れだったと言えよう。

そして、いうまでもなく斎藤宏介のボーカルこそ、この曲を特徴づけている最も大きな要素だ。作詞を担当した谷中敦(B.Sax)は、UNISON SQUARE GARDENのあの難解なメロディーラインを、ほぼ息継ぎもなく軽々と歌う姿をライブで目撃して以来、「彼と一緒にやるのがずっと夢だった」と振り返る。

プリプロ(本番レコーディング前のリハーサル)初日。まだ歌詞が付いていない「仮歌」の段階でスタジオに入り、適当な言葉を当てながらメロディーを歌うという、シンガーにとっては非常にやりにくい状況でも、ほとんどピッチを外すことなく歌う斎藤に、メンバー全員が息を飲んだ。そこで、保留にしてあったNARGOのアイデア(Bメロからサビに向けてのめまぐるしい転調)を試してみたところ、これも彼は完璧に歌ってみせたという。それまで転調に慎重だったメンバーを唸らせ、全員を賛成派にする歌唱力。どれだけ無茶なリクエストにも応える、そんな斎藤のことをNARGOは、「投げるボールを全て打ち返してくれる、超優秀なバッター」と絶賛するのだった。

なお、今回のMVは、これまでスカパラの楽曲を何度も手がけ、中南米ツアーにも同行した番場秀一が監督を務めている。シリアスなムードで進んでいくかと思いきや、途中から加藤扮するブルース・リーが登場するなどコミカルな遊び心も散りばめられた、見どころ満載の映像だ。

「映画を観ていたら、登場人物が突然観客に向かって話しかけてくるような、聴く人をハッとさせることがしたかった」(谷中)

Ken Yokoyama(Hi-STANDARD、BBQ CHICKENS)をフィーチャーした前々作“道なき道、反骨の。”や、前作“さよならホテル”では、哀しみを背負ったまま、涙が後ろへ流れるくらい邁進する男の美学(曰く、「涙後体前」)を歌詞に綴った谷中。今回“白と黒のモントゥーノ”は、基本的にはドラマ『新宿セブン』の世界観をそのまま歌詞に落とし込んでいるが、中盤の<どうせいつも悩むのならば 大切なことで悩んで欲しい>というセンテンスだけは、リスナーに向けられたメッセージだという。「映画を観ていたら、登場人物が突然観客に向かって話しかけてくるような、聴く人をハッとさせることがしたかった」と谷中。しかもそれを、無機質なようで生々しくもある、不思議なバランスを持った斎藤の声が歌うことにより、妙な説得力を生み出している。

悩むほど「大切なこと」って何だろう。改めて問われると、日頃抱えているのはどれも、些細な悩みのような気がしてくる。そんなものに煩わされているよりも、サルサのリズムに身を任せ、「涙後体前」で刹那を生きよ。スカパラの新曲“白と黒のモントゥーノ”には、そんな力強いメッセージが込められているのではないだろうか。

リリース情報
東京スカパラダイスオーケストラ
『白と黒のモントゥーノ feat. 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)』(CD+DVD)

2017年11月29日(水)発売
価格:2,484円(税込)
CTCR-40390/B

[CD]
1. 白と黒のモントゥーノ feat. 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)
2. WORLD RUDO CONNECTION feat.Los Auténticos Decadentes
3. Moon Bow
4. 白と黒のモントゥーノ feat. 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)Instrumental
[DVD]
1.「白と黒のモントゥーノ feat. 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)」MV
2.「Latin America Tour 2017ドキュメンタリー前編」

リリース情報
東京スカパラダイスオーケストラ
『白と黒のモントゥーノ feat. 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)』(CD)

2017年11月29日(水)発売
価格:1,296円(税込)
CTCR-40391

1. 白と黒のモントゥーノ feat. 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)
2. WORLD RUDO CONNECTION feat.Los Auténticos Decadentes
3. Moon Bow
4. 白と黒のモントゥーノ feat. 斎藤宏介(UNISON SQUARE GARDEN)Instrumental

イベント情報
『2017ライブハウスツアー 涙後体前』

2017年11月30日(木)
会場:広島県 広島CLUB QUATTRO

2017年12月1日(金)
会場:広島県 広島CLUB QUATTRO

2017年12月4日(月)
会場:愛知県 名古屋 Diamond Hall

2017年12月5日(火)
会場:愛知県 名古屋 Diamond Hall

2017年12月11日(月)
会場:大阪府 なんば Hatch

2017年12月12日(火)
会場:大阪府 なんば Hatch

2017年12月16日(土)
会場:東京都 豊洲PIT

2017年12月22日(金)
会場:福岡県 DRUM LOGOS

『仙台カウントダウンライブ 2017-2018“スカパラ・オールスターズ大感謝祭”』

2017年12月31日(日)
会場:宮城県 仙台サンプラザホール

プロフィール
東京スカパラダイスオーケストラ
東京スカパラダイスオーケストラ (とうきょうすかぱらだいすおーけすとら)

ジャマイカ生まれのスカという音楽を、自ら演奏する楽曲は"トーキョースカ"と称して独自のジャンルを築き上げ、アジア、ヨーロッパ、アメリカ、南米と世界を股にかけ活躍する大所帯スカバンド。現在のメンバーは9人。NARGO(trumpet)、北原雅彦(trombone)、GAMO(tenor sax)、谷中敦(baritone sax)、加藤隆志(guitar)、川上つよし(bass)、沖祐市(keyboards)、大森はじめ(percussion)、茂木欣一(drums)。



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